3部 インドからエジプト上陸まで
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「着いた〜!」
馬車から降りて伸びをする。眠気には何とか耐えたが、お陰で体がバキバキだ。
ジョセフさんが降りてケバブを買いに行ってくれているようだ。みんなは馬車に乗ったまま待っているが、私は体を解したくて、馬車の隣で待つ事にしたのだ。
ジョセフさんは値引き交渉をしていて、もう少し時間がかかりそうだ。
「お兄さん、いい男ね〜。今時間ある?」
馬車に肘をついて、久々に承太郎にウザ絡みをすると「うぜぇ。」と拒否された。眠いのに眠れていないのだ。許してほしい。
続いて後ろに座っている花京院くんに「お兄さん。お兄さんも綺麗な顔してるのね。私と遊ばない?」と振ると「いいですよ。こんなに綺麗な方に誘って頂けるなんて光栄です。」と100点満点の答えが返ってきた。ノリもいいなんて完璧か。と思っていると、花京院くんの後ろで人が動いた気配がした。
「えっ。」
起きている。エンヤ婆が目を覚ましている。
私の反応に、みんな一斉に後ろを振り向いた。
戻ってきたジョセフさんもエンヤ婆を指さしている。
しかし、エンヤ婆の様子がおかしい。なにかに怯えているような表情を浮かべている。
「!!っ危ない!!」
エンヤ婆の目からなにか出てきたのを見て、思わず声を出すと、みんな一斉に馬車から飛び降りた。
肉の芽だ。それも、成長、している⋯!!
「嘘、じゃ⋯!DIOさま、がこの私に⋯!こんな事をする、はずがッ⋯⋯な、い⋯!!」
エンヤ婆は苦しみながら、絶望の表情を浮かべている。ポルナレフが駆け寄るが、何もできない。
エンヤ婆もまた、DIOに洗脳され、利用された1人なのだ。肉の芽を植えられているのだ。洗脳されている事を疑わないのは当然。なんて⋯なんて外道だ⋯!DIO⋯!!
きっともう、エンヤ婆は助からない。
ジョセフさんはDIOのスタンドの能力を話すように懇願するが、エンヤ婆は口を割ることはなく、そして事切れた。
「DIO⋯!なんて⋯なんて奴⋯!!このッ⋯腐れ外道が⋯⋯!!」
思わず体が震え、言ったこともないような言葉が口から出てくる。吐き気がする。
「おや、もしかして、君が例の⋯。」
ダンと名乗った男は、品定めをするように私を見ている。それを見て花京院くんがサッと間に入ってくれる。
「ふぅん。君がDIO様のお気に入りか。最近会いに来てくれないと、寂しがっていたよ。会いに行ってあげてよ。」
と胸糞悪い事を言うソイツを、私は睨みつけた。
「悪いけど、DIOは私のタイプじゃないの。というか、しつこくて困ってるの。そう伝えてくれると助かるんだけど⋯⋯。生きて帰れたらお願いね。」
花京院くんを追い越し、私は渾身の一撃を食らわせた。人を殴ったのは初めてだったし、DIOへの怒りで力が制御できなかったので、かなりのダメージが入ったはずだ。そして、私の手も
「いっっったぁぁぁあ!!!」
「なまえさん!!」
痛すぎる。一発殴っただけでこれか。いったい、承太郎の拳はどうなっているんだ。
「なまえ!無茶しおって!」
ジョセフさんが駆け寄り、治癒の波紋を流してくれる。変わらず痛いが、いくらかは和らいでいる気がする。
「なまえさん。君は戦闘不能だから、この戦いには不参加ね。」
花京院くんが有無を言わせない笑顔でそう告げる。
今のパンチの痛みで、だいぶ怒りは収まったが⋯⋯花京院くん、怒ってる⋯?
「⋯はい。」
この感じ、この笑顔を見るに、私が何を言っても花京院くんは折れないだろうと分かり、素直に頷いた。
「グッッ⋯⋯!!」
突然、私の手に治癒の波紋を流していたジョセフさんが吹き飛んだ。
ガシャァァアン!!と音を立てて、ガラスが割れる。
敵を見ると、承太郎に殴られてジョセフさんと同じく吹き飛んでいる。
「ジョセフさん!!」
痛む右手を庇いながらジョセフさんへと駆け寄る。
血が出てはいるが、大した怪我ではなさそうで安心した。
奴の話を聞くと、奴の体とジョセフさんの体は連動しているらしく、私が先程殴りつけた後に、スタンドをジョセフさんの中に潜り込ませたらしい。
と、いう事は、コイツのスタンドは寄生型。私の得意とする相手だ。
チラ、と花京院くんを見ると、苦い顔をしている。
どうやら、彼も察したらしい。みんなも、私へ視線を送っている。
私は立ち上がり、ダンを見る。
「ねぇ、DIOから、私の能力について、何も聞いてないの?」
そう問うと、ダンはピクリと体を固くさせた。
「貴方、自分のスタンドの性質を自分で喋ってたけど、バカなの?DIOも、酷い男ね。貴方と私のスタンド能力、どちらが強いのか、分からないわけないでしょうに。だから嫌いなのよ。」
嫌い、を強調して吐き捨てる。さっきの伝言、彼に伝えて欲しかったのだけど⋯無理そうだな。
「ジョセフさん、取りますね。」
私は怪我をしていない左手をゆっくりと伸ばし、スタンドを掴んだ。
「なっ何ィィーーー!!!??」
想像していたよりもとても小さい。このまま握りつぶしてしまえば、奴は死ぬだろう。
「なにか言い残すことは?」
一応、一言聞いてみる。
ベラベラと言い訳を並べているが、要は命だけは助けてくれと、そう言っている。
「どうする?承太郎。」
見守っているだけの承太郎へ聞いてみる。
殺すのは訳ないが、殺す価値があるとは思えないのだ。
「そうだな⋯。」
承太郎はダンへと向き直り、拳を握りこんだ。
「こうする。」
私は、うっかり握り潰してしまわないように、力加減に注意して見守っていた。ダンがボコボコになっていく様を。
「殺さないどいてあげるけど⋯もしまた邪魔をしたら、次こそ殺すからね。あと、私に寄生したら、今度はDIOに殺されるかもね。お気に入りなんでしょ?私。」
まさかこんなところでDIOが役に立つなんて思わなかったが、私はそう吐き捨て、奴のスタンドを離した。
もう、コイツは追っては来ないだろう。
「さ、行こう。みんな。」
「待って、なまえさん。右手の治療が先だ。ジョースターさん。」
花京院くんが私の腕を掴み、強引にジョセフさんの元へと連れていく。本当に過保護なんだから⋯。
「なまえって、キレるとこえーのな⋯。気をつけよ⋯。」
ポルナレフは一人、顔を青くさせてこちらを見ていた。
たった数分だったが、足止めをされてしまった。
私達は、早く先へ進みたいのだ。
決して会いたくはないが、これ以上被害者が出る前に、早く、DIOの元へたどり着かなくては⋯!