5部 DIOの館
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「承太郎ッ!!!」
勝った。承太郎が、勝った…!!
「グッ…!!」
さっき外で抱きついた時のように承太郎が呻き声を漏らすが、そんな事、今はどうでもよかった。
「承太郎、ありがとう…ありがとうッ…!!」
奴のスタンドが、典明の魂を解放した。
「承太郎、ありがとう…!…ッ大好き!!」
承太郎の腕をグイ、と力いっぱい引っ張るとこちらに倒れてきたので、承太郎の頬に、感謝のキスを贈った。
「なまえ…?」
「典明…!」
目を覚ました典明に駆け寄り、目を合わせる。良かった。目に光がある!
「典明。承太郎が、典明の魂、取り返してくれたよ!勝ったよ!!…良かった…!本当に良かった…ッ!!」
「承太郎…が…。」
まだ少しだけふらついているようだが、ちゃんと生きている。その体を確認するように、私は大事に大事に、抱きしめた。温かい。心臓が動いている。
「助かった……。けど、なまえ。君、今…見間違いじゃなければ、承太郎にキス、してなかったか…?」
わ。見られてたんだ。けど別にやましいことはない。
「頬にね。だって承太郎、魂を賭けて、典明を助けてくれたんだよ!」
そう言うと典明は少し不満げな顔を見せたが、やがて納得したようにため息を吐いた。
「俺が言うのもおかしな話だが…。同情するぜ、花京院…。」
満足いくまでテレンス・T・ダービーをオラオラしたであろう承太郎が、私達の会話に割って入る。同情、とは?
「…感謝する、承太郎。助けてくれた事も。同情してくれた事も。」
そう言って、典明は承太郎の手を取って立ち上がった。
「全員、あそこから出るぞ!」
ジョセフさんの声に顔を上げると、空に穴が空いているようだ。出口だろうか。
みんながそちらへ歩いていくのを見て、私もついて行きかけて……一度、奴のコレクション棚へ戻った。
「なまえ?早くおいで。」
ついてこない私を心配して、典明が振り返る。
「いま行く!」
私はテレンスの、花京院人形を手に取り、懐に忍ばせた。これは、彼にはもう、必要ないだろう。有難く頂いていこう。
みんなの元へ駆けていくと、みんなもう穴の上に登っていて、ハイエロファントの触手だけが私を迎えにきていた。
手を広げて待っていたら典明に笑われた気がするが…気のせいだろう。あっという間にハイエロファントに引き上げられ、私は、私達は、再び地上へと足をつけた。
「行くぞ!」
ジョセフさんの一言で、また私達は、歩みを続ける。早く、DIOの所へ!
「!!」
「やっと会えたな、なまえ。」
瞬きをした間に、周りの風景が変わっていた。
典明、承太郎、ジョセフさんといたはずなのに、今、私の目の前にいるのは、
「DIO!!」
片腕を私の胴に回し、持ち上げているDIO。
突然の事に、理解が追いつかない。典明は、承太郎は、ジョセフさんは。一体どこに行ってしまったのかと辺りを見回したが、どこかに行ってしまったのは私の方だと気づくのに、時間はかからなかった。
風景が、変わっている。つまり、移動したのは、私の方だ。
「山吹色の波紋疾走!!」
「なにッ!!?」
頭をフル回転させ、最速で技を出した。これは、ジョセフさんから教わった、ジョセフさんの祖父、ジョナサン・ジョースターが使用していた技だ。威力は遠く及ばないだろうが、致命傷を避けようと、DIOは私を取り落とした。
「なまえッ…!お前…波紋を……ッ!」
かすり傷程度だが、奴を怯ませることはできたらしい。とりあえず、奴の腕から逃れる事はできた。とにかく、今は逃げなくては…!ここが何階なのかは分からないが、下に逃げよう!
奴が動き出すよりも前に、私は下の階の空間を掴もうと、床へ手を伸ばした。
「待て!なまえ!」
DIOが手を伸ばすが、もう遅い。私は既に、下の階の空間、空気を掴んでいる。DIOの手が、私の体をすり抜けていく。
「…完全に、その力を自分のものにしたか…なまえ…。」
私に手が届かなかったというのに、なぜだか嬉しそうな顔をしているDIO。まだ、私を捕らえるチャンスはいくらでもある、ということだろうか……。
体を床に沈みこませるさ中、私とDIOは最後まで視線を交わらせていた。私の瞳が、床と重なるその瞬間まで。
「!!」
DIOから逃げている最中、闇雲に走り回っているとポルナレフの姿が目に入った。酷い怪我だ。
あそこにいる男にやられたのだろうと敵を見ると、足元にイギーが転がっていて、今まさに、蹴り付けられているではないか!
「オイ。」
背後から接近し、肩に手を置いた。そして、まだ試したことのない事をするいい機会だと思った。
奴の心臓目掛けてゆっくりと体内に手を入れると、手に何かが当たる感触がある。心臓だ。
「うっ…!!」
奴は心臓を握られた苦しみに藻掻くが、私には触れられない。そのまま、力いっぱい、心臓を掴んだ手を引き、外に取り出した。気持ち悪い。握り潰そうとして、勇気が出なかったので取り出したが…それでも心臓に触れている感覚が、気持ち悪かった。
「ポルナレフ!!」
チャリオッツに切ってもらおうと、ポルナレフの方にそれを投げつけると意図を理解してくれてそれを細かく切り刻んでくれた。呆気ない。が、無事倒したようだ。
「…イギー…無茶したね……。」
これは、かなりの数の骨が折れているだろう。
「ポルナレフ。近くにSPW財団が待機している。イギーを連れていくから、少しの間、戦線離脱する。」
静かにそう言うと、ポルナレフは「おぅ。無事に戻ってこいよ。」と送り出してくれた。
早く治療すれば、助かるかもしれない。
カーテンを割いて、イギーを包み、窓から飛び降りた。ここは、3階だったようだ。ドンッ!と鈍い音を響かせて着地したが、衝撃はあまりなかったはずだ。
「イギー。死んじゃダメ。生きて。私、貴方とまだ、遊び足りないの。ね、コーヒーガム、一緒に食べよ。」
走りながら、声をかけ続けた。5分程走ったところにSPW財団の車を見つけて、安堵から、涙が出そうになった。
「イギー、お疲れ様。あとは私達に任せて、休んでて。」
別れ際、優しく頭を撫でると、また、ヘッ…と笑った気がしたので、私も笑顔を返した。ちゃんと笑えていたかは、分からないが。
すぐに、戻らなくては。
空を見ると、少しずつ、夕日の色に変わっていくところだ。日が沈めば、DIOの時間になってしまう。
私は来た道を、一人引き返す。みんなが、まだ中で戦っているのだ。そういえば、先程はポルナレフとイギーしかいなかったが、アブドゥルさんは無事だろうか。なにも、なければいいが…。