NOCバレした先輩と信頼関係?を築く話
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※諸伏景光の偽名を緑川唯としています。
第七話
末恐ろしい。それ以外の言葉がない。
隣の席に座った眼鏡をかけた子どもが、カウンターの向こうの安室さんと対等に会話をするのを黙って聞くしかない。諸伏先輩に鍛えられて数年前よりマシになったと思っていたが、やはり私の脳味噌は所詮あんぽんたんでゆるゆるなのだなあ。
氷の入った麦茶を口に運んで乾いた喉を潤した。
店内には江戸川コナン君と私と、安室さんしかいない。恋人アピールのためにと来店したので、今はいないが緑川唯もじきに戻ってくるだろう。
コナン君は安室透の正体に気づいていると先輩に教えられている。おそらく一番ガードが緩い私を狙って更なる情報を引き出しにかかってくる筈だ警戒しろ、そう言われたのが数日前である。
「環さんも、安室さんのお友達なんでしょ?」
ひぃっ! 来た!
小首を傾げてとても愛らしくはあるのだが、眼鏡の奥の目には隠し切れない知性と好奇心が光っていて、ちょっと怯む。冷たいお茶を飲みすぎたかもしれない、それだけじゃない気もするお腹の痛みに手でそこをさすった。
「安室さんは、恋人の唯さんのバイト友達だよ。私はあんまり知らないかなあ、お店で顔を合わせるのも少ないし。……ね? 安室さん」
さあ会話を引き取ってくれ! あとは頼みました! そういう私の視線を受けて安室さんがにこやかに頷く。なんて、頼もしいんだ……。
「でも緑川さんも安室さんの仲間だもんね」
疑問形ですらないそれに私は飲み物を含むのに合わせて唇が引きつった。私では……とてもじゃないが歯が立たない。白旗を上げてせめて情報は漏らさないようにしようと口を噤んで安室さんに対応をお任せすることにした。だってこんなの想定問答集になかった!
コナン君がアイスコーヒーの入ったグラスにささるストローを口に運ぶ。絶対子どもの舌には苦い筈のそれをこくりと美味しそうに飲むのを見つめてしまう。降谷さんと諸伏先輩の推理によるコナン君の正体であろう人物を思い出して、またつきんと痛んだ腹部を撫でた。
カラン、軽い音を立ててドアが開いて緑川唯が入ってくる。少し歩いた先のお得意様にコーヒーを届けて帰ってきたのだ。
その緑川唯がにこやかにただいまと告げ、私に視線を止めたかと思いきや急に表情を硬くして詰め寄ってきた。目が合って甘く微笑むぐらいはするかな? とは思っていたがこの反応は想定外である。思わず素で驚いてちょっと体を引いてしまった。
「環、薬はもう飲んだ?」
「あの、唯さん?」
私も、もちろん安室さんもコナン君も目を丸くしている。緑川唯が何を聞いているのかわけが分からない。緑川唯は私を無視して私の鞄を漁っている。はい、と渡された小さめの可愛いレースのついたポーチと、一回分の鎮痛剤。
それを見て、私はようやく自分の体に起きていることを知った。顔が一瞬で赤くなるのが分かった。
「安室、白湯ちょうだい」
そう頼んでいる緑川唯の声に背中を向けて、トイレに向かった。どうりで、さっきからお腹が痛いと……!!
生理が重い私は、体を動かす任務時に支障をきたすからと報告をあげざるを得ないんだよ……!! 実際先輩とまだ距離があった時に恥ずかしがって報告しなかったら、結構痛い目に遭ったことがある。
そういうわけで、先輩は私の周期を把握している。職務上必要職務上必要……、呪文のように唱える。
非常に戻りづらいが、一生トイレにいるわけにもいかない。……いや、もう公安やめてポアロのトイレに住もうかな? 一瞬だけそんなことを考えて、当然そんなことできるわけもないので諦めてトイレを出た。
店内には、緑川唯と安室さんしかいなかった。あれ、コナン君は? 目が合った緑川唯がその疑問に答えてくれた。
「おかえり。環の体調が悪そうだからって、上の事務所に帰っていったよ」
「こういう言い方は悪いが、助かったな」
「諦めた素振りじゃなかったから、問題の先送りのような気もするけど」
席に戻った私の前に白湯が提供される。温度を確認してから鎮痛剤を口に運んで白湯で流し込む。安室さんも緑川唯の言動で察しがついたらしい、少しいたわるような目でこちらを見た。
大丈夫です早期対処のおかげで問題ありません! やけくそ気味に目だけでそう返しておいた。
「唯さんの正体、確信を得てるみたいでしたけど」
「うん。頭の良い子だな」
「そこから芋づる式に私も怪しまれています」
「……ううん」
「カップルやめます?」
がちゃん。大きな音を立てたのはコナン君の使ったグラスを洗っていた安室さんである。珍しいことだが手元が狂ったらしいが、幸いグラスは割れていなかった。
割れたら怪我もするし地味に破片の処理が面倒だ、割れなくて良かったですねと声をかけようとして、開きかけた口を閉じた。安室さんの目が、なにかおぞましいものでも見るように私を見ていたからだ。
「すぐに取り消せ」
「はい?」
「いいから。僕はお前の身を思って命令している」
「は…はい! 取り消します!!」
なんだろう。今日は私の脳味噌の働きが悪い日なんだろうか?
何度目になるかも分からないが、何を言われているのかさっぱり分からないという気持ちになりつつ、強い口調に素直に命令に従ってしまった。
つい解説を求めて緑川唯を見上げたら、にこっと微笑まれた。教える気はない自分で考えてごらん、とそういうことらしい。今日はちょっと頭の働きが悪いので後日ゆっくり考えてみます……。まさしく問題を先送りした。
何の話をしていたんだっけ、そうだ、切れ者小学生の話をしていたんだった。
「できるならコナン君の対応は唯さんにお任せしたいです」
「……いいよ、引き受ける」
「あれっいいんですか?絶対自分でなんとかしてみせろって言われると思ったのに」
「勿論そのつもりだったけど。お前がとんでもない方向に舵を切ったからオレも方針を変えた」
「私はコナン君とほとんど会話してませんけど!?」
とんでもない方向に舵を切っただって? 私は安室さんとは親しくないですよって、想定問答集の通りに答えましたよ! ね!? って安室さんを見たら「頭痛が痛い」ポーズをとっている。何故に?
「お前、緑川の指導があっても迂闊なのはなかなか直らないな…」
「はい? 迂闊? ……もうっ、もう嫌! 今日はもう頭の良さそうな会話禁止! 黙っててください!!」
「あーあ、安室がいじめるから拗ねたぞ」
「僕は何もしてないだろ。コナン君のせいじゃないか?」
「全員ですよ! もう! どうせこちとらおバカですよ!! わぁん!!」
「環生理でメンタルきてるんだよ、ちょっと寝てな」
「はっきり生理とか言うなこのデリカシーなし男! あざます寝ます!!」
カウンターに腕を組んで顔を伏せる。今デリカシーなし男って言った? っていう不機嫌そうな緑川唯の声が頭上から降ってくる。ないでしょうが。事実でしょうが。公安の必須スキル、どんなところでも(安全が確保されてるなら)仮眠をとれますを披露した。
▽▽▽▽▽▽
顔を真っ赤にしてトイレに向かう、おそらくは公安所属の女性の背中を見送る。それから、彼女が先ほどまで飲んでいた麦茶を回収している男に視線を向けた。
緑川唯、偽名だ。どこかで見たことのあるその眼差しに、本来の苗字は見当がついている。
「緑川さん、あの人のことよく見てるんだね」
「ん?」
「だってお店入ってきてすぐ気づいたじゃない?」
腹部をさすっていることには気づいていたが、正体を探られているプレッシャーによるものだと思っていたし、それは安室さんも同じ見解だった筈。
彼女の隣には俺が座っていて、この緑川という男の立ち位置からは腹部に手を当てていたことだって見えていなかっただろう。
「――コナン君だって、蘭さんに異変があったら気づくだろ?」
それと一緒だ。そう言った緑川さんの声色に嘘や演技の気配はない。何度か店内で見かけた時に、恋人のフリをして情報の受け渡しをしているのだと思っていたが、勘違いだったのかもしれない。
いや、情報の受け渡しはしているかもしれないが、真実恋人なんだろうなと思った。
……それにしては、彼女の方はあっさりしすぎているような? いやでも、生理を把握されて怒らない仲ではあるし。やっぱ恋人でいいんだよな? いいんだろう、うん。
「彼女の生理周期を把握するのはあまり一般的じゃないと思いますけどね」
「そうか? 避けられるものでもないし、せめて体調悪いときは甘やかしてやりたくならない?」
「コナン君。君も観察眼は鋭い方だと思うけど…相手の承諾なしに勝手に把握するのはやめたほうがいいよ」
「しないよそんなこと!!」
からかわれているのだとは分かったが、顔が熱くなるのが止められない。悔し紛れにアイスコーヒーを飲み干して、グラスをカウンターに置いた。体調が悪い女性から情報を聞き出すのは気が引けるし、たぶん……。
ちらりと視線を向けたら緑川さんが黒縁眼鏡の奥の目をすっと細めた。この人が戻った今、追及は許されないだろう。日を改めて接触を図ることにしよう。椅子から飛び降りて、会計に向かった。
「またな、コナン君」
会計を終えた俺の背中にそう声がかかる。振り返った先、緑川さんは笑顔で俺を見ていた。おそらく彼女が戻るのだろう、そちらを振り向いた彼の背に声を投げた。
「またね、諸伏さん」
ぴくりともしない肩に手強い人だなと思って、店を後にした。
続く
第七話
末恐ろしい。それ以外の言葉がない。
隣の席に座った眼鏡をかけた子どもが、カウンターの向こうの安室さんと対等に会話をするのを黙って聞くしかない。諸伏先輩に鍛えられて数年前よりマシになったと思っていたが、やはり私の脳味噌は所詮あんぽんたんでゆるゆるなのだなあ。
氷の入った麦茶を口に運んで乾いた喉を潤した。
店内には江戸川コナン君と私と、安室さんしかいない。恋人アピールのためにと来店したので、今はいないが緑川唯もじきに戻ってくるだろう。
コナン君は安室透の正体に気づいていると先輩に教えられている。おそらく一番ガードが緩い私を狙って更なる情報を引き出しにかかってくる筈だ警戒しろ、そう言われたのが数日前である。
「環さんも、安室さんのお友達なんでしょ?」
ひぃっ! 来た!
小首を傾げてとても愛らしくはあるのだが、眼鏡の奥の目には隠し切れない知性と好奇心が光っていて、ちょっと怯む。冷たいお茶を飲みすぎたかもしれない、それだけじゃない気もするお腹の痛みに手でそこをさすった。
「安室さんは、恋人の唯さんのバイト友達だよ。私はあんまり知らないかなあ、お店で顔を合わせるのも少ないし。……ね? 安室さん」
さあ会話を引き取ってくれ! あとは頼みました! そういう私の視線を受けて安室さんがにこやかに頷く。なんて、頼もしいんだ……。
「でも緑川さんも安室さんの仲間だもんね」
疑問形ですらないそれに私は飲み物を含むのに合わせて唇が引きつった。私では……とてもじゃないが歯が立たない。白旗を上げてせめて情報は漏らさないようにしようと口を噤んで安室さんに対応をお任せすることにした。だってこんなの想定問答集になかった!
コナン君がアイスコーヒーの入ったグラスにささるストローを口に運ぶ。絶対子どもの舌には苦い筈のそれをこくりと美味しそうに飲むのを見つめてしまう。降谷さんと諸伏先輩の推理によるコナン君の正体であろう人物を思い出して、またつきんと痛んだ腹部を撫でた。
カラン、軽い音を立ててドアが開いて緑川唯が入ってくる。少し歩いた先のお得意様にコーヒーを届けて帰ってきたのだ。
その緑川唯がにこやかにただいまと告げ、私に視線を止めたかと思いきや急に表情を硬くして詰め寄ってきた。目が合って甘く微笑むぐらいはするかな? とは思っていたがこの反応は想定外である。思わず素で驚いてちょっと体を引いてしまった。
「環、薬はもう飲んだ?」
「あの、唯さん?」
私も、もちろん安室さんもコナン君も目を丸くしている。緑川唯が何を聞いているのかわけが分からない。緑川唯は私を無視して私の鞄を漁っている。はい、と渡された小さめの可愛いレースのついたポーチと、一回分の鎮痛剤。
それを見て、私はようやく自分の体に起きていることを知った。顔が一瞬で赤くなるのが分かった。
「安室、白湯ちょうだい」
そう頼んでいる緑川唯の声に背中を向けて、トイレに向かった。どうりで、さっきからお腹が痛いと……!!
生理が重い私は、体を動かす任務時に支障をきたすからと報告をあげざるを得ないんだよ……!! 実際先輩とまだ距離があった時に恥ずかしがって報告しなかったら、結構痛い目に遭ったことがある。
そういうわけで、先輩は私の周期を把握している。職務上必要職務上必要……、呪文のように唱える。
非常に戻りづらいが、一生トイレにいるわけにもいかない。……いや、もう公安やめてポアロのトイレに住もうかな? 一瞬だけそんなことを考えて、当然そんなことできるわけもないので諦めてトイレを出た。
店内には、緑川唯と安室さんしかいなかった。あれ、コナン君は? 目が合った緑川唯がその疑問に答えてくれた。
「おかえり。環の体調が悪そうだからって、上の事務所に帰っていったよ」
「こういう言い方は悪いが、助かったな」
「諦めた素振りじゃなかったから、問題の先送りのような気もするけど」
席に戻った私の前に白湯が提供される。温度を確認してから鎮痛剤を口に運んで白湯で流し込む。安室さんも緑川唯の言動で察しがついたらしい、少しいたわるような目でこちらを見た。
大丈夫です早期対処のおかげで問題ありません! やけくそ気味に目だけでそう返しておいた。
「唯さんの正体、確信を得てるみたいでしたけど」
「うん。頭の良い子だな」
「そこから芋づる式に私も怪しまれています」
「……ううん」
「カップルやめます?」
がちゃん。大きな音を立てたのはコナン君の使ったグラスを洗っていた安室さんである。珍しいことだが手元が狂ったらしいが、幸いグラスは割れていなかった。
割れたら怪我もするし地味に破片の処理が面倒だ、割れなくて良かったですねと声をかけようとして、開きかけた口を閉じた。安室さんの目が、なにかおぞましいものでも見るように私を見ていたからだ。
「すぐに取り消せ」
「はい?」
「いいから。僕はお前の身を思って命令している」
「は…はい! 取り消します!!」
なんだろう。今日は私の脳味噌の働きが悪い日なんだろうか?
何度目になるかも分からないが、何を言われているのかさっぱり分からないという気持ちになりつつ、強い口調に素直に命令に従ってしまった。
つい解説を求めて緑川唯を見上げたら、にこっと微笑まれた。教える気はない自分で考えてごらん、とそういうことらしい。今日はちょっと頭の働きが悪いので後日ゆっくり考えてみます……。まさしく問題を先送りした。
何の話をしていたんだっけ、そうだ、切れ者小学生の話をしていたんだった。
「できるならコナン君の対応は唯さんにお任せしたいです」
「……いいよ、引き受ける」
「あれっいいんですか?絶対自分でなんとかしてみせろって言われると思ったのに」
「勿論そのつもりだったけど。お前がとんでもない方向に舵を切ったからオレも方針を変えた」
「私はコナン君とほとんど会話してませんけど!?」
とんでもない方向に舵を切っただって? 私は安室さんとは親しくないですよって、想定問答集の通りに答えましたよ! ね!? って安室さんを見たら「頭痛が痛い」ポーズをとっている。何故に?
「お前、緑川の指導があっても迂闊なのはなかなか直らないな…」
「はい? 迂闊? ……もうっ、もう嫌! 今日はもう頭の良さそうな会話禁止! 黙っててください!!」
「あーあ、安室がいじめるから拗ねたぞ」
「僕は何もしてないだろ。コナン君のせいじゃないか?」
「全員ですよ! もう! どうせこちとらおバカですよ!! わぁん!!」
「環生理でメンタルきてるんだよ、ちょっと寝てな」
「はっきり生理とか言うなこのデリカシーなし男! あざます寝ます!!」
カウンターに腕を組んで顔を伏せる。今デリカシーなし男って言った? っていう不機嫌そうな緑川唯の声が頭上から降ってくる。ないでしょうが。事実でしょうが。公安の必須スキル、どんなところでも(安全が確保されてるなら)仮眠をとれますを披露した。
▽▽▽▽▽▽
顔を真っ赤にしてトイレに向かう、おそらくは公安所属の女性の背中を見送る。それから、彼女が先ほどまで飲んでいた麦茶を回収している男に視線を向けた。
緑川唯、偽名だ。どこかで見たことのあるその眼差しに、本来の苗字は見当がついている。
「緑川さん、あの人のことよく見てるんだね」
「ん?」
「だってお店入ってきてすぐ気づいたじゃない?」
腹部をさすっていることには気づいていたが、正体を探られているプレッシャーによるものだと思っていたし、それは安室さんも同じ見解だった筈。
彼女の隣には俺が座っていて、この緑川という男の立ち位置からは腹部に手を当てていたことだって見えていなかっただろう。
「――コナン君だって、蘭さんに異変があったら気づくだろ?」
それと一緒だ。そう言った緑川さんの声色に嘘や演技の気配はない。何度か店内で見かけた時に、恋人のフリをして情報の受け渡しをしているのだと思っていたが、勘違いだったのかもしれない。
いや、情報の受け渡しはしているかもしれないが、真実恋人なんだろうなと思った。
……それにしては、彼女の方はあっさりしすぎているような? いやでも、生理を把握されて怒らない仲ではあるし。やっぱ恋人でいいんだよな? いいんだろう、うん。
「彼女の生理周期を把握するのはあまり一般的じゃないと思いますけどね」
「そうか? 避けられるものでもないし、せめて体調悪いときは甘やかしてやりたくならない?」
「コナン君。君も観察眼は鋭い方だと思うけど…相手の承諾なしに勝手に把握するのはやめたほうがいいよ」
「しないよそんなこと!!」
からかわれているのだとは分かったが、顔が熱くなるのが止められない。悔し紛れにアイスコーヒーを飲み干して、グラスをカウンターに置いた。体調が悪い女性から情報を聞き出すのは気が引けるし、たぶん……。
ちらりと視線を向けたら緑川さんが黒縁眼鏡の奥の目をすっと細めた。この人が戻った今、追及は許されないだろう。日を改めて接触を図ることにしよう。椅子から飛び降りて、会計に向かった。
「またな、コナン君」
会計を終えた俺の背中にそう声がかかる。振り返った先、緑川さんは笑顔で俺を見ていた。おそらく彼女が戻るのだろう、そちらを振り向いた彼の背に声を投げた。
「またね、諸伏さん」
ぴくりともしない肩に手強い人だなと思って、店を後にした。
続く