1部 DIOとの出会いから出立まで
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朝の気配に、ゆっくりと目を開ける。瞼が重く、いつもより視界が狭い。
目だけで辺りを見回すと、私の部屋じゃない。あぁ、そうか。昨日は承太郎を迎えに警察署…拘置所に来たんだ。
聖子さんに心配かけちゃったな…。「パパに助けてもらう。」と言っていたから、今日か明日には聖子さんの父、承太郎の祖父は来るだろうか。
瞼は重いだけでなく、ヒリヒリとした痛みを感じる。喉も痛いし、拘置所の中だし、最悪の目覚めだ。
さらに少し肌寒く、軽く自分の肩を抱いた。
(そういえば、承太郎は?)
視界の中には承太郎を捉えられず、もしかして承太郎も寝ているだろうかとゆっくり寝返りを打った。
「起きたのか。」
いた、承太郎だ。いたも何も、ここは元々承太郎が使っていた場所だった。
目の前の承太郎は窮屈そうに横になりながらも肘をついてこちらを向いている。学ランは着ていない。
脱いだ学ランは私にかけてくれたようだ。というか、もしかして私が掴んで離さなかったのではないだろうか?…ありえる。
「承太郎、ごめん。返す。」
起き上がりながら承太郎の学ランを返そうとすると、「黙って着ていろ。」と突き返し、拒否された。
さっき私が寒くて自分の肩を抱いたのを見ていたのだろう。承太郎は優しいのに、伝え方が不器用なんだよな。
「ありがとう承太郎。」
少し寒かったから助かった。
「腹減ってるだろう。昨日の夕方から今まで寝てたんだ。食え。」
ベッドから起き上がった私へ、承太郎はサイドテーブルを指さした。ランチパックがある。しかも3種類も。拘置所で出てくる食事としては不釣り合いな気がするが、もしかして承太郎の"悪霊"が外から持ってきた物だろうか?
食べ物を前に急に空腹感を感じ、有難く戴いた。
黙々とパンを頬張る私を、承太郎はしばらく眺めていた。なんだか食べづらい。パンと、一緒に置いてあった紙パックのジュースをお腹に収めると、いくらか元気が出た。
特にすることもないので、昨日の話の続きをするだろうとベッドにいる承太郎の元へ戻った。
歯磨きもしたいし顔も洗いたいし、何よりお風呂に入りたい。こうなったのは自分のせいだが、聖子さんには切実に、早く戻ってきてもらいたいものだ。
昨日の話の続きでもするだろうかと、承太郎のいるベッドへ戻ると「ヒデー顔だな。」とバカにされた。
そんなの、私がよく知っている。デリカシーってもんがないのか。この男は!
「冷やしたい。」
牢の中の手洗い場で顔は洗ったが、あまり変わらなかった。
承太郎が自分の"悪霊"を牢の外へ出した。しばらくすると帰ってきて、手には冷蔵庫に入っていたであろう冷えたコーラを数本抱えていた。
「そんな事もできるの!?」
思わず大きな声が出るが、承太郎は涼しい顔で雑誌を読んでいる。さも当たり前というような態度が少し憎らしがったが、なんにしてもありがたい。
紫の"悪霊"からコーラを1本もらいベッドに腰掛け、目を閉じて痛む瞼に瓶を押し当てた。冷たくて気持ちいい。
「クッ…!」
漏れ聞こえてきた承太郎の笑い声に、隙間から視線を送ったがもう目線は雑誌へと戻っていた。
どれだけの間そうしていただろうか。
痛みもマシになってきたので瓶を離し、目を開けた。
「承太郎、どう?かわいいなまえちゃんに戻った?」
ウインクして聞くと一瞬こちらを見やり「知らん。」と一言。冷たすぎる。
「あーあ。昨日の優しい承太郎はどこいっちゃったのー!」
不貞腐れた顔で言うと苦い顔で「…忘れろ。」と目を伏せた。承太郎はポーカーフェイスだが、心を許した人の前では結構顔に出る。今は照れているようだ。
「あー恥ずかしいんだ!私は優しい承太郎の方が好きだけどな〜。」
その事が私は嬉しくて、承太郎の色んな顔が見たくて、いつも必要以上に絡んでしまう。聖子さんもきっと承太郎のこういう所がかわいくて仕方がないのだろう。
「ねーねー承太郎〜!」
「うっとおしい!」
あとで聖子さんに、昨日の出来事を教えてあげなくては!