国家と国民に奉仕します!【俳優パロ】
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毎日毎日うるさかった熱愛報道が唐突に収束した。双方の事務所がはっきりと否定したことに加えて、お相手の女優がすでに結婚していたことを公表したからである。
その男性が諸伏景光の幼馴染であり、それゆえ仲が良く、週刊誌に掲載されたツーショット写真は実は切り抜きで夫である男性もその場にいたのだと、つまりはそういうことだった。
「心外だ。相手がいるのに環にこんなことをするような男だと思ったのか?」
またしても勝手に私の家に上がり込んで、先日傷を負った私の足の裏を確認して眉をひそめている諸伏景光に、頭が鈍く痛む。
「相手がいなくても許される行為ではないと思いますけど」
「…?環の同意は得てる筈だけど」
「ぐっ……いいえ違う。勝手に家を突き止めたことと、合鍵のことです」
「ああそっちか。現場に出入りする際に書類をいろいろ書いただろう?偶然、見たんだ」
「―――偶然」
「偶然。そして記憶力の良いオレは、それを覚えてしまった」
「…………逮捕」
「証拠の無い話には付き合ってくれないんじゃないか?」
「合鍵は」
「一回目の訪問時に環の了承を得た上で貰った」
「……了承?」
「環はとても可愛くトんでたけど。ちゃんと「いいよ、どうぞ」って言ってくれた」
おいこいつまじで逮捕するべきなのでは。
偶然かどうかはさておいて人の住所を覚えたまでは、…いろいろと言いたいことがあるがまあいい話が進まないので置いておく。知り得た情報を使って家に訪れようとするか?普通はしないだろう。
その上さらに朦朧とした状態であると認識しながら、その状態の相手から合鍵を譲り受ける了承を得たなどと…。諸伏景光のすぐそばにある枕に拳を叩き込む。飄々とした顔で眉一つ動かさない様子に、苛立ちが抑えきれない。
「そもそもーーーそもそもですよ」
「ん?」
「何故、私を抱いたんです」
「環が好きだからだけど」
きょとん。何故そんなことを聞かれたのか分からない、そういう様子だ。いくら人気俳優でもここまで綺麗に演技できるのかどうか…見分ける自信がなくて怯む。好きという言葉を受けて、祈りを捧げたあの日々を思うと心が揺れたが…いやちょっと待てよ。
「好きな女の家に押しかけて何も言わずに抱くのがお前のやり方なのか!」
「あ。それが素?それも可愛いな」
「返答を要求する!」
「…勤務中だからとオレの度重なるアプローチを袖にした環の言い分も聞きたいところだけど」
「はあ?」
「いつもいつもあっという間にオレの前を駆け抜けていくから、捕まえておかないとって焦った。やり方がまずかったとは思ってる」
「は…はあ?」
アプローチ、袖にする、駆け抜けていく、捕まえておく?諸伏景光の言っている言葉が何一つ理解できない。
「オレはね、環の背中に何度も恋をしてるんだ」
格好いいよな、環の背中。そう言われて。可愛いと言われたことよりもよほど胸に刺さった。
先ほど拳を叩き込んだ枕に顔を突っ込んだ。―――もういい。何やら祈りが通じて奇跡が起こり、血迷った彼は私を好きだと言った。もうそれでいいだろう。すべてが面倒くさい。受け入れることにする。
「環がまさか好きでもない男に三回も抱かれるような女だとは思ってないけど。どう?」
今日はもう疲れてるんだ寝かせてくれ。起きた時いなかったら今度こそ拳を叩き込むからな。
「うん、明日の朝は予定がないから泊まってくよ」
ようやくこの関係に名前が付けられそうな気配に安堵して、訪れた眠気に身を委ねた。遠くで「スマホ触るよ」と聞こえた気がして「いいよ、どうぞ」と返した気もする。なるほどこれか。
目覚めて彼がちゃんと隣にいた事と、スマホに新しい連絡先が一つ増えた事とに喜んだ。おい待てこれどうするんだ相手は有名人だぞと頭を抱えることになるが、もう面倒なので開き直って交際届を貰ってくることにした。
当然「こいつ有名人と付き合ってる妄想で頭おかしくなった」と受理されなかったので、コピーしまくってめげずに提出を続ける私がいたことを記述しておく。熊先輩には良かったなと肩ぽんされた。唯一の味方である。
おしまい
諸伏景光の幼馴染枠をかっさらっていった山村ミサオなら、この世界線できっと朝ドラ女優とかとしれっと結婚すると思うの…。名前は出さなかったけど彼です。
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