短編
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竈門くんは優しい。
だから、隣の席の子が教科書を忘れてきたら、必ず机をくっつけて見せてあげる。それが女の子でも、必ず。
彼には相手の性別なんて関係ないのかもしれない。女の子と距離が近くなっても、その子が少し顔を赤らめていても、教科書を忘れて困ってるから見せてあげてるだけ。それだけだ。
でも、それをほんの少しだけ嫌だと思ってしまう。私という彼女がいるのに、どうして他の子にも優しくするの。
そんな風に思う自分自身の心の狭さも嫌になる。
このクラスでは、1ヶ月くらいの頻度で定期的に席替えをする。席替えは朝のホームルームに行われ、その方法は単純にくじを引いていくだけ。
私も竈門くんの隣がいい。竈門くんを独り占めしたい。今度こそ竈門くんの隣の席になれますように。そう思ってくじを引いた。
「やっと隣の席になれた!しばらくは授業中も隣にいられるな」
竈門くんが笑顔でそう話しかけてくる。
そのセリフ、そっくりそのまま返したい。
まさか本当に竈門くんの隣の席になれるだなんて。今日ばかりは自分の運を褒め讃えたい。
彼の言葉が嬉しくて、首を大きく縦に振った。
朝のホームルームが終わり、いつも通り授業が行われる。
なんだか落ち着かない。大好きな竈門くんが隣にいる。落ち着けるわけがない。
ふと隣を見ると、竈門くんが真剣な顔で先生の話を聞いていた。
整った顔だ。真面目で優しくて、恋人という贔屓目をなしにしても竈門くんはかっこいい。どうして私を選んでくれたのか、私なんかでいいのか、不安になるくらいだ。
そんな、授業に関係ないことを考えながらぼーっと竈門くんを見つめる。
視線に気づいた竈門くんがこっちを見る。がっつりと目が合う。それと同時に、先生に教科書を読むよう当てられてしまった。
返事をして席を立ったが、教科書に目を戻してもどこから読めばいいかわからない。
「114頁の7行目から」
竈門くんが小声で教えてくれた。指定された箇所をなんとか読み終え席に着く。
恥ずかしい。竈門くんにみっともないところを見られてしまった。
休み時間になった。竈門くんがこちらに身体を向け、心配そうに口を開く。
「なまえ、どうしたんだ?ぼーっとしてたけど…どこか具合でも悪いのか?」
心配してくれるのは嬉しい。でも、授業中に隣にいるあなたのことを考えていました、なんて言えない。
「大丈夫!なんでもないよ」
そう答えると、竈門くんは「それならいいんだけど…」と少し納得しない様子で身体の向きを元に戻した。
そのあとも授業は続いた。
煉獄先生の歴史の授業だ。
相変わらず声が大きい。でも煉獄先生が話してる内容のほとんどが頭に入ってこない。
隣に竈門くんがいると思うだけで、竈門くんのことで頭がいっぱいになってしまう。
それほど彼に夢中なのだと思い知らされる。
「先生!具合が悪そうなので保健室に連れて行ってもいいですか?」
「ん!?そうか!行ってこい!!」
「ほら、行こう」
「え…」
煉獄先生と竈門くんのそんなやり取りを、他人事のように聞いていたはずなのに、気づいたら竈門くんに腕をひかれて廊下を歩いていた。
保健室の目の前まで来た。だけど、ドアには『職員室にいます』という札がかけてあった。校医の珠世先生は不在みたいだ。鍵もかかってはいないようで、中に入り椅子に座るよう竈門くんに促される。
「なまえ?やっぱり何か変だぞ?」
椅子に座る私に目線を合わせるように竈門くんが身体を屈める。距離が近づく。自分の顔に熱が集まるのがわかる。
「顔も赤いし、熱は?」
額にのびる竈門くんの手を思わず避ける。
「あっ…」
「ご、ごめんなさい!私、全然大丈夫だから…!」
「でも…」
心配してくれていることが、段々申しわけなくなってくる。
「熱もないし元気だよ!早く教室戻ろう…うわっ」
立ち上がって教室を出ようとするも、腕を掴まれ引き止められる。
「なあ、何か隠してないか?」
真っ直ぐな瞳で見つめられる。こうなった竈門くんは何を言っても聞かないだろう。きっと、本当のことを言うまで放してくれない。白状するしかないのだ。
「本当に何でもないの…ただ、やっと竈門くんの隣の席になれて…その、嬉しくて、ドキドキしちゃって…独り占めできるって…」
自分でも何を言ってるいるんだと思う。でもこれが本心なのだから、どうしようもない。
竈門くんは私の腕を掴んだまま、何も答えてくれない。呆れられたのだろうか。余計な心配をしたと思っているのだろうか。
「ごめんなさい、いきなり…こんなの、変だよね。竈門くん、ごめんね…教室戻ろう…」
「ごめん」
「えっ」
抱き寄せられ、引きずられるようにベッドに追いやられ、されるがままシーツに身が沈んだ。
好きな人にベッドに押し倒されて、ときめかないわけがない。
しかし、これはまずい。
なんたって授業中だ。もしかしたら、中々教室に戻ってこない竈門くんを心配して、煉獄先生が様子を見に来るかもしれない。それに養護の先生だっていつ職員室から戻ってくるかわからない。
相手が誰であれ、この状況を誰かに見られたらどうなることか。
「あの、竈門くん…」
彼の名前を呼ぶ。熱のこもった瞳が私を捉える。
「具合が悪いのかと心配したのに…そんな可愛いことを言われたら、どうしていいかわからない」
竈門くんの手が私の髪に触れる。彼の顔が近づいてくる。
誰かくるかもしれない。
キスされる。
期待と不安が頭の中をぐるぐる巡って心臓の音が早くなるのを感じる。
もうどうにでもなれと目をつぶった瞬間、授業の終わりを告げるチャイムが鳴り響いた。
ハッとして思わず起き上がる。
そのせいで私と竈門くんの額がぶつかりあった。
「いっ…!」
「大丈夫か!?」
『権八郎は石頭だ』と嘴平くんから聞いていたが想像以上だった。もしかしたら額がぱっくり割れているんじゃないかと思うくらい痛い。
「ごめん…!俺、石頭だから…」
竈門くんが優しく額を撫でてくれる。
「本当にごめんな…」
「だ、大丈夫…それより、教室戻らないと…」
「ああ…」
「そうだな」と返事をしながらも、少し名残惜しそうな顔をする竈門くんに期待してしまう。
教室に戻ろうと言ったくせに、私の身体は動こうとしない。さっきの続きをせがみたくなる。
「竈門くん…あの…」
「さっきの続き」と言おうと開いた口が塞がれる。
竈門くんとキスをしている。
身体が溶けるんじゃないかと思うくらい、身体中が熱い。ここが学校だということも忘れそうだ。
竈門くんの唇が離れる。頬をするりと撫でられ、熱い視線が私を射抜く。
「続きは放課後…」
「へっ!?…あ…うん……?」
「教室に戻らないと…だろ?」
そう言って微笑む竈門くんに手を引かれ、私は保健室を出た。
放課後までの数時間が永遠のように感じる。
このあとの授業も集中できる気がしない。
だから、隣の席の子が教科書を忘れてきたら、必ず机をくっつけて見せてあげる。それが女の子でも、必ず。
彼には相手の性別なんて関係ないのかもしれない。女の子と距離が近くなっても、その子が少し顔を赤らめていても、教科書を忘れて困ってるから見せてあげてるだけ。それだけだ。
でも、それをほんの少しだけ嫌だと思ってしまう。私という彼女がいるのに、どうして他の子にも優しくするの。
そんな風に思う自分自身の心の狭さも嫌になる。
このクラスでは、1ヶ月くらいの頻度で定期的に席替えをする。席替えは朝のホームルームに行われ、その方法は単純にくじを引いていくだけ。
私も竈門くんの隣がいい。竈門くんを独り占めしたい。今度こそ竈門くんの隣の席になれますように。そう思ってくじを引いた。
「やっと隣の席になれた!しばらくは授業中も隣にいられるな」
竈門くんが笑顔でそう話しかけてくる。
そのセリフ、そっくりそのまま返したい。
まさか本当に竈門くんの隣の席になれるだなんて。今日ばかりは自分の運を褒め讃えたい。
彼の言葉が嬉しくて、首を大きく縦に振った。
朝のホームルームが終わり、いつも通り授業が行われる。
なんだか落ち着かない。大好きな竈門くんが隣にいる。落ち着けるわけがない。
ふと隣を見ると、竈門くんが真剣な顔で先生の話を聞いていた。
整った顔だ。真面目で優しくて、恋人という贔屓目をなしにしても竈門くんはかっこいい。どうして私を選んでくれたのか、私なんかでいいのか、不安になるくらいだ。
そんな、授業に関係ないことを考えながらぼーっと竈門くんを見つめる。
視線に気づいた竈門くんがこっちを見る。がっつりと目が合う。それと同時に、先生に教科書を読むよう当てられてしまった。
返事をして席を立ったが、教科書に目を戻してもどこから読めばいいかわからない。
「114頁の7行目から」
竈門くんが小声で教えてくれた。指定された箇所をなんとか読み終え席に着く。
恥ずかしい。竈門くんにみっともないところを見られてしまった。
休み時間になった。竈門くんがこちらに身体を向け、心配そうに口を開く。
「なまえ、どうしたんだ?ぼーっとしてたけど…どこか具合でも悪いのか?」
心配してくれるのは嬉しい。でも、授業中に隣にいるあなたのことを考えていました、なんて言えない。
「大丈夫!なんでもないよ」
そう答えると、竈門くんは「それならいいんだけど…」と少し納得しない様子で身体の向きを元に戻した。
そのあとも授業は続いた。
煉獄先生の歴史の授業だ。
相変わらず声が大きい。でも煉獄先生が話してる内容のほとんどが頭に入ってこない。
隣に竈門くんがいると思うだけで、竈門くんのことで頭がいっぱいになってしまう。
それほど彼に夢中なのだと思い知らされる。
「先生!具合が悪そうなので保健室に連れて行ってもいいですか?」
「ん!?そうか!行ってこい!!」
「ほら、行こう」
「え…」
煉獄先生と竈門くんのそんなやり取りを、他人事のように聞いていたはずなのに、気づいたら竈門くんに腕をひかれて廊下を歩いていた。
保健室の目の前まで来た。だけど、ドアには『職員室にいます』という札がかけてあった。校医の珠世先生は不在みたいだ。鍵もかかってはいないようで、中に入り椅子に座るよう竈門くんに促される。
「なまえ?やっぱり何か変だぞ?」
椅子に座る私に目線を合わせるように竈門くんが身体を屈める。距離が近づく。自分の顔に熱が集まるのがわかる。
「顔も赤いし、熱は?」
額にのびる竈門くんの手を思わず避ける。
「あっ…」
「ご、ごめんなさい!私、全然大丈夫だから…!」
「でも…」
心配してくれていることが、段々申しわけなくなってくる。
「熱もないし元気だよ!早く教室戻ろう…うわっ」
立ち上がって教室を出ようとするも、腕を掴まれ引き止められる。
「なあ、何か隠してないか?」
真っ直ぐな瞳で見つめられる。こうなった竈門くんは何を言っても聞かないだろう。きっと、本当のことを言うまで放してくれない。白状するしかないのだ。
「本当に何でもないの…ただ、やっと竈門くんの隣の席になれて…その、嬉しくて、ドキドキしちゃって…独り占めできるって…」
自分でも何を言ってるいるんだと思う。でもこれが本心なのだから、どうしようもない。
竈門くんは私の腕を掴んだまま、何も答えてくれない。呆れられたのだろうか。余計な心配をしたと思っているのだろうか。
「ごめんなさい、いきなり…こんなの、変だよね。竈門くん、ごめんね…教室戻ろう…」
「ごめん」
「えっ」
抱き寄せられ、引きずられるようにベッドに追いやられ、されるがままシーツに身が沈んだ。
好きな人にベッドに押し倒されて、ときめかないわけがない。
しかし、これはまずい。
なんたって授業中だ。もしかしたら、中々教室に戻ってこない竈門くんを心配して、煉獄先生が様子を見に来るかもしれない。それに養護の先生だっていつ職員室から戻ってくるかわからない。
相手が誰であれ、この状況を誰かに見られたらどうなることか。
「あの、竈門くん…」
彼の名前を呼ぶ。熱のこもった瞳が私を捉える。
「具合が悪いのかと心配したのに…そんな可愛いことを言われたら、どうしていいかわからない」
竈門くんの手が私の髪に触れる。彼の顔が近づいてくる。
誰かくるかもしれない。
キスされる。
期待と不安が頭の中をぐるぐる巡って心臓の音が早くなるのを感じる。
もうどうにでもなれと目をつぶった瞬間、授業の終わりを告げるチャイムが鳴り響いた。
ハッとして思わず起き上がる。
そのせいで私と竈門くんの額がぶつかりあった。
「いっ…!」
「大丈夫か!?」
『権八郎は石頭だ』と嘴平くんから聞いていたが想像以上だった。もしかしたら額がぱっくり割れているんじゃないかと思うくらい痛い。
「ごめん…!俺、石頭だから…」
竈門くんが優しく額を撫でてくれる。
「本当にごめんな…」
「だ、大丈夫…それより、教室戻らないと…」
「ああ…」
「そうだな」と返事をしながらも、少し名残惜しそうな顔をする竈門くんに期待してしまう。
教室に戻ろうと言ったくせに、私の身体は動こうとしない。さっきの続きをせがみたくなる。
「竈門くん…あの…」
「さっきの続き」と言おうと開いた口が塞がれる。
竈門くんとキスをしている。
身体が溶けるんじゃないかと思うくらい、身体中が熱い。ここが学校だということも忘れそうだ。
竈門くんの唇が離れる。頬をするりと撫でられ、熱い視線が私を射抜く。
「続きは放課後…」
「へっ!?…あ…うん……?」
「教室に戻らないと…だろ?」
そう言って微笑む竈門くんに手を引かれ、私は保健室を出た。
放課後までの数時間が永遠のように感じる。
このあとの授業も集中できる気がしない。