2部 出国からインド上陸まで
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SPW財団がチャーターしてくれたというクルーザーに乗り、我々は香港を出発した。
私はというと、昨日の飛行機墜落の時に充分に寝られなかったのに加え、先ほどお腹いっぱいにご飯を食べたので眠気に耐えられなくなってしまい、先日のベッドをお借りして仮眠を取っていた。
束の間の休息と思っていたので、久々に見たあの男の顔を見てたいそうゲンナリした気分になった。
「なまえ。」
私を呼ぶ声にハッとすると、あの部屋にいた。
DIOの部屋だ。相変わらず埃っぽくて、眉を顰めた。
今回の夢はどうやら、思うように動けるらしい。
「久しぶりだな、なまえ。」
まるで友達に話しかけるかのように親しげに話しかけてくる男、DIO。
今回は椅子に腰掛けて読みかけの本を持ちこちらを見ている。
「DIO…!」
見たくもない顔を見せられて、今までの経験、記憶が怒りの記憶を思い出させた。
「そんな顔をしないでくれよ。友達じゃないか。」
友達?何を言ってる。私はこんな奴と友達になった覚えはないし、なるつもりもない。この先も、絶対に!
「友達なんかじゃない。」
震えた声で答えた。震えたのは、怒りの感情で、だ。
DIOは読んでいた本を閉じテーブルへ置き「悲しい事を言うな。」と少し悲しむ顔を見せた。なぜ、そんな顔をするのか。私に構わないでくれ。関わらないでくれ。二度と顔も見たくない。
「分かった、なまえ。これから、これから仲良くなろう。時間をかけて、友達になろう。なまえ。」
友達。この男は花京院くんにもポルナレフにも「友達になろう。」と言って肉の芽を植え付けたと記憶している。友達になる、とは、まさか。
「私にも、肉の芽を?」
そう問うてみると、DIOは初めて、驚いたような表情を見せた。
「もう肉の芽の事を知っているのか。」と。
「あぁ、花京院には会ったかい?彼は私の友達でね。」
そう言うDIOの顔は、いつもの余裕な表情に戻っている。
「花京院くんは、貴方と友達になった事を後悔しているわ。もう顔も見たくないって。」と花京院くんの気持ちを代弁する。きっと花京院くんでもそう答えるだろうと思った。
「酷いなぁ。私はいい友達だと思っていたのに。」
そういう声は少しも残念そうじゃない。まるで笑い話をするかのように薄ら笑いを浮かべている。
「花京院くんもポルナレフも、貴方に操られていた。どうして、そんな事ができるの…?」
2人は自分の意思とは関係なく、承太郎とジョセフさんを殺すようにと操られていた。なぜそんな簡単に、人に人を殺させるような事ができるのか。
「いや、いい。聞いても理解できない。したくもない。」
聞いたところでろくでもない答えが返ってくる事は明白だ。想像しただけで吐き気がする。
「なまえ。」
「!!」
一瞬逸らした視線を戻すと、すぐ横にDIOが立っていて喉が詰まる。さっきまで、椅子に腰掛けていたのに。
距離を取ろうとすると腕を強く掴まれた。不思議と痛みはなく、これは夢なのだと実感した。
「なまえ、強くなったな。このDIOを前にしても、物怖じしないとは。」
ハッとした。確かに、いくら夢だと言っても、DIOは威圧感がある。静かな、笑顔の威圧。それで以前の夢でも恐怖していたはずだ。それが今は……。
私はDIOを見た。
「もう怖くない。私と貴方じゃ、絶対に力じゃ敵わないけど、私には、仲間がいるから。」
そう。以前は1人で抱えていたものを、今はみんなが分けて持ってくれているのだ。承太郎が必ず倒すと誓ってくれたのだ。
「貴方だけは絶対に殺す。たとえ私が先に死んでも、承太郎が必ず、貴方を倒すから。」
承太郎の名前にDIOは一瞬反応を見せたが、私の言葉に激高したりはしなかった。
むしろ「私を殺すか。面白い。」と声を出して笑っている。いちいち癇に障る男だ。
「肉の芽だが。なまえには植えないよ、絶対に。」
いきなり話が戻って何の話か分からなかったが、先程した私の質問に答えたのだろう。
「なぜ?」
肉の芽を植え付けるタイミングはあったはずだ。なぜあの時そうしなかったのか。私には疑問だった。
「植え付けて欲しいのか?」とニヤついた顔を睨みつける。
「それは、なまえ。君にはそのままでいて欲しいからだ。そのままでいてくれないと困る。」
そう言いながら私の頬を撫でる。ゾワゾワ、と、夢の中なのに鳥肌が立つ。
再度力づくで距離を取ろうとするも、DIOに掴まれた腕は外れなかった。
「なまえ。君はずっと、変わらずにいてくれ。強くなるのは大歓迎だ。」
別れの挨拶をするように、逃れようと藻掻く私の額に、DIOは1つ口付けを落とした。
彼の唇の冷たさに、また鳥肌が湧いてくる。
「さぁ、目覚めだ。なまえ。また会いに来てくれ。」
その言葉を合図に、DIOの手は離れた。
誰がわざわざ会いに来るか!!と捨て台詞を吐きたかったが、もう声は出ない。
DIOはどんどん遠ざかり、私は光に包まれた。