2部 出国からインド上陸まで
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ギギギ……
「わ。」
「おっと。大丈夫かい?」
嫌な音と共に平衡感覚がおかしくなる。
ふらついた私を抱きとめたのは、花京院くんだ。
「ありがとう。と、いうか…飛行機、傾いてません!?」
支えてくれた手を取りながらも、逆サイドにいるジョセフさんの腕に捕まって問う。
ジョセフさんも傾きに気づいていたようで、私の手を承太郎に掴ませてからコックピットの方へと走っていった。
え?まさか、だよね?
不安になって承太郎を見るが、一瞬視線が交わった後にコックピット方面へ歩き出した。
私の手を承太郎が掴んでいるので、ついて行かざるを得ない。花京院くんも連なって歩いていく。
1番前の座席まで歩いてきたところで「ここに捕まってな。」と言い、さらに前の方まで行ってしまった。
花京院くんは安心させるようにニコリと笑顔を浮かべ「アブドゥルさん、頼みます。」と言い残し、承太郎の後に続いた。
「アブドゥルさん…この飛行機、大丈夫でしょうか…?」
落ちないと一言言って欲しくて放った言葉だったが、アブドゥルさんは腕を組んで「うーん…。」と唸るだけだった。不安が倍増しただけだった。
既に涙目になりながらも、窓の外を覗き込む。
「ん?」
今、真ん中の通路を誰か通ったような…?
振り返るも、誰もいない。窓越しだったし、見間違いか…と思ったがアブドゥルさんが慌てた様子でコックピットの方へ駆けていった。なにやら騒がしい。
「なまえさん!こっちへ!」
少ししてから、花京院くんが私の所へとやってきた。
何やら少し焦ったような感じに、嫌な予感を感じながらも、私もみんなのいるコックピットへ向かった。
「ジョセフさんが飛行機を不時着する。すぐに救命胴衣を。」
やっぱり!!落ちるんだ!!
花京院くんの指示通りに救命胴衣を装着しようとするも、揺れと恐怖からかもたついてしまった。上手くできないという焦りから、余計に時間がかかっている。はやく、はやくしないと…!
「なまえさん。なまえさん、僕を見て。落ち着くんだ。」
花京院くんが私の頬を両手で挟み、至近距離で私を見つめている。
彼の瞳に、私が映っているのが見える。
「か、花京院くん…私、泳げない。どうしよう。」
「そうか。それは怖かったね。大丈夫。僕が君を、ハイエロファントで絶対に助ける。だから、落ち着いて。救命胴衣を、ちゃんと付けられるね?」
緊急事態に似つかわしくない彼の優しい声が現実味がなくて、なんだか恐怖が薄らいで、落ち着いてきた。
救命胴衣を着けようと視線を外せば、彼の顔と手は離れた。
「できた。」と顔を上げると「よくできました。」と頭を撫でられた。
とりあえずは一安心だが。
承太郎の側に立ち外を見ると、もう水面が見えてきている。
そろそろか…と心の準備を整えていると、左手を優しく握られた。花京院くんだ。
そういえば、まだ先程のお礼を言っていない。
「花京院くん、ありがとう。」
繋いだ左手に右手を添えて、両手で彼の手を包み込む。
彼は一瞬目を見開いたが、あの柔らかい笑みを浮かべ「どういたしまして。」と首を傾けた。
「手を繋いでたら、衝撃で花京院くんの手を握り潰しちゃうかも…。」と心配を口にすると「それは困るな。」と、ハイエロファントの触手を私の腰に巻き付けた。
「これで大丈夫。」ニコッと笑う花京院くんは、先ほどから私を安心させようとしてくれている。やはり、昨日彼の事を優しいと思ったのは間違いじゃなかったようだ。
「来るぜ!」承太郎の声を聞いて、皆近くに掴まった。直後、ものすごい衝撃があったが、私達は誰一人として欠けることなく、無事に不時着を終えたのだった。