生存IF
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ソワソワ、ウロウロ。
私はつい先ほど、この学校を卒業した。
卒業式に来てくれた聖子さんは、私の卒業を心から喜んでくれ、涙まで流してくれた。
だというのに、「じゃあ、先に帰るわね。」とウインクを残して、本当に先に帰ってしまったのだ。
「ここで待っててね。お迎えが来るから。」と校門前を指定されたので、ここで待っている。
聖子さんの言う迎え、とは…典明の事でいいのだろうか。1年前の、口約束。
この1年の間、何度か典明には会ったし電話もした。
だがその口約束の事は、1度も話題に出たことはない。しないようにしていたのだ。典明が。
本当に来てくれたら、あまりにかっこよすぎる。王子様すぎる。でも、きっと来るだろう。典明は。
まだ彼は来ていないというのに、既に心臓がドキドキしている。
「なまえ。」
「わっ!」
緊張しすぎて壁の方を向いていて、人が来ているのに気がつかなかった。この声は、典明だ。ドキドキしながら、後ろを振り返ると、やっぱり、典明がいた。
手には大きなバラの花束を持っていて、彼によく似合っている。
「ふふ、久しぶりだね。卒業おめでとう。」
典明はバラを片手で持ち、両手を広げる。
「…典明、会いたかった…!」
最後に会ったのは夏休み中、8月だった。久しぶりの典明の胸に、思い切り飛び込んだ。
「ははっ、僕も、会いたかったよ、なまえ。」
久しぶりの彼の匂いを、肺いっぱいに吸い込んで、彼を補給した。いい匂い。好き。
「また嗅いでる。」と典明は言うが、どんな匂いよりも典明の匂いが好きなのだ。それも、典明本人からする匂いが。
「なまえ。顔を上げて。」
キスをするのだろうと、顔を上げて目を閉じると一瞬典明の笑う声が聞こえて「いい子だね…かわいい…。」と囁いた後、唇が重なった。
「なまえ。大事な話があると言ったのを、覚えてる?」
彼の言葉に、ドキッとした。覚えてるも何も、その言葉を日々思い出して、典明のいない生活を過ごしてきたのだ。忘れるはずがない。
「覚えてるよ。ずっと。」
その言葉に、典明は嬉しそうに、柔らかい笑顔を浮かべた。とても、綺麗な笑顔だ。思わず見とれてしまう。
やがて典明は体を離して、バラの花束を両手で持った。私の鼓動が、早くなっていくのが分かる。同時に、涙が出る予感も感じている。
「なまえ。僕は、君に出会えてとても幸せだよ。出会った時から今まで、ずっとだ。僕はもう、君がいないと生きていけないぐらい、君を愛してる。」
そこまで聞いたところで、涙が頬を伝ってくる。それでも、典明は言葉を続けるので拭うことはしなかった。
「約束するよ。なまえ。僕は絶対に、生涯、君だけを愛し続けるし、ずっとそばにいる。だから、なまえ。」
典明は、そこで一度言葉を区切り、一歩近づいてくる。
「僕と、結婚してほしい。」
花束が、こちらに差し出される。
私はそれを、確かに両手で受け取った。
あぁ、ダメだ。典明は色々、素敵な言葉を言ってくれたのに。幸せすぎて、言葉が何も出てこない。出てくるのは、涙だけだ。
「典明…ありがとう……私も、あなたと結婚したいです……。私を、あなたのお嫁さんにしてください…!」
涙で、典明の顔は見えないが、長いため息のあと、力強く抱きしめてくれた。
あぁもう。好き。本当に。私の一番大好きな人。愛しい人。大切な人。
バラが潰れてしまわないように、片手で持って典明の背中へ回し、私も抱きしめ返した。
幸せだ。本当に。世界一幸せ。彼と出会えて、本当によかった。DIOという存在がなければ、決して出会うことはなかっただろう。そう考えると、私はDIOに、感謝しなくちゃならない。花京院典明に出会わせてくれて、ありがとう、と。私をスタンド使いにしてくれて、ありがとう、と。
「なまえ、左手を。」
スンスンと鼻を鳴らしながら、左手を差し出す。前は間違えてしまったが、今度は間違えない。
スッ、と左手の薬指に嵌められたのは、エメラルドとダイヤモンドが並んだ指輪だった。まるで私達2人のスタンドのようだ。
「典明…ありがとう…。今よりもっと、幸せにします。」
「僕の方こそ。ありがとう、なまえ。僕も絶対、君を幸せにするよ。」
典明はハンカチで私の涙を拭ってくれて、やがて拭き終えると私の腫れた瞼にチュ、とキスを落とした。
「さ、帰ろう。みんな、君の帰りを待ってるよ。」
典明はそう言って、近くに停めたという車まで、私の手を引いて歩いていく。待って、みんなって?誰か来ているのか?そう典明に問うも、彼は内緒、としか言わない。誰か来ているのなら腫れた瞼をなんとかしたいのに。
そう思っていたのに、家へ帰ると聖子さんとイギーの他に、2年前の旅の仲間、承太郎、ジョセフさん、ポルナレフがいて、久々の再会が嬉しくて、そしてみな、私達の結婚を泣いて喜んでくれたので、結局また、私も泣いてしまった。
その後、大人達はお酒も入り、時計の針が天辺を超えるまで、思い出話で盛り上がって、大騒ぎをしたのであった。
-完-