10000hitリクエスト企画
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「妹じゃない。私は累のお嫁さんになりたいの」
まだ言ってるの?執拗いな。
「私のことお嫁さんにして?ねえ、累ってば……もう、なんでわかってくれないの?お兄ちゃんだったら妹のお願いを叶えてくれるはずよ?」
妹だったら兄の言うことを聞くものだよ。
「累はいつになったら私のことをお嫁さんにしてくるの?」
お嫁さんにするなんてひと言も言ってないけど。
「累。聞いてるの?ねえ、る……っ……!?」
「煩いよ」
しばらく黙ってて。
累が私のことを斬った。
上顎と下顎が真っ二つにわかれるように斬られて、くっつくまで喋れないし、累はそんな私を無視してどこかに行ってしまった。
何も斬らなくたっていいじゃない。
やっと口を利いてくれたと思ったら、「煩いよ」って。酷い。
「累。手を出して?ねえ、お願い」
ちょっと、引っ張らないでよ。
何?
擽ったいなあ、もう。
「ほら見て、お揃い。人間の夫婦はね、こうやって指輪をはめるの」
なまえが僕の指にどこからか摘んできた花を巻きつけた。
こんなことして何になるんだろう。
でも、兄は妹の遊び相手もしてあげなくちゃいけないから、つきあってあげないと。
「それ、外さないでね。絶対よ?」
「指輪、外さないでって言ったのに!」
だって枯れちゃったから。
そんなに泣かなくてもいいじゃない。
「累の馬鹿!」
兄に向かってその口の利き方は何?
「……うっ……累の、馬鹿……」
「……はあ」
わかったよ。またつければいいんでしょ?
だから泣くのはやめてよ。
「なまえ」
「なあに?」
名前を呼んだら、なまえが嬉しそう顔で振り向いた。
何かいいことでもあったのかな。
僕の知らないところで何か、
「どうしたの?」
「……手、出して」
「手?……んっ、擽ったい」
じっとしてて。上手く巻けないでしょ。
「これって……ふふっ……このお花可愛い。累、ありがとう!」
別に、そんなに幸せそうに笑うほど、特別なことをしたわけじゃないよ。
なまえが僕の妹だからそうしただけ。
「あれ?累のは?夫婦なんだからお揃いじゃないと……ねえ、聞いてるの?」
だから、夫婦じゃないってば。
累から私に話しかけてくれた。
いつもは話しかけても無視されるのに、累のほうから声をかけてくれた。
それだけじゃない。
累が私に指輪をくれた。
小さくて可愛いお花の指輪。
姉さんや兄さんに自慢したけど、興味のなさそうな顔をされて、鼻で笑われて、なんだか悲しい。
私は、累がお花を指に巻いてくれてるとき、すごく幸せな気持ちになったのに。
嬉しくて嬉しくて堪らなかったの。だから累がくれたこの指輪、ずっと大事にしないと。
「累、私のことまだお嫁さんにしてくれないの?累がくれた指輪、ちゃんとつけてるのに」
指輪?
違うよ。
それはもう、枯れてボロボロになったただの花。
早く捨てなよ、そんなもの。
「累がこれつけてくれたときすごく嬉しくて、姉さんや兄さんに自慢したのよ」
「え……?」
なんで、姉さんや兄さんにまで言うの?
「累……?私、何か気に障ること言った……?」
「……何が?」
「だって、怖い顔してるから……」
別にいつもと変わらないけど?
「なまえ、怪我したの?」
「……っ!?……ちょ、ちょっと手間取っただけ!ちゃんと殺してきたから!ごめんなさい!次は、ちゃんとするから!」
何をやっているんだ、僕は。
兄は妹を、守らないといけないのに。
僕たちは家族なんだから、役割を果たさないと。
「痛かった?」
「え……?」
「斬られたところ」
「もう、大丈夫……」
「おいで」
「累……?」
「今度は必ず、兄さんが守ってあげるからね」
もう治りかけている、斬られたところを撫でてあげると、なまえは顔を真っ赤にしてどこかに行ってしまった。
なんだろう。胸のあたりがざわざわする。
兄の役割を果たせなかったから?
累に触られた。
触られるのなんてはじめてだったから、びっくりして累から逃げてしまった。
ヒトを殺すのに手間取ったから、てっきり父さんに言いつけられて、母さんみたいに酷い目にあうかと思ってたのに。
斬られたところはもう痛くないけど、「守ってあげるからね」って言ってくれたときの累のことを思い出すと、胸のところがきゅうってなる。
やっぱり私、累のことが好き。
鬼になった私に、累は家族を与えてくれた。例えそれがつくりものだったとしても、鬼の私にも家族がいる。
「ごめんなさい!わ、私……累の手を煩わせてしまって、そ、その……本当は累がいなくたって殺せたの!今日はちょっと調子が悪かっただけ!だから--」
「怪我は?」
「えっ」
「怪我はしてないの?」
「し、してない…」
「どうして嘘つくの?血が出てる。斬られたの?」
「少し刃が当たっただけだから!それまではちゃんとやれてたわ!本当よ!」
そうか。足元に転がっているこいつが、僕の妹を、なまえのことを傷つけたんだ。
「累?」
「死ね」
「うっ……」
飛び散ったヒトの血がなまえの身体を汚した。
妹を襲ったやつを殺してやっただけなのに。どうしてなまえは、そんなに驚いた顔をしているの?
「なまえ、血がついちゃったね。拭いてあげる」
上の兄姉は下の弟妹の面倒をみるものだ。
だから、なまえの面倒は僕が見てあげないと。
「じ、自分でできるから、大丈夫!」
まただ。なまえはまた、顔を真っ赤にして、僕の前から姿を消した。
妹だったら、おとなしく面倒を見てもらうものなのに。
困るなあ。ちゃんと役割を果たしてくれないと。
累が私に触ろうとした。
私はびっくりして、ドキドキしてどうにかなりそうだっていうのに。
累は平然とした顔で私に手をのばしてきた。
累は私のこと、本当になんとも思ってないのかな。
やっぱりただの妹なのかな。
私は累のことが大好きなのに。
「累」
「……何?」
「あっ……あの……累は、私のこと好きじゃない……?」
「好きだよ」
「えっ……」
「妹だから、家族だから、好きだよ」
「そっか、やっぱりそっちの好きか……」
そっちの好き以外何があるの?
「累。私、累のことが好き」
好き?
なまえが僕の妹だから?
家族だから好きなの?
そっちじゃない好きって何?
「ねえ、累--」
「なまえは僕のお嫁さんになって何がしたいの?」
「えっ……」
何か目的があるから、お嫁さんになりたいっていつも言ってるんじゃないの?
「別に、何かしたいわけじゃなくって……ただ累のお嫁さんになりたいだけ」
「何で?」
「何でって、累のこと、好きだから」
「好き?」
「累のこと好きだから、累のお嫁さんになりたいの」
「なまえの好きって僕の好きと何が違うの?」
「違うよ。累の好きとは全然違う」
だから、それが何か聞いてるんだけど。
「私の好きは特別なの。累とずっと一緒にいたいし、累がもしいなくなったらって思うとすごく怖いの。それに、累のことを独り占めしたいし、累にはいつも笑っててほしい」
なにそれ。
全部僕と同じだ。
なまえは笑ってるほうがいいんだ。泣かないでほしい。なまえが泣くと、胸がぎゅうっと痛んで、どうしたらいいかわからなくなる。
僕となまえのことを、ふたりだけのことを、なまえが他の誰かに言うのがすごく嫌だ。言わなくていいよ。僕となまえだけのことなんだから。
ヒトに傷つけられたら、首を斬られたら許さない。万が一そんなことがあったら、そうなる前になまえの首を斬ろうとしたやつのことを、僕が殺してあげる。
「ねえ、旦那さんって何したらいいの?」
「旦那さん?……えっと、お嫁さんのことを好きでいてくれて、お嫁さんのことを守ってくれて、お嫁さんのそばにいてくれる……かな……?」
「それだけ?」
「た、多分……」
それなら僕にもできるかも。
今とたいして変わらないし。
「なまえのこと、お嫁さんにしてあげる。それで僕は旦那さん。家族ってことには変わりないよね」
ちょっと、なまえ。
なんで泣いてるの?
僕のお嫁さんになりたいんじゃないの?
「本当?私のこと、本当にお嫁さんにしてくれる?」
「うん」
「累が、私の旦那さん?」
「うん」
「嬉しい……私、やっと累のお嫁さんになれるんだ」
「そうだよ。だから泣かないで」
嬉しいんだったら笑ってよ。
「私、累のお嫁さんなんだ」
なまえの顔。
今まで、いろんな表情を見てきた。
笑ってるのも泣いてるのも怒ってるのも、全部見てきたつもりだった。
それなのに、いつもと同じように笑ってるのに泣いていて。
なんだか、いつもと違うみたい。初めてみるような笑顔だ。
「なまえ、もっとこっち来て」
「あっ……」
気づいたら、なまえの手を握って、涙で濡れた、僕と同じ色をした頬に唇を押しつけていた。
何をやっているんだろう、僕は。
こんなに近くになまえがいるのは初めてだ。
胸のあたりがまたざわざわってした。
「る、累?何?今の……」
「わからない……けど、そうしたくなったから。嫌だった?」
「い、いやじゃない!でも、こういうのははじめてで、その、びっくりしたから……」
「……そう」
顔、真っ赤なのに、今度は僕から逃げないんだね。
変なの。いや、僕も十分変か。
まあいいや。僕たちはこれからもずっと家族なんだし、旦那さんの役割だってこれから覚えていけばいいんだもんね。
だから、
「よろしくね、僕のお嫁さん」
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
リクエスト内容、お相手累の原作、甘。「累のお嫁さんになろうと無視されてもポジティブに一生懸命な女鬼」ということでした。
累くん、無視してる感じがあまりないですね…もうちょっと冷たい感じのほうがよかったでしょうか?ご希望に添えていなかったらもうしわけありません…。
リクエストしてくださった空様。リクエストありがとうございました!
そして、以下夢主さんについてです。
夢主さんは人間だった頃、将来を約束した男性がいました。夢主さんは相手の男性のことが大好きで、お嫁さんになれることをとても幸せだと思っていました。しかしその男性は、夢主さん以外の複数の女性と関係を持っていました。そのため夢主さんは裏切られたと思い、怒り狂い、その男性のことを包丁で滅多刺しにして殺してしまいます。返り血を浴びた夢主さんはまるで鬼女のようで、その姿を見た無惨様の手によって鬼にされてしまいました。夢主さんが鬼なってから最初に食べたのは、人間だった頃に殺したあの男性でした。
累くんとの出会いについてですが、夢主さんが陽光から隠れるために那田蜘蛛山に逃げ込んだ際、累くんと出会いました。妹にしたのは既に父、母、兄、姉がいたからです。
長文乱文失礼致しました!