4部 エジプトから入院・退院まで
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「う……また、こうなるのね…。」
乗り物に乗るといつもこうだ。花京院くんが庇ってくれたが、それでも衝撃はとてつもないものだった。
どんどん水が入ってきている。早く、脱出しなければ…。
承太郎が先程の計器を壊そうとスタープラチナを出すが、「承太郎違う!花京院の後ろだ!」というアブドゥルさんの声に振り向くと、既に花京院くん目掛けて飛び出している所だった。
「花京院くん!!」
花京院くんの体をスタンドから離そうと腕を伸ばし、床に倒すと同時に、花京院くんがハイエロファントで攻撃しようとしたが当たらない。動きが速すぎる!
ドアの方に寄れとアブドゥルさんが指示するが、スタンドは既に、どこに移動したか全く分からない。
花京院くんを起こし、辺りを警戒していると、アブドゥルさんの「何ィーー!?」という声が響く。今度はドアの取っ手に化けていたようだ。スタープラチナがスタンドを捉えるも、剃刀に化けてスタープラチナから逃れてしまった。
今のうちにドアを…!力いっぱい取っ手を回し、ドアを開けた。ポルナレフから落ちた衝撃で、ジョセフさんは目を覚ましたようだ。
「早く、奥の部屋へ!」
良かった、こっちには、まだ水はないし、酸素がある!
少しの間は、猶予があるようだ。
先にドアの向こうへ行き、走り出す。どこへ行けばいいか分からないが、とりあえず、船尾の方へ!
足を動かしていると、ジョセフさんが追いついてきた。このまま、船尾まで走っていっていいらしい。
早くしないとこの潜水艦は浸水する。その恐怖を間近に感じながら、私は走った。
「え、ダイビングですか…?」
泳げないのでやったことがない。花京院くんを見ると、彼は経験者らしく、少し安心した。泳ぎになると、彼に頼りっぱなしになるのでいつも申し訳ない。
「さぁ、これを着けて。」
こんな装備着けたこともないので、花京院くんに全部任せて、されるがままだ。
「花京院、ワシのも手伝ってくれんか?」
先程承太郎に「自分でやれ。」と冷たくあしらわれたジョセフさんが今度は花京院くんにお願いするが「自分でやってください。僕はなまえさんで手一杯です。」とキッパリ断っていた。花京院くんの、意外とクールなとこも好きだ。だが、断る理由に使われると、私もなんだか申し訳ない…!
「さぁ、なまえさん。なにか不安はある?」
装備の点検をしながら、花京院くんが優しく聞いてくれる。
「これ重いけど、ちゃんと浮けるの?」
「大丈夫。もし浮けなくても、絶対に僕が海面まで連れていくよ。ハイエロファントもつけておこうか。」
「じゃあ、これは?これがあれば苦しくない?」
「大丈夫だよ。これで鼻を塞ぐ。こっちで口呼吸をするんだ。ゆっくり呼吸をすれば絶対大丈夫。」
花京院くんはこういう時、絶対に目を逸らさない。
笑顔も崩さない。そして、「大丈夫」と「絶対」という言葉を使うが、彼の「大丈夫」と「絶対」という言葉は、気休めではなく、絶対に大丈夫だと確信できてしまうのだ。花京院くんはすごい。本当に。私の扱いを、本当によくわかっている。
「他に不安な事は?」
「あとは…抱きしめてくれたら大丈夫。」
結局、これが一番安心できるかもしれない。
私は花京院くんが腕を広げるより前に、ぽす、と彼に寄りかかった。花京院くんの腕が背中に回ると同時に、「ふ…こんな時まで、本当にかわいいな…。」と耳元で聞こえた。
「こんな時にイチャついてんじゃねーー!!」とポルナレフの怒号を聞き流し、花京院くんは静かに体を離し、頭にひとつ、キスを落とした。
「俺がいない間に、随分進展したんだな…。おめでとう…。」
聞こえたアブドゥルさんの声は、祝福の他に、僅かに呆れが混じっていた。
ジャバジャバと水が入ってくるのをBGMに、ジョセフさんのダイビング講座を聞く。慌てない。絶対に慌てない。そしてゆっくりと、段階的に上昇していく…。うん、それなら、意識すればなんとかなりそうだ。
「パン・ツー・まる・みえ。」ピシガシグッグッ。
花京院くんにしては珍しくポルナレフと意見が合ったようだ。
待って、私、今までパンツ…というか今まで、もしかしてスカートの中見えてないよね…!?と自分のスカートの心配をしたが、まぁ中に履いてるしいいか。とすぐに考えを追いやった。ジョセフさんの言う通り、この状況でそんな話をしている暇はないのだ!まったく!
「間もなく部屋が水で充満する。マスクとレギュレーターを装着するんじゃ。」
先程までとは違い、もう本当に、ふざけている暇はない。いよいよ潜水艦を捨て、脱出しなければならない。あっという間に頭まで、部屋が水が満たされ、思わず目を瞑る。
「なまえさん。大丈夫、目を開けて。」
スタンド越しの花京院くんの声に目をゆっくりと開けると、花京院くんと目が合った。いつもよりも顔が見えづらいが、目元が微笑んでいるのが分かった。花京院くんに肩を抱かれ、ゆっくり進んでいくと、ポルナレフが水中で暴れているのが分かり、みな泳ぐのをやめて振り返った。
ハイプリエステスが既にレギュレーターに化けていたようで、そのままポルナレフの口の中に入り込んでいく。ここならまだ届く!私は手を伸ばして、ポルナレフの体内のハイプリエステスを掴んで取り出した。
「なにか他のものに化けるぞ!」
「なまえさん!すぐに手を離すんだ!」
パッと手を離し、ハイエロファントでポルナレフごとみんなの元へ引き寄せられる。
奴は、水中銃に化けてこちらへ攻撃してきている。
ハイエロファントとチャリオッツが隙を作ってくれた間に距離をとり、なんとか水中銃の射程外まで逃げてこられたようだ。奴はまだ着いてきていないようで、そのまま順調に進んでいき、ついに私達は、海底トンネルまでたどり着いた。