5部 DIOの館
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「奴の呼吸音は……。」
DIOがそう言ったのを合図に、私と承太郎は呼吸を止めるが、
「では、心臓の鼓動音は……」
続いたその言葉に、思わず冷や汗が流れた。承太郎は、「スタンドで掴んで止めろ」と無茶な事を言う。
ここに飛び込まなきゃ良かった…!と心から後悔した。
自分の心臓を掴むと、当たり前だが苦しい。が、呼吸を乱してはいけない。暴れる心臓を必死に抑え込んで止めていると、次第に、意識が遠くなってきた。あぁ、死ぬって、こんな感じなんだな……とクリアな思考で空を見た。このままこうしていれば、典明と一緒に、天国に行けるのだろうか……。
「なまえ!もう放せ!」
承太郎の声にDIOへ視線を向けるともう確認は終わっていたようで、心臓を掴む手を緩めた。徐々に、血が体内を循環していくのが分かる。静かに呼吸をすると、いつも通りの血の巡りになるのが分かる。生きている。
「何ィィイーーーッ!!?」
遂にきた。DIOを叩くチャンスだ!私達の死を確認し射程圏内まで踏み込んできたDIOを、スタープラチナとクイーンが押さえつけた。
気がつくとDIOは吹き飛び、承太郎が私の上から避けて立ち上がっていたので、ザ・ワールドで時を飛ばしたのだろう。
立ち上がり体を動かすと、所々怪我のせいで痛むが⋯まだ動けそうだ。本当は、動けるレベルではないのかもしれないが。
DIOは、脳へ損傷を受けて動けないでいるようだ。奴は、心臓よりも脳へのダメージが効果的だったか⋯。
承太郎が車から抜いたガソリンをDIOにかけ、手にしたライターに火をつけた。なのに、次の瞬間には姿を消していた。また、ザ・ワールド⋯!!
動かない体を引き摺り、走行中の車に捕まったようで、みるみるうちに距離が離れていく。追いかけようと足を踏み出すと、承太郎は肩を掴んで制止した。そして道端で気を失っているポルナレフを指差し、「アイツを頼む。テメー、SPW財団の車の待機場所、知ってんだろ」と。
確かにそうだ。ここでポルナレフが死ぬ必要はない。今すぐ連れていけば、助かるだろう。
「分かった。後で、合流するから。」
先程のような抱擁はせず、私はポルナレフの方へと足を進めた。死なないでよ、承太郎。死んでくれるなよ、承太郎。死ぬなと口にしたら、典明は死んでしまった。だから、口にはできなかった。生きてくれ、承太郎。必ず。
私はポルナレフを抱き上げ、再びSPW財団の元へ駆け出した。
「待ってください!さすがに、みょうじさんにも治療が必要です!!」
財団員さんにそう言われて、やはり限界がきているんだな、と思ったが、私は、承太郎がDIOを倒すのを、見届けなくてはならない。まだ承太郎は、戦っているのだ。
「大丈夫です。承太郎がDIOを倒すのを、見に行くだけです。」
嘘だと丸分かりだろうがそう口にして、背を向けた。
「そういえば典明の遺体⋯回収しましたか⋯?」
遺体、と口にするのが憚られて、少し口ごもった。
「いいえ、まだ⋯。あそこは、今はまだ近づけません。」
それもそうだ。今まさにDIOが逃げた方角だ。SPW財団が無理をして命を落とす事はない。
「彼の遺体⋯⋯私が連れてくるので、触らないで頂けますか?」
その言葉は、無意識に言った事だ。なぜだか、口をついて出た言葉だ。
「⋯⋯分かりました。周知しておきます、必ず。」
その言葉を聞いてとても安心して、私は歩みを進めた。待っててね、典明。私が、必ず貴方を迎えに行くから。⋯⋯承太郎がDIOを倒したら、必ず。
騒ぎの元へと足を動かしていると、海辺へと着いた。大きな重機の上に承太郎が立ち、DIOを見下ろしているのが確認できた。ちょくちょく2人が移動するので、お互い、時を止めて戦っているというのが分かる。私が入る隙がない。ただ、私は遠くから見ているだけ。何が起こっているのか分からないが、負けるな、承太郎!と、心の中で応援だけはした。そして、お互い渾身の一撃を出したところで、DIOの体は裂けて、弾け飛んだ。
「勝った⋯の⋯⋯?」
恐る恐る2人に近づくと、承太郎は「テメーは俺を、怒らせた」と静かに言って、こちらを見た。「なまえ⋯。終わったぜ。」
承太郎のその言葉に、私は涙が止まらなかった。安堵や嬉しさから、足の力が抜けて膝から崩れ落ちたのを、承太郎が支えてくれたが⋯。
その承太郎も、膝をついて蹲ってしまった。お互い、体が限界なのだ。
「承太郎⋯ありがとう⋯ありがとう⋯ッ!!」
承太郎を抱きしめて感謝の言葉を連呼する。いくら繰り返しても全然足りなくて、抱きしめる力を強くした。
「承太郎、かっこよかった⋯大好き、承太郎!」
「やれやれだぜ⋯さすがに離れろ。」
グイ、と頭を押されて、私もさすがに痛かったので体を離した。やがてお互いがお互いを支え合い、2人で立ち上がり、歩き出した。近くのSPW財団の待機場所へ行くとすぐに無線で全財団員へと周知され、街は今度は、SPW財団で大騒ぎだ。
「オイなまえ。どこへ行こうとしている。テメーも手当てを受けろ。」
承太郎が私の肩に手を置いて制止するが、私はまだ、やらなくてはいけない事がある。
「典明を⋯迎えに行かなきゃ。」
その言葉に、承太郎は息を飲んで、手を離した。
「承太郎は、ここにいて。」
暗に着いてこないでと伝えると、承太郎へ正しく伝わったようで、「そうか…」と送り出してくれた。
「ありがとう。」
痛む体に鞭を打ち、私は車から降りた。ここからそんなに遠くない場所で、彼は私を待っている。早く、迎えに行かなくては⋯。