第2の任務 トリッシュを護衛せよ
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先ほど列車内で戦闘が終了してから、そこまでの時間は経っていない。つまり先ほど倒した2人のうちどちらかが、仲間を呼んだという事だ。敵の援軍は、何人来るだろうか。ここにいる敵の数は、何人だろうか。なんにしたって援軍が来る前に、さっさと倒して移動を始めなければ。
(初流乃のスタンド…すごく強くなってそう…。もう器用に使いこなしてる…。)
初流乃のスタンド、ゴールド・エクスペリエンスは相変わらずキラキラと眩しく輝いている。それが初流乃の金髪みたいで、綺麗だ。
「……さん…、ますか…?」
「?…初流乃、もしかして…。」
スタンド越しの会話が…と初流乃に視線を向けると、典明顔負けのキラキラスマイル。初流乃の才能が怖い。色んな意味で。
「初流乃…!!」
初流乃が亀の中でキャビネットに攻撃した途端、右脚と右目が抉り取られた。キャビネットを、攻撃しただけなのにだ。
「大丈夫、です。……。」
大丈夫なわけ、ない。私だって、痛いのに。
初流乃はさっきの一瞬で、亀の甲羅の鍵を取ったようだった。
初流乃の代わりにキャビネットだった物体を攻撃しようとすると、それは細かい立方体を分解し当たる事はなかった。このスタンドは…スタンド能力は、何なのだろうか。
「!」
敵からの反撃を身を反らして避け、初流乃ごと壁際へと移動する。典明は…まだだろうか。
「鍵…!」
またしても初流乃が正体の分からない敵スタンドの攻撃を受け、鍵を奪われ…肉弾戦ではないのならもう、私にはお手上げだ。
初流乃はまた喉を攻撃され、呼吸ができない。
「典明っ!初流乃が…!!」
「なまえ、落ち着いて。」
このままでは初流乃が、死んでしまう…!
そう思ったら情けなくも体が震えて、子供のように泣きながら典明を呼んだ。すると離れた場所にいた典明はすぐさま傍に来てくれて、そっと背中をさすってくれた。
「典明…!」
「これは…!初流乃…!」
典明も初流乃を見て、顔を青くする。その瞳からは今にも光が消えてしまいそうで、しばらく感じる事はなかった絶望感が顔を覗かせてきた。が、そのトラウマが蘇るよりも先に、光が見えた。
さっき綺麗だと思った、金色の、初流乃のスタンドだ。
「…大丈夫、ですよ…お2人とも…。」
「初流乃…!!」
瞬きの間に、初流乃の脚や喉の傷は綺麗さっぱり消え去っていた。まるで仗助の、クレイジー・ダイヤモンドみたいに。
何が起こったのか分からずに呆けていると初流乃はユラ、と立ち上がり、敵の方へと足を進めた。そうだ。今は敵との交戦中。敵から目を離すなんて、SPW財団員失格だ。何が起こったのかは、あとで初流乃に聞けばいい。今は目の前の敵を、倒さなければ。
「人間を組み替えて物質にするか…全く、いいヒントをくれたよ。君の能力は、似ている。君と、僕のゴールド・エクスペリエンス。とても似ている。何かを作るという点で。君がくれたヒントと、君が死ぬほどまでに追い詰めてくれたおかげで…ほんのちょっぴり、成長できたようなんだ。」
「!テントウムシが、目に…!」
「ごめんなさい…せっかく、なまえさんがくれたのに。」
これが、ゴールド・エクスペリエンス。これが、初流乃のスタンドの、新しい能力。死ぬ間際まで追い詰められて、新しい能力が開花した。…すごい。
敵を、倒した。私ではなく、初流乃がだ。
典明が呼んだアバッキオ達が到着する頃には決着がつき、初流乃の新しい能力で私の傷も治してもらった。といっても、仗助のクレイジー・ダイヤモンドとは違いものすごい痛みを伴ったが…まぁ、あんなチート能力、なんの対価もない方がおかしいのだ。
「ありがとう、初流乃。知らないうちに、強くなったね。」
「ありがとうございます。…なまえさんに褒められると、嬉しいですね。」
こっちへ来て初めて見る、子供らしい微笑み。久しぶりに会った初流乃は随分大人っぽくなっていたが、やっぱり子供らしい笑顔はとてもかわいらしい。
「なまえ、他に傷はないかい?」
「うん、大丈夫。すぐに来てくれてありがと。嬉しかった。」
「君が呼べば、いつでもすぐに駆けつけるよ。だから、何かあったらすぐに呼ぶんだ。」
「うん。じゃあ典明、抱っこして。」
「ふふ、いいよ。」
本当、王子様。典明なしじゃ、生きていけない。好き。
「!…ボスから新しい指示が来ている。アバッキオ、ここの椅子のところに来てくれないか?」
またしても亀の中。PCを操作していたブチャラティの一声で全員の視線は一斉にそちらへと向く。私は……このチームの一員ではないため席を立ち、典明を伴って亀を出た。
「!なまえさん?」
「…ブチャラティが、ボスからの新しい指令がきたって言うから出てきたの。そっちの事情は、私には関係ないしね。ここは私と典明が受け持つから、2人とも一度中へ入った方がいいんじゃない?」
フーゴとミスタは2人顔を見合せやや不満気な表情を浮かべたのち、亀の中へと入っていく。未だ、私へ不信感を抱いているらしい事は明らか。だが、別にそれで良い。私は初流乃が守れれば、ポルナレフの奪還ができれば、なんだっていい。
「初流乃…どうしてギャング パッショーネに入ったのか、聞いてもいい?」
「……それは…。」
「初流乃、安心して。僕となまえはね、ただ心配しているだけなんだ。かわいい初流乃がギャングなんて危険なところにいるんだから、当たり前だろう?」
「花京院さん…、なまえさん…。」
ギャングなんて危険なところ、初流乃が理由もなしに身を置くわけがない。話してくれなくてもいいが、もしも話してくれたら、私と典明も、手助けできるかもしれない。と、思ったのだが…初流乃の口から語られたのは、まさかの理由であった。
「ブチャラティを…パッショーネのボスにするためです。」
ブチャラティを…ボスに…?それって、もしかして…もしかしなくても、裏切り、なのではないだろうか…?
「えぇと…、ごめん、聞かない方が良かったかな…?」
とてもじゃないが、力を貸せるような案件ではなかった。聞けばブチャラティはいま幹部らしいが、ここから更に上に登り詰め、いずれはボスの座を…という目論見らしい。
ギャングの事はよく分からないが、とても困難な道のりという事は分かる。
「いいえ。僕は必ず、ブチャラティをボスにしてみせます。なまえさんと花京院さんには、ぜひ見届けてほしい。」
一体初流乃とブチャラティの間には、どんな絆があるのだろう。仕事はできるが、頭の硬い人というのが私の持つ、ブチャラティの印象だったのだが…初流乃からすれば、それだけではないのだろう。きっと。
「見届けるだけでいいなら…いいよ。」
「うん。ただし、初流乃が死ぬのはナシだからな。なまえと…僕も悲しむ。」
「…分かりました。ありがとうございます。」
ホッとした表情の初流乃。なんだかよく分からないが、きっと私達は知らなくていい。初流乃さえ幸せなら、なんだっていい。もしも初流乃が助けを求めてきた時にはわけも聞かず、助ければいい。初流乃がDIOのように最低最悪な事を企むわけが、ないのだから。