1部 DIOとの出会いから出立まで
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あの後本当に、家族で宿泊していたホテルまで戻ってきた。
別れ際に「またな。」と言って去っていったDIOの顔は相変わらず優しいもので、恐怖からかホテルに戻れた安心からか涙が出た。
「う、うぅ……」
その夜、私は家族と宿泊していた部屋で、1人で泣いた。朝日が昇るまで。
あの悪夢のような出来事のあと、どうやって帰ってきたのかまるで覚えていない。
傷だらけの体で自宅まで帰って、しんと静まり返った我が家に立ち尽くして、また1人で時間を忘れて泣き明かした。
その後友人である承太郎の家に行って事情を話し、聖子さんに手伝ってもらいながら家族のお葬式をあげた。
エジプトのホテルや自宅で散々流した涙は、葬式の間出なかった。
遺体はエジプトに置いてきてしまったので、家にあった家族写真や家族が大切にしていたものを棺に入れて燃やしてもらった、形だけのお葬式だった。
住人が私だけになってしまった家はとても広く、一人でいると孤独を感じてしまう。
遺品の整理を手伝ってくれた聖子さんはそんな私を見てものすごく心配してくれた。承太郎も同じだ。毎日学校が終わってから塞ぎ込んでしまった私に会いに来てくれた。
そしてお葬式から1ヶ月後、私の心も幾分落ち着いてきた頃、聖子さんは驚くような提案をしてきたのだ。
「なまえちゃん、私達と一緒に暮らさない?」
「えっ?」
驚いて聖子さんを見ると、いつもの優しい眼差しで、けれど眉尻は少し下がっていた。
「私は……。」
1人でも大丈夫です。そう言いたいのに言えない。
実際問題、16歳の高校生が一軒家に住んで、学費、水道、光熱費、食費、維持費をどう稼ぐというのか。
バイト代だってたかが知れている。学校を辞めたところで自立は難しいだろう。
何も言えないでいる私を聖子さんは優しく引き寄せてくれた。
「急に1人になっちゃったなまえちゃんを放ってはおけないわ。もう3年も貴方の事見てるんだもの。もうなまえちゃんの事、私の娘のように思ってるんだから。」
その言葉が温かくて、嬉しくて嬉しくて涙がとめどなく溢れてきた。
なんて、温かい人なんだろう。優しい人なんだろう。
私は思わず抱き着いて、縋るように泣いてしまった。
エジプトから帰ってきた日以来の、涙だった。