第2の任務 トリッシュを護衛せよ
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「露伴?初流乃に会えたよ!」
「そうか。良かったな。近くにいるのか?」
「あ、今は訳あって別行動してるんだけど…。」
「はぁ?君が"訳あって"と言うと、嫌な予感がするんだが。おい、危険な事に首を突っ込んでるんじゃあないだろうな?」
「露伴に言われたくはないんだけど?」
ヴェネツィアへと向かった初流乃とミスタ。私も着いていこうとしたが、まさかのトリッシュの護衛を頼まれこちらに残った。トリッシュが私に残ってほしいと言ったからだ。しかし初流乃のいないブチャラティチームは居心地が悪くて、堪らず露伴に電話をかけたのだが…事情を何も知らないはずの露伴に危険な事に首を突っ込んでいるのではと言われるなんて、私ってそんないつも面倒事に巻き込まれてる?…いや、実際そうかもしれない。
「初流乃のスタンドね、ゴールド・エクスペリエンスっていうんだって。強くなっててびっくりしちゃった。」
「話を逸らすなよな。第一、強くなるって事はやっぱり、スタンド使いとの戦闘が「またあとで電話するね。バイバイ!」
うーん、お小言が。寂しくてつい口が勝手に憎まれ口を叩くのだろうか。きっと、そうに違いない。
「なぁ…ロハンってもしかして、岸辺露伴の事か?」
「バカかナランチャ。そんなはずないだろう。」
"露伴"という名前に反応したナランチャと、「きっと日本ではよくいる名前に違いない」とそれを否定するフーゴ。この2人はなんというか、露伴と仗助を見ているようである。つまりは、微笑ましくてかわいい。
「そうだよ。日本でね、一緒に暮らしてるの。ナランチャは露伴のファンなの?なら、露伴のサインあげるよ。」
ハイ、とサインの書かれた手帳のページを破って渡すと、ナランチャは両手で受け取り、空へ掲げてみせた。ナランチャは億泰みたいで、憎めない男の子だ。
「すっげー!ありがとな、なまえ。大事にする!」
「はぁ…?偽物なんじゃあないだろうな?」
「偽物…。わざわざそんな事しないよ。時間と労力の無駄じゃない。」
「無駄…。ジョルノも良く言うよな、それ。」
「……それは、嬉しいような、嬉しくないような…。」
DIOの影が、頭を過ぎる。そういえば奴はよく「無駄無駄」と連呼していた。そんなとこ、似なくてよかったのに。
「待てよ…みょうじなまえってまさか…。君、絵を描いたりはするのか?」
「あら。随分頭の回転が早いのね。典明みたい。」
「そういえばテンメイって…!嘘だろ…こんな頭の悪そうな奴が、あのみょうじなまえだって…?」
「典明みたいって言った事は、取り消すわ。全然似てなかった。」
「ははっ、良かった。僕に似ていたら、より顔の良いフーゴに心変わりするんじゃないかとハラハラしたよ。」
「もう、典明ってば!そんなのあるわけないじゃない!第一顔だって、典明の方が好きです〜!」
「はぁ…。」
何その呆れたような顔。フーゴは典明より、露伴の方が似ているかもしれない。と、考えを改めた。
プルルルル…
「…もしかして露伴…?…じゃない。初流乃だ。」
着信を告げた携帯電話を見ると、ディスプレイには"汐華初流乃"の文字。こっちは和やかな雰囲気で移動中だが、もしかしたら敵に遭遇したのかもしれないと些か不安な気持ちで、通話ボタンを押した。
「もしもし、初流乃?」
「なまえさん…っ!」
思わず声を聞いて、バッと立ち上がる。
初流乃の私を呼ぶ声は、なんだか切羽詰まっている。「どうしたの、初流乃!」と声をかける間もなく突然通話が切られ、ツーツー、という電子音へと変わり、以降かけても繋がらなくなってしまった。初流乃に何かが起こっているのは、明白だった。
「ブチャラティ。初流乃達が、敵と交戦してる。私に行かせて。」
「何?」
トリッシュには悪いが、私はブチャラティチームの人間ではない。
ブチャラティが初流乃に電話をかけている間トリッシュへ謝罪をすると一瞬寂しそうな表情を見せたが「…いいわ。その代わり、ちゃんと帰ってきて」と。本当、かわいい子だ。
「うん。トリッシュも気をつけてね。」
そう言って抱きしめてもトリッシュは抱き締め返してくれなかったが、拒否もしない。その思春期特有の葛藤が、私の中の母性本能を擽った。
「どうやら向こうに何かあったのは確からしい。しかし、俺達は進路を変えるわけにはいかない。どうやってジョルノのところまで行くつもりだ。」
「それは心配しないで。走っていくから。」
「走って…?しかし、道は分かるのか?」
「あぁ、ごめん。空を走っていくから、大体の方向が分かれば大丈夫よ。じゃあ急ぐから。またあとでね。」
一刻も早く初流乃の元に行かなければと、返答も聞かずに亀の甲羅を飛び出した。行く先は、サンタ・ルチア駅だ!
「覚悟とは!暗闇の荒野に!進むべき道を切り開くことだッ!」
「初流乃ッ!!」
ここに来る前に通ってきたリベルタ橋には戦闘の痕跡があり、やはり敵がやってきたのだと安易に予想できた。一部道路が凍っていたり削れていたりしているのを横目にサンタ・ルチア駅までやってきたが、敵と対峙しているミスタと海に沈んだ車の上で血を流す初流乃を視界に捉え、迷いなくまずは初流乃の体を抱き抱えた。腕が…ボロボロだ。
「典明は…初流乃をお願い。さっきの敵みたいなのじゃなければきっと、私の方が強い。…そうでしょう?初流乃。」
チラリと初流乃を見ると、コク、と一度頷いた。初流乃が私を呼んだという事は、私を呼べば勝てると思ってくれているからだ。そう考えると、初流乃の前で強さを見せてきて良かったと思えた。
「私が、あの鎧を壊すから!」
「はぁ…寒〜い!」
ミスタと2回目の共闘は、前回よりも上手くいったように思う。尤も、共闘と呼べるかは疑問だが。やっぱり共闘というものは相性のいい者同士でするのが一番良い。私と、典明とかね。
「さ、2人とも帰ろうか。車はないから、ちょっと我慢してね。」
「はぁっ!?おいアンタ…!まじかよ…!!」
軽々と抱き抱えられる、初流乃とミスタ。この運び方は杜王町ではなかなかに不評だったが、如何せん一番速い移動方法なので急いでいる時にはもってこいなのだ。
初流乃は大人しく落ち着く体勢を整えているが、ミスタはギャーギャーと騒いでいる。まるで杜王町に置いてきた誰かさんみたいだと思い至ったところで、誰でも彼でも露伴に似ていると考えている自分に気がついた。いつも口煩いが、なんだかんだかわいい露伴の事を。
「なんだか、露伴に会いたいな。」
「ふふ、さっき口喧嘩したばかりなのに?」
「僕も、久しぶりに露伴先生に会いたいです。」
「うん。任務が終わったら、こっちに呼ぼうかな。」
「…俺に分かんねー話するなよな…。」
つい、思いついた事が口をついて出てきてしまった。私の悪い癖だ。
これからは気をつけよう、と少しの反省をして、抱えた3人ごと空へと飛び上がった。
トリッシュが、待っている。