3部 インドからエジプト上陸まで
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それからまたしばらく車に揺られ、先へと進んでいく。
先程の抱擁はなんだったのか、よく分からない。急に「ありがとう、なまえさん。」と突然体を離した事であの時間は終了した。外を見るとみんなが戻ってくるところだったし、花京院くんはいつもの笑顔に戻っていた。あの抱擁の意味は、聞けずじまいだった。
「道が狭くなってきたな。」
ポルナレフの言葉で顔を上げると、確かに、今までよりも狭くなっているみたいだ。今まで道無き道を走っていたのが、いつの間にか車2台がすれ違う幅しかない。そして、前を走る車との距離が近い。砂煙が開いた窓から入ってきている。
「ちょっと、ポルナレフ。窓閉めてよッ!」
マスクの隙間に砂が入ったらどうするんだ!
体を少しでも窓から離そうと背もたれまで下がり、承太郎の方へと体を寄せた。
「うっとおしい…。」
いつもの覇気がある言い方ではなく、ため息混じりのその言い方に承太郎を見ると何か言いたげに私から花京院くんへ視線を移した。花京院くんの方へいけ、という事だろうか?しかし、花京院くんはポルナレフの後ろに座っているので、それではあまり意味がないのでは…?
「邪魔だ。追い抜くぜ!」
ポルナレフは少々荒っぽい運転で、前を走る車を追い越した。車内が少し揺れる。その先、カーブを曲がったところで、車は急ブレーキで停車した。
結構な急ブレーキだったので吹き飛ばされるかと思ったが、承太郎に首の後ろを掴まれ、花京院くんは少し身を乗り出し私の腹に片腕をかけていた。
「あ、ありがとう。2人とも。」
何事だろうかと前を見ると、シンガポールで別れたはずの、アンちゃんの姿があるではないか!
「やれやれだぜ…。」
承太郎は困ったように、ため息をついた。この車に、乗せるしかないだろう。
「待ってなまえさん。なにそれ?」
怪訝な顔でアンちゃんは私の着けているマスクを指差す。DIOと同じ反応に、思わず笑ってしまった。
「なまえさんは、今訓練中なんです。」
花京院くんは優しく、簡単に分かりやすく、アンちゃんへと説明する。
奥へ詰める花京院くんに倣って私も右へと体を寄せると花京院くんの足と私の足が触れ合って、少しドキドキした。
「ふぅん。」
興味があるのかないのかよく分からない相槌を打ち、アンちゃんが車へ乗り込む。承太郎も大きい体を無理やり詰め込んで、ドアを閉めた。これは、さすがに定員オーバーでは?
「なまえさん、遠慮しないで、寄りかかっていいよ。なんなら、僕の膝に座るかい?」
「す、座らないよ!」
さすがにからかっているだけだろうが、子供の前でなんて事を言うのだ!
「なまえさん!」
アンちゃんが小声で私を呼び、袖を引っ張って私の耳元に口を寄せた。そして最新の注意を払った小さな声で「ついに花京院さんと恋仲になったのね!?」と。
私とアンちゃんはお互い目を合わせる。アンちゃんはキラキラとした目でこちらを見ている。私の、肯定する言葉を期待している。ものすごく…!何も答えない私を見る目が、みるみるうちにジトッとしたものに変わっていく。反対に、私は居心地が悪くなっていった。
「まさか、まだなの…?」
なんだか叱られている気分になり「う、うん。」と呟くのが精一杯だった。
アンちゃんは私越しに花京院くんを見て一言「意気地なし。」と吐き捨てた。花京院くんはなぜ急にそんな事を言われたのか分からず、目を瞬かせている。かわいい。かわいいのだが。
私は「…なんでもないの。ごめんね。」としか言えなかった。
そして数分後の事。車内は今、不穏な空気に包まれている。
先程乗ってきたアンちゃんは承太郎の膝の上に落ち着き、自分の話をしていたのだが…。
先程追い越した車が、後ろにピッタリとくっついて走っているのだ。クラクションまで鳴らしている。
ジョセフさんの「先に行かせてやりなさい。」という声にポルナレフがハンドサインを送るとスピードを上げて追い越して行った。が…、今度はスピードを落とし、ノロノロと走行しだして、短気なポルナレフはイラつき始めている。
前の車のドライバーが、先程ポルナレフがやったように、先に行け、とハンドサインを出したので追い越そうとするが。車線変更をすると、トラックが目の前に現れたのだ。いや、トラックからしてみれば、こちらが急に現れたように感じるだろう。
「ダメだ!ぶつかる!」
花京院くんの声を聞いて、アンちゃんが承太郎にしがみついたのが見えた。私も思わず、花京院くんの腕を掴むが、これだけでは…。
スタープラチナがトラックとの衝突の衝撃を和らげるが、それでも、あまりの衝撃に車は宙に吹っ飛んだ。
そして私は、いつかのようにハイエロファントが体に巻きついていて、1人、車外に放り出されている。
また、花京院くんが咄嗟に出したのだろう。いつの間に車のドアを開けたのか…全く気が付かなかった。
ある程度の高さまでくるとハイエロファントが私を離し、無事に着地した。
それとほぼ同時に、ドンッ!と音を立てて車も地面に落ちてきた。一応、みんな無事だったようだが…。
「なまえさん!ごめん、大丈夫だったかい?」
花京院くんが開いたドアから出て駆け寄ってくる。ちょっと慌てているようだ。
「ごめん、なまえさん。君、シートベルトしていなかっただろう?あのままだと危険だと思ったから。」
確かに。アンちゃんが乗ってから、私はシートベルトを外していて、着けるのを忘れていた。アンちゃんもしていなかったのだが、承太郎がしっかりと掴んで支えていたので無事だったようだ。
「確かに。ありがとう、花京院くん。助かったよ。」
花京院くんは優しく車までエスコートしてくれ、私のシートベルトをしっかりと着けてくれた。
本当に、この人は正真正銘、王子様だ。この人にこんなに世話をされていると、まるで自分がお姫様にでもなったかのように勘違いしてしまいそうになる。
「さぁ、行きましょう。」
準備が整った事を伝えると、車は再び発車した。
先程の車がスタンド使い関連なのでは、という話になったようで、この先、もしかしたら戦闘が起こるかもしれないと。
その可能性は私も感じていたので、この先は全員警戒しながら進むことになった。