後輩が、入社したての新入生社員の2人が喧嘩をした。



｢なんか2人並んでると親子みてえだな。父ちゃんと子どもみてえだ｣



後輩のうちの1人、嘴平が私ともう1人の後輩のみょうじを見てそう呟いた。



｢嘴平くん、人は見た目じゃなくて中身だよ。中身が大事なの。悲鳴嶼さんはものすごく優しいし、猫好きさんで可愛いんだから｣

｢ね、猫……みょうじ、何故それを……｣

｢見た目怖くて近づけなかったら中身だってわかんねえだろうが｣

｢悲鳴嶼さんは怖くないもん！嘴平くんなんか、綺麗な顔してるわりに中身野生児じゃない！｣

｢野生児？なんだよそれ｣

｢こら、2人とも……｣

｢嘴平くんのこと頭いいと思ってたけど、野生児の意味わからないの？辞書で引いてみなさいよ、野生児って｣

｢そういうことじゃねえ、なんで俺が野生児なんだよ！ガキなのはお前の方だろが！｣

｢が、ガキって、失礼ね！背が低くても精神年齢は嘴平くんより高いから！｣

｢いい加減にしなさい……！｣

｢……っ！？｣

｢ぐっ……｣



言い争いをやめない2人に向かって言葉を放つと、途端に静かになった。



｢私はなんと言われてもいい。 だが、みょうじのことを子ども扱いするのはよくない。みょうじも、嘴平には嘴平にしかない個性がある｣

｢すみません……｣

｢悪ぃ｣

｢謝る相手は私ではないだろう？｣


そう言うと、2人は恐る恐る互いに顔を見合わせた。


｢……ｺﾞﾒﾝ｣

｢わ、私も、失礼なこと言った……ごめんなさい｣

｢同期だからといって無理に仲良くしろとは言わない。でも喧嘩はやめなさい。あとできっと後悔するぞ｣

｢はい……｣

｢嘴平も、わかったか？｣



私の問いかけに嘴平がこくりと頷いた。

この一件以来、2人の後輩とはよく話すようになり、後輩2人も友達のように仲良く仕事をするようになった。

そして、何故みょうじが私の好きな物を把握していたのか。私がそれを知るのはもう少しあとのこと。








- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

大好きな悲鳴嶼さんのことを悪く言われたと思い、夢主さんが怒ってしまった話でした。

喧嘩、良くない。