4部 エジプトから入院・退院まで
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「みょうじさん。少し宜しいですか?」
朝食後に部屋で典明とおしゃべりしていると、SPW財団の方が部屋へやってきた。滅多な事がなければ部屋への訪問はしない事になっているので一瞬身構えたが、部屋を出てから「空条さんからお電話です。」と言うので小走りで歩を進めた。病院内なので怒られるかと思ったが、「我々しかいないので、構いませんよ。」と優しいお言葉を頂いたので遠慮なく電話口へと急いだ。
「承太郎!」
「おぅ。なまえか。」
承太郎の声を聞くのは久しぶりだ。少し、どころかとても嬉しい!
「今日、とある敵と遭遇したんだが…先に一度花京院の所に行ったと聞いてな。2人共無事か?」
そう言う承太郎の言葉に、1人思い当たる人物を思い浮かべた。
「来た!何もな…くはなかったけど、問題ないよ。逃げられたんだ。」
あと、その敵のせいで病院を破壊したのだが…これは黙っておいた。
「そうか。そいつはポルナレフが倒したぜ。安心しな。」
それを聞いて安心した。また奴がやってきたら、面倒な事になっていただろう。電話の奥では、ポルナレフの「俺の話かぁ〜?」という声が聞こえている。
「ふふ、ポルナレフも元気そうだね。みんな怪我はない?早く会いたいな。」
「多少の怪我ならなんとかなる。…テメーも、花京院も、無事でよかった。」
…何も言っていないが、私の態度に出ていただろうか?典明も承太郎も、私の事をよく分かっているから、なぜかいつも筒抜けなのである。
「承太郎〜〜!なんかとっても、承太郎に会いたい〜〜!」
なんだか唐突に、承太郎に会いたくなった。声を聞いたからだろうか。ホームシック、的な?
「ハッ。そりゃ花京院に頼むんだな。早く怪我治せってな。」
「おい承太郎〜俺にも代わってくれよ!」
承太郎とまだ話しているのに、ポルナレフが割り込んでくる。承太郎と、もっと話したかったのに!
「おぅ、なまえかぁ?花京院と仲良くやってるか〜?」
「ポルナレフ。典明とは最初からずーっと、これからもずーっと、仲良しですけど〜?」
承太郎ともね!と内心付け足しておいた。けど、こういうやり取りも、なんだか懐かしくて楽しいかもな。
「そういやテンメイ、って何?」
「ふふふ…ナイショ!私と典明だけの内緒!」
そう言うとポルナレフはなんだよ〜!と悔しがった。ポルナレフはいつも素直で、からかい甲斐がある。
「で、お前らついにヤッた訳?イデッ!」
サイテーな一言が聞こえてきた直後に、悲鳴が上がった。恐らく承太郎が1発殴ってくれたのだろう。
「ポルナレフ…アンタ本当に、デリカシーってもんがないよね…。殺すぞ。」
「ポルナレフは俺が殴っておいたぜ。」
さすが承太郎。私の事分かってる〜!
「承太郎、まだ話せる?典明もみんなと話したいと思う。」
そう聞くと、承太郎は今日は休息の日だと言うので、私はSPW財団の人に典明を呼んできてもらうように頼んだ。
「承太郎、本当に会いたい。ホームシック。」
「テメーは犬か。」
「えーそうかなぁ?承太郎!承太郎〜!って感じ?」
しばらく承太郎との会話を楽しんでいると、突然背中に温もりを感じて、同時に腰に腕が回された。
「承太郎承太郎って、妬けるなぁ。」
「典明!」
スルスルとハイエロファントが私と典明の体を繋げて、体が重なった。典明の顔も、私のすぐ横にあって頬がくっついている。
「花京院か?」
受話器から承太郎の声が聞こえてくるが、これでは聞こえないだろうと典明に受話器を渡すと、典明は私の頬にチュ、とキスをしてから受話器を掴み話し出した。
な、なんか、スキンシップのレベルが上がっている気がする…!!私が顔を真っ赤にしているのもお構いなしに、典明は承太郎との会話を楽しんでいる。楽しいのはいい事だが…こんなにピッタリくっつく必要、ある?
「そう。ポルナレフは?…ふぅん…。」
チラ、と典明がこちらに視線を送る仕草をする。一体、なんの話しをしているのか。承太郎の事だから、ポルナレフのセリフまでは言っていないと思うが…。
「ポルナレフに、お大事に、と伝えておいてくれ。それと、僕達の事は放っておいてくれとも。」
いや、これ承太郎言っちゃってない?いや、典明は頭がいいから、もしかしてポルナレフがなんと言って承太郎に殴られたのか分かっちゃったのでは!?どっちにしろ、バレてないか?
「うん、ありがとう。もうすぐ、合流できるといいんだけど。」
スリ、と典明が、私の頭に頬を擦り寄せる。猫みたいでかわいい。左手を後ろへ伸ばして頭を撫でると、余計に擦り寄ってきた。かわいい。
「うん、じゃあまたあとで。ジョースターさん達にもよろしく。なまえに代わるかい?」
会話が終わりそうな気配に、私は典明を見る。
「はは。分かった。じゃあ。」
受話器を私に返してきたので耳に当てるが、聞こえるのは電子音のみだった。
「えっ承太郎!?酷い!」
いらねェ、と言う承太郎が安易に想像できるが、本当に切るだろうか!?典明は声を出さずに笑っているようで、体が震えている。典明も酷い…!
とりあえず受話器を置き、典明に向き直った。
「典明、笑いすぎ。」
「はは、ごめん。承太郎が、あまりに君に冷たかったから。」
確かに、典明が最後の挨拶をしてからそんなに間はなかったはずだが…典明の挨拶を聞いてすぐに受話器を置いたな、承太郎!かわいいなまえちゃんが悲しい思いをしてもいいのか!
「さ、戻ろうか。」
一頻り笑って満足したのか、典明はハイエロファントを解いて体を離した。そういえば、ずっとこの体制だったな…。
「ねぇ典明。私が承太郎と仲良くするの、嫌?」
2人で歩き出しながら、ずっと、気になっていた事を聞いてみる。
今まで典明の方から指摘されたことはないが、先程の「妬けるなぁ」という言葉。もしも嫌だと言うなら承太郎との付き合い方を考えようと思ったのだ。
しかし典明は全く気にしていないというような態度で
「君と承太郎?君ら兄妹のようなものなんだろ?そもそも、僕が嫌かどうかなんて、関係あるかい?」と不思議そうに聞いてきたので面食らってしまった。
「そうだけど…実際の兄妹じゃないし、歳も近いし、距離感も近いから。」
「…近いって、自覚はあるんだね。」
意外そうな声で、小さく言ったのを確かに聞いた。
「正直承太郎相手に、ヤキモチを妬くことはなくはないけど、それは仕方のない事だと思ってるよ。過ごしてきた年月が違うからね。それに…」
一度言葉を切った典明は、ハイエロファントを絡ませてきて、
「僕は君と、承太郎と、3人でいるのが一番好きなんだ。僕と話す君と、承太郎と話す君、どっちの君も、かわいいんだ。とてもね。」
と一番欲しかった言葉をくれた。いや、この人ならそう言ってくれると、私は感じていた。
もし、自分と付き合うなら承太郎とは縁を切ってくれなんて言われたら冷めていたかもしれない。
典明が、そんな事言う訳は微塵もないのだが。
私はしみじみと、この人を好きになってよかったと実感した。
「はーーー…。私の王子様、最高……。」
「ふふ、今頃気づいた?」
いや、最初から気づいてたけど?いざ、言葉で伝えてもらえて、安心したと同時に彼に惚れ直したのだ。
この人は、私を何度でも恋に落としてくる。
「本当、典明はいつもいつも私をドキドキさせる……かっこよすぎる……。」
「なまえ。キス、する?」
気づくと病室のドアまで戻ってきていた。
彼はドアにトン、と手を置いて、優しい笑顔でこちらを見ている。
「…する…。」
人がいない廊下で、こっそり、静かに、私達は口付けを交わした。
本当に、彼は私をドキドキさせるのが上手い。もうこれ以上好きになる事なんてできないと思うのに、いつも軽々と超えていくのだ。好き。好き。愛してる。
溢れ出る感情をキスに替えて、何度も何度も、典明に送ったのだった。