1部 DIOとの出会いから出立まで
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あの喫茶店での出来事から早3日。
承太郎は普通に学校へ行っている。
聖子さんの行ってらっしゃいのキスを見て、「私もしてあげようか?」と聞いたらものすごい睨まれて無言で戸を閉められた。
このやり取りをジョセフさんに見られて承太郎と付き合っていると勘違いされ、誤解を解くのに苦労した。
解いたあとはジョセフさんはとても残念がっていたが、知ったこっちゃない。私は承太郎以上の、私の王子様が現れるのを待っているのだ。
この3日の間で、喫茶店で中座してしまった事情や私に起こったこと全てを話した。
ジョセフさんは「こんなか弱い女の子が...。」と悲しんでくれたが、か弱くはない事の証明にリンゴを手で割ってみせた。
偶然通りがかった聖子さんは「なまえちゃんすご〜〜い!」と褒めてくれて照れくさかったが、ジョセフさんとアブドゥルさんは若干引いていた。
ともあれ、ジョセフさん達も私もDIOとの繋がりがあることが分かったので、これからはなにか異変や進展があれば情報を共有する手筈となった。
承太郎が学校へと向かって1時間と少しした頃だろうか。
聖子さんの焦ったような声と、承太郎の声が聞こえてきた。
承太郎?学校へ行ったのではなかったか?不思議に思い声のする方へ行くと、怪我をした承太郎と、その承太郎に担がれた承太郎よりも酷い怪我を負った男性と、聖子さんの姿が見えた。
「な、なにがあったの...!?」
話を聞こうとしたが、どうやらスタンド関係らしく聖子さんの前では詳しいことは話すつもりはないらしい。
ジョセフさんの元へ連れていく、とそのまま歩き出して行ってしまったので、とりあえず私は救急箱を持って承太郎の後を追いかけた。
部屋に入るとなんだが重苦しい雰囲気で、ジョセフさんは「コイツは助からない。」と断言した。
ジョセフさんが眠っている彼の前髪を避けると、何やら虫のようなものが動いているのが見えた。
「うっ...。」
気持ち悪い...そしておぞましい.....。
ジョセフさんはそれを肉の芽と呼び、DIOがこれを使って彼を操っているのだと言った。
なんて奴…DIO…。許せない…。
DIOへの怒りの感情が、フツフツと湧き上がってくる。
承太郎を殺そうとしてきた彼、花京院さんは、なにも知らずにDIOに操られ、人を殺してしまうところだったのだ。
自分で殺さず、人の心を操って人に殺させるなんて...!!!怒りで手が震えてくる。
アブドゥルさんも数ヶ月前、DIOに出会っていたと語る。話を聞いていると、自分がDIOと対峙していた時の記憶が蘇る。アブドゥルさんのそれは、自分の事のように、想像しただけで恐ろしく、体の震えを抑えることもできずに、ただただ手を握りしめた。
「なまえ。」
承太郎の声に顔を上げると、承太郎は私の手を取っていた。血が出ている。強く握りすぎたらしい。
「俺がこの肉の芽を引っこ抜く。」
そう言って承太郎は彼、花京院さんの顔を抑えた。
それを見て私も花京院さんの頭側へ移動し、承太郎の手と同じように花京院さんの頭を抑えた。
「承太郎!なまえ!」
ジョセフさんは危険だと言うが、DIOに利用されてしまった彼を助けられる方法がこれしかないのなら、試す価値はある。私は承太郎を信じている。
「彼を、助けたいんです。」
そう言うとなにも言えなくなったのか、部屋の中は静寂に包まれた。
「行くぞ。」
承太郎がスタンドで肉の芽を掴むが、肉の芽は触手を伸ばして、承太郎の中に入り込もうとしている。
(コイツ……!)
ジョセフさんによれば脳を目指しているのだという。
花京院さんが目を開けたが、承太郎は手を止めない。
触手はさらに承太郎の腕を登っていく。
(私も、スタンドを!)
私がスタンドを出して承太郎の腕の中の触手を掴むと、今度は私の腕にも触手が伸びた。
痛い…!が、そんな事は言ってられない。もう一方のスタンドの腕で、自分の腕に刺さる触手を掴んだ。
もう少し...あと数センチ...!!
「抜けた!!」
承太郎は肉の芽を抜き取ると2人分の触手も引き抜き、ジョセフさんへと投げつけた。
どうやら、肉の芽は無事に取れたらしい。
「良かった……!」
思わず花京院さんを見下ろすと、信じられないというような顔をしている。
「良くねえ!こっちに来い!手当てだ!」
承太郎は怒っている。私が傷を負いながらも手を出した事にだろう。
「そんな怒らないでよ!もし承太郎の脳に寄生されたら、誰が取るの?寄生されて承太郎に暴れられたら、誰も止められないんだからね。」
そう反論するが「そういう事を言ってるんじゃあねえ!」と一喝された。手当てをしながら。
ムクリと花京院さんが体を起こした。良かった。すぐに動けるみたい。
花京院さんは言いづらそうに、なぜ危険を犯してまで自分を助けたのかと問うた。
承太郎はしばしの間を置いて「さぁな。」と言う。自分でも良く分からないと。花京院さんが私を見た。
「私は……。花京院さんと自分が重なって見えたから…。私が怪我をするだけで済むのなら、貴方の命が助かるのなら、手助けをしたいと、思ったんです。」
もしかしたら、花京院さんは私だったかもしれない。
なぜあの時、DIOが私に肉の芽を植え付けなかったのかは分からないが、植え付けられていた可能性だって十分にある。そう思うと、遅れて背筋が冷えた。
「承太郎には怒られちゃったけど、花京院さんが助かって、死ななくて良かった。」
なんだか偽善者のような言葉だが、自然に口から出た言葉だ。
花京院さんは承太郎と私を交互に見、目に涙を浮かべて俯いた。