3部 インドからエジプト上陸まで
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この旅がスタートしてからもう1ヶ月経った。飛行機なら数時間で到着できた筈が、たくさんの刺客の邪魔が入ってこんなにも時間がかかってしまった。
だが、ようやく⋯エジプトまであと一歩という所まで来た。これから海を渡り、ようやくエジプト上陸だ。
と、思っていたのだが⋯エジプトへ行く前に、会わなくてはならない人がいると、寄り道をする事になった。ジョセフさんがそう言うのだ。よっぽど大事なのだろうと思っていると、現れたのはなんと、アブドゥルさんだった。思わず声をかけそうになるが、ポルナレフはまだ知らないのではないか⋯?ジョセフさんへ視線を移すと、「アブドゥルの父親じゃ。」と紹介した。お、お父さん⋯無理があるんじゃないかと思ったが、ポルナレフはまんまと信じてどこかへ行ってしまった。素直か。
「アブドゥルさん!よくぞご無事で!」
私達は久しぶりの再会に、会話に花を咲かせた。ポルナレフには悪いが、彼がいるとゆっくり話ができないのではと思ったのだ。しかし、一体休んでいる間に何があったのか、アブドゥルさんの性格はちょっと変わってしまっていた。なんだか、以前に比べると楽しそうである。楽しそうだからいいか。
中々戻ってこないポルナレフを心配し、アブドゥルさんが森の中へ向かった。結局このパターンか。
私は手の中にあるコップを見つめ、思い出したかのようにジョセフさんを呼んだ。
「そうだ、ジョセフさん。見てください!」
ぐい、とコップを逆さにし、ジョセフさんに見せる。水はコップに張り付き、溢れない。地道に練習をしていたら、ついに先日、できるようになったのだ!
「おぉ!こりゃ凄い!センスの塊じゃな!」
ジョセフさんは手放しで喜んでくれるから、褒められると嬉しいのだ。練習も頑張れる。
次はこれに指を入れ、ゼリーのように持ち上げるというが、既に1、2秒程度ならできそうである。
これと同時進行で、ついにいくつかある技を教えてもらうが、繊細なものはまだ難しそうだ。
よく見る波紋疾走はすぐにでもできそうだが、治癒の波紋はまだ微弱にしか流せない。
これは、DIOとの対峙に間に合うかどうか⋯と焦りが出てくる。か、ジョセフさんは優しく
「波紋は補助的なものじゃ。なくとも充分、お前さんは強いよ。」と頭を撫でてくれた。そうか、波紋はジョセフさんが若かりし頃に使用していたもので、今はスタンドでの戦闘が主だ。使える時に使えたらいいな、ぐらいに構えていて損は無いのだ。もちろん、ちゃんと修行はするが。
そういえば、ジョセフさんは油の噴き出す塔を身一つで登ったと、以前聞いた。
という事は、普通の壁ぐらいなら登れるのでは?と思ったら登れた。なんだ、私こんな事できるのか。
色々波紋を試していると、気がつくと日が落ちている。アブドゥルさん、さすがに遅いな⋯と外に出て屋根の上から遠くを見ていると、草が揺れ、隙間からアブドゥルさんとポルナレフが出てきた。
「なまえさん、危ないから降りておいで。」
花京院くんが下からそう言うので覗き込むと、両手をこちらに伸ばしている。飛び降りてこい、という事なのか?いや、それはさすがに⋯。
「花京院、正気か?腕が折れちまうぜ。」
通りがかった承太郎が、私が思っていたことを口にする。承太郎に言われると、なーんか腹立つな。
「じゃあ承太郎!花京院くんごと受け止めて!」
言うが早いか、言葉通りに屋根から飛び降りた。
「うッ⋯!テメェ⋯。」
一応、足が先に着くように着地したが⋯勢いを殺しきれずに突っ込んでしまい、さすがの承太郎も地に倒れてしまった。
「あっはははっ!承太郎、花京院くん、大丈夫?」
一番下の承太郎も、間に挟まれた花京院くんも、中々の衝撃だったに違いない。それでも、なんだか楽しくて、笑わずにはいられなかった。
「はは!承太郎、もっと踏ん張ってくれたら倒れずに済んだのに。」
手を引っ張って立ち上がらせた花京院くんも、楽しそうに笑っている。良かった、怪我していなくて。
「笑ってんじゃあねえぜ。俺を巻き込みやがって。2人で俺を起こしな。」
まさか怪我をした訳ではあるまい。よく見ると承太郎も少し楽しそうな顔をしていて、珍しく乗ってくれているようだ。
花京院くんと目を合わせて差し出された承太郎の腕を掴んで引っ張るも、立ち上がる気がない彼はめちゃくちゃ重くて、また笑ってしまった。
「おーおー、楽しそうじゃのぉ。」
ジョセフさんが楽しそうな声を聞きつけてやってきたところで、アブドゥルさんとポルナレフが戻ってきた。やっとネタバラシをしたらしく、ポルナレフは泣いて喜んでいる。良かった良かった。これで、元のメンバーに戻った。私も、みんなも、強くなっている。
一時的にメンバーが減ったが、ちゃんと戻ってきた。
誰1人欠けることなく、ここまで来た。
もう、エジプトは目の前だ。
「いよいよですね。」
この海の向こうに、私達の目的地、エジプトがある。そこに、DIOがいる。感慨深くみんなで海を見ていると、辺りが揺れだした。海が揺れているようだと見ていると、見たこともないような大きさの潜水艦が、海底から現れた。どうやら、アブドゥルさんが任されていた仕事とはこの事らしい。
「行こう、なまえさん。」
花京院くんはいつものように、左手を差し出してきた。私はそれを、右手でぎゅ、と握った。この手をもう、離したくない。いなくなってほしくない。
潜水艦は海に浮かんでいるため、乗ろうとすると結構揺れる。
私は振り返り、承太郎へ空いている左手を伸ばした。
掴んでくれるだろうかと心配したが、意外にも掴んでくれて嬉しくなった。承太郎のこの手だって、離したくない。花京院くんの事も承太郎の事も、私は大事なのだ。私は両手とも、ぎゅ、と握りこんだ。
「わぁ!」
思いのほか承太郎が体重をかけてきたので、思わず花京院くんごと、前につんのめった。今度は私が挟まれる形で、承太郎の胸へと。
「危ねえなぁ。手を出したんなら、ちゃんと引っ張りな。」
承太郎は手をヒラヒラさせて、先に行ってしまった。
「ふふ、」
私と花京院くん、どちらともなく笑い出す。
さっきの仕返しのつもりなのだろう。どちらもただ巻き込まれただけの花京院くんには申し訳なく思ったが、楽しそうに笑っているので構わないだろう。
「出発するぞ!中に!」
先に行ったジョセフさんの出発の合図で、全員、中に乗り込んだ。この潜水艦が無事に海を渡れれば、ついににエジプト上陸だ!
今までの楽しかった思い出を一旦胸にしまい込んで、気持ちを新たに、私達はエジプトを目指した。