5部 DIOの館
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「ハァ…、ハァ…ッ。」
息を切らせて館に戻ってきた時に見えたのは、塔のような場所の窓から、人が数人、飛び出してきたところだった。
「…!典明!!みんな!!」
何があったのだろうか。尋常じゃない様子だった、という事は確かだ。
みんなが着地した地点に向かおうと、再度踵を返した時、首筋に、鈍い痛みを感じて意識が遠のいていく…。当て身……!薄れゆく意識の中、最後に見えたのは、私が殺したいと願っている相手、DIOの姿であった。クソ…なにもできない…。
「う……。」
目が覚めた時、私は車の中にいた。DIOの膝の上で、眠らされていたようだ。体が痺れて、思うように動かせない。
「起きたか?なまえ。」
悔しい…。何が嬉しくて、コイツの膝の上で眠らなくちゃならない。一刻も早くコイツを突き飛ばして、距離を取りたいのに…体が言うことを聞かない…!
「なまえはお転婆だからな…少々、薬を使わせてもらったぞ。」
サラ、と頭を撫でるDIOの手があまりに冷たくて、背筋がゾワゾワした。だがそれでも、体はピクリとも動かない。
「……ディ…オ…。」
酷く掠れて聞き取りづらいが、喋る事は何とかできるようだ。
「うん?どうした、なまえ。」
一見優しげな声色で、私の声を聞こうと耳を近づけてきたDIO。私はその耳元で、言いたかった言葉を口にする。
「こ…ろ、す…。」
数秒そのまま動かなかったが、やがて声を出して笑いだし「やっぱりお転婆だなぁ、なまえは。」となぜか機嫌を良くさせた。気持ち悪い。反吐が出る。
視線をさ迷わせて窓の外を見ると、空はもう日が暮れて暗くなっている。どれくらい、眠っていたのだろうか。
一度落ち着こうと、目を閉じた。目を閉じて浮かんでくるのは、典明の事。
何かに集中する時やリラックスしたい時は、彼を思い浮かべるのが一番だ。
「…なまえ。お前今、花京院の事を考えているな?」
DIOが感情の読めない声でそう聞いてきたので「うん…。」と素直に答えると「そうか。」と意外にもあっさりとした返答が返ってきた。てっきり、怒るかと思ったのに。
…うん。だいぶ、頭が冴えてきた。目を開けて、もう一度、窓の外を見ると、そこには、綺麗な緑色が見えていた。
「エメラルドスプラッシュ!」
「花京院!動けないなまえがいるのに、エメラルドスプラッシュを出すか!…!?何ィィ!!?」
私はハイエロファント目掛けて、左腕を伸ばした。そして、掴んだ!!
私はハイエロファントの触手を離さないように、典明は、私を振り落としてしまわないように、私を引っ張った。
「なまえ!」
DIOの怒ったような、悔しそうな顔が見えて、少しだけ胸がすいた。片腕だけ、波紋の呼吸で血流を良くしていたのだ。その腕で攻撃を仕掛けようとしただけだったのだが、タイミング良く、ハイエロファントが来てくれて助かった。
「なまえ!」
典明が走行中にも関わらず、ドアを開けて私を受け止めてくれた。典明だって、人の事言うけど大概無茶してると思うんだけどな…。
「テン…メ…イ…。」
「なまえ…!良かった…ッ!無事だ…!ジョースターさん!なまえは無傷ですッ!」
震える手で私の顔に触れる典明は、ジョセフさんにそう説明した。そして、ギュッと、存在を確かめるように私を抱きしめた。
「テン、メイ。もう…一度、攻撃…して。」
息も絶え絶えに、私は典明にそう伝えた。私達では、この距離での攻撃は届かない。彼のハイエロファントでなくては。
私の言葉を聞いて、すぐに彼はハイエロファントを出し後方に向かわせた。
ハイエロファントのエメラルドスプラッシュは、一度、二度までも、DIOに攻撃を食らわせることはできなかった。
「もどして…!」
そろそろ、向こうもなにか仕掛けてくるだろうとハイエロファントを戻すように言うと、DIOのスタンドが姿を現すのが見えた。
「テン、メ…!」
私の言葉よりも早く、奴のスタンドの腕は、彼のハイエロファントを攻撃していた。私は、彼が吹き飛ばされないよう動く左腕で胴をしっかりホールドし、それをジョセフさんのハーミットパープルが支えてくれて、吹き飛ばされずに済んだ。
「怪我、が…!」
DIOのスタンドに、思い切り殴られたようだ。ハイエロファントは、街の障害物にいくつも激突し、返ってきた。典明の体からは、血が流れている。
「大丈夫、かすり傷だ。」
典明の言葉に、そんな訳あるか!と思ったが、攻撃してと頼んだのは私だ。彼は私が罪悪感を抱かないよう、そう言っているのだ。
「花京院大丈夫か。ザ・ワールドを見たのか。」
ジョセフさんが彼にそう問うと、彼は「えぇ。」と言って一呼吸置き、自分の見解を話し出す。奴のスタンド、ザ・ワールドには、秘密があると。
「しかし、2つだけ分かりました。」
ハイエロファントやハーミットパープルのように遠距離型ではなく、射程距離はせいぜい10メートル。拳で攻撃してきた事から、飛び道具などはなし。私や、承太郎と同じタイプだ。
「DIOに気づかれず、10メートルよりももっと忍び寄れれば、奴を倒すチャンスがあると思います。」
その他言葉を聞いて、私は黙ってしまった。だって、その役回りは…私がやるのが一番効率的で手っ取り早いじゃないか、と思ったからだ。しかし、彼らがそれを許すわけがないのだ。私が無理やり車を飛び出して、彼らを道連れにしてしまう可能性もなくはない。
だから、私が行くならば彼らを説得しなければならないが、説得できる材料が何もない。
「気をつけて!何か飛んでくる!」
DIOが私がいるのも構わずに、何かを投げつけてくる。ジョセフさんはそれを避けきれず、車はドリフトして、壁に激突して止まった。
「典明、ジョセフさん…!」
2人の体を掴み、未だ痺れの残る体で壊れた車体から引きずり出す。いつもより時間がかかってしまって、チラリと前を見ると、煙の向こうにDIOの影が見えた。この状況、どうするのが最適か。私はいくつかのパターンを頭で並べた。