5部 DIOの館
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1週間の入院で、傷はほぼ完治した。驚くべき回復力である。DIOに吸血鬼にされてねえよな?という承太郎の言葉に、真剣に記憶を辿ってしまった程には、回復力が本当に早い。
なんにしても、体は回復した。そして、退院だ。聖子さんのいる空条家へ、ついに帰れる。
ジョセフさんと承太郎は、特に入院などはせずに、空条家へと帰っているので聖子さんとは顔を合わせている。私は、約2ヶ月聖子さんとは会えていないので、少し緊張する。楽しみで仕方ないのに、だ。
迎えにきてくれた承太郎と、イギーと、SPW財団の車に乗り、病院を後にした。
「ピアス、増やしたのか。」
承太郎の問いかけに、思わず耳に手を当てる。
そう、右耳には典明の着けていたピアスを着け、左耳には穴を増やし、赤色の宝石のピアスを並べて着けたのだ。どちらも典明に貰った、大事なものだったので、穴を増やす事にしたのだ。
「うん。全部着けたくて。」
本当は、聖子さんに貰ったピアスも着けたかったが、あまり穴を増やしても⋯と思い、とりあえずやめておいたのだ。
そして、典明の学ランだが。洗いたくないが血は落としたいと、かなりの難題を主張したのだが、SPW財団は、それを1週間やってのけたのだ。しかも、空いてしまった穴も修復してくれた。本当に、頭が上がらない。
眼鏡も、レンズを交換し、歪みも直った状態で返ってきた。全て、私の望み通りだ。
「あの、何から何まで、本当にありがとうございました。感謝してもしきれません。」
いざ車を降りる時、財団員さんに感謝の言葉を述べた。本当に、彼らには何度も助けてもらった。
「いえ。私達では、DIOを倒す事はできなかった。私達も、貴女方に感謝しています。何かあったら、すぐにご連絡下さい。そして、あの話も、いい返事をお待ちしています。」
お互い感謝を述べ、それぞれ分かれた。私達の旅は終わった。これで、本当に終わったのだ。
「あの話って?」
承太郎が疑問を口にした。先程の財団員の言葉が気になったのだろう。
「あぁ。卒業したら、SPW財団に来てほしいって。」
私はこの2ヶ月で、見違えるほどに強くなった。自分でも分かる。そして、打たれ強くなった。これは、波紋の修行のお陰だろう。
「そうか。行くのか?」
承太郎は心配しているようだ。SPW財団は、アメリカに本社がある。1人で行くのか?と言いたいのだろう。
「うん⋯。多分、ね。」
まだ断言はできないが。選択肢のひとつとしてはなかなか良い選択肢だろう。まだ、高校1年生。将来を考えるのは、少し難しい。
「そうか。」
そんな胸の内を知ってか知らずか、承太郎は興味をなくして歩き出した。もう、空条家は目の前だ。私も承太郎の背中に追いつこうと、足を踏み出した。
「なまえちゃーーーん!!!」
空条家の門を潜るなり、聖子さんが飛び出してきて私に抱きついた。かわいい。少し、痩せたのではないだろうか、と心が痛んだ。
「聖子さん⋯ただいま。」
優しく背中に手を当ててさすると、聖子さんは泣き出してしまったので、承太郎がすかさず中へ入るように促した。外で大声を出して泣いているのは、さすがに近所の目が気になるのだろう。私は泣いている聖子さんの背中を押し、約2ヶ月振りに、空条家へと足を踏み入れた。
「なまえちゃん、入院したって聞いて、心配してたのよ!」
聖子さんは怒っているらしい。プンプンと効果音が聞こえてきそうで、全然怖くない。
「ごめんなさい⋯。でも、もう完治しました。」
私は一度折れた足も、肋骨も、名誉の負傷だと思っているが。それを言うと怒られるので、黙っていた。
「⋯ なまえちゃん。花京院くんの事聞いたわ⋯。とても、残念だったわね⋯。」
続いた気遣わしげな聖子さんの言葉に、私は胸が詰まった。承太郎達から、話を聞いたのだろう。
「聖子、さん⋯⋯私、私⋯ッ!」
聖子さんに話を聞いてもらいたくて話し始めたが、言葉が出てこなくて、代わりに涙ばかりが溢れてくる。
「私ッ⋯典明の事、好きでした⋯!今も⋯!今も好きなんです⋯ッ、愛してる⋯!」
聖子さんが差し出してくれたハンカチでは拭いきれない涙が、私の頬を伝う。
ふと、背中に温かい感覚を感じて顔を上げると、典明の姿があった。
「あら、花京院くん。」
聖子さんは口に手を当てて驚いているが、この驚き方を見るに、事前に承太郎から説明されていたのだろう。
典明は、聖子さんに丁寧にお辞儀をしてから、私に向き直った。
「なまえ。泣かないで。僕はここにいる。大丈夫。」
大丈夫。彼のその言葉に、涙が段々と落ち着いていくのが分かる。彼の言う大丈夫、という言葉は、私にとって一番の薬なのだ。
「本当に、大好きで、大事なのね、お互い。」
私達を見守る聖子さんは、優しい声でそう言った。
「はい。」
私も典明も迷いなく返事をした。典明の声は、聖子さんに聞こえてはいないだろうけど、典明の優しい笑顔を見て、ちゃんと伝わっただろう。
「ありがとう。なまえちゃん、花京院くん。私のために。」
聖子さんのその言葉で、止まった涙がまた、出てきそうになる。私達は、聖子さんを守るために、旅に出たのだ。
「旅での思い出、たくさん聞かせてくれる?」
お茶でも飲みながら、と付け加えた聖子さんに、私は「はいっ!」と返事をして立ち上がった。
私と、聖子さんと、承太郎と、典明と、別の部屋にいるというジョセフさんも呼んで、みんなで旅の話をしよう。庭にいるイギーも、忘れずに。