3部 インドからエジプト上陸まで
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「ラクダだ⋯⋯。」
「ラクダだね⋯。」
花京院くんと目の前のラクダを見上げる。初めて見たラクダは想像していたものよりも遥かに大きく、承太郎ですら見上げている。
ここまで高級車に乗って快適に移動してきたが、ここから丸1日、ラクダに乗って移動するとジョセフさんはいう。馬ならともかく、ラクダなんて簡単に乗れるものではないのではないだろうか?少し不安だ。
ジョセフさんがお手本を見せると言って手綱を引くも、ラクダはひとつも言う事を聞かない。こういうのは、動物との信頼関係だと思うのだが⋯⋯。
「ねぇ、貴方の背中に乗せて欲しいんだけど、ダメかな?」
くい、と軽く手綱を引いて、ラクダと目を合わせる。
じっと見つめ合っていると、やがて首を下へ下げ、私は首を撫でた。花京院くんが驚いた顔でこちらを見ている。
「いい子ね。それで、乗せてくれるととても嬉しいんだけど、いい?」
私に与えられた子は、大人しい性格なのだろうか?しばらく見つめ合った後、膝をついて足をたたみ、座ってくれた。
「ありがとーー!いい子いい子。」
顔や頭を撫で回し人参を与えると、機嫌良さそうに声を上げた。なんだ、思っていたよりも簡単だったな。と顔を上げると、花京院くんだけでなく、みな驚いた表情でこちらを見ていた。
どうやら、みんなはラクダが言う事を聞かないと、手こずっているらしい。私の意外な才能を発見できた。
「花京院くん、そんなに困った顔してたらラクダも不安になっちゃうよ。」
花京院くんは私がやったように話しかけてはいたがラクダはツーンとした態度を取っていた。
私は花京院くんから手綱を取り「この人、花京院って言うんだけど、とても優しい人なの。絶対に貴方に酷い事はしないから、乗せてくれない?」と説得するとじっとこちらを見つめ、仕方ないな、と身を低くしてくれた。
「ありがとう!ほら、花京院くんも。」
私が首を撫でているのを見て、花京院くんも同じようにラクダを撫でた。
「ありがとう。餌をどうぞ。なまえさんも、ありがとう。」
安心して他のメンツを見ると、承太郎も成功しているようだった。私を見て真似したのだろう。さすが承太郎は要領がいい。
あとの2人は中々に大変で、私が説得した傍からラクダを怒らせてしまい、出発までだいぶ時間を食ってしまった。日が高くまで登っている。早く、砂漠を越えてしまいたいのに。
「やっと乗れたね!行こう!」
主に私が頑張って、全員をラクダに乗せることができた。ジョセフさんとポルナレフは、相手を尊重する事を覚えた方がいい。それにしても、だ。
花京院くんはやはり、どこかの国の王子様なのではないだろうか?馬ではなくラクダだが、気品に溢れていて一般人には見えない。絶対に、王族かなにかだ。私があまりに見つめるから、花京院くんは首を傾げて微笑む。素敵。もっとやってくれ。
「なまえさん、暑くない?大丈夫?」
花京院くんの声掛けに、太陽を仰ぎ見る。当たり前だが日差しが強く、汗が吹き出す。さっき水は飲んだばかりだが、もう喉が渇いている。
「暑いけど、大丈夫。花京院くんも無理しないでね。」
ラクダにかけていた水筒から水を一口飲み、答えた。
花京院くんは学ランを絶対に脱がないから、きっと私達よりも暑いだろうと思っている。
しかし、暑すぎやしないだろうか?太陽は、まだてっぺんにある。
「おかしい⋯。やはりどうも、誰かに見られているような気がしてならない⋯。」
私と同じように太陽を見上げていた花京院くんが、後ろをキョロキョロと見回して言う。
花京院くんはそういった気配に敏感だ。車に乗っていた時も、同じ事を言っていた。だが、ここは砂漠。
かなり遠くの方まで見渡せるが、人影なんてひとつもない。スタープラチナで見てみても、人は居ないようだが…。
大きくなる違和感に顎に指を添えて考えていると
「8時⋯!?おい、承太郎。お前の時計、今何時だ。」
とジョセフさんが承太郎に聞いた。承太郎の時計も8時を指しているというが、8時とは、つまり、今は夜ということか。
もう一度太陽を仰ぎ見る。砂漠に入った時と同様の位置に、太陽がある。気がする。太陽のスタンドとは⋯。さぁ、どうするか。
ジョセフさんが岩場に隠れろ、とみんなに指示を出し、すぐにみんなは動き出した。私はすぐには降りられなかったので花京院くんがハイエロファントで降ろしてくれて岩場まで運んでくれた。
今の気温は60℃。いや、70℃まで上がった。このままここにいても、全員死んでしまう。辺りの草は枯れ、ラクダも倒れていく。ごめんね⋯。そう心の中で謝ったが、私達ではどうする事もできない。私達も、このままだといずれああなる。全員、息が上がってきた。みな、肩で息をしている。
みんなで頭を働かせていると、「僕のハイエロファントで、探りを入れてみる。」と花京院くんが立ち上がった。確かに、遠距離型の花京院くんが最適だろうが⋯。探りを入れてみるだけです。と言いハイエロファントを伸ばす花京院くん。100mほど進んだところで、「なにかヤバイ!」と承太郎が言った。攻撃がくる!と思って身構えるが、花京院くんはエメラルドスプラッシュを放とうとしている。
「待って花京院くん!戻して!!」
私はスタンドでハイエロファントを思いっきり引っ張った。スタープラチナも引っ張っている。
しかし、敵の攻撃は花京院くんのハイエロファントへ当たってしまって、血を流している。これは、隕石?
私とジョセフさんで花京院くんを受け止めて、承太郎とポルナレフが応戦してくれている。
「地面に穴を開けるから、中へ逃げ込め!」
スタープラチナのパンチでできた穴に、花京院くんごと急いで体を滑り込ませた。改めて傷を見ると、致命傷ではないらしく、花京院くんはピンピンしていた。良かった⋯。
「すみません⋯ありがとうございます。」
そう花京院くんは謝罪したが、彼はたまに無茶をする。いつも私に小言を言っているが、正直、人の事を言える立場でなはいように思う。言うと小言が始まるので、決して口にはしないが⋯。
みんなで身を低くして、外の様子を伺う。
絶対に、この目で見える範囲に、本体がいるはずなのだ!