2部 出国からインド上陸まで
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
最悪だ……。承太郎に出発を急かされ、大急ぎで荷造りをしたものだから、部屋着のまま出てきてしまった。
しかもバッグに入っていたのは学校の制服だった。
空港のトイレで着替えようと、バッグから服だけ引っ掴んでトイレに駆け込んだが、制服で海外へ行くなんて変じゃないか?
いや、承太郎も花京院くんも制服姿なのだ。部屋着で行くよりはいいだろう。
仕方なく、渋々、私は暫く袖を通していなかった制服に袖を通した。
「なまえさん。」
トイレから出て背の高い集団を探すとすぐに見つかり、逸れなくて良かったと思っていると花京院くんが気づいて手を挙げてくれた。
「なまえさんも制服なのかい?」
「うん。急いでたから、慌ててバッグに入れたのがこれで…。」
これじゃあ承太郎と花京院くんに合わせたみたいじゃあないか。それに、なんだかみんなが私を見る視線が優しい…。承太郎がみんなを改めて説得してくれたのだろうか?
出発前よりも歓迎ムードが漂っていて、私の覚悟が無駄にならなくて良かったと、胸を撫で下ろした。
「制服、かわいいね。」
花京院くんがコソッと耳打ちで、ファンが聞いたら卒倒するであろう言葉を言ってきた。
この男は自分の顔がいいのを分かっていないのだろうか。そんな訳ある?
「ありがとう。」
まぁお世辞だろう、と軽くお礼を述べると、なぜかちょっと寂しい、というような笑みを浮かべている。
えっ。なんか間違った事言ったか?と少し焦ったが
「そろそろ搭乗だ。行くぞ、なまえ。」
と、アナウンスを聞いて動き出した承太郎が私の手荷物を奪い、さっさと歩いていってしまった。
ジョセフさんもアブドゥルさんも、既に歩き出している。
「ちょっと、承太郎!花京院くん、行こう。」
「そうだね。」
花京院くんに声をかけ、承太郎を追いかけた。
ちらりと見た彼はもう、いつもの笑顔でホッとした。
承太郎は脚が長いから、気を抜くと置いていかれるのだ。
やっとの事で追いついた時にはもう搭乗口の前で、私は承太郎の腕を捕まえた。
「オイ。」
「承太郎捕まえた!私の荷物持って置いて行かないでよ。」
離してまた先に行かれたらたまったもんじゃない。
絡ませた腕を離すまいと、腕をぎゅっと掴んだ。
「悪かった。だから離せ。」
そういえば、承太郎はよく取り巻きの女の子たちにこんな風に腕を組まれて怒っていたなぁ。と思い出した。
もしかしたらこの状況は承太郎からしたら所謂「うっとおしい」のかもしれない。
ちょっとからかってやろう。
「ねぇ承太郎、うっとおしい?」
「は?」
「こうやって腕を組まれるの、うっとおしい?私承太郎に言われた事ないから、一度でいいから言われてみたいんだけど。ねぇねぇ。」
「やかましい!」
出た。取り巻きが承太郎に言われたいセリフ第1位のうっとおしいに続き第2位のやかましい!
よほどうざかったのか、承太郎は無理やり私の腕から逃れた。
「承太郎。女の子にそんな言い方は頂けないな。」
後ろから花京院くんが承太郎に注意したが、承太郎は軽くこちらを見やってため息をついただけだった。
学生組でそうこうしていると、すぐに搭乗の順番がきた。
「行こう。」
今度は私が先陣を切って歩き出す。
飛行機の中へ乗り込み座席を探すと、3、2で座席が前後に分かれていた。
「「なまえ(さん)。」」花京院くんと承太郎の声が重なる。
何これモテ期到来?と呟いたのが聞こえたのか、承太郎に軽く睨まれた。ゲンコツじゃなくて良かった。
「お2人ともそれでいいですか?」とジョセフさんとアブドゥルさんに問うと、ジョセフさんは若干渋ったが最終的には了承してくれた。
そして承太郎と花京院くんに挟まれるように、私は席に着いた。