4部 エジプトから入院・退院まで
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いよいよエジプトか⋯この先に、DIOが⋯。
そう考えるだけで、手に力が入る。落ち着かない。
最近、顔が見たくなくてDIOの夢を全く見ていない。様子見として昼寝しようか、と一瞬思ったが、やっぱりわざわざ奴の顔を見るのは時間の無駄だと、頭から打ち消した。
「なまえさん。」
花京院くんの声に顔を上げると、彼が手招きしていた。なんだろう、と近寄ると、小窓から海の中の様子が見えた。綺麗だ。これを見せたかったのか。
「あの魚、綺麗。」「どれ?」と2人で魚を眺めていると「あれはナンヨウハギだ。日本でも見られるぞ。」と承太郎も加わってきて、なぜか小さい小窓を3人で覗き込んでいる。
「なんだ。学生はみんな仲良しだな。」
とアブドゥルさんが後ろからやってきて一緒に外を見ようとするが、さすがに4人は無理だろう。
「アブドゥルさん、狭いです。」と思わず笑ってしまった。
ジョセフさんは先程から奥様のスージーさんへ電話をかけていて席を外している。
潜水艦なんて初めて乗ったし、ジョセフさんの指示がなくて今、手持ち無沙汰なのだ。飲み物でも入れようか、と考えて歩き出すと、花京院くんと行き先が被った。考えていることは同じという事か。思わず2人で目を合わせて笑いあった。
ジョセフさんの電話の相手はいつの間にか変わっていたようで、聖子さんの名前が聞こえてきたので、思わずそちらを見る。ジョセフさんの表情を見るに、あまり思わしくない状況のようだ。だが、生きてさえいてくれれば…私達が、DIOを倒すまで…!ぎゅ、と胸ポケットの中のピアスを握ると、花京院くんが肩に手を置いた。花京院くんの顔も、真剣なものに変わっていた。
いよいよエジプトなのだ。本当に、気を引き締めなくては。
艦内は明るいが時刻は夜の時間ということで、私は眠るようにと花京院くんからのお達しが出た。といっても、寝室なんてないので椅子に腰掛けてテーブルに突っ伏して寝るしかないのだが。
だが寝る体勢に入ると、疲れた体はすぐに微睡みに飲まれていく。「おやすみ、なまえさん。」花京院くんの声が聞こえて、頭になにかかけられたのが最後の記憶。花京院くんの学ランだろうか。彼の匂いがして心地いい…。
次に目を開けた時には、部屋にはコーヒーの香りが漂っていて、アブドゥルさんの「アフリカ大陸が見えたぞ!」という声が聞こえた。ついに…エジプトが目前に…。まだ眠り足りないが、上陸も近いだろうと、頭にかけられた学ランから顔を出した。眩しい…。
体制はそのままに、薄らと目を開けて起きた事をアピールすると「起きてしまったか。もう少し眠る?」と花京院くんが顔を覗き込んできた。寝起きで花京院くんの笑顔が見られるなんて…幸せか…。
「ふふ、…ううん。起きるよ…。」
そうは言っても、完全に覚醒してない頭は起き上がる事を拒否しているようだ。体がテーブルにくっついて離れない。
「なまえさんもコーヒー飲むかい?」
コト、と目の前に置かれたコーヒーの匂いをしばし嗅いでいると、少しづつだか頭がクリアになってきた。
のそ、と起き上がり、静かに花京院くんの入れたコーヒーをちびちび飲んでいると、次第に体も起きてきた。
「うーーん……起きたぁ。」
伸びをすると同時に、小さく欠伸が漏れる。やべ、花京院くんに見られたかも。と心配になり横目で彼を見ると、優しく微笑んでいる。あの顔は、見られたな…。恥ずかしい。
テーブルを見ると、全員分のコーヒーが置かれていて、みんなまだ飲んでいない事に気づいた。しまった。私だけ先に飲んでしまった…!と慌ててみんなを見ると、なんだか微笑ましいものを見るような目で見られていた。う…恥ずかしい…!
「?花京院、なぜカップを7つ出す。6人だぞ。」
承太郎の声に改めてカップを見ると、確かに7つある。花京院くんは「うっかりしていた。」と言っているが、そんな事あるだろうか?ジョセフさんがひとつを手に取って口元へ運ぶと「何ィーーー!!?」と声を上げた。何が起こったのかよく分からなかったが、カップが変形して暴れたのは分かった。義手が破壊されている!
花京院くんは咄嗟に私を椅子から立たせ、後ろへ下げた。ついでに、私にかかっていた自身の学ランも着ている。早い。無駄がない。
ジョセフさんは攻撃を受け、倒れてしまった。コーヒーも全て、床へ溢れてしまっている。一体いつの間に、潜水艦の中に…!スタンドの行方を探すが、計器に化けたらしく見分けがつかない。
花京院くんがジョセフさんを担ぐのを見て、私もジョセフさんの反対側を肩に担いだ。とりあえずは、身の安全の確保だ。
そう思っていたのだが、小窓がひとつ外れ、艦内にエマージェンシーコールが響き始めた。
「えっ嘘っ。」
思わず花京院くんを見ると、彼もこちらを見ている。これはマズイ。マズすぎる…!
「ポルナレフ!ジョースターさんを頼む!なまえさんは泳げないんだ!」
咄嗟に花京院くんがポルナレフを呼び、ジョセフさんを担ぐのを変わってもらった。
アブドゥルさんが「みんな捕まれ!海底にぶつかる!」そう言った直後、潜水艦は海底へと衝突した。