生存IF
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「なまえ。上だ、上に逃げよう。」
息を整えた2人は、既に建物の屋上にスタンドを伸ばしていた。
ハイエロファントの触手は、既に私の腹に巻きついていた。その事に気づいた時にはもう、私は彼に引き上げられていた。
トン、と屋根に着地すると、背後から嫌な視線を感じた。チラリと下を見ると、DIOがこちらを見上げていて目が合った。
⋯早くこの場を離れよう。
グ⋯と足に力を入れると、足でも空間を掴めることに気がついた。これを利用すれば、私も空中を移動できる。と、思ったのに、腹に巻きついたハイエロファントは解ける様子はなく、そのまま引っ張られたので大人しく従った。
後ろから、DIOがついてくるのが見える。
「なまえ。」
突然、小さな声で典明が私を呼ぶ。危うく聞き逃しそうなその声に、何かあったのかと彼を見ると、思いのほか近くに顔があって驚いた。
「ありがとう。」
そう言って笑う彼の笑顔はとても綺麗だ。思わず見とれてしまう程に。
「どうしても、今言いたくなったんだ。」
そう続けた彼は、既にもう前を見ている。
「うん⋯。私も、ありがとう。」
私の返事に彼は、小さく息を飲んで、うん。と私と同じように返事をした。
ハイエロファントは、触手を時計台へと伸ばし、そこで一旦着地した。
ここに、法皇の結界を張るようだ。
典明は結界を張るために、ハイエロファントと飛び出して行った。
今、私に何かできることはないだろうか。
典明て挟んで反対側には、ジョセフさんが身を隠して待機しているのが見える。
私も、時計台に隠れて待機していよう。
やがて、典明は結界を張り終えて戻ってきた。
視線をさ迷わせて私の姿を探しているので、ヒョコ、と顔を出して「ここにいるよ。」と教えると「ふ⋯君はこんな時でもかわいいな⋯。」と表情を崩した。
「⋯典明は、どんな時でもかっこいいけどね。」
と心の声を漏らすと、彼は「ありがとう。」と笑顔を見せた。本当に、かわいくて、綺麗で、そして世界一かっこいい人。
「僕は、中央でDIOと対峙する。くれぐれも、気をつけて。」
そう言った典明は自然な流れで、私にキスをし、離れていった。
こんな状況でも、本当にかっこいい男だ⋯。
私は再び、時計台の窪みに身を潜ませた。
DIOのザ・ワールドの能力の謎を、典明が解いてくれると信じて。
「典明!!」
なんだかマズイ気がする⋯!DIOがザ・ワールドを発動しようとしているが、このままだと典明は殺される⋯!そんな予感がして、私は瞬時に飛び出した。
波紋の呼吸を足に集中させ、一気に跳躍し、私は典明を抱きしめた。
「なまえ!なんで⋯!」
あまりの勢いに、左へと体が傾いたかと思うと、急に方向が変わり、典明の後ろの方へと吹き飛ばされる。
こ、これは⋯!
進行方向を見ると、このままだと、給水塔に激突する。
私はもう一度、足へと呼吸を集中させ、給水塔にぶつかると同時に給水塔を蹴った。
「グッ⋯!」
力加減を間違えた。私達はそのまま、隣の建物まで吹っ飛び、屋根に体を叩きつけられた。
背中が痛い。呼吸ができない。しかし、この背中の痛みは⋯⋯。
「なまえ!君はまた、無茶を⋯!」
彼は床に手をついて立ち上がろうとしているが、体が痛むのだろう。なかなか立ち上がれずにいる。
チラリと後ろを見ると、DIOはジョセフさんと対峙しているようだった。
痛みに耐えていると、段々と呼吸が安定してきた。
「典明!私の背中を見て!」
時間がない。私は素早く起き上がり、着ている制服をたくし上げて典明に背中を見せた。
「!これは⋯!足⋯靴の跡だ。君、DIOに蹴られたのか!?」
道理で痛いわけだ。クソ、痕が残ったら一生恨む。
「蹴られた感覚は、なかった。ただ、痛むだけ。もしかして、ザ・ワールドの能力は⋯。」
そこまで言って典明を見ると、彼は切られた結界を見ていた。
私も彼に倣って結界を見ると、中央から綺麗に消えていく事に気がついた。
「あの数の触手を、全部同時に⋯?」
やはり、能力の正体は⋯。
「時間を⋯時を止めている⋯?」
口にすると、あまりに厄介で、恐ろしい能力だと、体が震えた。
「典明、立てる?ジョセフさんが時間を稼いでくれているけど、そろそろ限界みたい。」
体の震えを誤魔化すように典明に声をかけると、彼は痛む体に鞭を打ち、体を立たせた。きっと、かなり無理をしている。
案の定、片膝をついて息を上げている。
「典明、無理をしないで。きっと、骨が何本か折れているでしょう。とりあえず⋯あの時計、ハイエロファントで破壊できる?それできっと、ジョセフさんには伝わる。」
典明の腕を私の肩に回して立たせると、彼は悔しそうな顔をしていたが、なんとか、エメラルドスプラッシュで時計は破壊できた。
それを見たジョセフさんが、こちらとは反対方向へ移動する。
私達も、一度距離を取ろうと、私は典明を抱き上げて大きく後ろへ跳躍した。さぁ、DIOはどちらへ行くだろうか。
チラリと見たDIOは、ジョセフさんと私を見、向こうへ行った。助かった。そのまま300メートル程移動したところで、私達は屋根へ着地した。
「君⋯強くなりすぎじゃあないか?」
不満そうに典明が言うものだから、思わず笑ってしまった。だが続いた「僕よりもずっと、君の方が王子様じゃあないか。」という言葉は全力で否定した。典明が王子様じゃなくちゃ、私が困る。
「で、体はどう?動ける?動けないなら、私が今みたいに連れていくか、SPW財団に治療してもらうかの二択になるけど。」
典明を床へ下ろすと、やはり立てない。足をやっているようだった。気休めだが、治癒の波紋を流す。
「ハァ⋯情けない⋯。このまま君について行っても、邪魔になるだけだ。治療を受けるよ。」
そう言った彼は本当に悔しそうにしているので、なんだか申し訳なく思った。
「うん。分かった。ここのすぐ近くにいるはずだから、行こう。」
私も、背中が痛む。痛み止めの塗り薬ぐらいは塗ってもらおう。
もう一度典明を抱き上げ、床を蹴って跳躍した。
典明は大人しく私の腕の中に収まっていてかわいらしく思った。確かに典明の言う通り、今のこの状況は、私が王子様で、彼がお姫様のようだと思った。