4部 エジプトから入院・退院まで
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気がついたら車は停車していて、みな車から降りてヘリコプターを見上げている。SPW財団のヘリコプターだ。
私達も慌てて、荷台から降りてみんなの元へ駆け寄ると「よォ。イチャイチャタイムは終わったかよ。」とポルナレフが毒づいた。ポルナレフも顔を怪我しているようだ。
「あ、あの。皆さん、怪我させてしまって…ごめんなさい。」
と頭を下げて謝罪をすると「その謝罪はDIOのヤローにさせるからいらねえよ。」と承太郎に顎を掴まれ無理やり上を向かされた。
「痛い痛い!痛いってば!!!」
身長差を考慮しないそれに、承太郎の腕に掴まりつま先立ちになって抗議しているとヘリコプターが着陸するところだったらしく突風が吹いた。
「ありがとう…みんな。」
ところで、このヘリコプターはなんだろうか?
まさか、このヘリコプターで移動するという訳ではないだろう。というか、嫌だ。
プロペラの回転が次第に減速し、やがて止まる。
ガチャ、という音を立てて、ヘリコプターの中の人が顔を覗かせた。
「で、どっちの男だ。スタンド使いは。」
承太郎がヘリコプターから降りてきた2人に近づいて聞いた。スタンド使い?が来るのか?味方…助っ人的な…?
事情が分からず成り行きを見守っていると、助っ人は後ろに乗っているらしく、ドアを開かれるも…その姿は確認できない。
ポルナレフが座席を叩いたり騒いだりしていたら、なにか黒い影が飛び出しポルナレフに引っ付いた。
あ。あれは…。「ワンちゃん!」小さくてかわいいが、ポルナレフに牙をむいて吠えているのはちょっと怖い。
ポルナレフは毛を毟られた上に屁をされてキレ散らかし、スタンドを出した。味方になる人(犬)相手になぜ喧嘩を売るのか理解できない。そんなだからいつも怪我しているのではないか?
……風もないのに、砂が…。先程の犬、イギーの頭上に砂が集まり、渦巻いている。そして徐々に砂が集まって固まり、スタンドが出現した。
「わ、すごい!」
意外と大きなスタンドに感心して見上げていたら花京院くんに「なまえさん。すごいけど、危ないかもしれないから下がっていようか。」と子供に言うように諭された。言う通りに下がると「いい子だね。」と頭を撫でられて、やっぱり子供を見ているような顔をして楽しんでいる。
イギーにやられたポルナレフは再び地面に戻り、また、髪の毛を毟られている。噛みつかれたりしているようにも、見えなくはない。
「ワンちゃん……イギー。」
名前を呼んで、そばに腰を下ろして座った。とても警戒心が強いようで、歯茎をむき出しにして唸っている。まるで犬というよりも猫みたいだ。
「なまえさん!その犬、小さいが獰猛だから気をつけて!」
花京院くんやみんなが心配してくれているが、きっと大丈夫だ。無理やりこのヘリコプターに乗せられ、長時間揺られて移動してきて、挙句の果てにポルナレフに小馬鹿にされたのだ。ようはこの子を怒らせさえしなければいい。
「イギー。私、なまえっていうの。あなたと仲良くなりたいんだけど。」
そう言ってゆっくりと手を差し出すと、警戒しながらも少し近づいてきた。
みんなが飛び出そうとするのを手で制す。きっと、私が噛みつかれると心配したのだろう。
そのまま手を動かさずにじっとしていると、ウロウロと手の周りを動き回りながら、チラチラとこちらの様子を伺っている。私は笑顔で待つ。まだだ。まだ。
「イギー、大丈夫だよ。多少噛み付いても、私、怒らないから。」
先程のポルナレフの悲劇を見てしまったあとだから、多少、で済むか少し不安だが。それを顔に出さないように、笑顔で接し続けた。
どれくらいそうしていただろうか。何度目かのクンクンのあと、僅かだが鼻で私の手を押した。
やった!第一段階クリアだ!
「ありがとう、イギー。触ってもいい?」
驚かせないようにゆっくりと手のひらを上に向けてイギーの顔に近づける。避けはしないので触っても良さそうだ。ヨシヨシと何度か撫でると、数秒で離れてしまった。どうやら、人に触られるのはあまり好きではないらしい。
「ありがとね、イギー。よろしく。」
最後に頭をひと撫でして立ち上がる。とりあえずは警戒心を解くことに成功した。私だけだが。花京院くんであれば、すぐに仲良くなれそうだ。
「すごいね、なまえさん。」
「花京院くん。ちょっと時間かかっちゃったけどね。」
それでもすごい、と花京院くんは褒めてくれた。ラクダの時もそうだが、動物の警戒心を解くのは案外簡単だ。そしてラクダの時や今回が特殊なだけで特に役に立つ事もないので、褒められる事でもないのだが…。まぁ、ラクダの時も今回も、役には立ったので結果オーライかな。
SPW財団から旅に必要な物資を運び込んでいる間、イギーは好物のコーヒーガムを食べたり、ポルナレフを追いかけ回したり楽しそうにしていた。荷物を運びながらそれを微笑ましく眺めているとジョセフさんが「おーい、みんな!」と声をかける。手には久しぶりに見たポラロイドカメラ。みんなで写真を撮ろうという。
カシャ
撮られた写真はジー、と音を立てて出てくる。以前ポラロイドカメラで念写した時に出てきたのはDIOの写真で、あの時は気分が悪くなったんだったな…とぼんやり思い出す。あれから1ヶ月とちょっとしか経っていないのに、随分と昔の事のようだ。
段々と鮮明になってくる写真。いい写真だ。この旅が無事に終わったら、額縁に入れて部屋に飾ろう。
何色の額縁にしようか考えながら、丁寧に手帳に挟み、ポケットにしまいこんだ。そうだ。もし、フィルムに余裕があるなら……。
「ジョセフさん。もし良かったら、なんですけど。」
ダメ元でジョセフさんへ頼むと、意外にもすんなりOKが出たので私は花京院くんを呼ぶ。
「どうしました?」とやってきた花京院くんに軽く説明をすると「いいですよ。僕にも下さいね。」と彼も快諾してくれた。
「ほれほれ、撮るぞ〜!」
私は、花京院くんと2人の写真が欲しいとお願いした。2人には言わなかったが、これからDIOと戦うにあたって、どちらかが命を落とさない保障はどこにもないのだ。だから、証拠となるものが欲しかった。私がいて、花京院くんがいて、私達は互いを想いあっていた。愛し合っていたと証明できる物が。
「2人とも遠いのォ。いつもみたいにくっつけば良いじゃろう!」
ジョセフさんが焦れったそうにそう言うので「こうですか?」と花京院くんに抱き着いて彼を見上げると「それじゃそれじゃ!」とジョセフさんは喜んだ。まるでプロのカメラマンがモデルたちに指示を出しているようで、少しおかしい。
「なまえさん…君、最近少し…いや、とても、大胆だね。」
花京院くんは困ったように笑い、ため息をついた。
「こんな私は嫌?」
嫌じゃないだろう?と笑うと、花京院くんは私の背中へ腕を回し「いや、大歓迎だ。」と笑顔を見せた。
「きゃーー!ジョセフさん、ありがとうございます!」
これはいい写真が撮れた。元から顔が良い花京院くんはもちろん、自分自身もかわいく撮れているように思えた。花京院くんといる時の私、こんな顔してるんだ…となんだか不思議な気持ちになっていると「なまえさんといる時の僕って、こんな顔…?」と花京院くんも私と同じ事を考えていたので笑った。
ついでに、写真の出来栄えを見に来た承太郎との3ショットも1枚撮ってもらい、私の宝物は3枚になったのであった。