第2の任務 トリッシュを護衛せよ
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「このままバレなければ、明日か明後日にはベネチアだが…。」
一同線路沿いに歩いていると偶然にも近くをトラックが通りかかり、全員亀の中へと入って何とかそのトラックへと乗り込む事ができた。アバッキオの言う通り、このまままっすぐ道なりに行けば明日か明後日には目的地には着くだろう。
「………。」
「……。」
亀の中の空気は現在、最悪である。
あの時何も答えなかったブチャラティに、トリッシュが不信感を抱いたからだ。
対する私は知っている事は教えてあげたので、トリッシュからの信頼を勝ち得た、らしい。
たまにトリッシュから話しかけられ、答えて。
それすらも気まずい空気を助長する行為なのだが…トリッシュが彼らに気を遣う必要はない。なんたってトリッシュは彼らが、守るべき対象だからだ。
キキィーーッ!
「わぁっ!トリッシュ、大丈夫?」
「君も、大丈夫か?」
車のブレーキ音に続いて、軽い衝撃。咄嗟にトリッシュの座るソファを抑えると、その私を典明が支えてくれる。やだ…かっこいい…王子様…。
見とれそうになるのをグッと堪えてトリッシュを見ると彼女の目線は典明へと向けられており、典明の笑顔をしばし見つめた後、プイと逸らされた。え?典明の王子様スマイルに見とれないなんて、トリッシュってばものすごい精神力の持ち主?まさか、私よりも強い…?
「早いとこどれか盗もうぜ〜!」
「バカか!すぐに足がついて、情報が敵に伝わってしまうだろうが!」
また、足止めだ。せっかく快適に移動できるかと思っていたのだが…もしかして私が、ジョセフさんの呪いを受け継いでしまったのだろうかと思い始めるほどだ。
「…ねぇ、トリッシュっていくつなの?初流乃よりも年上かなぁ?」
「……15。」
「えっ、初流乃と一緒だ!トリッシュってば大人っぽいのね!」
「…そういうなまえは、27歳なのに子供っぽいのね。」
「っあはは!よく言われる!」
初めて、私の事を名前で呼んでくれた。おまけに憎まれ口まで。かわいい。本当にかわいい。
「初流乃もまだ15歳なのに、大人っぽいのよね。ね、典明。」
「ふふ、そうだね。君は、そのままでいてくれよ。」
「当たり前じゃない。この私が一番、かわいいんだから。」
「……変な人。」
「えっ、その一言に纏めるの?」
トリッシュはなんだか、猫っぽい。その猫っぽさが、やっぱり露伴を連想させる。露伴は、寂しがってるだろうか。ああ見えて人一倍寂しがり屋さんだから、本当、かわいいんだよなぁ。
「…なまえは…スタンド能力に目覚めた時、混乱しなかったの?」
「…ふふ。したよ。もちろん。混乱した末1人で色々と考えて、承太郎に…兄に相談したの。といっても私は矢の力でスタンド使いになったから、生まれ持ってのスタンド使いのトリッシュとは、混乱度合いが違うけどね。日常の中で突然こんなのが見えるなんて……想像もつかない。」
私は、DIOとのいざこざがあって矢を譲り受けて怪我をして…という流れだったから、矢が原因なのではと予測できた。だけど初流乃やトリッシュは違う。ある日突然見えるようになり、自身のスタンドが発現したのだ。
「トリッシュ。実は僕も、生まれながらのスタンド使いでね。スタンドの事で不安な事があったら、僕やなまえになんでも聞いてくれ。」
「……ありがとう…。」
優しい声色、優しい笑顔を見せる典明に、私は気が気じゃなかった。こんなにかわいくてかっこよくて綺麗な笑顔を浮かべられたら、女の子はみな恋に落ちてしまうだろう。さすがのトリッシュも…と彼女を見ると、さっきと同じく数秒典明を見つめた後、その視線はプイと逸らされた。トリッシュ…恐るべし…!!
「車が用意できました。」
「よし。安全が確認できたら、出発しよう。」
「……その前に。トリッシュ、お手洗いに行きましょう。」
「待て、勝手な事をするな。さっきは助けられたが…俺はそもそも、あなた方の同行を許可した覚えはないんだぞ。」
「…あのねぇ。」
ブチャラティの言う事はご尤もだ。私達はいま、ブチャラティの許可なしにこうして亀の中に身を隠している。しかし、しかしだ。
「女の子に…ココをトイレにしろだなんて、考えられない!!ねぇ、典明!?」
「はは…うん、さすがに…。もしもこれが僕らのエジプトの旅だったとしても…それはちょっと…かな。」
「なぜだ。」
「なぜだ、じゃない!もう…!いいわ。あなた達に追い出されても構わない。トリッシュは連れてくから!!」
「お、おい!」
トリッシュの腕を掴んで、亀の甲羅から飛び出す。ちょうど亀を抱えていた初流乃が「なまえさん…!?」と目を丸くしているのを横目に視線を巡らせ、トイレのありそうな建物を見つける。なんだ、あるじゃない。護衛ならば、私がすればいい。時間がかかれば本当に追い出されかねないと、その建物までひとっ飛びで向かった。
「はぁ…助かったわ。ありがとう、なまえさん。」
「いいのよ。ブチャラティは、女心が一ミリも分からないのね。さ、手を洗ったら戻りましょう。…あれ?」
初流乃は?
亀を持っていたのは、初流乃のはず。先ほどまでここからそう遠くないところにいた初流乃の姿が見えない事に、一抹の不安を覚える。その私の不安を察知した典明がハイエロファントの触手を伸ばしてくれた事でようやく位置が分かったが…なぜか、駐車場の外側にいるようだ。
「…トリッシュ。私から離れないでね。」
トリッシュをしっかりと抱えて触手の出処へと近寄ってみると初流乃の後ろ姿が見えて、ホッとひと息をつく。傍らにはバイクが停車しており、どうやらそれが気になって確認しに来たらしい。
「安全確認をするから、トリッシュは中に入って、ブチャラティから離れないで。」
外よりは安全なはずだと、亀の中へとトリッシュを入れてバイクを見る。エンジンがかかっていて、すぐにでも走り出せる状態だ。
「初流乃。このバイクは、いつからここに?」
「いえ…僕も、つい今さっき見つけたばかりなんです。ブチャラティ、用心してください。妙なバイクが停まっています。……ブチャラティ?」
「?…典明?」
「マズイぞ、なまえ。ブチャラティと、トリッシュが消えた!」
「えっ!?」
そんな、バカな。典明の焦ったような表情を見て初流乃が「ゴールド・エクスペリエンス!」とスタンドを亀の中へと入れるが、言葉通り、2人とも姿がない。一体、どういう事…?
亀の中を、覗き込む。ゴールド・エクスペリエンスが棚の扉を開けると、何もない。部屋があるとはいえ、中は決して広くはない。他に探せるところなんて…と思っていると突然、棚の中から声が響いた。
「!みんな、敵です!攻撃されてい、っ…!」
「!初流乃っ…!」
「なまえ!」
声が、出せない。私も、初流乃も。それに、痛い…!どうやら喉を、やられたらしい。
初流乃の体を支えた私を典明が支えてくれて倒れはしなかったが、これでは、助けを呼べない。私が、私と初流乃が、何とかするしかない!
「私は初流乃を置いていけない。典明、みんなを連れてきて!」
「なまえ…、分かった。くれぐれも気をつけて。」
スタンド越しに最低限の言葉を交わし、典明はハイエロファントを飛ばす。去り際に、優しいキスを忘れずに。