2部 出国からインド上陸まで
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船の上で大騒ぎしていたら、急に船が炎上しはじめた。
先程承太郎と戦っていた船長が、事前に爆薬を仕掛けていたらしい。
爆発する前に起きてきて良かったと思ったが、この爆発では船は耐えられず沈んでしまうだろう。そう気づいて余計に顔が青くなった。
「なまえさん、大丈夫。」
船の乗組員やポルナレフが、ボートの準備をしているのが、私の左手を握った花京院くん越しに見えた。
「あ、ありがとう。」
飛行機の時のような衝撃はないだろうと、花京院くんが握ってくれた手は、今度は離さなかった。痛くないであろう力加減で、きゅ、と少し力を込めた。
「何なに〜?2人ってそういう関係〜?」ポルナレフがからかいの表情で近づいてきた。ボートの用意はできたのだろうか、と思っていると、もう降りられるらしい。ジョセフさんとアブドゥルさんは既に降り始めている。
「なまえ。花京院も、先に行きな。」
と承太郎が後ろから軽く背中を押す。
アン、という少女の首根っこを掴んでボートへと投げ込んだ。えぇ…!?悲鳴の後、下が騒がしくなったので一応無事のようだ。良かった。
船は未だ爆発音を響かせている。
「ありがとう、承太郎。」
前回とは違って、今は花京院くんが手を繋いでくれているから少し落ち着いている。
「さぁなまえさん。ハイエロファントで持ち上げるよ。」
一言断りを入れてから、花京院くんはハイエロファントで私を持ち上げて手を離した。
「僕が先に降りるから。大丈夫、ハイエロファントは僕だ。」
そう一言言い残し、花京院くんは船からボートへと降りていった。
ハイエロファントは、花京院くん…。
先程手を離した時に、少しだけ不安を感じたが…ハイエロファントを見ると花京院くんを感じて妙に安心した。なるほど、スタンドってそういうものなのか。
先程から無視されているポルナレフは面白くなさそうな顔をして様子を見ていた。
私はポルナレフを見て「ポルナレフ。私と花京院くんはそういう関係じゃないけど…そうなる未来は、もしかしたらあるかもね。」とどっちつかずな返答をした。
「なまえさん、おいで。」
おいで、と言いながら降ろすのは花京院くんのハイエロファントなのに。ハイエロファントが、私をゆっくりと、ボートへと降ろした。
「おいおい。いいのか?承太郎。」
「……なぜ俺に聞く。」
2人は逃げ遅れた人がいないかと見廻りながら言葉を交わし、そしてどちらともなくボート脇の船へと飛び降りた。その直後、ついに船は音を上げ、少しずつ沈んでいったのだった。
沈んでしまった船の残骸が遠くに見える。また、ボートで漂流だ。あまりに早い展開に、思わずため息が出た。
「救助、早く来てくれますかね…?」
来てくれなかったら、私はまた空腹で辛い思いをする事になるのだ。考えただけで憂鬱な気分だ。
「そういえば…。」
私は先日の空腹時の出来事を思い出す。確かあの時、ジョセフさんが手を翳してくれた時、僅かだが、確かに気分が和らいだのだ。
「ジョセフさん。」
近くにいたジョセフさんに声をかけると、「なんじゃぁ〜?なまえ。」と嬉しそうな笑顔で応えてくれた。
「あの、この前の…私が空腹で死にかけてた時の、手の…。」
アレをなんと説明するべきか言葉が見つからなかったが、それだけでジョセフさんは察してくれたようだ。
「もしかして波紋の事かの?」そう言って右手を見せてくれた。
見ると、紫色の薔薇のツタの他に、電気のようにバチバチした何かが見える。
「このオレンジ色の…黄色の?バチバチしたものが波紋ですか?」
なんとなくだが、触れたら痛そうだ。
「そうじゃ。これがどうかしたか?」
「この波紋、効果はどんなものが?」
各々のスタンドに比べると一見地味だが、ジョセフさんがスタンドが発現しても尚、波紋を使い続けているのだから、何か有用性があるのではないかと思ったのだ。
その予想通り、なんでも波紋というものは、特殊な呼吸法を用いて血液の流れをコントロールするものらしく、その昔、吸血鬼を倒すほどのパワーがあったそうだ。100年前のDIOも、この波紋の力によって倒したというので驚いた。
そして治癒に用いることができるらしく、この前私にしてくれたのはその、治癒の波紋を流してくれていたようだ。他には、常に波紋の呼吸をしていれば老化が遅くなる、とも。
なるほど……。これはかなり使えそうだ。問題は…。
「その、波紋の呼吸。習得にはどれくらいかかりますか?」
「なんと!この波紋の呼吸を身につけたいというのか!?」
少し嬉しそうな声色、表情だが、同時に渋い雰囲気も醸し出している。
「波紋というものは、向き不向きがある。向いていれば1ヶ月でも習得可能だが…向いてなければ、一生使えんじゃろう。」
そういうジョセフさんは生まれつき才能があったらしく、さらにそこから修行して数日で大体のことはできたという。
まずは才能…そして努力と言うことか。
「ジョセフさん。お時間のある時で構いません。私に才能があるか、1度見て頂きたいです。」
あまり戦闘向きでない私のスタンド。波紋と合わせることで幅が広がれば、自分の身は自分で守れるのではないだろうか。もしかしたら、みんなの事も。
「もちろんじゃ。もし才能があれば、キツい修行になるがやってもらうからの〜?」
ニヤリと笑うジョセフさんはなんだか楽しそうだ。いや、嬉しいのかもしれない。
よろしくお願いします、と頭を下げると、大きい手でわしゃわしゃと頭を混ぜられた。
「?何してんだ?」
あちらはあちらで盛り上がっていたらしく、承太郎はいま私が頭を混ぜられているのに気がつき、背中合わせに座っていた私に少し体を傾けてくる。
「わぁ!重い!重いって!」
承太郎は重いし、頭はぐちゃぐちゃだし、おまけに髪の一部は色が抜けているし、散々だ!
ふと花京院くんを見ると、楽しそうに笑っている。
いつもの優しい笑顔も魅力的だが、楽しそうに笑っているのは初めて見た。かわいい。こんな事、本人には言えないが。
よく見ると周りのみんなが笑っている。
なんだかどうでも良くなって、私も笑ってしまった。
小さなボートに大男4人+女2人(内1人子供)でぎゅうぎゅうではあったが、その後大きな船が通りがかるまで、今度こそ束の間の休息を満喫した。