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(※夢主さん、弓道部設定です。夢主さんも煉獄さんも共に学生さんです)
放課後、部活終わり。
外はもうすっかり暗くなっていた。
早く帰ろうと、校門を抜けたとき、大きな声で名前を呼ばれた。
振り返ると私の好きな人がいた。
「みょうじ!今から帰るのか?部活か?」
「うん。煉獄くんは?」
「図書室で勉強していたのだが、いつのまにか眠ってしまっていた!」
「そっか」
本当に眠ってしまっていたのだろう。
「よく寝た!」と笑っている煉獄くんの頬には薄ら寝あとがついている。
「部活はいつもこの時間に終わるのか?もっと早い時間ではなかったか?」
「大会が近いから、残って練習させてもらってたの。最近調子があがらなくて……今日も全然ダメダメだったし……って、ごめんね。こんなこと言って……煉獄くん、弓道部でもなんでもないのに」
そう、なんでもない。
彼は、煉獄くんは、ただのクラスメイトだ。
煉獄くんは誰に対しても分け隔てなく接してくれる。明るくて、勉強も運動もできて、みんなから好かれている。人気者という言葉は彼のためにあるのかもしれないくらいだ。
だから、今もこうやって、たまたま見かけたクラスメイトの私に声をかけてきたのだろう。
でも私は違う。
彼のことをただのクラスメイトだなんて思ってない。
「ダメだなあ……調子が悪いとすぐ弱音吐いちゃう」
どうしてできないんだろうとか、うじうじ悩んでも仕方がないのに。
ネガティブなことばかりが頭の中を占めていて、ため息が止まらない。
「弱音くらい吐いてくれたって構わないがな」
「え?」
「いや……あまり根を詰めないように!みょうじは頑張り屋だから心配だ!」
「頑張り屋って……そんなことないよ。でも、ありがとう……あ、私の家、こっちだから」
好きな人の前で弱音を吐くなんてかっこ悪いし、落ち込んでるところなんて見られたくない。折角2人きりになれたから、本当はもっと煉獄くんとお話したいけど、その気持ちをぐっと堪える。
気持ちを切り替えて、また明日。
明日はこんな暗い顔じゃなくて、もっと明るくて精一杯の可愛くした笑顔で煉獄くんと話せたらいいな。
そう思って、「じゃあね、また明日」と煉獄くんに手を振ろうとしたときだった。
「待て」
「……何?」
「家まで送ろう。暗い夜道のひとり歩きは何かと心配だ」
「えっ、でも……」
煉獄くんの家は私の家とは真逆の方向にあるはず。詳しい場所はわからないけど、私を家まで送って自分の家に帰るとなると相当時間がかかるだろう。
煉獄くんだって疲れてるだろうし、家まで送ってもらうなんてこと申しわけなくて頼めない。
「いいよ。いつもこの時間に1人で帰ってるから」
「いつも……?何かあってからでは遅い」
「送らせてくれ」と煉獄くんは私を真っ直ぐに見据えて呟いた。
「それに、みょうじ。傘は持っているか?」
「え?傘?……持ってないけど」
「それなら尚更だ。もうすぐ雨が降る」
「なんでそんなことわかるの?」
「勘だ!それに、俺は折り畳み傘を持ってきている。俺と一緒に帰れば、雨に当たる心配もない!」
「ええ……」
困惑する私を他所に練習くんは「さあ帰ろう!」と歩き出した。
折り畳み傘を持っているとはいえ、それはきっと煉獄くん1人分のものだろう。
まさか、2人で1人分の傘に入るってこと?
一緒に帰るってだけでも胸がドキドキしてどうにかなりそうなのに、相合傘をすることになったらきっと心臓がもたない。壊れてしまう。
「れ、煉獄くん、やっぱり私1人で帰れ……あっ……」
「やはり、降ってきたな」
「嘘でしょ……」
本当に雨が降ってきた。
勘にしては冴えすぎている。
煉獄くんはカバンから折り畳み傘を取り出して、もう一度「帰ろう」と私に言った。
「ごめん……煉獄くん、家帰るの遅くなっちゃうよね?」
「気にするな!それよりも、もっとこっちに……肩が濡れてしまう」
「うわっ……!?」
ぐいっと左肩を掴んで引き寄せられた。自分の顔に熱が集まっていくのがわかって、思わず俯いた。
「下を向いて歩くと転んでしまうぞ?」
「わ、わかってる!でも、その……」
今顔を上げるわけにはいかない。
こんな真っ赤な顔を見られたら変に思われる。
煉獄くんは親切心で私のことを家まで送ってくれているだけ。傘に入れてくれているだけ。
学校でも転びそうになった女の子を「大丈夫か?」って両手で受け止めたり、積み上げられた提出物を抱えた女の子に「俺が持とう」って声をかけていたじゃない。
これもただの親切心。
そう自分に言い聞かせて、顔に集まった熱を必死に冷まそうとする。
「でも、なんだ?」
「えっと……なんでもない……本当に、なんでもないから……早く帰ろ、ひっ……」
まだ熱が引いていない顔を上げると、目の前に煉獄くんの大きな瞳があった。
距離が近い。
煉獄くんとこんなに距離が近いのははじめてだ。
1人分の傘の中でぴたりと身体をくっつけてるんだから、そりゃあこんなに近くもなるだろう。
まさか、こんなかたちでみんなから好かれている、人気者の煉獄くんを独り占めできるなんて思ってもみなかった。
部活の悩みより、恋のドキドキが勝ってしまって、気づいたら頭の中でぐちゃぐちゃ悩んでいたことなんてどこかに飛んでいってしまった。
「うむ!土砂降りにならないうちに早く帰ろう!」
「うん……」
何を話したかなんて覚えてない。煉獄くんとの時間はあっという間で、気づいたら家に着いていた。そして、「また明日」と去っていく煉獄くんの右肩は雨でぐっしょりと濡れていた。
それからほぼ毎日、部活終わりに煉獄くんと校門の前で鉢合わせるようになった。煉獄くんはきまって、「図書室で眠ってしまっていた」と笑ったあと、「家まで送ろう」と私の隣を歩いた。
煉獄くんは必ず車道を歩いた。自転車が走ってくると、私の腕をそっと掴んで避けてくれた。
家に着いても玄関の前で話し込んでしまったことだってあった。そんなとき、煉獄くんは「楽しくて、つい……」と恥ずかしそうに謝って帰っていった。
煉獄くんのそんな態度に、私は期待をせざるを得なかった。「好き」という気持ちが、なんだか振り回されているようだ。
それに、部活で思うようにできなくても、どんなに落ち込んでいても、煉獄くんと話すと元気が出た。私はこんなもんじゃない、もっとできるって思えた。
そのうち、2人きりの時間にもだんだん慣れてきて、家に帰ってから煉獄くんとの会話を思い出しては、ひとり部屋でにやける日々が続いた。
帰り道に煉獄くんがいない日は、心にぽっかりと穴が空いたみたいで、夜風がその穴をすうっと通り抜けていくようだった。
大会の前日も心に穴が空いたまま家に帰った。
そして、大会当日のこと。
観客の中に煉獄くんがいた。隣には、弟くんだろうか。煉獄くんによく似た男の子も一緒にいて、楽しそうに話をしている。
びっくりして動けずにいると、チームメイトが「大丈夫?」と声をかけてくれた。
「なんかあった?」
「う、ううん……大丈夫。ありがとう」
「早く行こう」
「……うん」
人気者の煉獄くんのことだ。きっと、弓道部に仲のいい友達がいて、それで来たのだろう。そうに違いない。
ありえない期待をかき消しながら、私は先を行くチームメイトを追いかけた。
練習と、挫けても落ち込んでも元気をくれた煉獄くんのおかげで、試合は今までで1番いい成績で終えることができた。
顧問の先生もチームメイトもみんな、練習のときの私を見ていたから、「よくやった」「お疲れ様」って褒めて、喜んでくれた。
会場を出て家に帰ろうとしたとき、煉獄くんと弟さんの後ろ姿が目に入った。
煉獄くん、ありがとう。
煉獄くんのおかげで、私毎日頑張れたの。
煉獄くんの明るさが悩みも弱音も全部吹き飛ばしてくれた。
本当にありがとう。
それを伝えたくて、前を歩く彼の名前を大きな声で呼んだ。
まわりにいた人たちはみんな「何事だ」と私のほうを見たけれど、その人たちの視線なんてどうでもよかった。
振り返って、名前を呼んだのが私だって気づいたのか、煉獄くんはにこりと笑いかけてくれた。
「みょうじ!お疲れ様!」
「……れ、煉獄くん、あの、試合……」
「見ていたぞ!部活終わりに悩んでいたみょうじとは大違いだな!矢が的に当たった瞬間、思わず立ち上がってみょうじの名前を叫びそうになった!」
「千寿郎に止められたがな」と煉獄くんは大きな声で笑った。
「千寿郎、くん……?」
「弟の千寿郎だ。今日は父も母も用事があって出かけているから、ひとりで留守番させるのは寂しいだろうと思って連れてきた」
煉獄くんによく似た弟の千寿郎くんは、困ったように眉毛を下げて、私と煉獄くんを交互に見た。
「あ、兄上……俺は先に……」
「ん……?ああ、すまない」
「いえ、ではまたあとで」
千寿郎くんはそう言うと、ぺこりと私に頭を下げて先に行ってしまった。
「あ……えっと……千寿郎くん、煉獄くんと顔そっくりだね」
「よく言われる。父も俺と似たような顔をしているぞ」
「2人ともお父さん似なんだね」
「そうかもしれないな」
私から声をかけたくせに、いざ煉獄くんを前にすると上手く言葉が出てこない。
ただ、「ありがとう」って言いたいだけなのに、それを言ったら一緒に帰ることも、こうして2人きりで話すこともなくなっちゃうんじゃないかって思って、口にすることができない。
「れ、煉獄くん、あの……私……」
「来週から……」
「え?」
「来週からはもう少し早く帰れるだろうか?」
「早く、帰る?」
「図書館が閉まるギリギリまで居座るものだから、俺は司書さんに複雑な家庭の子だと思われているらしい」
「え、なに……?どういうこと?」
「一緒に帰るにしても、あまり遅いと短い時間しか君といることができない」
「一緒に帰るって……」
恐る恐る「私と?」と聞くと、煉獄くんは「そうだ」と頷いた。
「迷惑だったろうか?」
「ち、違う!迷惑なんて……迷惑かけてたのは私のほうだよ!家逆方向なのに……」
「君といられるのなら、俺は構わない」
なにそれ。
なんか、告白みたいだ。
期待していいの?
でももし、期待していることが間違っていたら?
きっと、立ち直れそうにない。
「煉獄くん、私……お礼が言いたくて……」
やっとのことで、振り絞った声でそう言うと煉獄くんは「お礼?」と首を傾げた。
「部活のこと……調子が悪くて悩んでたけど、帰り道に煉獄くんと話したら、また頑張ろうって思えたの。今日だって、なんていうか……煉獄くんのおかげで、いい成績を出せたと思う」
「それは違うな」
「えっ……」
違うって、勘違いするなってこと?
終わった。
さらば、私の期待と恋心。
「違うって、それって……」
「俺は何もしていない。全て君の実力だ。悩んでも挫けても、弱音を吐いても、そこから立ち上がれるかどうかはその人次第だ。君は立ち上がることのできる人間だ」
「私の、実力……?」
「そうだ」
「それと……」と、煉獄くんが続ける。
「俺はそうやって、また立ち上がろうとする君のことが好きだ」
「……好き?」
今。
好きって、言った?
「好きじゃなかったら、遠回りをして君を家まで送らないし、図書室で寝ていたなんて嘘もつかない」
「そんな、だって……煉獄くん、みんなに優しいし……」
「そうだろうか?」
「そ、そうだよ!だから、私もみんなの中の一人だと思って、期待しちゃダメだって言い聞かせてたんだから!」
もしかしたら、私と同じ気持ちなのかなって期待して、ただのクラスメイトだからってその期待を自分の中に閉じ込めてたのに。
「好きって、いきなり言われたら、私……」
「何を期待してはだめなんだ?」
「あっ……」
「みょうじは何を期待していたんだ?教えてほしい」
大きな瞳でじっと見つめられて、両手をそっと握られて。
心臓が壊れそうになるのはこれでもう何度目か。
「わ、私……」
「ん?」
「同じかと思って……私と煉獄くん……私が煉獄くんのこと、す、好きなのと、同じ気持ちなのかなって……」
「君は俺のことが好きなのか?」
「えっ!?」
あまりにも直球に聞いてくるものだから、狼狽えながら「はい」と答えるしかない。
その通りです。
「煉獄くんのことが好き、です……」
「なら、君の期待していた通りだな!両思いだ!」
「う、うん?……あっ、ちょっと!」
「実に悦ばしいことだ!」と煉獄くんは私の手を引いて歩き出した。
「れ、煉獄くん!?どこ行くの!?」
「家まで送ろう!」
「そっか、ありがとう……いや、そうじゃなくて!」
「どうした?どこか寄りたいところがあるなら付き合うが?」
「両思いって、さっき……」
「俺は君のことが好き。君も俺のことが好き。両思いで間違いないだろう?」
「そ、そうかもしれないけど、いきなりすぎて!」
「いきなりじゃない。俺はずっと前から君のことが好きだった!」
「ずっと前!?」
「そうだ!」
振り回されっぱなしだ。
振り回されっぱなしだけど、嬉しくて嬉しくて仕方がない。
だけど私だってずっと前から煉獄くんのことが好きだったんだから、少しくらいやり返したっていいはず。
「わ、私は、ずっと、ずーっと前から好きだった!」
張り合うようにそう告げると、煉獄くんは一瞬目を見開いて、「それは知らなかった!」とまた大きな声で笑った。
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匿名様からのリクエストで、お相手煉獄さんの「甘で現パロ」、弓道部のヒロインでした。
恋人同士か否かという指定がなかったので、両片想いにしてみました。
煉獄さんが「大会に向けて頑張ってるヒロインを応援してくれたり試合を見に来てくれたりしてくれる話」とのことだったので、学生時代文化部だった管理人は「運動部あるある」や「弓道部あるある」を検索してみたのですが、全然部活とか試合してる描写ないですね!!ごめんなさい!!お気に召さなかったら申し訳ないです…。
試合のあとってチームメイトとご飯食べに行ったり、途中まで一緒に帰ったり、学校に一度集まってミーティング的なことをして解散!みたいな感じもあると思うのですが、そういうの全部無視してしまいました…。
煉獄さんですが、夢主さんを最初には家まで送った日だけ、本当に図書室で居眠りしていましたが、それ以降は夢主さんの部活が終わるまで図書室で勉強していました。好きな女の子のことを、暗い夜道の中歩かせたくなかったからです。
また、煉獄さんが「もうすぐ雨が降る」と言っていますが、あれは勘ではなく、図書室で司書さんに「雨が降ってくる前に帰りなさい」と言われたからです。いつもカッコイイ煉獄さんですが、学生になると好きな子の前ではカッコつけてみたりもするのかなあと思って…あと、管理人はテニスの王子様が好きなんですけど、その中に天候を読むことができる子がいまして……書きながら、「あれ?これ、ホンマに勘的なものやったら、煉獄さん桃城武では?」ってなってました。
リクエストありがとうございました!
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