2部 出国からインド上陸まで
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偶然通りがかった大型船。怪しさは満点だったがポルナレフは「俺はこの船に乗るぜ。」と言って先に行ってしまったので、全員警戒しながらタラップを上がって行った。
最後に残った私と花京院くんもボートから降りようと立ち上がった時、花京院くんがなんともキザったらしく「なまえさん、お手をどうぞ。」と手を差し伸べる。
私は素直に手を取り「ありがとう。花京院くん、まるで執事みたい。」と笑うと花京院くんもつられて笑っていた。けど降りながら思い直し「いや、執事って言うよりも…」と花京院くんを見ると不思議そうな顔をして続く言葉を待っていた。執事というよりも、まるで絵本に出てくる王子様のようだと思った。たとえ今の立ち振る舞いがおふざけの演技だったとしても、今までの彼の所作がそう物語っている。この人は、そういう振る舞いをしても違和感がないのだ。
「いや、なんでもない。」男の人に"王子様みたいだね"なんて恥ずかしくて言えない。特に花京院くんには、なんだか言いづらかったので黙っておいた。
「気になるじゃあないか。教えてくれよ。」と言うが「だめ。内緒。」とじゃれあいながら2人でタラップを上っていくと、なんだか騒々しかった。
「どうしたの?」と聞くとアブドゥルさんが「船は動いているのに、この船の乗組員が1人もいないんだ。おかしい。」と顎に手を添えて考え込んでいる。そんな事ありえるの...?いや、ありえないからみんな、戸惑っているのだ。
全員で操舵室を見て回っているとアンちゃんが「こっちに猿がいる!」とみんなを案内する。猿、というかオランウータンだったが…なんでオランウータンが…?「猿なんてどうでもいい!」と言うジョセフさんの言葉でみんなは出ていってしまったが私は去り際、もう一度檻を見ると、中のオランウータンもじっとこちらを見ていた。隣でアンちゃんが息を飲んでいるのが分かった。承太郎達について行ったと思っていたが、彼女も何か気になって足を止めたのだろう。オランウータンを見て怖がっている。
「アンちゃん、行こう。」
安心させるように肩に手を置き、優しく話しかけると「う、うん。」と私の服を掴んだ。なんだ、案外かわいいじゃないか。承太郎に反攻的な態度を見せていたのを先程見たばかりだったので、そのギャップがなんだかかわいらしく思えた。
2人で甲板のみんなの元へ戻ると、悲惨な光景が目に入り思わずアンちゃんに見せないように抱き締める。
「一体なにが…。」
錨がひとりでに揺れだし、船員を貫いたように見えた。みんなの目にもそう見えたようで、船員達は全員船室へ避難し、スタンド使いは敵の捜索をする事になった。が、「なまえさん、行っちゃうの?」とアンちゃんは震える手で未だ私の服を離さない。目隠しをするのが遅かったか...と悔やんだ。
目の前で人が死ぬなんて、さぞ不安で、怖いだろう。
怖いのも分かるし、でも敵を探さなくてはならないし、どう説得するか考えていると「なまえ、お前も船室にいろ。敵がそっちに行くかもしれねえ。」と承太郎がいい案を出してくれた。確かに、それが1番シンプルでいいかもしれない。
「分かった。何かあったら、すぐに知らせて。」
承太郎へそう言うと、みんなも納得して頷いた。
「行こう。」
アンちゃんの手を引くと、安心した表情を見せ、素直に着いてきてくれた。素直でかわいい子。
みんなと分かれて行動するのは初めてな上に、一般人を守らなくてはならない。そう考えるとなんだか重要な役割を任された気になって、改めて気を引き締めた。
下に降りる階段を探して、さっき通ったオランウータンの檻のある部屋までやってきた。
やっぱり檻の中のオランウータンは、なにか言いたげに、こちらを見つめている。怪しさ満点のオランウータンに、思わず眉間に皺が寄ってしまう。
少しの間見つめあっていると、オランウータンが鍵穴を指で指し示した。鍵を開けろと、そう言っているようだった。
アンちゃんはオランウータンに話しかけているが、まるで人間の言葉を理解しているような態度だ。
自分の思い通りにならないことを理解したのか、今は煙草に火をつけ、グラビア雑誌を眺めている。
黙って眺めていると、オランウータンは目だけでこちらを見た。見た、というより、私とアンちゃんの体を、つま先から頭の先まで舐めるように見ている。
値踏みするような視線に、アンちゃん思わずはたじろいで私にしがみつく。私とオランウータンは静かに睨み合う。
「行こう、アンちゃん。」
私は視線を外し、動き出した。私が守らなくてはいけない人は、アンちゃんだけではない。早く船員たちと合流しなければ。
このオランウータンは確かに気になるが、今は合流が最優先と、私達は部屋を後にした。