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炭治郎様達がお休みになっているお部屋から、大きないびきと何やらガタゴトと物音が聞こえてきます。
いびきは恐らく伊之助様でしょうか?寝言も仰っているようですし…もしかして、そのせいで炭治郎様はまだお休みになられていないのかも。
炭治郎様のためにもう一部屋ご用意したほうがいいのかしら…でも、夜分遅くに声をかけるのも気が引けますし…
「えっ」
***
なまえが声をかけようか迷っていると、部屋の襖がガラリと開いた。
そこにいたのは炭治郎の妹、禰豆子だった。
「ムー?」
「あ、あの…」
「ムー!!」
禰豆子がなまえに向かって両手をのばす。そのままなまえの腰に手をまわし抱きついた。
「ええっ!?……はっ!」
自分の驚いた声で炭治郎達を起こしてしまうと思った、なまえは思わず両手で自分の口を塞いだ。
禰豆子はなまえに抱きついたまま離れない。
禰豆子の手を優しく解き、小さな彼女の目線に合うようになまえはしゃがみこんだ。
「貴方、どこから入ってきたの…?ざ、座敷童子…?いや、まさか……そんなことはありませんよね?」
ぶんぶんと禰豆子が首を横に振る。
「じゃあ一体…」
突然現れた禰豆子になまえが混乱していると、炭治郎の声が聞こえてきた。
「んっ……う……禰豆子…」
嫌な夢を見ているのか、炭治郎が魘されていた。苦しそうに寝言を言う炭治郎に禰豆子が駆け寄る。
「兄ちゃんが…鬼になんか……鬼になるな、禰豆子……」
「ムー…」
禰豆子が不安そうな顔で炭治郎の顔をぺたぺたと触りはじめる。
「お名前……禰豆子様と、仰るのですか?」
禰豆子がコクリと頷いた。
「……箱から、出るな…禰豆子……危ない……」
「箱?」
部屋の隅に置かれた箱に目をやると、蓋が開いていた。
「あれは炭治郎様の…もしかしてずっとあの箱の中に…」
なまえは父から、炭治郎が背負い箱だけは大切なものなのでと離さなかったことを聞いていた。
「禰豆子様と炭治郎様はご兄妹でいらっしゃるのですか?」
禰豆子がフンフンと嬉しそうに頷いた。禰豆子が箱の中に入っているのには何か理由があるのだとなまえは思ったが、口枷をしている禰豆子にはとても聞けそうになかった。
「大丈夫だ……兄ちゃんが、元に…人間に…戻してやるから……」
「人間……?炭治郎様、随分と魘されているご様子ですが…」
「ムー……」
炭治郎の髪を禰豆子が撫でる。
しばらくすると炭治郎も落ち着いてきたのか、静かな寝息が聞こえてきた。
「禰豆子様に撫でられて炭治郎様も安心されたのでしょうね…もう夜も遅いですし、禰豆子様も早くお休みになってくださいね」
「ムー!!」
禰豆子は元気よく返事をして、再び背負い箱の中に戻っていった。
「それではおやすみなさい」
禰豆子に別れを告げなまえは部屋をあとにした。
***
嫌な夢を見た。内容はよく覚えてないけど、とにかく嫌な夢だった。
起きてすぐ、部屋の隅に置いていた背負い箱に声をかける。
「禰豆子、おはよう」
そういえば、禰豆子が箱から抜け出して、誰かと話していたような気がするけど、あれも夢だったのかな。
なまえさんにも禰豆子のことをまだ話していないけど、禰豆子が鬼だって知ったら…
「失礼致します。炭治郎様、伊之助様、もう起きていらっしゃいますか」
襖の向こうからなまえさんの声がする。
「は、はい!伊之助は寝てるけど俺は起きてます!」
「入ってもよろしいでしょうか?」
「どうぞ」と返事をするとなまえさんが部屋に入ってきた。
「炭治郎様、おはようございます。昨夜はよくお休みになられましたでしょうか?何やら魘されているご様子だったので」
「どうしてそれを…」
「もうしわけありません…実は…」
俺が嫌な夢を見ていたときのことをなまえさんは全部話してくれた。
禰豆子にも会ったらしい。だけど、どうして禰豆子が箱の中に入っているのかは聞いてこなかった。
「禰豆子様みたいな可愛らしい妹さんがいらっしゃって、なんだか羨ましいです」
「本当は禰豆子だけじゃない…他にも弟妹がたくさんいたんだ」
「え?」
「鬼に殺されたんだ。俺が家を空けていたときに、母さんも弟妹達もみんな…」
「そうだったのですね…そんなことも知らずに私、羨ましいだなんて…ごめんなさい…」
「あ、いや…そんな、謝らないでください!人の事情なんて見ただけじゃわかんないし…」
なまえさんから悲しい匂いがする。俺が変なこと言ったから、気にしてるのかな。
「私にも兄がいました。髪の毛1本も残らずに鬼に喰われてしまいましたが…」
なまえさんにはお兄さんがいたのか。
「我が家が藤の花の家紋を掲げているのはそのためです。兄だけではなく母や使用人の方も鬼の手にかかってしまいましたが、その鬼の首を近くにいた鬼狩り様が落としてくれたのです。だからその恩返しにと…」
「そうだったんだ…」
なまえさんも鬼のせいで生活が変わってしまったんだ。お母さんやお兄さんが生きてたらって思うこと、あるだろうな。俺ももしあのとき…
「炭治郎様?」
「なまえさん……こんなこと言って、驚くかもしれないけど禰豆子は」
「禰豆子様が炭治郎様の御家族であることに変わりはありませんよ」
「えっ…」
「信じ難い話ではありますが…申しわけありません…随分はっきりと寝言を仰っていたので…」
そうか、なまえさんは気づいていたのか。
「そうだ…禰豆子は俺の妹だ。何があっても俺の妹なんだから…」
「はい。禰豆子様は炭治郎様の妹さんです」
そう言って笑うなまえさんの言葉に、なんだか少し救われた気がする。
なまえさんの言う通りだ。
たとえ、鬼になっても、禰豆子が俺の妹であることに変わりはない。
それに禰豆子は俺が必ず元に戻すんだから。
「なまえさん、ありがとう。禰豆子とも仲良くしてあげてほしい」
「はい。かしこまりました」
「まあ、そうは言っても、日中はあまり箱から出られないのだけど…」
「太陽を克服できれば」と言いかけると、隣で寝ていた伊之助がモゾモゾと動き出した。
「んぁ…?権八郎、もう起きてたのか…あ、なまえも……」
「伊之助…!おはよう」
「伊之助様、おはようございます」
「あ゛ー……」
伊之助が大きな欠伸をしながらむくりと起き上がった。それと同時にぐるるるっとお腹の鳴る音が聞こえた。
「腹減った…」
「直ぐに朝食の御用意を致しますね」
起きて早々に腹の虫を鳴かせる伊之助に、なまえさんが優しく笑いかけた。
いびきは恐らく伊之助様でしょうか?寝言も仰っているようですし…もしかして、そのせいで炭治郎様はまだお休みになられていないのかも。
炭治郎様のためにもう一部屋ご用意したほうがいいのかしら…でも、夜分遅くに声をかけるのも気が引けますし…
「えっ」
***
なまえが声をかけようか迷っていると、部屋の襖がガラリと開いた。
そこにいたのは炭治郎の妹、禰豆子だった。
「ムー?」
「あ、あの…」
「ムー!!」
禰豆子がなまえに向かって両手をのばす。そのままなまえの腰に手をまわし抱きついた。
「ええっ!?……はっ!」
自分の驚いた声で炭治郎達を起こしてしまうと思った、なまえは思わず両手で自分の口を塞いだ。
禰豆子はなまえに抱きついたまま離れない。
禰豆子の手を優しく解き、小さな彼女の目線に合うようになまえはしゃがみこんだ。
「貴方、どこから入ってきたの…?ざ、座敷童子…?いや、まさか……そんなことはありませんよね?」
ぶんぶんと禰豆子が首を横に振る。
「じゃあ一体…」
突然現れた禰豆子になまえが混乱していると、炭治郎の声が聞こえてきた。
「んっ……う……禰豆子…」
嫌な夢を見ているのか、炭治郎が魘されていた。苦しそうに寝言を言う炭治郎に禰豆子が駆け寄る。
「兄ちゃんが…鬼になんか……鬼になるな、禰豆子……」
「ムー…」
禰豆子が不安そうな顔で炭治郎の顔をぺたぺたと触りはじめる。
「お名前……禰豆子様と、仰るのですか?」
禰豆子がコクリと頷いた。
「……箱から、出るな…禰豆子……危ない……」
「箱?」
部屋の隅に置かれた箱に目をやると、蓋が開いていた。
「あれは炭治郎様の…もしかしてずっとあの箱の中に…」
なまえは父から、炭治郎が背負い箱だけは大切なものなのでと離さなかったことを聞いていた。
「禰豆子様と炭治郎様はご兄妹でいらっしゃるのですか?」
禰豆子がフンフンと嬉しそうに頷いた。禰豆子が箱の中に入っているのには何か理由があるのだとなまえは思ったが、口枷をしている禰豆子にはとても聞けそうになかった。
「大丈夫だ……兄ちゃんが、元に…人間に…戻してやるから……」
「人間……?炭治郎様、随分と魘されているご様子ですが…」
「ムー……」
炭治郎の髪を禰豆子が撫でる。
しばらくすると炭治郎も落ち着いてきたのか、静かな寝息が聞こえてきた。
「禰豆子様に撫でられて炭治郎様も安心されたのでしょうね…もう夜も遅いですし、禰豆子様も早くお休みになってくださいね」
「ムー!!」
禰豆子は元気よく返事をして、再び背負い箱の中に戻っていった。
「それではおやすみなさい」
禰豆子に別れを告げなまえは部屋をあとにした。
***
嫌な夢を見た。内容はよく覚えてないけど、とにかく嫌な夢だった。
起きてすぐ、部屋の隅に置いていた背負い箱に声をかける。
「禰豆子、おはよう」
そういえば、禰豆子が箱から抜け出して、誰かと話していたような気がするけど、あれも夢だったのかな。
なまえさんにも禰豆子のことをまだ話していないけど、禰豆子が鬼だって知ったら…
「失礼致します。炭治郎様、伊之助様、もう起きていらっしゃいますか」
襖の向こうからなまえさんの声がする。
「は、はい!伊之助は寝てるけど俺は起きてます!」
「入ってもよろしいでしょうか?」
「どうぞ」と返事をするとなまえさんが部屋に入ってきた。
「炭治郎様、おはようございます。昨夜はよくお休みになられましたでしょうか?何やら魘されているご様子だったので」
「どうしてそれを…」
「もうしわけありません…実は…」
俺が嫌な夢を見ていたときのことをなまえさんは全部話してくれた。
禰豆子にも会ったらしい。だけど、どうして禰豆子が箱の中に入っているのかは聞いてこなかった。
「禰豆子様みたいな可愛らしい妹さんがいらっしゃって、なんだか羨ましいです」
「本当は禰豆子だけじゃない…他にも弟妹がたくさんいたんだ」
「え?」
「鬼に殺されたんだ。俺が家を空けていたときに、母さんも弟妹達もみんな…」
「そうだったのですね…そんなことも知らずに私、羨ましいだなんて…ごめんなさい…」
「あ、いや…そんな、謝らないでください!人の事情なんて見ただけじゃわかんないし…」
なまえさんから悲しい匂いがする。俺が変なこと言ったから、気にしてるのかな。
「私にも兄がいました。髪の毛1本も残らずに鬼に喰われてしまいましたが…」
なまえさんにはお兄さんがいたのか。
「我が家が藤の花の家紋を掲げているのはそのためです。兄だけではなく母や使用人の方も鬼の手にかかってしまいましたが、その鬼の首を近くにいた鬼狩り様が落としてくれたのです。だからその恩返しにと…」
「そうだったんだ…」
なまえさんも鬼のせいで生活が変わってしまったんだ。お母さんやお兄さんが生きてたらって思うこと、あるだろうな。俺ももしあのとき…
「炭治郎様?」
「なまえさん……こんなこと言って、驚くかもしれないけど禰豆子は」
「禰豆子様が炭治郎様の御家族であることに変わりはありませんよ」
「えっ…」
「信じ難い話ではありますが…申しわけありません…随分はっきりと寝言を仰っていたので…」
そうか、なまえさんは気づいていたのか。
「そうだ…禰豆子は俺の妹だ。何があっても俺の妹なんだから…」
「はい。禰豆子様は炭治郎様の妹さんです」
そう言って笑うなまえさんの言葉に、なんだか少し救われた気がする。
なまえさんの言う通りだ。
たとえ、鬼になっても、禰豆子が俺の妹であることに変わりはない。
それに禰豆子は俺が必ず元に戻すんだから。
「なまえさん、ありがとう。禰豆子とも仲良くしてあげてほしい」
「はい。かしこまりました」
「まあ、そうは言っても、日中はあまり箱から出られないのだけど…」
「太陽を克服できれば」と言いかけると、隣で寝ていた伊之助がモゾモゾと動き出した。
「んぁ…?権八郎、もう起きてたのか…あ、なまえも……」
「伊之助…!おはよう」
「伊之助様、おはようございます」
「あ゛ー……」
伊之助が大きな欠伸をしながらむくりと起き上がった。それと同時にぐるるるっとお腹の鳴る音が聞こえた。
「腹減った…」
「直ぐに朝食の御用意を致しますね」
起きて早々に腹の虫を鳴かせる伊之助に、なまえさんが優しく笑いかけた。