2部 出国からインド上陸まで
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「花京院くん、ちょっとごめんね。」
花京院くんに一言断りを入れ、私はスタンド能力を発動した。
「なまえさん、なにを…。…!」
ズブ、という音が聞こえそうな勢いで、花京院くんの体と重なる私の体。
「良かった。人で試した事なかったから不安だったけど、大丈夫そうだね。」
全方位は難しかったが、とりあえず花京院くんの呼吸を確保しなくては。
花京院くんの体の前後にある床を掴み、押し広げるように力を込めたが少し広がったのちに動かなくなった。きっとこれ以上は広がらない。向こうとのパワー勝負は互角のようだった。
「なまえさん、無理はしないで。」
上から気遣うような声がかけられるが、顔は一部花京院くんの胸に埋まっているので表情は見えない。
「ごめん。急にこんな事になって。なんか体、痛いとことか、変なとことかない?」
「いや、お陰様で…。ちょっと不思議な感覚はあるけど。」
今まで人体を貫通した事はないので心配だったが、特に問題がなさそうで安心した。
しかし、この腕の力を込め続けられるのも5分が限度だろう。承太郎、早く……!早く倒してくれ……!!
「なまえさん……。」
また花京院くんの私を心配する声が聞こえるも、私は無理しているのを悟られないように明るい声で「大丈夫だよ。」と答えた。笑顔で言ったが、花京院くんからは表情は見えないだろう。
「花京院くんは今まで私を守ってくれたでしょ。それと同じだよ。たまには私にも、守らせてほしい。」
そうだ。この旅は守って守られて。そうしてお互いに支え合わないと、きっと目的を達成するのは不可能なのだ。
今度は私が守る番。今、私が頑張らなければ、花京院くんは船体に押し潰されてしまうかもしれないのだ。
「いつも私を守ってくれてありがとう。今度は、私が花京院くんを守るよ。」
自分の口から出た言葉に、力が湧き出てくる。
守るものがあれば、人は強くなれる、と言ったのは、誰だっただろうか。本当にその通りだ。私はさらに腕に力を込めた。
「なまえ!花京院!」
承太郎の私達を呼ぶ声に顔を上げると、締め付けていた船体の質感が変わった。どうやら本体を無事に倒したようで、スタンドであるこの船が消えてしまうようだと悟った。
ホッとして花京院くんから離れ、スタンドを仕舞う。
この船はもう消えてしまう。早く、脱出しなければ!
「なまえさん、ごめんね。」
花京院くんが突然謝罪をし、何だろう?と見ると、驚く事に、サッと私を抱えたのだ。
「えっ!?」
突然の事に頭が混乱しているが、これは所謂……。
「ま、待って花京院くん。」
「待たない。すぐに脱出する。」
言い終わる前には、そのまま走り出していた。
その花京院くんの横顔は真剣そのもので、何も言えなかった。絶対重いのに……!
乗ってきたボートへ戻ると、既にみんな避難していたようだ。誰一人として欠けていなくてよかった…と息を吐くと、
「なまえ、何で花京院の服着てんだァ?」とポルナレフに突っ込まれた。そうだ。服を返さなければ…。
「色々あってね。それ以上聞くと、ボートから降りる事になるけど大丈夫?」
と釘を刺すと、ポルナレフは口を噤んだ。
夜の海は冷えるだろう。早く服を着替えよう。
「承太郎、花京院くん。」
私は小声で2人を呼び「あの…服を着たいんだけど…壁になってくれない…?」とお願いし、2人と背中合わせになって1人もぞもぞと着替えた。
「ありがとう。終わったよ。」
声を掛けて花京院くんの制服を畳み、「ありがとう。助かったよ。」と返すと、「僕の方こそ、ありがとう。」と微笑み返された。
ありがとう?何が?とポカンとしていると「僕が潰れないように、助けてくれただろう。」と今度は楽しそうに笑っていた。かわいい…。以前にも1度見た子供みたいな笑顔だ。
「さっきのなまえさん、まるで王子様みたいにかっこよかったよ。」と続いて驚いた。王子様みたい?花京院くんの方が王子様だし、それならば私はお姫様でいたいのだが…まぁ、いいか。花京院くんを守れたのだし。
「私が王子様なら、花京院くんはお姫様?」と笑うと「それは、ちょっと嫌だな。」とさらに楽しそうに笑ってくれた。
承太郎は私達を見て「くだらねえ…。」と、何が面白いのかと、冷めた目で眺めていてそれがさらに面白かった。
「なんじゃあ?学生は楽しそうじゃのォ!」とジョセフさんが割り込んできたが「秘密です!」と秘密にするほどの事でもないのに口を噤んだ。アンちゃんも楽しそうにそれを眺めていた。私を見る目が若干ニヤニヤしているような、していないような、気がするが。
「花京院くん。参考にしたいから、あとでさっきのスタンド使った時の事教えてね。」と約束を取りつけた。無事に救助されたのは、その翌日の事だった。