第2の任務 トリッシュを護衛せよ
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「足のマッサージして。」
「いいよー。疲れちゃった?それとも体型管理のため?」
「……どっちでもいいでしょ。早くして。」
うーん、かわいい。やっぱり彼女…トリッシュは、この一行の中では大事な人物らしい事が、数分この部屋で過ごしてみて感じられる。
「マッサージってね、どこをどう刺激するかで効果が変わるのよ。それに疲れたのなら、マッサージよりも波紋を流した方がいいし…。」
「波紋…?」
「そう。1回流してみるね。」
トリッシュの足に手をかざすと、ぽわ…とほんのり手のひらが暖かくなる。最近ではあまり使う事がなくなっていたが、まだ問題なく使えるみたいで良かった。と、思ったのだが。
「…なんか、暑いね。」
そう、部屋の中が、暑いのだ。まるで日本の夏のようにむわっとした、嫌な暑さ。通常このタイプの列車であれば、空調が効いていてこうはならないと思うのだが。
「確かにそうね…。それのせいかと思っていたけれど…。」
私も波紋のせいだと思った。けどこうして手を離しても変わらず暑いし、それになんだか、部屋の中が静かだ。
「!…なまえ、スタンド攻撃だ。」
「!」
典明の一声を聞き咄嗟にトリッシュを庇うように、自分の背中側に隠した。しかしどれだけ視線をさ迷わせてみてもスタンド使いはおろか、スタンドの姿さえ見えない。
「まさか…こんなに早く…。」
「典明、列車内の様子を見られる?」
「あぁ、やってみよう。」
「待て。今外に出るのは…」
シュル、と典明のハイエロファントの触手が伸び始めたところで、ブチャラティの制止が入る。が、大丈夫、問題ないとブチャラティに笑顔を見せた。
「私の典明、ものすごーく器用なの。ネズミ1匹だって、見逃さないんだから。」
「ふふ、今までネズミを探した事は、ないけどね。」
やっぱり索敵といえばハイエロファントだ。典明がいてくれて、良かった。典明が天井からハイエロファントの触手を伸ばしている間、私も異常がないか辺りを見回す。と…、ナランチャが何かミスタに向かって文句を垂れていて…、いや、文句を垂れているんじゃない!
「ナランチャ!!」
スタンド攻撃だ。ナランチャは既に、スタンド攻撃を受けていた。真っ黒だった髪の毛はみるみるうちに白色に変わり、肉が落ち、皮膚には皺が刻まれている。つまりは、老いているのだ。
「みんなは…、っ…初流乃!」
「なまえ、さん…。」
良かった、生きてる…!ナランチャと同じように初流乃も老人のようになってしまっているようだが、まだ息はあるし返事を返す余裕はある。見るとアバッキオやフーゴも同じ状態のようだが……私や典明はもちろん、ブチャラティ、ミスタ、そしてトリッシュは、変わらず若い体のままであった。
「なまえ。敵らしき人物は1人。今は食堂車にいるようだ。」
「食堂車…それって、何両目?」
「8両目だ。」
「敵のスタンド能力は分かる?」
「いや…。しかし、恐らくは遠距離型だろう。」
「そう。近くにはいないのね?」
「あぁ、問題ない。」
「じゃあ、私が行く。」
「待て。」
典明の言葉を聞きながら頭の中で作戦を組み立ていざ出ようとしたところで、ブチャラティの制止が入る。典明と私だけで決めてしまって申し訳ないが、敵のスタンド能力がどんなものか分からない以上、誰かが囮にならなければならない。私はブチャラティ達のスタンド能力は知らないし、囮として行くならば自分が向かうのが適切だと判断をしたのだが…。
「これは俺達の任務で、敵は俺達の敵だ。敵の人数を教えてくれた事はありがたいが、対処は俺達でする。」
「……えぇっと…それは、あなた達がギャングだから、筋を通すって事?」
「そうだ。」
「それなら、私はギャングじゃないから関係ないわね。私は、ただの初流乃の保護者、なんだから。」
私は、スタンド攻撃を受けた初流乃のために動く。
「お、おい!」
返事も聞かぬまま、シュン、と外へと出る。亀の体はちょうど座席の下にあったらしくゴン、と頭をぶつけたが、典明の言葉が正しいなら敵は近くにいないはずだと、安心して外へと這い出た。
「…なに…?この煙、みたいなの…。」
列車内を見回すと視界が悪く、まるで空気中に霞がかかっているようである。ガスか何かの類かと思ったが特に匂いはなく、これといった異変もない。十中八九スタンド攻撃の一種なのだろうが…もしかしたら、波紋の呼吸の使い手である私だから効かないのではないだろうか?
「みんな、歳を取ってるみたいね…。」
慎重に列車内を進んでいくと、どこを見ても老人ばかり。亀の中で見た光景も加味すると、この煙のようなものを吸うか触れるかすると老化が進む、という能力であるらしい。それは確か。しかし問題は、なぜ私や典明以外にも、歳を取らなかった人がいたのかだ。
「なまえ。初流乃が謎を突き止めたぞ。」
「!…典明。初流乃は、なんて?」
ハイエロファントの触手がスルスルと体を登ってきて、典明の声が聞こえてくる。それでスタンド能力の謎を突き止めたのが初流乃だと言うので、初流乃の頭の回転の速さに内心少し驚いた。
「体温だ。敵は目標であるトリッシュを殺さぬよう、女性と男性を体温の差で見分けているようだ。女性に比べて体温の上昇スピードが早い男性の方が先に老いていくんだ。」
「なるほどね。ありがと、典明。」
ふむ。私は、どうだろうか。波紋の呼吸のおかげで老化スピードは遅いが、逆に人よりも体温が高い。今は問題なくとも、例えば敵スタンドに近づけば近づくほどその老化スピードが増す仕組みであれば、敵の練度によっては不利になるかもしれない。いや、それでも。ブチャラティ達じゃなくて、やっぱり私が適任だった。
「!?なにっ、これ…!!」
突如視界の端に現れた、紐状の…糸のようなもの。急に視界に入ってきてピンと真っ直ぐに張り詰めたそれは、右へ左へ、上へ下へと縦横無尽に動き回っている。よく分からないが、これもスタンド能力のようだ。
「典明!スタンド使いは、本当に1人なの!?」
「そのはずだが…もしかしたら、ハイエロファントの探知に引っかからない何かしらの方法で、姿を隠しているのかもしれない。気をつけるんだ、なまえ!」
「えっ!?…ミスタ!」
典明からの注意に返事をしようとした瞬間、ヒュンヒュンッ、と弾丸のような物が横を通り過ぎて行った。弾の進行方向から察するに、先頭車両から飛んできた物。ブチャラティ達の中に拳銃使いでもいるのだろうかと考えたところで姿を見せたのは、ミスタであった。
糸の先に繋がっていたのは、ミスタ。彼は糸に引っ張られ引き摺られ、先頭車両からここまで一直線でやってきたらしい。文字通り、一直線に。どうやらミスタがこの糸のスタンド攻撃に引っかかった事で縦横無尽に動き回っていたらしい。
そんな事を冷静に考えているうちにミスタの体は私の横を通り過ぎ、進行方向の列車の扉に打ち付けられて、止まった。
「ちょっとミスタ…!どうして出てきたの?」
「クソ…!」
ドン、ドン、ドンと、続けざまに弾を3発。銃を扱うスタンド使いといえば咄嗟にホル・ホースが頭に思い浮かぶが、拳銃自体はホル・ホースのと違って実体のある実物のようだ。一体、どんなスタンド能力なのだろうか?
「ブチャラティが行けって命令したから、俺が来た。んで?先に飛び出したアンタは、何か策でも思い付いたか?」
ミスタがそう話している間に、スゥ、と糸は消えていく。本体に弾が当たったか、スタンド能力を解除しなければならない何かが、この向こうであったようだ。
「スタンド使いは、2人いるようね。私は老化のスタンド使いをやるから、ミスタには糸のスタンド使いをお願いしても?」
「アンタは近距離パワー型だろ?さっきの糸の先まで行けば、すぐに倒せるんじゃねぇのか?」
「ふふ…私の采配が間違ってるって言いたいの?大丈夫。こっちは私の方が有利よ。ミスタが糸の方をやる自信がないって言うのなら、変わってあげてもいいけど。」
「随分強気だなぁ?なまえさんよォ?」
さすがはギャングというべきか。私を舐めてるのかもしれないが、この返答を聞く限り血の気が多そうだ。