5部 DIOの館
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先に動いたのは、典明だった。
「喰らえDIO!半径20メートル!エメラルドスプラッシュを!」
エメラルドスプラッシュが、四方八方からDIOに向かって発射される。
食らわせられるにしろ躱されるにしろ、ひとつの挙動も見逃さないように、私はDIOを見る。…二度と見たくもないと願ってやまない顔ではあったが。ギュッと典明を掴む手に、力が入る。
「ザ・ワールド!」
DIOの声に、能力が発動する。見なくては…!と目を見開いたが、次の瞬間には典明の体は、その典明の体を強く掴んでいた私は、ものすごいスピードで後ろへと引っ張られた。今、何が…!!?
このままだと給水塔に直撃する!と判断し、私は典明の背中を守るように、なんとか体を動かした。
ドォォオオン!!!
凄まじい轟音を響かせて、吹き飛ばされた体が止まった。あまりの衝撃に、呻き声も出ない。頭がチカチカする。背中に感じる典明も、同じように動かない。
何を、したのだ…奴は、今……。
「ゲホッ……!」
遅れて痛みがやってきて、血を吐き出す。だが、私は致命傷は免れているようだ。手を動かそうと意識して呼吸を巡らせ、典明の無事を確認しようと体を動かすと、彼の体はドサリと下に落ちた。
「…はッ…は……。典明!!」
痛む体を無理やり動かし典明に近づくと、腹部から酷い出血があるのが分かって、私は血の気が引いた。鳩尾…人体の急所……致命傷…。その最悪の言葉が次々に脳内に浮かび、典明の瞳を見ると、遠くを見つめている。視線の先は、時計台だ。
「!典明!動かないで!!いまっ、SPW財団のところに、連れていくから…!!」
自分から紡がれた声が震えている。涙が出ているのだと、その時初めて分かった。
彼はハイエロファントを出して、エメラルドスプラッシュで何か伝えようとしている。…声が……!彼は声が、出せないのだ……!
「典明!死ぬな!!」
何か伝えたい事があるならば、私が聞こうと、私はハイエロファントを掴んでスタンド越しに話しかけた。
「…なまえ…泣かないでくれ……。僕はこの旅で、君に出会えて、とても幸せだった…。みんなと出会えて…楽しかった…。」
そう言って私を見る典明の瞳が弱々しくて、手が震える。そんな顔で、遺言のような事を言わないでくれ!
「私も、幸せだよ。でも、もっと、ずっと一緒にいよう、典明。」
神様、この人を連れていかないでください。私、今まで何も信じてなかったけど、これからは信じます。なんでもします。必要であれば、命も捧げます。だから、どうか彼だけは…!
「…なまえ…。奴のスタンド能力は、時間だ。どのくらいの時間かは分からないが、奴は、時を止めたんだ…。」
彼の瞳は既に、虚ろになってきていて、焦点が合っていない。
「典明。ありがとう。必ず、ジョセフさんに伝える。だから、死なないで……!」
口から流れる血も厭わずに、最後になるであろうキスを交わす。いつも、君とキスをする時は、される方が好きだ。と言っていた。私も、彼にされるキスが好きなのに。
「典明!死なないで!典明!!」
とうとう、ハイエロファントが消えた。彼の心臓はもう、止まっていた。
数時間前に感じた喪失感。空っぽの体。
まさか、と上を見ると、彼の魂と対峙した。優しく微笑んでいる彼は、とても幸せそうで、とても神々しい。無意識に、私は彼の魂に手を伸ばし、掴んだ。
彼は驚いているようだったが、テレンスのスタンドと私に引っ張られた時のように苦しさはないようだった。
しばしの間見つめ、ふと自分の手を見ると、不思議な事に気づいた。スタンドは、私の意思とは関係なく、勝手に出ている。
「あ……ご、ごめん。勝手に…!」
典明が入院した時になった現象と同じだ。離そうとしても、離れない。私には、どうする事もできない。
「ハーミットパープル!!」
ジョセフさんの声に現実に混乱から引き戻され振り返ると、ハーミットパープルがDIOを捕らえた所だった。
この、今の私の状況は、現時点では何もできない。それならば、早くジョセフさんの元へ行き、DIOのスタンドの秘密を伝えなければ…!
「ジョセフさん!!」
私は空間を掴み、ジョセフさんの元へと飛び出した。
彼は私の声を聞き、ハーミットパープルを伸ばして私を捕まえた。
「とりあえず、ここを離れましょう。承太郎達と、合流しなければ。」
私のその言葉に、一瞬悲しみの表情を見せたが、すぐに気持ちを切り替えて、街へと飛び出した。
「なまえ!それは、花京院の…!」
「ジョセフさん、典明から伝言です。DIOのスタンドの、謎を解いたと。」
ジョセフさんのハーミットパープルに抱えられて、後ろを警戒しながら伝言を伝える。今は彼の魂の話をしている暇はない。まずは、大事な話を伝えなくては。DIOのスタンド能力は、時を止める能力だと言う事を。
「それと……みんなと出会えて、とても楽しかったと…幸せだったと…言っていました。」
その言葉に、ジョセフさんは口元を抑えて涙を流した。ジョセフさんは典明を信頼し、承太郎と同じくらい、典明の事をかわいがっていた。ジョセフさんを見て、その楽しそうな光景を思い出し、私もまた、涙を流した。