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ドレスコード
「夢ちゃーん」
家入の事務室で作業しているとご機嫌の五条が入ってきた。
「五条先生お疲れ様です…どうしたんですかスーツ着て」
いつもと違い五条はビシッと黒のスーツ、サングラス、白いYシャツのボタンを開けた格好をしている。
「ホストかよ」
家入が五条の格好をみて、苦い顔をする。
「夢ちゃんの為におニューのスーツおろしたんだけど」
私の為?と夢は少し考え家入を見た。
「あ、忘れてた夢に言うの」
「え、まあいいよ、夢ちゃん僕とデートしよ」
「デ、デート?」
「すまん、夢。悟が海外土産で酒くれたんだけど、そのお礼に夢1日貸すって約束してたんだ」
「え??なんで私が家入先生のお礼に五条先生とデートするんですか…」
また変な約束を勝手にしてきてると夢はため息をつく。
「ここ行きたいんだけど硝子、甘いもの食わないから」
五条はスマホ画面を夢に見せた。
「あ!!その期間限定のアフタヌーンティー凄く人気のやつですよね!わぁー行きたかったとこ!…え、ここ行くんですか?」
五条はうんうん、と頷く。
「今から?五条先生と?二人で?」
五条はそうだよ、とにっこり笑う。
「じゃ、決まりねー夢ちゃんレッツゴー!」
五条に手を引かれ部屋を出る夢を家入はごめん、と手を合わせて見送った。
タクシーに乗った夢と五条。
「五条先生、私服に着替えろって言うから着替えましたけど…」
「さすがに制服の夢ちゃん平日の真っ昼間につれ回せないからねー後あそこドレスコード厳しいから、その私服も脱いでもらうことになるよ」
「待ってください、アフタヌーンティー行く為だけに服買うんですか!?」
「僕はぜーんぜん買ってあげるんだけど後で悠仁達にバレたら肉やら寿司おごれだの言うでしょ?今回は貸衣装♪てことで到着」
銀座のおしゃれなセレクトショップに到着すると五条は夢の手を取りタクシーを降りた。
ハイブランドのスーツ、パーティードレス、靴、バッグ、などなどきらびやかな洋服がずらっと並んでいるのが外から見える。
「ちょっと!こんなの貸衣装であっても着れませんて…!五条せん」
途中まで言いかけると五条は夢の唇を人差し指で触れた。
「夢ちゃん、今日のデートは 先生 禁止ね?プライベートのデートだから。五条さん、でよろしく」
あの青いキラキラとした目で見つめられ、夢は触れられた唇をきゅっと閉じた。
悟、でもいいよ、と五条は意地悪に笑う。
「五条さんでいいです…」
夢の手をひっぱりブティックに入るとスタッフがずらりと並び五条に挨拶をする。
「五条様お待ちしておりました」
品の良い女性が五条と仲良さげに話しかける。
「話してたのこの子なんだけど、お願い」
「え、五条せん、五条さん!ちょっと待って」
待合室のソファーに座った五条は夢がその女性と数名のスタッフに連れられ大きな試着室へと消えていくのを手を振って笑顔で見送った。
「虎杖くん、伊地知さんのピックアップ、時間がかかりそうなので少し休憩しましょう」
今日は七海と悠仁、野薔薇と恵のチームがバラバラで動いている。七海と任務を終えた悠仁は銀座の町を歩いていた。
「ナナミーン、俺腹へった」
「その呼び方止めてください。では何か食べましょう」
七海は静かな喫茶店へ悠仁を連れて入った。
「クリームソーダとカレーライスが食べたいです!」
座ってそうそう悠仁は注文する。
「私は紅茶をお願いします」
店員が注文を書くと去っていった。
「虎杖くん、どうしたんですか落ち着きがない」
悠仁はキョロキョロ店を見渡している。
「やっぱナナミンみたいな大人だとこういう喫茶店とかふつーに入れるんだもんなー俺じゃ緊張して入れないな、と思って」
「それは虎杖くんも大人になれば嫌でも入れますよ」
「あのさーナナミン、質問していい?」
なんだか以前もこのような入りで悠仁に質問されたなと七海が考える。
「なんでしょう」
「あのー女友達と……遊びに行くのってやっぱデートなのかな」
やっぱりこの手の質問か、と運ばれてきたカレー、紅茶のポットとクリームソーダを眺める。
悠仁はいただきます、と手を合わせカレーを食べ始めた。
「一般的にデートでしょうね」
「付き合ってないのに?」
七海はまたあの子のことだろうかと考える。
「お付き合いする前の過程もデート、付き合いはじめてもデートだと思いますよ。種類は違うと思いますけど」
種類?とカレーをもぐもぐ口にする悠仁が首をかしげる。
「この人と長い目でお付き合いすべきか、判断するのにデートしますし、付き合いはじめても一緒に居続けられるか判断するデート、色々なパターンがあるのではないですか?もちろん判断材料だけではなく、楽しむことが前提ですが」
悠仁はカレーを食べ終えるとうーん、と腕を組考える。
「夢さんをどこへお連れしようと考えているんですか?」
「な、なんで夢ってわかるのナナミン!?」
顔にかいてあります、と紅茶を一口飲んだ。悠仁はスマホを取り出し、目的の写真を見せる。
「アフタヌーンティー?ここのすぐ近くのサロンですね」
「やっぱり俺みたいな高校生入れてくれないかな?夢が釘崎と話してて、ここ行ってみたいってちらっと言ってたんだけど、俺にはハードル高いかなって。ここの喫茶店にも入る勇気ないし」
「制服では入れてくれないでしょうね。虎杖くん、君スーツは?」
悠仁はクリームソーダをすすりながら持ってないよ、と首を横にふる。
「いい機会です。スーツ一着持ってても支障はないでしょう」
そういうと七海は残りの紅茶を飲み立ち上がった。
「虎杖くん、スーツを買いに行きますよ」
「え!?今から?」
「そこ、夢さんと行くんですよね?」
行きたいです…と悠仁が言うと七海は微笑み二人は喫茶店を後にした。
「五条様、お連れ様のお着替え終わりましたのでどうぞこちらまで」
五条は立ち上がり夢がいる試着室まで行くと、メイクと着替えが終わった夢が立っている。
五条は思わず口笛を吹く。
「夢ちゃん、凄い見違えた」
黒のノースリーブのシルクのロングドレス、胸から上は肌の見える黒のレースのタートルネックになっている。
髪をふんわりとアップにした夢は綺麗に化粧され、リップにはピンクのグロスが輝いている。
一歩前へ歩むと片方のスリットが大胆に膝上まで入っており脚が露になる。
「五条せっ…五条さん、こんなスリットで歩けませんよ…この細いヒールも…」
「僕、ミニよりスリットから見える脚の方が好きなんだよね」
「いや、そういうことじゃなくて…」
初めて履くピンヒールはローファーとは違い歩きにくい。
もう一本踏み出すとバランスを崩し、五条が夢の手を取り体を支えた。
「大丈夫夢ちゃん?」
サングラスの隙間からあの青い目が光る。
「だ、大丈夫です」
「じゃ行きましょうか」
五条は夢に腕を組ませるとタクシーを止めた。
夢を後部座席に乗せるとスリットから脚が綺麗に覗く。
2メートル近いサングラスをかけた白の髪の男ときらびやかなドレスを着た夢は人々の注目を集める。
「夢ちゃん、とってもきれいだから少し笑顔」
五条にウインクされ、夢はアフタヌーンティーってこんなに大変だったんだ、と困った笑顔を見せる。
「虎杖くん、君はまだ成長段階なので、今すぐ着れるものを買いましょう」
「え、出来てるもの以外あるの?」
「大人になればオーダーメイドという手もありますが、すぐ着れなくなりますよ。虎杖くん、前会った時より明らかに身長伸びてます」
なるほど、と悠仁は納得すると大型のスーツ店に入り七海が素早く選んでいく。
「ナナミン、黒だと葬式っぽくない?」
試着室に入った悠仁は上下着てみる。
「違います。それは紺です。Yシャツはこれでネクタイと…靴」
全身着替えた悠仁が出てくる。なれないネクタイが少し緩めに垂れ下がっている。
「いいでしょう。すみません、このまま着ていくのでお会計を」
七海がカードを取り出した。
「え!自分で買うよ!」
「いいえ、ここは私が。その代わり、デートの結果教えてくださいね」
「いや、それは嫌なので自分で払います」
七海は悠仁の答えを聞かず会計を済ませてしまった。
悠仁は着ていた制服をロッカーに預けると、七海がサロンの下見をした方がいいと悠仁を連れ、銀座を歩いていた。
「革靴って歩きにくい…ナナミンっていつもスーツですごいや。俺これじゃ動ける気がしない」
ジャケットを着て肩を回すがいつもの様に動かない。
慣れです、と七海は一言返すと突然足を止めた。
「どしたの?」
少し離れた先に止まったタクシーから真白な髪、サングラスの男が下りてきた。
あれ?五条先生?悠仁が目を凝らして七海と見ていると後ろから続いてドレスアップした夢が出てきた。
五条が出した手に夢は手を乗せると、スリットを気にしながらタクシーから降りてくる。
「え?え??…あれって夢?だよな…」
タイミングが悪すぎなのかいいのか、と七海は考えながら、声をかけに行きそうな悠仁を制止した。
「え、だってナナミンあれ夢だよ?すげぇ綺麗な恰好してるけど。あれ?夢じゃない?俺の見間違い?」
「虎杖くん、気にするところが違いますよ。あれは デート じゃないですか?」
「いや、だって、五条先生が夢とデートとか…」
七海が喫茶店で言っていたことを思い出して顔が真っ青になる。
「虎杖くん、しっかりしてください。とりあえず後を付けますよ」
二人がサロンに入ることを確認すると、七海が悠仁を手招きする。
「虎杖くん、二人もアフタヌーンティーが目的の様ですよ。同じテーブルに座らせてもらいましょう」
「…俺、やっぱいいよ。邪魔したら悪いし。夢もしかしたら五条先生と行きたかったのかもしんないし」
「虎杖くん、あの恰好、夢さんが進んで着ているように見えましたか?」
悠仁は顔を上げ、五条なら 着せた ということがありえると表情が険しくなる。
「虎杖くん、乱入するのではなく、あくまでご一緒するという形で」
「うす」
二人は二階へと上がり、七海がレセプションに声をかける。
「すみません、先に来てる五条の連れのものです。テーブルはどちらでしょう?」
「五条様ですか…確認しますので少しお待ちください」
係はたしか2名の予約だったはず…とサロンの中に入り、五条のテーブルへと向かった。
別の係が止めようとするが、七海と悠仁が係の後を追った。
「五条様、お話し中に申し訳ございません。お連れ様とおっしゃっている方2名いらしているのですが、ご一緒されるご予定はございましたか?」
「ないよー…あ」
五条が係の後ろを見ると、七海とスーツを着た悠仁が立っている。
「ゆ、悠仁くん!と七海さん…」
悠仁が五条に険しい顔をする。
「五条さん、平日の昼間から夢さん連れ出してなにをしているんですか?」
「お茶」
五条は手元のティーカップを持ち上げた。
「はぁ、せっかく夢ちゃんとデートだったのにな」
五条はどうぞ、というと係が追加でソファー椅子を持ってきた。
五条の正面のロングソファーに座っていた夢の隣に悠仁が座った。
「夢…すごいキラキラしてるな。最初わからなかった」
「あ、これ五条…先生が…」
やっぱり、と悠仁が七海の隣に座る五条をじとーっとした目で睨む。
五条は目の前のスイーツに夢中だった。
係が追加でアフタヌーンティーのセットを七海と悠仁の前に置こうとするので、七海はコーヒーだけくださいと頼むと、係は頭を下げ4人から離れた。
目の前にたくさんのお菓子が乗せられた三段のお皿が運ばれてきても悠仁は隣の夢に釘付けだった。
「虎杖くん、見すぎです」
七海がコーヒー片手に注意する。
「あ!いや…ごめん。夢綺麗だからつい」
「悠仁くんもスーツ似合ってるね。綺麗な色」
「サンキュー、これナナミンが選んでくれたんだ」
夢がネクタイ緩んでる…と悠仁の首元に手を伸ばし、整えた。悠仁は顔を赤くしていると夢が微笑む。
仲が良い二人を見て、五条は面白くない、という顔をしてみている。
「七海ぃ、こんな光景見るために夢ちゃんデートに誘ったんじゃないんだけど」
「生徒を連れまわして、自分好みの恰好をさせて、デートに付き合わせている教師はどこの誰でしょう。学長あたりに聞いてみましょうか」
五条はけっ、という顔をして手元の甘い紅茶をすすった。
「あのー夢、ごめん」
そう言うと悠仁は着ていたジャケットを脱いで夢の膝にかけた。
「あ、脚に目が行くから…」
ありがとうと言う夢もYシャツとネクタイ姿になった悠仁にドキドキしている。
七海は悠仁の行動に感心しているが、五条はつまらなそうだ。
「夢はこれが食べたかったのか?ちっちゃいの色々乗ってるな」
「この小さいスコーンおいしいよ。ブルーベリーが入ってるの」
悠仁のプレートに乗ったお菓子を手に取り悠仁の口へと持っていく。
悠仁は少し迷いながら差し出されたスコーンを食べた。
「…うん、おいしい」
「夢ちゃんの隣に座ればよかった」
「それこそ問題です」
七海は腕を組んで横の五条を呆れた顔で見る。
「そろそろ伊地知さんが到着しますね」
「あれ、もうそんな時間なの?」
悠仁は少し残念そうな顔をする。
「五条先生、ドレス…」
まとめて郵送だから大丈夫、と席で会計中の五条が笑顔を向ける。
領収書を係りに渡され、五条は悠仁にみせる。
「五条さん、あまりそういうのは見せない方が良いんじゃないですか?」
「いいんだよ七海、社会べんきょー。どお?悠仁、今日のデート代」
隣にいた夢も覗くと二人は目を丸くする。
「七海、コーヒー代後でちょーだい」
七海は無視すると、行きましょうと席を立った。
ゆっくりと歩く夢の横に悠仁は付いて歩くと、七海は悠仁を見て咳払いをする。七海が腕を直角に折り曲げ肘を出しているのに悠仁は気づいた。
あ、と悠仁は気付き自分の腕を夢に差し出した。
「夢、つかまって」
「あ、ありがとう悠仁くん」
夢は手を悠仁の腕へと通すと反対の手もそっと添えた。
さっき自分と腕組んだとき片手だったのになぁ、と五条は心のなかで考える。
七海と五条が先に階段を下りると、夢と悠仁はゆっくりと一段づつ下りてくる。
お姫様みたいな気分、と夢は言うと笑顔で階段を一段ずつ下りていく。
微笑む夢を見て悠仁は口を開いた。
「俺、今日みたいな綺麗な格好の夢もいいと思うけど、いつもの私服の夢の方が好きかな…あ、いや、今日のも夢綺麗だし、かわいいと思うけど、緊張するっていうかさ、まだ俺には刺激が強いかな」
と照れながら悠仁は笑った。
「うん…ありがとう悠仁くん…」
「五条さんは虎杖くんのことを少し見習ったほうが良いと思いますよ」
「七海ーなんか言ったー?」
伊地知がサロンの前へ車を止めて待っていると、五条と七海が出てくるので挨拶をする。
「お疲れ様です。五条さんもご一緒だったんです…ね…」
伊地知は後から出てきた悠仁と夢に言葉を失う。
「夢さん??」
「見違えたでしょー」五条はやっぱりご機嫌そうだ。
悠仁と腕を組んでゆっくり歩く夢は恥ずかしそうにする。
「伊地知さんにまで見られると思わなかった…」
「あ、伊地知写真写真!これで!」
五条がスマホを伊地知に渡すと四人が写真に収まる。
「あ…伊地知さん私も…」と言うと悠仁が離れようとする。
「まって、悠仁くん。二人で撮ってほしいから…」
ツーショットを撮られる二人をみて五条は微笑む。
4人が呪術高専に到着すると七海が五条の後を追う。
「五条さん、わざとですよね?」
「なにがー?」
「今日夢さんをドレスアップさせて連れ回してたの、虎杖くんにわざと見せる為ですよね?」
五条は間を空け少し考える「……夢ちゃんとデートしたかっただけー」
どうだか、と七海は歩きだす。
遠くから、あーーいたーー!と言う声がする。野薔薇がダッシュで四人の元へ駆け寄る。恵も後を追ってきた。
「家入先生のとこ行ったら夢いないし五条先生と出掛けたとか言う…から……」
途中で野薔薇は止まった。追い付いた恵がまず口を開いた。
「夢…なのか?」
「だよね!?夢ちゃん??」
夢は恥ずかしそうにうなずく。
野薔薇は大胆に入ったスリットをまじまじと見る。
「ごぉうら!虎杖!近い!」
夢と悠仁の間に入り、組んでいた腕を解かせ、野薔薇は夢の手を取る。
「夢ちゃん超綺麗…まって、シャネルに靴ルブタンじゃん??どうしたの?」
夢は野薔薇に今日の出来事を説明した。
「虎杖、スーツなんか着てどうしたんだ?」
恵はスーツ姿の悠仁を見ると悠仁も経緯を説明し始めたところで固まった。
「うぁ!!ナナミン!!制服ロッカー入れっぱなしだ!!」
「あぁ、そう言えばそうでしたね」
「俺戻って取ってくる!」
ドレスコード ― END
「夢ちゃーん」
家入の事務室で作業しているとご機嫌の五条が入ってきた。
「五条先生お疲れ様です…どうしたんですかスーツ着て」
いつもと違い五条はビシッと黒のスーツ、サングラス、白いYシャツのボタンを開けた格好をしている。
「ホストかよ」
家入が五条の格好をみて、苦い顔をする。
「夢ちゃんの為におニューのスーツおろしたんだけど」
私の為?と夢は少し考え家入を見た。
「あ、忘れてた夢に言うの」
「え、まあいいよ、夢ちゃん僕とデートしよ」
「デ、デート?」
「すまん、夢。悟が海外土産で酒くれたんだけど、そのお礼に夢1日貸すって約束してたんだ」
「え??なんで私が家入先生のお礼に五条先生とデートするんですか…」
また変な約束を勝手にしてきてると夢はため息をつく。
「ここ行きたいんだけど硝子、甘いもの食わないから」
五条はスマホ画面を夢に見せた。
「あ!!その期間限定のアフタヌーンティー凄く人気のやつですよね!わぁー行きたかったとこ!…え、ここ行くんですか?」
五条はうんうん、と頷く。
「今から?五条先生と?二人で?」
五条はそうだよ、とにっこり笑う。
「じゃ、決まりねー夢ちゃんレッツゴー!」
五条に手を引かれ部屋を出る夢を家入はごめん、と手を合わせて見送った。
タクシーに乗った夢と五条。
「五条先生、私服に着替えろって言うから着替えましたけど…」
「さすがに制服の夢ちゃん平日の真っ昼間につれ回せないからねー後あそこドレスコード厳しいから、その私服も脱いでもらうことになるよ」
「待ってください、アフタヌーンティー行く為だけに服買うんですか!?」
「僕はぜーんぜん買ってあげるんだけど後で悠仁達にバレたら肉やら寿司おごれだの言うでしょ?今回は貸衣装♪てことで到着」
銀座のおしゃれなセレクトショップに到着すると五条は夢の手を取りタクシーを降りた。
ハイブランドのスーツ、パーティードレス、靴、バッグ、などなどきらびやかな洋服がずらっと並んでいるのが外から見える。
「ちょっと!こんなの貸衣装であっても着れませんて…!五条せん」
途中まで言いかけると五条は夢の唇を人差し指で触れた。
「夢ちゃん、今日のデートは 先生 禁止ね?プライベートのデートだから。五条さん、でよろしく」
あの青いキラキラとした目で見つめられ、夢は触れられた唇をきゅっと閉じた。
悟、でもいいよ、と五条は意地悪に笑う。
「五条さんでいいです…」
夢の手をひっぱりブティックに入るとスタッフがずらりと並び五条に挨拶をする。
「五条様お待ちしておりました」
品の良い女性が五条と仲良さげに話しかける。
「話してたのこの子なんだけど、お願い」
「え、五条せん、五条さん!ちょっと待って」
待合室のソファーに座った五条は夢がその女性と数名のスタッフに連れられ大きな試着室へと消えていくのを手を振って笑顔で見送った。
「虎杖くん、伊地知さんのピックアップ、時間がかかりそうなので少し休憩しましょう」
今日は七海と悠仁、野薔薇と恵のチームがバラバラで動いている。七海と任務を終えた悠仁は銀座の町を歩いていた。
「ナナミーン、俺腹へった」
「その呼び方止めてください。では何か食べましょう」
七海は静かな喫茶店へ悠仁を連れて入った。
「クリームソーダとカレーライスが食べたいです!」
座ってそうそう悠仁は注文する。
「私は紅茶をお願いします」
店員が注文を書くと去っていった。
「虎杖くん、どうしたんですか落ち着きがない」
悠仁はキョロキョロ店を見渡している。
「やっぱナナミンみたいな大人だとこういう喫茶店とかふつーに入れるんだもんなー俺じゃ緊張して入れないな、と思って」
「それは虎杖くんも大人になれば嫌でも入れますよ」
「あのさーナナミン、質問していい?」
なんだか以前もこのような入りで悠仁に質問されたなと七海が考える。
「なんでしょう」
「あのー女友達と……遊びに行くのってやっぱデートなのかな」
やっぱりこの手の質問か、と運ばれてきたカレー、紅茶のポットとクリームソーダを眺める。
悠仁はいただきます、と手を合わせカレーを食べ始めた。
「一般的にデートでしょうね」
「付き合ってないのに?」
七海はまたあの子のことだろうかと考える。
「お付き合いする前の過程もデート、付き合いはじめてもデートだと思いますよ。種類は違うと思いますけど」
種類?とカレーをもぐもぐ口にする悠仁が首をかしげる。
「この人と長い目でお付き合いすべきか、判断するのにデートしますし、付き合いはじめても一緒に居続けられるか判断するデート、色々なパターンがあるのではないですか?もちろん判断材料だけではなく、楽しむことが前提ですが」
悠仁はカレーを食べ終えるとうーん、と腕を組考える。
「夢さんをどこへお連れしようと考えているんですか?」
「な、なんで夢ってわかるのナナミン!?」
顔にかいてあります、と紅茶を一口飲んだ。悠仁はスマホを取り出し、目的の写真を見せる。
「アフタヌーンティー?ここのすぐ近くのサロンですね」
「やっぱり俺みたいな高校生入れてくれないかな?夢が釘崎と話してて、ここ行ってみたいってちらっと言ってたんだけど、俺にはハードル高いかなって。ここの喫茶店にも入る勇気ないし」
「制服では入れてくれないでしょうね。虎杖くん、君スーツは?」
悠仁はクリームソーダをすすりながら持ってないよ、と首を横にふる。
「いい機会です。スーツ一着持ってても支障はないでしょう」
そういうと七海は残りの紅茶を飲み立ち上がった。
「虎杖くん、スーツを買いに行きますよ」
「え!?今から?」
「そこ、夢さんと行くんですよね?」
行きたいです…と悠仁が言うと七海は微笑み二人は喫茶店を後にした。
「五条様、お連れ様のお着替え終わりましたのでどうぞこちらまで」
五条は立ち上がり夢がいる試着室まで行くと、メイクと着替えが終わった夢が立っている。
五条は思わず口笛を吹く。
「夢ちゃん、凄い見違えた」
黒のノースリーブのシルクのロングドレス、胸から上は肌の見える黒のレースのタートルネックになっている。
髪をふんわりとアップにした夢は綺麗に化粧され、リップにはピンクのグロスが輝いている。
一歩前へ歩むと片方のスリットが大胆に膝上まで入っており脚が露になる。
「五条せっ…五条さん、こんなスリットで歩けませんよ…この細いヒールも…」
「僕、ミニよりスリットから見える脚の方が好きなんだよね」
「いや、そういうことじゃなくて…」
初めて履くピンヒールはローファーとは違い歩きにくい。
もう一本踏み出すとバランスを崩し、五条が夢の手を取り体を支えた。
「大丈夫夢ちゃん?」
サングラスの隙間からあの青い目が光る。
「だ、大丈夫です」
「じゃ行きましょうか」
五条は夢に腕を組ませるとタクシーを止めた。
夢を後部座席に乗せるとスリットから脚が綺麗に覗く。
2メートル近いサングラスをかけた白の髪の男ときらびやかなドレスを着た夢は人々の注目を集める。
「夢ちゃん、とってもきれいだから少し笑顔」
五条にウインクされ、夢はアフタヌーンティーってこんなに大変だったんだ、と困った笑顔を見せる。
「虎杖くん、君はまだ成長段階なので、今すぐ着れるものを買いましょう」
「え、出来てるもの以外あるの?」
「大人になればオーダーメイドという手もありますが、すぐ着れなくなりますよ。虎杖くん、前会った時より明らかに身長伸びてます」
なるほど、と悠仁は納得すると大型のスーツ店に入り七海が素早く選んでいく。
「ナナミン、黒だと葬式っぽくない?」
試着室に入った悠仁は上下着てみる。
「違います。それは紺です。Yシャツはこれでネクタイと…靴」
全身着替えた悠仁が出てくる。なれないネクタイが少し緩めに垂れ下がっている。
「いいでしょう。すみません、このまま着ていくのでお会計を」
七海がカードを取り出した。
「え!自分で買うよ!」
「いいえ、ここは私が。その代わり、デートの結果教えてくださいね」
「いや、それは嫌なので自分で払います」
七海は悠仁の答えを聞かず会計を済ませてしまった。
悠仁は着ていた制服をロッカーに預けると、七海がサロンの下見をした方がいいと悠仁を連れ、銀座を歩いていた。
「革靴って歩きにくい…ナナミンっていつもスーツですごいや。俺これじゃ動ける気がしない」
ジャケットを着て肩を回すがいつもの様に動かない。
慣れです、と七海は一言返すと突然足を止めた。
「どしたの?」
少し離れた先に止まったタクシーから真白な髪、サングラスの男が下りてきた。
あれ?五条先生?悠仁が目を凝らして七海と見ていると後ろから続いてドレスアップした夢が出てきた。
五条が出した手に夢は手を乗せると、スリットを気にしながらタクシーから降りてくる。
「え?え??…あれって夢?だよな…」
タイミングが悪すぎなのかいいのか、と七海は考えながら、声をかけに行きそうな悠仁を制止した。
「え、だってナナミンあれ夢だよ?すげぇ綺麗な恰好してるけど。あれ?夢じゃない?俺の見間違い?」
「虎杖くん、気にするところが違いますよ。あれは デート じゃないですか?」
「いや、だって、五条先生が夢とデートとか…」
七海が喫茶店で言っていたことを思い出して顔が真っ青になる。
「虎杖くん、しっかりしてください。とりあえず後を付けますよ」
二人がサロンに入ることを確認すると、七海が悠仁を手招きする。
「虎杖くん、二人もアフタヌーンティーが目的の様ですよ。同じテーブルに座らせてもらいましょう」
「…俺、やっぱいいよ。邪魔したら悪いし。夢もしかしたら五条先生と行きたかったのかもしんないし」
「虎杖くん、あの恰好、夢さんが進んで着ているように見えましたか?」
悠仁は顔を上げ、五条なら 着せた ということがありえると表情が険しくなる。
「虎杖くん、乱入するのではなく、あくまでご一緒するという形で」
「うす」
二人は二階へと上がり、七海がレセプションに声をかける。
「すみません、先に来てる五条の連れのものです。テーブルはどちらでしょう?」
「五条様ですか…確認しますので少しお待ちください」
係はたしか2名の予約だったはず…とサロンの中に入り、五条のテーブルへと向かった。
別の係が止めようとするが、七海と悠仁が係の後を追った。
「五条様、お話し中に申し訳ございません。お連れ様とおっしゃっている方2名いらしているのですが、ご一緒されるご予定はございましたか?」
「ないよー…あ」
五条が係の後ろを見ると、七海とスーツを着た悠仁が立っている。
「ゆ、悠仁くん!と七海さん…」
悠仁が五条に険しい顔をする。
「五条さん、平日の昼間から夢さん連れ出してなにをしているんですか?」
「お茶」
五条は手元のティーカップを持ち上げた。
「はぁ、せっかく夢ちゃんとデートだったのにな」
五条はどうぞ、というと係が追加でソファー椅子を持ってきた。
五条の正面のロングソファーに座っていた夢の隣に悠仁が座った。
「夢…すごいキラキラしてるな。最初わからなかった」
「あ、これ五条…先生が…」
やっぱり、と悠仁が七海の隣に座る五条をじとーっとした目で睨む。
五条は目の前のスイーツに夢中だった。
係が追加でアフタヌーンティーのセットを七海と悠仁の前に置こうとするので、七海はコーヒーだけくださいと頼むと、係は頭を下げ4人から離れた。
目の前にたくさんのお菓子が乗せられた三段のお皿が運ばれてきても悠仁は隣の夢に釘付けだった。
「虎杖くん、見すぎです」
七海がコーヒー片手に注意する。
「あ!いや…ごめん。夢綺麗だからつい」
「悠仁くんもスーツ似合ってるね。綺麗な色」
「サンキュー、これナナミンが選んでくれたんだ」
夢がネクタイ緩んでる…と悠仁の首元に手を伸ばし、整えた。悠仁は顔を赤くしていると夢が微笑む。
仲が良い二人を見て、五条は面白くない、という顔をしてみている。
「七海ぃ、こんな光景見るために夢ちゃんデートに誘ったんじゃないんだけど」
「生徒を連れまわして、自分好みの恰好をさせて、デートに付き合わせている教師はどこの誰でしょう。学長あたりに聞いてみましょうか」
五条はけっ、という顔をして手元の甘い紅茶をすすった。
「あのー夢、ごめん」
そう言うと悠仁は着ていたジャケットを脱いで夢の膝にかけた。
「あ、脚に目が行くから…」
ありがとうと言う夢もYシャツとネクタイ姿になった悠仁にドキドキしている。
七海は悠仁の行動に感心しているが、五条はつまらなそうだ。
「夢はこれが食べたかったのか?ちっちゃいの色々乗ってるな」
「この小さいスコーンおいしいよ。ブルーベリーが入ってるの」
悠仁のプレートに乗ったお菓子を手に取り悠仁の口へと持っていく。
悠仁は少し迷いながら差し出されたスコーンを食べた。
「…うん、おいしい」
「夢ちゃんの隣に座ればよかった」
「それこそ問題です」
七海は腕を組んで横の五条を呆れた顔で見る。
「そろそろ伊地知さんが到着しますね」
「あれ、もうそんな時間なの?」
悠仁は少し残念そうな顔をする。
「五条先生、ドレス…」
まとめて郵送だから大丈夫、と席で会計中の五条が笑顔を向ける。
領収書を係りに渡され、五条は悠仁にみせる。
「五条さん、あまりそういうのは見せない方が良いんじゃないですか?」
「いいんだよ七海、社会べんきょー。どお?悠仁、今日のデート代」
隣にいた夢も覗くと二人は目を丸くする。
「七海、コーヒー代後でちょーだい」
七海は無視すると、行きましょうと席を立った。
ゆっくりと歩く夢の横に悠仁は付いて歩くと、七海は悠仁を見て咳払いをする。七海が腕を直角に折り曲げ肘を出しているのに悠仁は気づいた。
あ、と悠仁は気付き自分の腕を夢に差し出した。
「夢、つかまって」
「あ、ありがとう悠仁くん」
夢は手を悠仁の腕へと通すと反対の手もそっと添えた。
さっき自分と腕組んだとき片手だったのになぁ、と五条は心のなかで考える。
七海と五条が先に階段を下りると、夢と悠仁はゆっくりと一段づつ下りてくる。
お姫様みたいな気分、と夢は言うと笑顔で階段を一段ずつ下りていく。
微笑む夢を見て悠仁は口を開いた。
「俺、今日みたいな綺麗な格好の夢もいいと思うけど、いつもの私服の夢の方が好きかな…あ、いや、今日のも夢綺麗だし、かわいいと思うけど、緊張するっていうかさ、まだ俺には刺激が強いかな」
と照れながら悠仁は笑った。
「うん…ありがとう悠仁くん…」
「五条さんは虎杖くんのことを少し見習ったほうが良いと思いますよ」
「七海ーなんか言ったー?」
伊地知がサロンの前へ車を止めて待っていると、五条と七海が出てくるので挨拶をする。
「お疲れ様です。五条さんもご一緒だったんです…ね…」
伊地知は後から出てきた悠仁と夢に言葉を失う。
「夢さん??」
「見違えたでしょー」五条はやっぱりご機嫌そうだ。
悠仁と腕を組んでゆっくり歩く夢は恥ずかしそうにする。
「伊地知さんにまで見られると思わなかった…」
「あ、伊地知写真写真!これで!」
五条がスマホを伊地知に渡すと四人が写真に収まる。
「あ…伊地知さん私も…」と言うと悠仁が離れようとする。
「まって、悠仁くん。二人で撮ってほしいから…」
ツーショットを撮られる二人をみて五条は微笑む。
4人が呪術高専に到着すると七海が五条の後を追う。
「五条さん、わざとですよね?」
「なにがー?」
「今日夢さんをドレスアップさせて連れ回してたの、虎杖くんにわざと見せる為ですよね?」
五条は間を空け少し考える「……夢ちゃんとデートしたかっただけー」
どうだか、と七海は歩きだす。
遠くから、あーーいたーー!と言う声がする。野薔薇がダッシュで四人の元へ駆け寄る。恵も後を追ってきた。
「家入先生のとこ行ったら夢いないし五条先生と出掛けたとか言う…から……」
途中で野薔薇は止まった。追い付いた恵がまず口を開いた。
「夢…なのか?」
「だよね!?夢ちゃん??」
夢は恥ずかしそうにうなずく。
野薔薇は大胆に入ったスリットをまじまじと見る。
「ごぉうら!虎杖!近い!」
夢と悠仁の間に入り、組んでいた腕を解かせ、野薔薇は夢の手を取る。
「夢ちゃん超綺麗…まって、シャネルに靴ルブタンじゃん??どうしたの?」
夢は野薔薇に今日の出来事を説明した。
「虎杖、スーツなんか着てどうしたんだ?」
恵はスーツ姿の悠仁を見ると悠仁も経緯を説明し始めたところで固まった。
「うぁ!!ナナミン!!制服ロッカー入れっぱなしだ!!」
「あぁ、そう言えばそうでしたね」
「俺戻って取ってくる!」
ドレスコード ― END