NOCバレした先輩と信頼関係?を築く話
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※諸伏先輩の偽名を緑川唯としています。
第十三話
唯さんに変装をしていない、諸伏先輩の姿のままの彼と、彼のセーフハウスに訪れた時に手をつなぐようになった。
部屋で向かい合わせに座って、私が怖がってないか毎回必ず確認する彼を、少しずつ愛おしく思うようになっているのが、ちょっと怖い。だって結局この人の掌の上で転がされてるって、そういうことでしょう?
繋いだ手をいつも大事に、大事にそうっと触れてくれる先輩を前に、私はついまた胸元を触ってしまう。どういう時に触れてしまうのか、ちょっと分かり始めている。
だいたい、先輩のことを考えている時だ。
そうだよねここ触ったの先輩だもんね、先輩のこと考えたらつい触っちゃうよね分かる分かる、いやこの癖早く直さないといつか任務に支障をきたしそう。
「……オレと手を繋いでて、なんでゼロのことを思い出す結果になった? それ、嫉妬するからやめてほしい」
「降谷さん? なんで急に?」
素で驚いてそう問い返してから、ようやく思い出した。梓さんがポアロで私に教えてくれた件について、ようやく思い出した。
彼はここに、胸元に降谷さんの唇が触れたことについて嫉妬していたのだって。
繋いでいる手から視線を上げた諸伏先輩が、胸元に触れている私の手を引き離したそうに見つめている。
任務に支障をきたす前に、プライベートで支障をきたしてしまった。やはり早急に直さないといけない。
慌てて胸元から手を離して、すみませんと謝ろうとして、口をいったん閉じる。悩んで悩んで悩んで……そのうちに時間が来たのだろう、諸伏先輩が私の手を離してから、ようやく決心して私は彼に報告をあげることにする。
「これは、先輩のせいです」
「オレ?」
「あの時触ったじゃないですか」
「……指先で、ちょんと」
「触ったじゃないですか! え、なかったことにしようとしてます?」
「そうじゃないけど……」
え? お前なに言ってんの? という顔である。彼の言いたいことも、分からないではない。
降谷さんはここに舌を這わせて吸って、諸伏先輩は指先でほんの少し触れただけだ。
どちらが記憶に残るかを比べたら、対象さえ無視すればそりゃあ前者が圧倒的だろう。対象さえ無視すれば。
でも、先輩の甘やかしによって順調に情緒が育まれてきた私には分かる。誰が触れたのか、それがとても重要だ。それに
「それに、諸伏先輩が触るから降谷さんにキスされた記憶が一瞬で先輩に置き換わっちゃったのもよくなかった……あれは本当に罪深い幻だった……」
最近はようやく赤面することはなくなったけど、脳裏に浮かんだときはやっぱり脳内でやめて! って叫んじゃうし、早く透明人間になりた~いってふざけてしまうもんなあ。
ふざけないとやってられないってこと、あるよね。私は毎日あるよ…毎日なんだよ。
ふと、やけに部屋が静かなことに気づく。もしかして私先輩の言葉聞いてなくて無視してる状況になってる? と心配になって慌てて思考を中断して正面の彼に視線を戻す。
「……なんの顔です?」
「突然落とされた爆弾に身構えてなかった分大ダメージを受けてる顔」
「爆弾?」
「……お前途中から声に出してたよ……」
「途中から? えっ、どの辺ですか!」
「オレにキスされた幻を云々」
「ひっ」
簡素化した表現にとどめたのは、多分詳しく言葉にしたら私が羞恥で逃げていくと思ったからだろう。
それでも十分に申し訳なく、羞恥のあまり土下座した。そこまで報告するつもりじゃなかったのに! 頭を下げた私を見て先輩がすぐに慌てて顔を上げるように言ってくるので、大人しく従った。
「あの時のあの可愛くて凶悪な顔は、オレの幻でああなったって、そういうこと?」
「やめてぇええええ確認しないで…!! 申し訳なくて透明になりたいんです!!」
「申し訳ないの意味が分からない。オレは今嬉しさのあまりその幻を現実にしてやろうかと考えた」
「それはやめて!!」
「分かってる。環を怖がらせるような真似はしない」
当たり前だけど、当たり前なんだけども! やっぱりこの人、手だけで満足してるわけじゃないんだ!?
いつもいつもすっごい幸せそうにするから、なんでだか分からないけど忘れてた。
また胸元に触れてしまったけど、それをもう先輩は咎めなかった。嬉しそうで、ちょっと困ったみたいなそういう顔で、私の胸元に視線を送っている。
唇が降ってきて、熱い舌が肌を這って、吸われる。諸伏先輩は、どういう風に女の肌を吸うんだろう。いや、そもそも痕を残したいタイプなのかな…?
「……その凶悪な顔を、ちょっと隠しててくれないか……」
「きょうあ……、また凶悪って言った?」
「オレに痕を残して欲しいって顔をしてる」
「してません!!!」
「鏡見てくれば?」
「おうとも!」
やけくそ気味にそう返事して、洗面所に逃げ込んで冷水で顔を洗った。化粧?崩れるけど別にもう関係なくない?いいやもういっそこのまま化粧落としてから戻ろう。
上気した頬なんて、鏡見なくても分かってる。
▽▽▽▽▽
――可愛い。
ゼロを思って上気したのだろう、オレを男として意識するよりも先になんで憧れが強くて男として見れないと断言してたゼロなんだよって拗ねた過去が一瞬で遠くへ消えた。
ゼロが触れた事実を、想像の上でオレで塗り替えていたという衝撃発言を思い出して、口の端が上がるのを止められない。
幸い環は洗面所で火照った顔を鎮めるのに顔を洗い始めたようだししばらくは戻らないだろう。思い切りにやついておこう。
胸元に触れた後の驚きで手が震えていた彼女を思い出す。
驚き……いやあれは、恐怖だったのだろう。おそらくは濡れていない状態で手酷く抱かれただろう過去の記憶が、彼女の体を彼女自身もあずかり知らぬところで強張らせるのだと、今なら分かる。
任務中ならばそれすらも完全に押し殺して耐えてみせるのだから、そういうところも健気というか、愛おしいというか……守ってやりたくなる。
そういう環が想像の上とはいえオレとの行為を受け入れたのだということは……これ以上は脇に置いておこう。
じゃないとようやく手をつなぐのに慣れてきた彼女にまた距離を取られることになってしまいそうだ。
濡れにくいから面白くないと捨てられた…か。
恐ろしくて聞けてはいないが、まさか初体験がそれだとか言わないでくれよ…。言いそうだなあいつなら。
なんで、なんでそんなクズばっか選ぶんだ。お前絶対言い寄られたら適当にうんって返事してきただろ。
涙が出るぐらい簡単にその姿が想像できてしまう。隣にいたなら絶対に止めたのに。言い寄らせることすらさせなかったのに。
「自己肯定感が低いのが原因かな……」
自分なんかが好かれるわけない、そういう顔をよくする。
おそらくそんな考えが根本にあるから、好意を寄せてくれた人間に対しては拒絶を示せないのだろう。
……おいじゃあなんでオレは付き合ってもらえてないんだ。
ちょっと拗ねてしまったが、答えは分かっている。彼女はオレを大事に思ってくれていて、失うことの方が怖いと思っている。つまり、オレは付き合ってもらっていないのに過去の男たちをすでに超えていると、そういうことだ。……よし満足した。
自己肯定感の低さと、体への過度な接触への恐怖。とりあえずはこの二つの問題に当分集中することにする。
付き合うことが怖いというのは、多分この感じだと押し切れると判断した。どう見たってこちらを慕う目をするのが悪い。悪いがそのうち押し切らせてもらう。
別れるつもりなんてないんだから押し切ったっていいだろう。うん。
「先輩なんか凶悪な顔してますよ……」
「これは環のせいなんだよ」
「私今戻ってきたところなんですけど!?」
「お前が可愛いのが悪い」
「か、可愛いとか……」
禁止で。そう続くかと思われた言葉は、待ってみたが音にはならなかった。
口をへの字にした彼女が、目線をオレから外して、でも期待するように耳を澄ましているのが見える。
へえ、思ったよりも順調にこちらに距離を詰めてきてくれているらしい。
オレの前に座った環が、右手を差し出してくる。目線はどこかにやったままで。その手を握って、オレは一つ提案することにした。
「そろそろ次の段階に移っても許されますか?」
「……前向きに検討させていただきます」
「可愛い、好きだ、この発言の許可をください」
「………………うん」
こわい、そう震えていたのが嘘みたいだ。手を繋いだ環に可愛いよ、好きだよと繰り返し伝える。
オレ本来の性分としては、こういうのはあんまり言わない方なんだけど。でも、彼女には多分言わないと伝わらないし、言った分全部伝わってるわけでもない。だからオレは持論を捻じ曲げて、何度も言葉にすることにした。
口にすれば軽くなるかと思っていたが、なんのことはない。積み重なって少しずつ気持ちが大きくなっている。
「……せんぱい」
「ん?」
「私も先輩の事、可愛いって……思います」
環の方が可愛いよって、そう返すしかないだろう?
続く
第十三話
唯さんに変装をしていない、諸伏先輩の姿のままの彼と、彼のセーフハウスに訪れた時に手をつなぐようになった。
部屋で向かい合わせに座って、私が怖がってないか毎回必ず確認する彼を、少しずつ愛おしく思うようになっているのが、ちょっと怖い。だって結局この人の掌の上で転がされてるって、そういうことでしょう?
繋いだ手をいつも大事に、大事にそうっと触れてくれる先輩を前に、私はついまた胸元を触ってしまう。どういう時に触れてしまうのか、ちょっと分かり始めている。
だいたい、先輩のことを考えている時だ。
そうだよねここ触ったの先輩だもんね、先輩のこと考えたらつい触っちゃうよね分かる分かる、いやこの癖早く直さないといつか任務に支障をきたしそう。
「……オレと手を繋いでて、なんでゼロのことを思い出す結果になった? それ、嫉妬するからやめてほしい」
「降谷さん? なんで急に?」
素で驚いてそう問い返してから、ようやく思い出した。梓さんがポアロで私に教えてくれた件について、ようやく思い出した。
彼はここに、胸元に降谷さんの唇が触れたことについて嫉妬していたのだって。
繋いでいる手から視線を上げた諸伏先輩が、胸元に触れている私の手を引き離したそうに見つめている。
任務に支障をきたす前に、プライベートで支障をきたしてしまった。やはり早急に直さないといけない。
慌てて胸元から手を離して、すみませんと謝ろうとして、口をいったん閉じる。悩んで悩んで悩んで……そのうちに時間が来たのだろう、諸伏先輩が私の手を離してから、ようやく決心して私は彼に報告をあげることにする。
「これは、先輩のせいです」
「オレ?」
「あの時触ったじゃないですか」
「……指先で、ちょんと」
「触ったじゃないですか! え、なかったことにしようとしてます?」
「そうじゃないけど……」
え? お前なに言ってんの? という顔である。彼の言いたいことも、分からないではない。
降谷さんはここに舌を這わせて吸って、諸伏先輩は指先でほんの少し触れただけだ。
どちらが記憶に残るかを比べたら、対象さえ無視すればそりゃあ前者が圧倒的だろう。対象さえ無視すれば。
でも、先輩の甘やかしによって順調に情緒が育まれてきた私には分かる。誰が触れたのか、それがとても重要だ。それに
「それに、諸伏先輩が触るから降谷さんにキスされた記憶が一瞬で先輩に置き換わっちゃったのもよくなかった……あれは本当に罪深い幻だった……」
最近はようやく赤面することはなくなったけど、脳裏に浮かんだときはやっぱり脳内でやめて! って叫んじゃうし、早く透明人間になりた~いってふざけてしまうもんなあ。
ふざけないとやってられないってこと、あるよね。私は毎日あるよ…毎日なんだよ。
ふと、やけに部屋が静かなことに気づく。もしかして私先輩の言葉聞いてなくて無視してる状況になってる? と心配になって慌てて思考を中断して正面の彼に視線を戻す。
「……なんの顔です?」
「突然落とされた爆弾に身構えてなかった分大ダメージを受けてる顔」
「爆弾?」
「……お前途中から声に出してたよ……」
「途中から? えっ、どの辺ですか!」
「オレにキスされた幻を云々」
「ひっ」
簡素化した表現にとどめたのは、多分詳しく言葉にしたら私が羞恥で逃げていくと思ったからだろう。
それでも十分に申し訳なく、羞恥のあまり土下座した。そこまで報告するつもりじゃなかったのに! 頭を下げた私を見て先輩がすぐに慌てて顔を上げるように言ってくるので、大人しく従った。
「あの時のあの可愛くて凶悪な顔は、オレの幻でああなったって、そういうこと?」
「やめてぇええええ確認しないで…!! 申し訳なくて透明になりたいんです!!」
「申し訳ないの意味が分からない。オレは今嬉しさのあまりその幻を現実にしてやろうかと考えた」
「それはやめて!!」
「分かってる。環を怖がらせるような真似はしない」
当たり前だけど、当たり前なんだけども! やっぱりこの人、手だけで満足してるわけじゃないんだ!?
いつもいつもすっごい幸せそうにするから、なんでだか分からないけど忘れてた。
また胸元に触れてしまったけど、それをもう先輩は咎めなかった。嬉しそうで、ちょっと困ったみたいなそういう顔で、私の胸元に視線を送っている。
唇が降ってきて、熱い舌が肌を這って、吸われる。諸伏先輩は、どういう風に女の肌を吸うんだろう。いや、そもそも痕を残したいタイプなのかな…?
「……その凶悪な顔を、ちょっと隠しててくれないか……」
「きょうあ……、また凶悪って言った?」
「オレに痕を残して欲しいって顔をしてる」
「してません!!!」
「鏡見てくれば?」
「おうとも!」
やけくそ気味にそう返事して、洗面所に逃げ込んで冷水で顔を洗った。化粧?崩れるけど別にもう関係なくない?いいやもういっそこのまま化粧落としてから戻ろう。
上気した頬なんて、鏡見なくても分かってる。
▽▽▽▽▽
――可愛い。
ゼロを思って上気したのだろう、オレを男として意識するよりも先になんで憧れが強くて男として見れないと断言してたゼロなんだよって拗ねた過去が一瞬で遠くへ消えた。
ゼロが触れた事実を、想像の上でオレで塗り替えていたという衝撃発言を思い出して、口の端が上がるのを止められない。
幸い環は洗面所で火照った顔を鎮めるのに顔を洗い始めたようだししばらくは戻らないだろう。思い切りにやついておこう。
胸元に触れた後の驚きで手が震えていた彼女を思い出す。
驚き……いやあれは、恐怖だったのだろう。おそらくは濡れていない状態で手酷く抱かれただろう過去の記憶が、彼女の体を彼女自身もあずかり知らぬところで強張らせるのだと、今なら分かる。
任務中ならばそれすらも完全に押し殺して耐えてみせるのだから、そういうところも健気というか、愛おしいというか……守ってやりたくなる。
そういう環が想像の上とはいえオレとの行為を受け入れたのだということは……これ以上は脇に置いておこう。
じゃないとようやく手をつなぐのに慣れてきた彼女にまた距離を取られることになってしまいそうだ。
濡れにくいから面白くないと捨てられた…か。
恐ろしくて聞けてはいないが、まさか初体験がそれだとか言わないでくれよ…。言いそうだなあいつなら。
なんで、なんでそんなクズばっか選ぶんだ。お前絶対言い寄られたら適当にうんって返事してきただろ。
涙が出るぐらい簡単にその姿が想像できてしまう。隣にいたなら絶対に止めたのに。言い寄らせることすらさせなかったのに。
「自己肯定感が低いのが原因かな……」
自分なんかが好かれるわけない、そういう顔をよくする。
おそらくそんな考えが根本にあるから、好意を寄せてくれた人間に対しては拒絶を示せないのだろう。
……おいじゃあなんでオレは付き合ってもらえてないんだ。
ちょっと拗ねてしまったが、答えは分かっている。彼女はオレを大事に思ってくれていて、失うことの方が怖いと思っている。つまり、オレは付き合ってもらっていないのに過去の男たちをすでに超えていると、そういうことだ。……よし満足した。
自己肯定感の低さと、体への過度な接触への恐怖。とりあえずはこの二つの問題に当分集中することにする。
付き合うことが怖いというのは、多分この感じだと押し切れると判断した。どう見たってこちらを慕う目をするのが悪い。悪いがそのうち押し切らせてもらう。
別れるつもりなんてないんだから押し切ったっていいだろう。うん。
「先輩なんか凶悪な顔してますよ……」
「これは環のせいなんだよ」
「私今戻ってきたところなんですけど!?」
「お前が可愛いのが悪い」
「か、可愛いとか……」
禁止で。そう続くかと思われた言葉は、待ってみたが音にはならなかった。
口をへの字にした彼女が、目線をオレから外して、でも期待するように耳を澄ましているのが見える。
へえ、思ったよりも順調にこちらに距離を詰めてきてくれているらしい。
オレの前に座った環が、右手を差し出してくる。目線はどこかにやったままで。その手を握って、オレは一つ提案することにした。
「そろそろ次の段階に移っても許されますか?」
「……前向きに検討させていただきます」
「可愛い、好きだ、この発言の許可をください」
「………………うん」
こわい、そう震えていたのが嘘みたいだ。手を繋いだ環に可愛いよ、好きだよと繰り返し伝える。
オレ本来の性分としては、こういうのはあんまり言わない方なんだけど。でも、彼女には多分言わないと伝わらないし、言った分全部伝わってるわけでもない。だからオレは持論を捻じ曲げて、何度も言葉にすることにした。
口にすれば軽くなるかと思っていたが、なんのことはない。積み重なって少しずつ気持ちが大きくなっている。
「……せんぱい」
「ん?」
「私も先輩の事、可愛いって……思います」
環の方が可愛いよって、そう返すしかないだろう?
続く