藤と金木犀
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「承太郎〜!先に行かないでよ〜!」
みょうじなまえ、高校1年生。
典明となまえは無事に承太郎と同じ高校へと入学し先日入学式を終え、今日からまた一緒に通える⋯と思っていたのだが、朝イチで空条邸へと行くと聖子さんから「もう行っちゃったわよ」と言われ、走って追いかけたのだ。
声を掛けても止まらない承太郎に、ムキになってタックルをかましたところでやっと承太郎の足が止まった。
なまえの勝ちである。
「ハァ⋯朝からやかましいぜ、なまえ。それと、重い。」
「えっ、ちょっとJOJO!?この子誰!?」
「⋯JOJO⋯?」
聞き覚えのない単語に、なまえは承太郎を見た。
周りにいる女子生徒達は承太郎を見てJOJOと言っているので、どうやら承太郎のあだ名か何からしい、と察したなまえは「ふーん⋯おはよう、JOJO」と承太郎をからかった。
案の定なまえを真上から見下ろし顔を顰める承太郎を見て、なまえはようやく満足そうにその大きな体から離れた。
「なまえ、さすがに今のは妬けるぞ。」
「典明。ごめん、承太郎を逃がさないようにと思って⋯。」
「ふぅん⋯僕にはあんな熱烈なハグ、してくれないのになぁ。」
「あ、あの勢いで行ったら、典明、転んじゃうよ!?」
なまえの言う通り、なまえは人よりも力が強く、その分筋肉があり、体重も重い。
本人の人権を考慮して具体的な数字は出さないが、60キロは超えているのだ。
その筋肉の塊が承太郎の足を止める程の勢いで突進してくるのだが⋯。
「大丈夫。君からの愛だと思えば、ハイエロファントを使ってでも受け止めるよ。」
「⋯⋯正気か花京院。怪我するぜ。」
「⋯否定はできないけど、むかつく!!」
「ね、ねぇJOJO⋯。この子達、JOJOの友達⋯?」
完全に置いていかれる女子生徒達は、説明を承太郎に求めるほかなかった。
しかし承太郎は嫌そうに顔を顰めるばかりで、口が動く事はない。
「僕らは承太郎の、幼馴染ですよ。先輩方。」
痺れを切らして口を開いたのは典明で、女子生徒達の視線が典明に向き「あら、意外といい男⋯」と1人が口にした事でなまえは慌てて典明の顔を隠した。
「や、やだ⋯!典明、私だけ見てて!他の人にその綺麗な顔見せないで!」
「!⋯なまえ⋯⋯こんなところでなんだが、キスしてもいいかい?」
「ハァ⋯花京院。そういうのは俺のいない所でやりな。俺はもう行くぜ。」
「あっ、待って承太郎⋯!!典明がかっこよすぎて⋯歩けなく⋯!!」
もう周囲にいる女子生徒達は、状況についていけずポカンと目の前で繰り広げられる茶番を眺める事しかできない。
顔を赤くしながら必死の形相のなまえに学ランを掴まれた承太郎が「⋯チッ」と舌打ちしつつもなまえを担ぎ上げ歩き出した事で、何とかこのちょっとした騒ぎは収束した。
登校初日にして典明となまえが有名人となった事は、言うまでもない。
「花京院くん、なまえちゃん、おはよ〜。」
「先輩方。おはようございます!」
数日後、なまえは女子生徒達と挨拶を交わす間柄へとなっていた。
何故そんな事になったのか。
それはなまえの持ち前の真っ直ぐさ、そして表裏のない性格と、非の打ち所のない整った顔のおかげである。
それになまえは、自分に優しくしてくれる人には意外と人懐っこいのだ。
「先輩、前髪切りましたか?かわいいですね」なんて、承太郎や典明と並んでも遜色ない美人にストレートに言われて、悪い気はしないだろう。
「本当、なまえちゃんかわいいわぁ〜。」
「はい。典明が、毎日かわいいって言ってくれるので。」
「はは、僕が言わなくても、君はずっとかわいいよ。」
「まぁ〜!朝からイチャイチャしちゃって!」
「⋯⋯やかましい。」
承太郎は今までとは違う騒がしさに、やれやれだぜ、と帽子に触れた。
とはいえ、これまでは自分が毎朝騒ぎの中心にいたのが、なまえへと変わったのは正直助かっていた。
なまえがそれを知ってか知らずかは、分からないが。
「じゃあ先輩方、また明日。」
「じゃあねーなまえちゃん。」
「JOJOも花京院くんも、また明日ね。」
もはや彼女達の目的は承太郎ではなく、すでになまえなのかもしれない。
「ごめん、遅くなっちゃった。」
「っ!⋯なまえ、その髪の毛⋯!」
「ふふ、かわいいでしょ。いつもの先輩達がやってくれたの。」
ある日の昼休み。
職員室からの帰り際いつもの先輩達数名に呼び止められ挨拶を交わしたなまえは「じゃあ、これから典明とお弁当なので⋯」と別れ際の挨拶をしたのだが「なまえちゃんに似合いそうなヘアアレンジがあるんだけど、させてくれない?5分で終わらせるから!」とお願いされ、5分ならいいかと思い弄ってもらってきたのだ。
「君、なんでも似合うんだな⋯。やり方は教わったのか?」
「や、時間なかったから、やってもらっただけ。」
「そうか⋯。じゃあ、僕が教えてもらうから誰にやってもらったか教えてくれ。」
典明は、髪型ひとつで変わったなまえの印象にひどく感心した。
なまえは今までアレンジなどした事はなく、普段は下ろされている髪の毛は癖ひとつなくとても美しいが、普段と違った複雑な髪型もよく似合っている。
もしかしたら、他にもなまえに似合う髪型があるかもしれないと、典明はなまえに色々なアレンジをしてみて欲しいと思った。
「えっ。や、やだ。雑誌に色々やり方載ってるって言ってたから、帰りに買ってそれ見てやろうよ。」
「⋯ふふ、分かった。承太郎も最初は手伝ってくれないか?君、器用だから。」
「ハァ⋯俺は興味ねぇんだがな⋯。」
そこで拒絶しないのが、承太郎の優しさである。
その日のうちに典明となまえはヘアスタイル、ヘアアレンジの載った雑誌を買い集め、翌日から朝早くなまえの家に集まってあれやこれやと色々試した。
慣れてくると典明1人でもできる事が分かり、数週間後には典明の日課のひとつとなっていた。
なまえがやった髪型が学校内で流行り、本人が意図しないところで流行を作り出していたのだが⋯典明となまえはお互いの事しか見えていないので、気づくわけがなかった。
承太郎だけが(全員同じ髪型で、誰が誰だか分からねぇ…)と違和感を感じたのだが、そんな事には興味がないのでやはり承太郎も、気が付かなかった。