1部 DIOとの出会いから出立まで
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あの後改めて、承太郎と倒れた時のことを整理してみた。
①私が倒れた時には右手のひらに傷があった事。
②また、その血は2枚目のタオルで止血しても止まらなかった事。
③その後聖子さんを呼び、手当てをしようと救急箱を出した時には血は止まっていた事。
④熱が出た後に急激に熱が下がり、平熱であることを確認した際には傷が跡形もなく消えていた事。
⑤私が借りた部屋やその周辺には、怪我をしそうな刃物などは一切なかった事。
以上が、私が気を失っていた間に起こっていた事らしい。
私は手のひらを見て、またDIOのことを思い出した。
実は、エジプトから帰国して空条家に助けを求めた際に事情を説明はしたが、DIOという男に出会った事は言っていない。いや、言えなかった。
なんと言えばいいのか分からなかったし、エジプトでの出来事は、夢でも…悪夢でも見ていたんじゃないかと思っていたからだ。違う。そう思いたかったのだ。私が。
なんにしても、私を保護してくれた2人には「家族がみんなガラの悪そうな人達に連れていかれて殺された。亡骸は翌日にはなくなっていてどうしようもなかった。」と伝えていた。
ゆっくり息を吸って、吐いて。
「そういえば、顔、大丈夫?」
トントン、と自分の左頬を指さして言った。
さっき風呂場でシャンプーボトルを食らったところだ。
「イテェ。けど今はそんな事より、テメーだ。」
これ以上心配かけたくないのと、現実逃避をしたくて顔の傷について触れたのだが、承太郎はそんな事お構いなしに真剣な顔で言った。
「何か隠してる。絶対にだ。」
「絶対に、って…。」
エスパーかよ。とふざけて言ったけど承太郎は相変わらず真剣な表情のまま、私を見ていた。
承太郎、本当に人の事よく見てるな。これじゃ隠し事なんてできたもんじゃない。でも、この件に関しては私の中でもまだ整理できていないのだ。
どれが現実で、どれが夢だったのか。私の気持ちも。何もかも。
「隠してる事は、あるよ。承太郎に聞いてほしい。でも……なんて言ったらいいのか分からないの。私も記憶が曖昧だし…。いつか、近いうちに…私の中で整理できたら、話す、じゃだめかな…?」
「……。」
じっとまっすぐ私の目を見る承太郎。私も目を逸らせない。
ややあって承太郎が視線をずらしたかと思うと大きなため息を吐きながら「絶対だな。」と。
「うん。絶対に!」承太郎に負けず真剣な顔で宣言した。私だって本当は聞いてほしいのだ。
DIOの事はきっと、私がいくら考えても何も分からないだろう。
頭のいい承太郎がいてくれないと、何も変わらないだろう。
だから私は、エジプトであった思い出したくない記憶を無理やりにでも掘り起こし、ひとつひとつ整理しなくてはならない。
思い出す事すら怖い。そして憎い。悲しい。あの時感じた色々な感情も一緒に思い出すのだ。
その日から、思い出した事柄は全てその都度メモを取るようにした。
なにかの手がかりになるかもしれないと、その時の辛い感情も一緒に。