5000打記念
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「……、え、誰…?」
今日は確か、土曜日。の朝。記憶が曖昧だが頭は痛いし吐き気も酷いし、完全な二日酔いだ。だから昨日の夜は、しこたまお酒を飲んだんだろう。それでまた、こんな事に。
いい加減いい歳なんだからちゃんとしなきゃと、最近はお酒と上手く付き合っていたつもりだったのに、またこうして誰かをお持ち帰りしているって事は、全然直っていないって事で。
しかし……この人、誰?
今までは一緒に飲みに行った相手ばかりだったが今回は違う。だって昨日一緒に飲みに行ったのは、仗助、億泰、康一くん、由花子ちゃん、それと途中で帰ったのが裕也で。全員が成人になったからと、お祝いの席だったはず。背格好こそ仗助や億泰と同じくらいだが……、あれ、ちょっと待って。
ムク、と体を起き上がらせて、ちょうど長い前髪で隠された顔を覗き込む。整った顔である事は間違いないが、まだ確証はない。恐る恐る前髪に手を伸ばしてソッと避けると、まぁ、あまり当たっていてほしくはなかった私の予想通り、仗助らしき人物の顔であった。
(私…、なんて事を…!)
お互い服を着ていないし、これは完全にクロです。
成人したとはいえつい数年前までは学ランを着て高校に通っていた子にまで手を出すなんて、私本当に、人として終わってる。
「……、…?…っ!」
あぁ、起きちゃった。目を覚まして状況を察した仗助が私の布団を引っ張って自分の体を隠すものだから、私だけ明るい部屋の中で1人、裸を晒しているんだけど。
「わぁ!すんませんっス!」
と言って今度は私に布団を巻き付ける仗助。別に、いいのに。あぁ、私はこんな純粋な子相手に、何をしてるんだろう。
「おはよう、仗助。…悪い大人に捕まっちゃ、駄目じゃない。」
「…それ、アンタが言うんスか?」
「そりゃ言うでしょ。仗助にはこういうのとは無縁の…ちゃんとした女の子と幸せになって欲しいもの。」
「……色々と言いたい事があるっスけど…一旦、服着ません?」
まぁ、それは確かに。
仗助からもらった布団を仗助に返して、床から先に仗助の服を拾ってベットの上へと投げていく。ベッドの上では仗助が布団で体を隠しながら服を着ていて、そういう、純粋なとこだよ、と心の中で付け加えた。
「シャワー浴びる?替えの下着は…確か新品のがどっかにあったはず…、…あった。」
「替えの下着って…元彼のスか?」
「……さぁ。」
そんなの、もう忘れたよ。
「で、聞きたい事には答えてくれるんスか?」
家にあったものでテキトーに作った朝食を前に、仗助がついに口を開いた。ウチで朝食まで食べた男は、仗助が初めてだよ。本当、変なの。
「別にいいよ。答えたくない事には答えないけど。」
一体今さら、何が気になるというのだろう。普通はこうなってしまった時点で既に、仗助は私に失望すると思うのだが。
「んじゃまず…、なまえさん、こういうのはよくある事なんスか?」
「…あるよ。飲みに行ってそういう雰囲気になったら、成り行きで。」
「成り行きって……、特定の誰かとは付き合わねーんスか?」
「付き合う?無理でしょ。男にだらしないんだから。第一、めんどくさい。セフレで充分。」
「セッ、……!!」
仗助には特大ダメージが入ったらしい。とうとう顔を両手で覆って、テーブルに肘をついた。やっぱり、仗助には理解できないだろう。
「昨日は、みんなが成人したのが嬉しくて、飲みすぎたみたい。ごめんね、仗助。過ぎた事はどうしようもないから、後学に生かしてちょうだい。もう悪い大人には捕まらないようにね。」
「ハァ…?アンタ、俺を捨てんのか?」
「捨てるもなにも、付き合ってないじゃない。」
「そうじゃなくて!…なまえさん昨日、寂しいって言って俺の事、離さなかったじゃあねぇか。離さないでくれって、泣いてたぜ。」
「…、……そう。」
心当たりがないわけじゃない。だけどそれとこれとは別問題で、……というか、そもそも仗助は何に対してこんなに腹を立てているのだろうか。
「仗助。仗助は、私をどうしたいの?私と仗助は、きっとこの話題では分かり合えないよ。」
「俺とは分かり合えないって、…じゃあ、誰となら分かり合えるっつーんスか?」
「はぁ…。そうね、露伴とか?」
「ハァっ!?ッ、まさかなまえさん、アイツとも寝たんスか!?」
「それは今、関係ある?」
「関係ねーよ!ねーっスけど…!」
やだなぁ、めんどくさい。昨日の私は、どうして仗助なんかと寝たんだろう。彼と私は違う世界で生きているって、分かりきっていたのに。現に今、どちらも折れる事はないんだから。
「俺っ…、アンタの事、好きなんスよ…。」
「…それは、残念だったね。」
「なぁなまえさん。なまえさん、寂しいのが嫌なんだろ?だからこんな事、してるんだろ?」
「………。」
「なら、俺がなまえさんの寂しさを埋めるから。だからなまえさん、俺にチャンスを下さい。」
「…なに、チャンスって。時間の無駄だよ。」
「それでも、何もしねーで終わるよりは、ずっといいっス。」
「……そう。好きにしたらいいよ。」
仗助とこれ以上話しても、きっと話は平行線だ。もう、早く帰ってほしい。こう言えば帰ってくれるかと同意の言葉を口にしたのだが、それを聞いた仗助がガッツポーズをして盛大に喜ぶので、早まったかもと後悔した。しかしなぜか「やっぱナシ」と訂正する気にはなれず、そのまま帰してしまった。
思い返してみればあの時、仗助を家に持ち帰った時から、私は無意識に仗助に助けて欲しかったのかもしれない。仗助なら、私を見捨てる事はせず助けてくれると、どこかで確信していたのかも。
仗助がこのチャンスをモノにするのは、まだまだ数ヶ月も先の話である。