赤い糸
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「あの人のいない世界なんてって絶望してたけど、もうそんな暇もないの。この子と一緒に生きていくって、私決めたわ」
自分に言い聞かせるように、お腹の子と、愛しいあの人に誓うように呟いた。
「困ったことがあればいつでも頼ってください!」
炭治郎くんはそう言って微笑んだ。彼の右目には恐らく私の姿は映っていない。
「玉ジャリジャリ親父に似たでっかい男になれよ」
ひよこみたいに、あたためれば産まれると思っているのだろうか。伊之助くんが私のお腹を熱心に摩ってくれている。
「いや、まだ性別わかんないから……摩るのはいいけど、優しく触れよ」
伊之助くんの隣で、善逸くんが心配そうな表情を見せた。
「3人とも、産まれてきたら抱っこしてあげてね」
「はい!赤ちゃん可愛いだろうなあ!」
弟妹の多かった炭治郎くんなら、きっと子どもをあやすのも慣れているだろう。
「俺、上手く抱っこできるかな……」
赤ちゃんが女の子だったら、善逸くんみたいな一途な子と結ばれてほしい。
「任せろ!立派な山の王にしてやる!」
ドンと胸を叩いた伊之助くんは、赤ちゃんにどんぐりや花を持ってきてくれるだろう。
「いや、山の王って……それだけはやめとけ?」
「じゃあ俺様の子分だな」
「だから、それもやめなさいってば」
「そうだぞ、伊之助。善逸の言う通りだ。子分はおかしい」
「なんでだよ」
「柱は俺たちの先輩で、その子どもってなる……えっと、なんだろう……うーん」
「炭治郎が混乱してる……」
「ハンッ!権八郎!お前もわかってねえじゃねえかよ!」
「とにかく、子分はダメだ」
「山の王でも、伊之助くんの子分でもなんでもいいわ。この子と遊んでやってちょうだいね」
「よお、元気か?」
「宇髄さん、来てくださったんですね。ありがとうございます。私もお腹の子も元気です。」
「そりゃよかった。うちの嫁たちも楽しみだって騒いでるわ。須磨なんか毎日のように今日産まれるんじゃないですかって言ってるぞ」
「須磨さんがそんなことを……」
騒ぐ須磨さんのお尻をまきをさんがひっぱたいて、それを雛鶴さんが宥めているんだろうなあ。宇髄さんのお嫁さんたちの姿を想像して思わず笑ってしまった。
それからしばらく宇髄さんと談笑していると、冨岡さんがソワソワとした様子で部屋に入ってきた。
「子どもは、いつ産まれるんだ…?」
「冨岡、お前ここに来る度にそれ聞くよな」
「早く会いたい」
「まだもう少し先よ」
私がそう言うと、冨岡さんは「そうか」と寂しそうな顔をした。
そんな冨岡さんに続いて、不死川さんもやってきた。
「身体は何ともねえかァ?」
「ご覧の通り、元気にやってます。ご飯もたくさん食べてますよ」
「飯が食えてんなら何も言うことねェ。産まれるまで生きられるかわかんねえけど、そのときにまだしぶとく生きてたら……」
「はい」
「赤ん坊、抱かせてくれるかァ?」
「だめだ」
「え?」
「ア?」
「おい」
「もちろん」と言いかけた私を遮り、冨岡さんは「不死川はだめだ」と繰り返した。
「なんで冨岡が答えんだよ?」
「不死川の顔を見て怖がるかもしれない」
「いつも無表情のお前に言われる筋合いはねェ。俺が先に抱く」
「お前ら、そんなことで喧嘩すんなよ」
「じゃあ不死川、一緒に抱っこしよう。俺も赤ん坊を片腕で抱くのは心配だ……」
「は…?」
「なんでそうなるんだァ?」と青筋を浮べる不死川さんの隣で、冨岡さんは「楽しみだな」とにんまり笑っていた。
「なんというか……まあ、冨岡も不死川も、仲がいいようでなによりだな」
「ふふっ……そうですね。宇髄さんも混ざったらどうですか?」
「いや、俺は遠慮しとくわ」
たくさんの人に支えられて、笑顔に囲まれて、幸せだ。
この幸せの中にあの人がいたならば。
そんな考えはもうやめよう。
私は、生きていくと決めたのだから。
それから数ヶ月後、私の腕の中にはよく泣く男の子とよく笑う女の子がいた。
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