3部 インドからエジプト上陸まで
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
どれくらい進んだだろうか。突然、坂道の途中に茶屋が見えてきたので1度休憩を挟むことになった。
ここまでポルナレフはずっと運転していたので、余計に疲れているだろう。「お疲れ様。」と声をかけただけで大層喜んでくれた。
「ずっと車だと疲れちゃうね。」
隣を歩く花京院くんにそう声をかけると「なまえさんはマスクを着けているから、余計にそうだろうね。お疲れ様。」と労いの言葉をかけてくれた。もぅ、本当に過保護なんだから…!
茶屋ではサトウキビを絞って、サトウキビジュースにしているようだ。美味しそう…。ジョセフさんがコップを手に取ると、コップに先程の赤い車が反射して映り込み、みんな振り返って車を確認した。この茶屋に、あの車の持ち主がいるようだと、全員が警戒した。しかし、
「全員ブチのめす。」
承太郎のその一声で、花京院くん以外の男性陣は、店にいた客みんなの胸倉を掴んで脅し出したのだ。
これではチンピラと一緒ではないか。「アンちゃん、おいで。」とみんなを止めようとする花京院くんの後ろで様子を眺めていると、突如、赤い車のエンジンがかかった。なぜ…ここの客ではなかったのか。
ポルナレフが車へと走り出したのを追いかけ、みんなも車へと向かって走っていく。休憩、できなかった…と少し落胆した気持ちで、私もアンちゃんの腕を引いて車へ戻った。
これまでドライバーの顔は確認できていない。だからスタンド使いだ、とは言えないが、そもそもスタンド使いでないならこんな事をする必要はない。つまり、あの赤い車の持ち主は、十中八九、スタンド使いで間違いないだろう。
次のカーブで絶対捕らえてやる!そう言ったポルナレフはカーブで右にハンドルを切るが、なんと、その先は行き止まりで車は消えていた。
ポルナレフがブレーキを踏むと、崖ギリギリのところで止まった。あと少し遅ければ、落ちてしまっていただろう。その想像は、私の体を震わせるのに充分だった。
ホッと息をつくと、花京院くんの手が肩に乗っているのに気がついた。自分の手も、花京院くんの制服をキツく掴んでいた。
「あ、ごめんね。思わず掴んじゃって。」
そう言い終わるが早いか、後ろから突然衝撃が加わった。それも、何度も。後ろに、あの車がいる。あの車が、この車を崖から突き落とそうと、何度も車体を打ち付けている。このままでは、お、落ちる…!
私の手に力が入り、花京院くんの私の方を掴む手にも力が篭もるのがわかる。
ポルナレフが脱出しようとハンドルから手を離すと、ついに、車は傾いて崖から落下した。
体に感じる浮遊感に思わずぎゅっと目を瞑ると、花京院くんはハイエロファントを出し、車外へと出したのが分かった。何をしようというのか…!
「やめろ!ハイエロファントにはこの重量を支えきるパワーはない!体がちぎれ飛ぶぞ!」
ジョセフさんがそう叫んだのが聞こえ、私は目を開けて花京院くんを見た。すぐ近くにある彼の顔は、諦めているような顔はしていない。何か策があって、このような事をしていると確信した。
「ジョースターさん。お言葉ですが、僕は自分を知っている。バカではありませんよ。」
視線を外に向けると、ハイエロファントは手に持っていたワイヤーをあの車へ括りつけて、 戻ってきた。
続けて承太郎のスタープラチナがワイヤーを引っ張ると、こちらの車が浮き上がり、あの車は逆に崖を落下するところだった。
車がまた、宙に舞っている。ガシャン!と再び地上に戻ってきて、やっと、安堵の息が漏れた。マスクを着けていても着けていなくてもきっと、疲れていただろうと思った。
「なまえさん。大丈夫かい?」
結構な衝撃があったはずだが、不思議と痛みはない。と、思っていると、想像よりも近くで花京院くんの声が聞こえた。頭には誰かの、恐らく花京院くんの手が置いてあり、目の前に緑色が見える。しかも、花京院くんのいい匂いがする。
もしかして…いま、私は、花京院くんの胸に抱かれているのでは…?
「ご、ごめん。ありがとう、花京院くん。」
ちゃんと謝罪と感謝をして、花京院くんから離れた。
一旦窮地を脱しただけで、敵を倒したわけじゃないのだ。しっかりしなくては。そう自分を戒めて顔を上げると、全員、ジトっとした目で私達を見ている。…ごめんて。
崖下のあの車は、煙を上げ続けていてよく見えない。
ジョセフさんはスタンド使いではないようじゃ、と言っていたが…果たしてそうだろうか?
みんなが離れていっても、私は不安で、一人崖下の敵を探していた。すると突如、ラジオから敵らしき人物の声が聞こえてきたではないか。やっぱり…敵はスタンド使いか。敵は自分を、ホイールオブフォーチュンの暗示だと言った。
煙が、徐々に晴れてきた。敵が死んでいないのなら、また攻撃してくるだろうと思ったのだが…。崖下の煙が晴れた。だが、あの車の姿がない!
「車がいない!みんな、地面に気をつけて!!」
振り返ってそうみんなに伝えると、直後、地響きが鳴りだし、地面の中から車が飛び出してきた。これは、予想外。
「なまえさん!」
衝撃で吹き飛びながらも、花京院くんは身を呈して私に手を差し出した。そんな花京院くんを、今度は私が受け止めた。この人はいつも、私の身の安全を第一に考える所がある。それが私からしたら、とても危なっかしく思えた。いつだったか、守って守られる旅になる、と思ったのを思い出す。花京院くんは私を守ろうとしてくれるから、私は、私が、花京院くんを守らなくてはと、今更ながら実感した。