1部 DIOとの出会いから出立まで
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「花京院さん。まだ起きてる?」
夕食・入浴後、私は花京院さんのいる部屋を訪ねた。
「みょうじさん?はい、起きてます。」
良かった。今日はあんなことがあったから、疲れて眠ってしまっているかもしれないと思っていたのだ。
「入りますね。」と一声かけ、襖を開けた。
「これ、承太郎の部屋着と、タオルとお湯、持ってきました。」
いつまでも学生服でいる訳にはいかないと、承太郎から半ば無理やり奪ってきた部屋着を手渡した。
「私向こう向いてますから、着替えちゃってください。着替え終わったら洗濯機回しに行くので、その間に体拭いちゃってくださいね。」
そう言って背を向けると「分かりました。」と素直に従ってくれる。
学校で承太郎と相当なバトルを繰り広げてきたらしく、見えない体の内側にもダメージを負っているらしい。
たくさん血を流したあとでお風呂で倒れても大変だと、体を拭く事に決まったのは夕飯時の事だった。
パサ、と衣擦れの音が静かな部屋に響いた。
おや?この状況、中々に恥ずかしいのでは?
薄暗い部屋で、男女が2人きり。1人は服を脱いでいる。
花京院さんにその気はないものの、この状況を承太郎に見られでもしたら烈火のごとく怒られるに違いない。最悪ゲンコツかも…と恐ろしい想像で邪念を打ち消す。
少しすると「着替えました。もういいですよ。」と柔らかな声が聞こえた。
振り返って見ると、承太郎の部屋着が驚くほど似合わなくて思わず笑ってしまった。
「花京院さん、似合わないですね。」
と口にすると、花京院さんは眉を下げて困ったように微笑んだ。
笑顔が素敵な人だな。と思った。
聖子さんのような天真爛漫な笑顔も好きだが、花京院さんの笑顔は、なんというか、柔らかいのだ。
周りの空気も柔らかくなる気がする。
花京院さんの笑顔につられてへにゃ、と笑い、「じゃあ私、脱いだ服を洗濯機に入れてきます。」と服を受け取って部屋から出た。
花京院さんの制服には、至る所に血が着いている。
これは、シミ抜きしないと取れないだろうか?一度浸け置きしてみようか?と思案していると、いい匂いがする事に気がついた。
なんだか高級そうな、品の良さそうな匂いがする。男の人の服からする香りとは思えない。男くさくない!
洗濯機の前で花京院さんの制服を持って立ち止まっていると、タイミング悪く承太郎が階段を降りてきた。
お風呂に入りに降りてきた承太郎に「なにしてんだテメー」と睨みつけられた。
あ、危なかった。うっかり花京院さんの制服に顔を埋めて嗅がなくて良かった……!
花京院さんも今日出会ったばかりの女に、脱いだ服の匂いを嗅がれるなんて気持ち悪いだろう。私だったら軽蔑する。
「なんでもない。花京院さんの服、洗濯しにきただけ。」
ツンとした態度でそう言うと「なんでテメーが。」と睨まれた。
「花京院さん、学校で怪我して体がボロボロなんだって。」
誰がやったのかな〜とまるで他人事のように承太郎を見るとこちらを睨みつけたあと舌打ちをして風呂場の方へ去っていった。風呂場の戸を閉める時に、大きな音を立てるのを忘れずに。
ハァ、とため息をつき、桶にお湯を張り、しみ抜きをする。
よかった。意外とここにあるもので取れそうだ。
「花京院さん、終わった?」
襖の前で声をかけると、中から「あぁ。」と短く返事が聞こえた。
「ありがとう。さっぱりしたよ。」
目を細めて笑顔を浮かべる花京院さんは、桶を持って立ち上がった。こうしてみると、結構身長が高い。
「花京院さん、私がやるから置いておいて。」
そう言って桶を花京院さんから奪おうとするも、「お手洗に行きたいからついでだよ。」と躱されてしまった。す、スマートだ……。
「洗面台はこっち?」「あ、向こうです。」と空条家を案内し、花京院さんについてまわる。まるで犬のようだ。
花京院さんをお手洗へ案内し、「台所にいます。」と伝え一人で台所へとやってきた。
先ほど夕食を食べたのだが、あいにく私は消化が早いのだ。おそらく体質のせいだろう。
そうでなくとも、今日はいつもの倍の人数がいたので遠慮していたのだ。
冷蔵庫を開けると「なまえちゃんの分!」と聖子さんのメモと大皿に乗ったおかずが目に入った。
さすが聖子さん!私の事分かってる!
食器棚からどんぶりを出し、炊飯器のお米をよそった。
「みょうじさん?」
お手洗いから出た花京院さんが台所を覗く。
「ああ、花京院さん。一緒に食べますか?夕食の時、足りなかったでしょう?」
「いいのかい?」
夕食の時、花京院さんが遠慮してあまり食べていなかったのに気付いていた。なんていい人なんだ。
「いいんです。花京院さんは栄養あるものを食べなきゃ!」
そう言うと花京院さんは「…そうだね。ありがとう。手伝うよ。」と食事の用意を手伝ってくれた。
「ありがたいけど、そんなには食べられないよ。」という花京院さんに「これ、私の分…。」と返すと驚いた顔をしていた。そして「ごめんね。」と少し申し訳なさそうな笑みを浮かべた。