1000打記念
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ご都合スタンド能力「対象を小さくする能力」
※リトル・フィートとは別物
※4部生存院
--------
「なまえ、無事か?スタンド使いを追跡中と聞いたが、君いま、どこにいるんだ?」
その言葉の通り、私は今、スタンド使いを1人で追跡中である。
電話の向こうで質問を投げかけてきているのは花京院さんであり、先程まで一緒にいた仗助が無事に花京院さんへと知らせてくれたのだと分かりとりあえずは安堵のため息が出た。
「今、ちょうど対象が目的地に着いたところで…今、位置情報送ります。花京院さん、すぐに来られますか?」
「ちょっと待って……あぁ、ここからなら10分もあれば行ける。僕が到着するまで、そこを動くなよ。」
「ありがとうございます。了解です。」
杜王町の端っこの山中。そこには今は使われていなさそうな廃墟があり、対象であるスタンド使いが1人で中へと入っていったのを先ほど確認した。
花京院さんがここへ来るまで、移動などしなければ良いのだが。
相手のスタンド使いの能力は既に分かっているが、今までずっと、捕らえる事ができずにいた。戦闘向きではない能力なのだが、放っておくと他のスタンド使い達と手を組んで悪事を働く可能性がある人物だったため、ここ数日、承太郎さんと花京院さんと調査を進めていたところだったのだ。それが偶然、町で見かける事になろうとは。
(……なんか、静かすぎない…?)
もうすぐ花京院さんが来るはずだが、違和感を感じて腰を少し浮かせたところで己の視認ミスが発覚した。
「いたいた。困りますよォ。ここまで着いてこられちゃァ。」
「ッ!」
まさか、もう既に仲間がいたなんて…!!
咄嗟に自身のスタンドを出そうとしたが、先にスタンドを出していたあちらのスピードに敵うはずもなく、抵抗する間もなくスタンド攻撃をモロに食らってしまった。
途端に、みるみるうちに低くなっていく自身の視界。そして、背を向けて逃げていく2人組。
今回は、完全に自分のミスである。
ここまで小さくなってしまっては、スタンドを出す事もできない。
遠ざかっていく車のエンジン音を聞きながら、反省をしつつ花京院さんの到着を待った。
「なまえ!どこにいる?返事をしてくれ!」
「!花京院さん!」
程なくしてやってきた花京院さんは何故か事態を把握しているようで、足元に注意をしながら大きな声で私を呼んだ。おまけに地面にハイエロファントの触手を這わせていたので、近くにあった触手の1本を捕まえて叩くと「いた!」という声と共に勢いよく引っ張り上げられた。
「!…君…!」
「花京院さん、すみません…。敵が既に仲間を見つけていたなんて…!」
「いや、奴らならさっき捕らえた。処理は承太郎に任せてきたんだ。そんな事より、君…!」
「…はい。敵の攻撃を食らって…。」
「かっ、可愛い…!!」
「か、かわ、……えぇ…?」
ハイエロファントの触手から、花京院さんの大きな手のひらの上にゆっくりと降ろされた体。足場が不安定で立っていられず、ペタ、と座り込むと、花京院さんの手が小刻みに震えているのが感じられた。
"可愛い"と言ったのか?いま。
一応いまは仕事中だと思うのだが…いや、対象を確保したのなら、仕事は一旦終わったのかもしれないが。
「花京院さん、対象は確保したんですよね?この能力を早く解いてもらいましょう。」
「あぁ…けどその前に、写真を撮ってもいいかな?あまりに可愛すぎるんだが。」
「……花京院さん、小さい生き物が好きなんでしたっけ?」
「いや、そんな事はない。君だからだ。はぁ…可愛い…。」
きっと花京院さんは疲れているのだ。指先で頭を撫でたり頬をムニムニしたり写真を撮ったりするのは、全て受け入れよう。たまには花京院さんも癒されたいだろうし、私がこうしているだけでそれが叶うというのなら、いくらでも。
「えっ!?3日はこのまま、ですか…!?」
いや…いくらでも、とは言ったけどさぁ…!
承太郎さんに捕らえられたスタンド使い本体に能力を解除するように頼みに行くと、3日間はそのまま過ごすしかないのだと絶望的な回答をされた。
花京院さんの目算によると私は今、15cm程しか背丈がないらしい。そんな状況では、とてもじゃないが仕事なんてできたものではない。
一部の望みにかけて仗助のクレイジーダイヤモンドも試してみたが、何も変わらなかった。
「なまえ…テメーが攻撃を食らってなきゃ…。」
「うっ…!す、すみません…!」
私が休むとなると、承太郎さんの仕事が増える。
申し訳なくて、即座に頭を下げたのだが…。
「承太郎、なまえが可哀想だろう。彼女だって食らいたくて食らったわけじゃあない。こうなってしまったからには仕方ないし、僕が面倒を見るよ。」
「あぁ?テメーじゃなくても良いだろうが。財団に預けろ。」
「それは断る。僕は彼女がいないと仕事にならないんだ。ましてやこんな姿になってるんだ。目の届くところに置いておかないと、心配で仕事が手につかないよ。」
「花京院、テメー…私情を挟みやがって…!」
「私情とはいえ、事実だが?」
私のせいで2人が静かに喧嘩をしている…!ああああなんだかとっても居た堪れない…!!
花京院さんの手のひらの上で小さくなって処遇の決定を待っているとやがて承太郎さんの舌打ちが聞こえて「仕事の量は減らさねぇぜ」と一言。どうやら、私は花京院さんのそばで3日間をこの姿で過ごすらしい。
「花京院さん、ご迷惑おかけしてすみません…。」
杜王グランドホテルの花京院さんの部屋。テーブルの上に降ろされた私は、何度目か分からない謝罪を口にした。
「いや…僕がもう少し早く到着できていれば…。それに、むしろ良かったよ。」
「…良かった…?」
良かったとは、どういう意味だろうか?花京院さんに迷惑をかけてしまっている今、良かったと思える事なんてないはずなのだが。
「君、ここに来てから働き詰めだっただろ?学生達も君に心を開いて、毎日のように呼び出されているじゃあないか。」
「花京院さんだって、毎日忙しくしてるじゃないですか。」
確かに学生達は私を窓口にしているかもしれないが、なにか大変な事が起こった時に指示を出したり後始末をするのは承太郎さんと花京院さんだ。
大体は暇だから遊ぼう、と声を掛けられる事が殆どで、仕事をしているかと言われると微妙なところだ。
「あの子達は今、不安なんだ。君がいる事で平静を保てるのなら、それは立派な仕事だよ。」
「……花京院さん、私に甘いですね。」
「はは、惚れた弱みってやつか?確かに、それはあるかもな。」
自惚れているわけではないが、普段から花京院さんは私に甘い。惚れた弱みと言われればそうなのだが、私が単身で戦う事を良しとせず、今回のようなケースは花京院さん、ないしは承太郎さんの合流を待つ事がルールとなっている。それも花京院さんが決めた事なのだが、私を庇ってくれる事も多く、なんだか申し訳ないような気持ちになる事もしばしば。
「それにしても、小さくなった君も本当に可愛いね…少し癒されようかな…。」
「花京院さん、今日はお休みの予定でしたもんね。駆けつけてくれて、ありがとうございます。すぐに来てくれて、嬉しかったです。」
椅子に腰掛けて視線を合わせるようにテーブルに伏せる花京院さんの顔が目の前に見えて、私の小ささがより際立った。
それにしても…花京院さん、こんなに近くで見ても顔がいいのが分かるなんて驚きである。
「君が可愛らしい姿になっただけで、良かったよ。万が一怪我でもしていたら、正気じゃ居られなかっただろうな。」
ツンツンと私の頬をつつく花京院さんの指をぎゅ、と抱きしめると、花京院さんは柔らかく笑って目を細めた。この花京院さんの笑い方が、大好きだ。