2部 出国からインド上陸まで
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「なまえさんと重なっている時の感覚だけど。」
コーヒーを一口飲みながら、花京院くんが話し出す。
「最初は何が起こったか分からなくて、何も感じなかったんだけど…気づいてからはなんだかくすぐったいような、温かいような、心地良い感覚だったよ。」
「心地良い…。」
恐らく触られている感覚はないのだろうとは思っていたが、くすぐったいだったり、温かいだったり、そういった感覚的なものは感じるのだろうか?
私もあの時のことを思い出してみるが、あの時は船を押し返すのに必死だったから、あまり詳細には思い出せない。しかし花京院くんの言っていた事を考えると、確かに温かかった気もする…。
「花京院くん。実験、しても良い?」
と彼の手を指差すと「もちろん。」とすぐに返答があった。もうちょっと躊躇するとか…とは思ったが、協力はありがたいので口には出さなかった。
花京院くんはスプーンの上に手を置いて私が動くのを待っている。
私はスタンドを発動して、花京院くんの手に自分の右手を重ねた。私の手はスプーンに触れている。
「…確かに、温かい…。」
これは、花京院くんの体温だろうか?
左手を、さらに上に重ねると花京院くんの手に触れて、花京院くんの手が驚いて少し跳ねた。
今まで意識してなかったが、右手と左手で違うものを掴めるようだ。私はそれを確認し、両手を離した。
「なまえさん。今、違う実験もしたね?」
ジト、という視線を送っているが、口元は笑っている。そういう笑みもできるのか…と変なところで感心してしまったが「えへ。」と誤魔化すとフ…と優しい笑みが返ってきた。この笑顔…心臓に悪い。
「それで、実験結果はどうだった?」
花京院くんは実験は終わった、と既にコーヒーを飲んでいる。
「うん…。確かに温かかった。けど、くすぐったい、は分からなかったかな。」
もしかしたら、花京院くん側は自分の体の中で動いているから変な感覚があるのかもしれない。
「花京院くん、本当に異変はないんだよね?」
この先、この能力を使う事は増えてくるだろう。
いざ使う時になって、不具合などが起こってしまってはいけない。
私は花京院くんの瞳をまっすぐ見つめた。
「うん。大丈夫。問題ないよ。」
数秒彼を見つめ、嘘はないと分かり「よかった。」と漏らした。
「飲み終わったら戻らないとね。」と残り少ないアイスティーを見て言うと、自分で少し寂しくなった。
これを飲み終わってしまったら、このデートが終わってしまう…。
「なまえさん。これ。」
突然、花京院くんが小さな袋をテーブルに置いた。
「えっ?」
なんだろうか?何か貸した覚えはない。もしかして、何か落としていただろうか?と袋を開けて覗き込むと再び「えっ?」という声が出た。これは…。
「ピアス…。」
真っ赤な丸いピアス。さっき服屋さんで見ていたものだ。
「さっき見ていただろう?やっぱり、服1着じゃ足りないと思ってね。」
しまった。欲しいと思っていると勘違いさせただろうか?花京院くんのピアスに似ていると思って眺めていただけなのに…と顔を青くさせていると「それに、」と花京院くんは続けた。
「なまえさんに似合うと思ってね。綺麗な黒髪に似合うだろうなって。」
そうだった。この人はこういう人だった。
「これを着けてる君を見たくて、つい買ってしまったんだ。貰ってくれるかな?」
そう言う彼の頬は、心做しかちょっと赤い。
なんで花京院くんが照れているんだ。
顔を赤くするのは、花京院くんじゃなくて私だろう。
先程の熱がまた戻ってきて、私の頬どころか、耳まで赤くなっているのが分かる。
「あ、ありがとう。絶対着けるね。絶対。」
小さくなってしまったが感謝を述べると、「よかった…。」と花京院くんがホッとした声を漏らした。
こ、この空気、耐えられない…!
ズズズ、と残っていたアイスティーを飲み干し、顔の火照りを冷まそうとしたが無駄だった。
追加のアイスティーを頼み、それを飲み終わる頃には冷めたが、飲み終わるまで花京院くんがニコニコと楽しそうに私の顔を眺めてくるので最後の方はむしろ落ち着かない気持ちで初めてのデートは終了したのだった。