第2の任務 トリッシュを護衛せよ
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「答えようが答えまいが、俺は今から、お前にごく簡単な…たった一つの質問をする。」
ミスタが、敵スタンド使いのいる食堂車に足を踏み入れる。私は、ドアのこちら側で待機だ。
私はギャング パッショーネとは無関係。つまりは、敵の裏をかける貴重な要員だ。ミスタが援護に来た今、無闇に姿を晒す必要はない。様子を伺って、老化のスタンド使いが姿を現した時に飛び出し、始末すればいい。ついさっき会ったばかりのミスタと連携が上手くいくかは分からないが、やってみるしかない。
「テメーのもう1人の仲間はどこにいる。」
「しっ、知るかよ…!俺だって知らねーんだよ!」
「じゃあ死ね。」
「あぁ〜、助けて欲しいんだよぉ。」
「!」
まずい。予測不能な、不測の事態だ。
あのまま糸のスタンド使いの方を撃てていれば、敵は1人減っていた。だというのにスタンド攻撃によって老化させられた一般人に、それを邪魔されてしまった。
どうする。無理やり、引き剥がすか?しかしそれでは、敵に私の存在をバラしてしまうようなもの。先に動くのは何としてでも避けたいが…。
「おい退いてろ…!すぐにまた肉が食いたくなるからよォ…!」
「いいや、もう何も食えないさ。ただしお前がだ、ミスタ。」
「!だっ、誰だテメェ…!」
「!」
一般人じゃ、ない!アイツこそが、もう1人のスタンド使いだ…!!
「ミスタ!」
気が付くのが遅れた。老人に握られた手からみるみるうちに水分が抜けて、シワシワになっていくミスタの体。もう飛び出すしかないと、ドアを蹴破りながら食堂車へと飛び込んだ。向かう先は、老化のスタンド使いだ。
ドゴッ、と鈍い音を立て、老人を蹴り飛ばす。敵とはいえ老人相手に攻撃するのは、気分が悪い。ミスタは糸のスタンド使いの方を、相手できるだろうか。
「なまえ、大丈夫だ。僕がやる。」
「っ!…典明!」
なんてタイミングでの登場なのだろう。まるで救世主。さながら王子様。
私を安心させるために肩に置いた手を、ぎゅ、と握る。
典明がいれば、色んな意味で、最強だ。
「典明、ありがと。こっちはお願いね!」
とりあえずは敵2人を引き離そうと、蹴り飛ばした老人を追って隣の車両へ。老人を蹴るのに抵抗があるとはいえ敵は敵だと遠慮なく蹴ったため、どうやらドアを突き破っていったらしい。
その姿を視界に捉えた時には既に老人は老人ではなくなっていて、若い男性と対峙した。
「痛ぇじゃあねーか……誰だ、テメェは。」
「…通りすがりの、お母さん、かな。」
「あぁ?ふざけてんのかテメェ…!」
おぉ、ギャングっぽい!露伴がここにいたら、きっと興味津々にスケッチを始めるんじゃないだろうか。目の前にいる男性は、ギャングのイメージそのもので、若干感動すらしている。しかし、今はそんな事、どうでもいい。
「あなた綺麗な顔だから殴るのは躊躇われるけど…許してね。」
「あぁっ!?」
「こんなかわいらしい小娘にやられるなんて悔しいかもしれないけど、相手が悪かったね、お兄さん。」
「典明〜終わったよ〜。」
「なまえ。怪我はないか?…うん、大丈夫みたいだね。いい子だ。」
典明のいる食堂車へ戻ると典明も無事に敵を倒したようで、柔らかい笑顔が向けられた。綺麗…かわいい…癒し…。
「ふふふ…もっと褒めて。」
「かわいい君のお願いなら、いくらでも。」
「……アンタら…何者だ……?」
いつものように和やかにイチャついていたら、ムクリとミスタが立ち上がった。そういえば、さっきスタンド攻撃を受けて倒れていたのだった。
「何者って…初流乃の親よ?」
「いや、そういう事じゃあなく、イテテ…!」
「ミスタ、怪我してるの?とりあえず一旦、亀まで戻ろ、っわ!」
「なまえっ!」
ガタン!と大きな音を立てて、列車が揺れる。それも、只事じゃない衝撃で。
この感じは、かつての旅で経験がある。
「列車が…脱線する…!!」
そう声に出した途端に、激しく揺れる車内。ミスタを担ぎ上げ、先頭車両へと急いだ。
「はー…。まさか、ジョセフさんがいなくても乗り物が壊れるなんてね。」
「ふ…、そうだな。」
「……。」
沈黙。私と典明以外は口を閉ざし私達を見るので、私と典明はお互い顔を見合せた。
「…ミスタを助けてくれて、感謝する。」
沈黙を破ったのは、ブチャラティだ。
他にも何か言いたげではあるが、一先ずは感謝の言葉を述べた。
「それは別にいいけど……列車、脱線しちゃったけど、これからどうするの?」
ここからの移動手段とか、私達の同行許可とか、色々。
私だけであれば問題ないが、この人数全員を抱えての移動はさすがに無理だ。どうしたって、乗り物は欲しい。
「…ここからは、別の方法で移動しなければならない。」
「…そうね…。線路に沿っていけば、駅には行き着くだろうけど…。」
「……聞きたい事があるんだけれど…答えてもらえるかしら。」
「…トリッシュ…?」
「君の方からの質問に、答える事は許されていない。俺達の任務は、あくまで君の護衛だ。」
「…私が答えられる事なら、答えるよ。ギャングのに関する事は、何一つ分からないけど…。」
トリッシュの真剣な顔を見て、思わず口を挟む。さっきも言ったが、私はギャング パッショーネとは無関係。本当に何も知らない。だから私が答えられる質問に答えても、ブチャラティ達には一切、迷惑はかからないはずだと思ったからだ。
「…あたし…一体何者なの?何よこれは!この地面はなに!?」
「!…トリッシュ、あなたまさか…。」
「なぜ最近…急に奇妙なものが見えるようになったの!?なぜあたしは、知らない父親のために追われるのよ!?」
「トリッシュ、大丈夫よ。…最後の問いは、私には事情が分からないから教えられないけど…、その奇妙なものについてなら、この中の誰よりも知ってる。トリッシュの不安を取り除く、お手伝いをさせて。」
全員の視線は私と、トリッシュに向けられる。
トリッシュに、スタンド能力が発現した。元々センスがあったのならば、こんなにたくさんのスタンド使いに囲まれているのだから発現するのも無理はない。ブチャラティの先程の発言から、トリッシュは何が何だか分からぬままなぜか、護衛されてここまで連れてこられているのだ。
初流乃が初めて、スタンド能力に目覚めた時の事を思い出す。自分自身がスタンド能力に目覚めた時の事も。
私も、初流乃も、ひどく混乱した。きっとトリッシュだって、あの時の私達と同じなのだ。
「大丈夫。私を信じて。」
優しくトリッシュの手を取るとビクリと僅かに震えたが、そっと包み込むとやがてほぅ、と息を吐き肩の力が抜けるのが分かった。普段の典明を見本にやってみたのだが、これは、効果絶大である。