2部 出国からインド上陸まで
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ボートに乗って丸1日、飲まず食わずで相変わらず私はぐったりとしていた。というか、半分気を失っていた。救助された事に気づいたのは、シンガポールのレストランで食事をしている時だった。気がついたら食事中で、周りを見渡すとみんなが引いている顔が見えて恥ずかしくなった。ポルナレフの財布を空にしたあとジョセフさんを中心に集まり、話し合いをすると、どうやら今日はホテルに泊まるらしい。久しぶりにベッドで寝られる!お風呂がある!と本気で喜んだ。あわよくば安い服でも買って、制服を洗いたい!
私はアンちゃんと同室だ。アンちゃんは疲れたから少し眠ると言っていたので、解散する前に花京院くんに声をかけた。
「花京院くん。この後、少し時間ある?」
ストレングス戦の時のスタンドの話がしたいと言えば花京院くんは笑顔で頷いてくれて、1時間後に部屋の前で待ち合わせた。
「なまえさん、花京院さんとデートぉ〜?」とまたアンちゃんにからかわれたが、そう言われてみればそう、なのかも?気になっている人と、2人きりで会う。人はそれをデートと呼ぶのではないか?
「そう、かも。デートしてくる。」とストレートに言うとアンちゃんはつまらなそうに「いってらっしゃ〜〜い。アタシは寝る。」と既に興味をなくしているようだった。この子はまた私をからかって…。
お風呂に浸かりたいがそんな時間はないので、顔を洗い、歯を磨いて外の景色を眺めて…と動き回っていると、あっという間に待ち合わせの時間になった。
「行ってきます。」
寝ているアンちゃんに小声で伝え、鍵を持って部屋を出ると花京院くんもちょうど出てきたところだった。
「タイミングバッチリだね。行こうか。」とどちらともなく歩き出し、ホテルの外へと出た。
「あの、スタンドの話も聞きたいんだけど、少し買い物にも付き合ってほしくて…。」とあと出しで言ったのだが、花京院くんは嫌な顔ひとつせず「いいよ。行こう。」と笑顔を見せてくれた。
「なにが必要?」と聞いてくれ、「服を買うなら、あの店はどう?」と店を探して提案をしてくれる。制服を着られない時に一時的に着られればいいと思っていたので「花京院くんが選んでよ。」と言うと驚いた表情を見せたが「いいよ。なまえさんはきっとなんでも似合うから、服を選ぶのも楽しそうだ。」と意外にも乗り気でこちらが驚いてしまった。
「これも似合いそう。でも、こっちも似合ってたし…。」と真剣に選ぶ花京院くんがかわいくて笑ってしまいそうになったが何とか堪え、花京院くんに選んでもらった服は一時的に着る用の服ではなく、私の宝物になるだろうなと思った。
結局1着どころか3着までしか絞れず、驚く事に花京院くんがプレゼントしてくれると申し出てくれて全力で断った。選んでくれたのが嬉しかったし、私が欲しかったから買う事にしたのだ。
しかし花京院くんに「じゃあ1着だけ。守ってもらったお礼に。」と言われてしまい、断りきれなかった。優しい笑顔を浮かべて、意外と押しが強いようだ。
「ありがとう…。」と言うと、彼は花が咲いたように、本当に嬉しそうに笑った。
「花京院くんって、笑顔が素敵だよね。」
お会計後、せっかくだからとプレゼントしてくれた服に着替え店を出た。自分では選ばないシンプルなワンピースに、自然とテンションが上がってそんな言葉が口から出る。
花京院くんはそうかな?と首を傾げているが、その仕草がかわいらしく、そしてサマになっていた。
「うん。花京院くんが笑うと、私も楽しくなるし、嬉しくなる。」
そう言って笑顔を浮かべると、花京院くんは足を止めた。どうしたんだろうと私も足を止めて花京院くんを見ると、表情の読めない顔からあの柔らかい笑顔に変わって、ドキリと心臓が高鳴った。
「それは…僕も一緒だよ。なまえさんの笑顔を見てると、僕も楽しくなるし、嬉しくもなる。」
そよ風が吹いて花京院くんの特徴的な横髪が揺れるが、花京院くんの優しい瞳から目が離せない。藤色の、綺麗な瞳だ。
「花京院、くん。」
あまりにも綺麗で、なんだか切なくなった。言葉が詰まる。これが、恋なのか。これが…。こんなに愛おしくて、こんなに切ない気持ちなのか……!心臓がきゅう、と締め付けられる感覚。でも幸せな気持ちになる、不思議な感覚。思わず"好き"という言葉が出そうになるのを堪えた。まだ会って1週間なのだ。それに、まだ振られる覚悟もなければ、先へ進む覚悟もない。無責任に口にするには、その言葉は今の私には重すぎた。
「あ、ありがとう…?っていうのも変、かな。」と、よく分からない言葉で気持ちを誤魔化した。
今はまだ、片想いに留めておこう。
「ふふ。」
花京院くんが声を漏らして笑っている。かわいらしい。と思っていたら「ごめん。なまえさんがかわいくて。」と爆弾発言を落とした。
「もう!そういうの言われ慣れてないんだから、やめてよ!」
そう抗議するも、私の顔は真っ赤になっているに違いない。なんて自然にそんな事が言えるのか!
「ごめんごめん。」
そう言っているが、本人はとても楽しそうだ。なんだか悔しい!
「さ、戻ろう。ホテルの中のカフェでスタンドの話をしよう。」と話を逸らされてしまったが、そもそも外出に誘ったのはそれが本題なので、私は大人しく花京院くんに従うほかなかった。