短編・中編
name
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
私は今元同盟相手とカフェに来ている。
比較的平和で賑わいのある島で、たまたま麦わらの一味と鉢合わせたのだ。
ナミとロビンは相変わらずナイスバディで美人で眼福だ。
「あ、ここは私が出すよ!ローからお金貰ってるから。」
「さっすがトラ男君!太っ腹〜!」
「ふふ。愛されてるわね。」
「えーそうなのかなぁ。」
愛されていない訳では無いけど、うちはお金の管理はローがしているしお金を渡すのは普通だと思っていた。
「だってそれも新作でしょ?あ、そのバッグも。よく見たらアクセも良い奴付けてんじゃない。」
「これは前の島でローに買って貰って、これは雑誌で見て欲しいなーって言ったらローが買ってきてくれたやつ!」
「トラ男君ってそんなに尽くすタイプだったの...?あーでもトラ男君の能力なら取り放題だもんねぇ。」
「ローは民間人相手に泥棒はしないよ?」
ナミの言葉にキョトンと首を傾げた
ハ?と口を開けて目を見開くナミに何なおかしな事を言ったかな?と思いロビンを見るけど、ロビンはふふっと微笑んでいる
「...アンタの船もしかしてお金持ち?宝の山でも見つけた?」
「お金持ちなの?お宝は海賊船から奪ったぐらいかなー?お金はローが管理してるから分からない。あ!でもうちはローが診察でお金稼いだりしてるよ!」
「はーなるほど。トラ男君外科医だしねー。にしても、アンタに掛けてるお金の量凄すぎる。」
「...え、私ってそんなにお金かかってるの...?」
初めて言われた言葉に驚いた。だってローは一言もそんなこと言わないし、外へ出たらいつもローが出してくれていたし。
助けを求めるようにロビンを見れば
「えぇ、かなり。」
そう言われてしまえば思わず固まった。
私はハートの海賊団ではかなり古株だ。船に乗ったのは10代前半のまだまだ子供だった頃。おまけに育った島はそれ程栄えてない田舎町。お金なんて使う機会も無かったから船に乗ってから初めてお金に触れたそんなレベルだ。
何も無い島で育ったから、当然行く先々の島で見るものには興味津々だった。ローは何も言わずに買ってくれたし、他にも欲しいものはあるか?なんて言っていつも色んなものを買ってくれていたから、買ってもらうのが当たり前だと思っていた。
「...これって高いの?」
「ええ。凄く。」
「...これも??」
「うん。ていうか、今あんたが持ってる現金の額がそもそもおかしい。」
「??これって普通じゃないの?」
はぁ?と言うナミの言葉を聞き、人生で初めて自分が大金を持っているという事を教えられた。
「ど、どうしよう...!私のせいで皆の食べる物無くなっちゃったら...」
「いやいや、今までそれで何とかなってるなら大丈夫でしょ...。まぁ使い過ぎだとは思うけど。」
「やっぱ使い過ぎなんだ...。きっとクルーのみんなも不満だったよね...。」
クルーの皆は私を妹のように可愛がってくれる。優しい皆の事だから私の我儘に文句を言えなかったのかもしれない。だってローに買って貰ったアクセサリー1個が、一般人が1年働いても買えない額だなんて知らなかった。
ローはいつでもお金をポンと出すから、お金なんて無限に湧いて出てくる様なものだと思っていた。
「そんな事ないわよ〜。トラ男君も嫌ならちゃんと教えるだろうし。独占欲よ独占欲。さーてそろそろショッピングに行きましょう!」
「ショッピング...。ごめん!ナミ、ロビン!私1回船に戻る!!夜宴の時にまたお話しよ!!」
ナミが立ち上がるのを見て私は慌てて席を立った。
だってお買い物なんて行ったらまた何か買ってしまう。
「えええーーー!?色々買ってもらおうと思ってたのに...はぁ...言わなきゃ良かった...」
「ふふ、残念ねナミ。あの子、夜の宴に参加出来るといいけど...。」
2人が何か話していたけど、お会計を済ませ、持っていたカバンを大切に抱えながら船へ走った。
お金の重さを知ったからか、カバンを持つ手がいつもよりも震えた
黄色い船体の横には可愛らしいライオンの頭が着いた船が停まっている。ポーラタング号の甲板には、サイボーグの人とゴッドが乗っていた。
「ねー!ペンギン!ロー見なかった??」
「見てない。電伝虫で連絡すればいいだろ。」
「あーー!そうだった!!あ、でも後でいいや。あのさ、皆私ってお金使い過ぎだったよね?ごめんね。皆きっと我慢してたよね。」
私がそう発すれば、甲板はシーンと静まり返った
事情を知らないゴッドの、え?どうした?の声がやけに響いた
「...何言ってんだ?」
「え...だって普通こんなにお金使わないって...。今まで物買い過ぎたし...。私もちょっと働こうかなって...。」
一瞬の静寂を破ったのはクルーの叫び声だった
「絶っっったいダメだ!!!」
「おい!!船長に言うなよ!!!」
「はぁ、大体お前どうやって稼ぐつもりだよ!?あと、船長も俺らも好きでやってる事だから気にすんなって!もっと我儘言っていいから!!」
必死に詰め寄る彼らを見て思うのはオカシイの一言。だってもっと我儘言っていいの額では無いし、誰1人怒るどころか、働くのは駄目と口を揃えるのだ。
「オーオー揉め事かァ?」
「ほらほら、そんな熱くなるなって。どしたー?」
サイボーグの人とゴッドが仲介に入るけど、私はもう半泣きだった。だってこのままだと、船のお金が底をついて皆餓死しちゃうかもしれない。そうなれば、お金を1番使っている私は皆に嫌われるかもしれない。
「だっ、だって、皆がお金を、お金を渡すからぁ!!」
「は?お金?良い事じゃねぇか?」
「良くないよ!!だってこんな大金普通持ち歩かないって聞いたもん!!」
ガバッと開いたカバンに入ったお財布とお金の量を見れば、サイボーグの人とゴッドは驚きのあまり大声を上げた
「ええええええ!?あ、お姉様、ちょっと分けてくれませんか〜なんて。」
「だ、だめ!!ローに返すの!!ね!?おかしいよね!?」
「いや、まぁ船でも買うのか?」
「買わないよ!!!もう何も買わないもん!」
慌ててバッグを抱えるけど、クルーの皆のリアクションが怖い。怒るどころがどうしようと頭を抱えている始末だ。どうしようはこっちの台詞だって言うのに。
「あ、キャプテン!!」
「え?」
誰かがそう叫べば、街の方へ振り向く暇もなく私の腕は引っ張られ頭上からは、ROOMと聞こえた
何度も経験した事はあるけど、入れ替わった瞬間の地面への着地は慣れない。ふらっとする体を後ろに倒せばローが支えてくれる。後ろ向きのままローにも垂れて上を向けば、やっぱりローがいてロー、と名前を呼びそのまま体から離れた。
「あの、ロー...」
「働く必要は無い。そもそもお前賞金首だろ。」
「え?聞いてたの!?」
「電伝虫掛けたままだっただろ。」
ローの言葉にポケットに入れていた子電伝虫を見れば、受話器が取れていた。ペンギンと話している時に1度手に掛けたから多分その時だ。
「あ、その、今までお金使い過ぎたなって。ごめんなさい。知らなかったの、使い過ぎだって。」
「今更か。お前がそれを知っていようがお前に金は掛けている。だから気にする必要は無い。」
「いや...だからその...額がおかしいっていうか...。」
会話を全部聞いていた筈なのに、微動だにせず話をするローを見て背中に嫌な汗が流れた
「お前に使うんだから当たり前だろ。心配しなくても民間人から盗ったりはしてねェよ。」
「ちが、そうじゃなくて!」
首をこてんと傾けるローはちょっと可愛いけど、それ所ではない。平然と会話をするのがおかしいのだ。
「船のお金無くなっちゃうじゃん!あと、これも!多過ぎるよ!!私のせいで皆が餓死しちゃったらどうするの!?それに急に船が壊れて部品が買えなくなったり...」
「...待て、お前今日これしか使ってねェのか?」
「へ?いや、今そんな話ししてるんじゃなくて!」
さっきまでピクリとも表情を動かさなかったローが、私のカバンの中身を見て皺を寄せた
「答えろ。」
「えっと、うん。」
正直に答えたけど、どうやらローは怒っている
今日はカフェにしか行っていないから、お金はそれ程使っていない。むしろ褒められるべき行為の筈なのになぜ私の目の前には般若がいるのだろうか。
「何処で何をしていたか答えろ。お前、俺以外の人間から物を貰ってねェだろうな。」
「貰ってないよ!!今日はナミとロビンと街を歩いて、ケーキの美味しいカフェを街の人に教えて貰って、少し並んでからそこでお話して、そこでそのお金の話を聞いて...船に戻りました。」
「...買い物は?」
「後でショッピングに行こうって話してたから、何も買ってないよ...。ホントだよ!可愛いクッキー缶が売ってて、後で買おうかなーって思ってたんだけど...あっ。やっぱ今のなし!」
「ほう。なら買いに行くか。」
般若はいなくなったけど、当然のように私の手を握り、買い物に出掛けようとするローに待ったをかける。
だってこの話の流れで買い物に行こうとする!?
「待ってよ!この島ではもう何も買わない!ローも私にお金使うのやめて!!」
「は?俺の物に金を掛けて何が悪いんだ。言っておくが、これはお前の為じゃなく俺の為にやっている事だ。」
「...何言ってるの?」
「お前こそ馬鹿なのか。俺が自分の物に手を出されて黙っていると思うのか。」
「だからそれとこれとは話しが別で...」
はぁ、とため息をするローに少し怖くなる。だっておかしい。今更気付いたけど、どう考えでもおかしい。
「俺は自分以外の誰かがお前を作るのが気にいらねェ。黙って俺の愛だけ受けてろ。余計な事は気にするな。いいか。」
「...ロー。」
「なんだよ。まだ文句があんのか。」
ローの鋭い瞳に首をブンブンと横に振った。
でも心臓は酷く鳴っている。だってこんなの、こんな事思ってたなんて知らなかった。
「...ローって結構重いんだね。」
「今更気付いたのか。...怖くなったか?」
言葉とは裏腹にローの顔はとても楽しそうだ。首を横に振れば、腕をグイッと引き寄せられてローの顔が耳元に寄せられる
「まァ、逃がす気は無いがな。...新しい首輪でも買いに行くか。」
ローはそう言いながら私の首元に揺れるシルバーを手に取った。
「もう要らないよ...。これ気に入ってるのに...。」
「なら帽子だな。いい加減俺と同じやつを被れ。」
「やだよ!恥ずかしいじゃん!!」
ローの指が髪を掬った。耳にそれを掛ければ耳朶に付いている金色が揺れた。
あぁそう言えばこのピアスもお揃いだ。
そのまま頭に暖かい物が乗れば、ローは満足そうに口角を上げ再び手を取った
「クッキー買いに行くんだろ?」
「...うん。」
お金は使わないと決めたのに、ローのあんな笑顔見たらもう諦めた反則だ。それに物を買う度幸せそうに微笑むローが悪い。可愛いって褒めてくるローが悪い。
ふとローの後ろ姿を見て気付いた。
あぁ私が身に付ける物って全部ローがいるんだ。
ローの色、ローの模様、ローのマーク。私の中にはローがいっぱいだった。
思わず駆け出してローの腕に飛びついて、飛び切りの笑顔を見せた
「へへ、私ローが一番好き!ローが欲しいからお買い物好きなのかも!」
「...あぁ知ってる。」
ローも大概だけど私も大概だった。
クッキーよりも甘い飛び切りの甘やかしを我慢する事なんて出来ないのだから。
比較的平和で賑わいのある島で、たまたま麦わらの一味と鉢合わせたのだ。
ナミとロビンは相変わらずナイスバディで美人で眼福だ。
「あ、ここは私が出すよ!ローからお金貰ってるから。」
「さっすがトラ男君!太っ腹〜!」
「ふふ。愛されてるわね。」
「えーそうなのかなぁ。」
愛されていない訳では無いけど、うちはお金の管理はローがしているしお金を渡すのは普通だと思っていた。
「だってそれも新作でしょ?あ、そのバッグも。よく見たらアクセも良い奴付けてんじゃない。」
「これは前の島でローに買って貰って、これは雑誌で見て欲しいなーって言ったらローが買ってきてくれたやつ!」
「トラ男君ってそんなに尽くすタイプだったの...?あーでもトラ男君の能力なら取り放題だもんねぇ。」
「ローは民間人相手に泥棒はしないよ?」
ナミの言葉にキョトンと首を傾げた
ハ?と口を開けて目を見開くナミに何なおかしな事を言ったかな?と思いロビンを見るけど、ロビンはふふっと微笑んでいる
「...アンタの船もしかしてお金持ち?宝の山でも見つけた?」
「お金持ちなの?お宝は海賊船から奪ったぐらいかなー?お金はローが管理してるから分からない。あ!でもうちはローが診察でお金稼いだりしてるよ!」
「はーなるほど。トラ男君外科医だしねー。にしても、アンタに掛けてるお金の量凄すぎる。」
「...え、私ってそんなにお金かかってるの...?」
初めて言われた言葉に驚いた。だってローは一言もそんなこと言わないし、外へ出たらいつもローが出してくれていたし。
助けを求めるようにロビンを見れば
「えぇ、かなり。」
そう言われてしまえば思わず固まった。
私はハートの海賊団ではかなり古株だ。船に乗ったのは10代前半のまだまだ子供だった頃。おまけに育った島はそれ程栄えてない田舎町。お金なんて使う機会も無かったから船に乗ってから初めてお金に触れたそんなレベルだ。
何も無い島で育ったから、当然行く先々の島で見るものには興味津々だった。ローは何も言わずに買ってくれたし、他にも欲しいものはあるか?なんて言っていつも色んなものを買ってくれていたから、買ってもらうのが当たり前だと思っていた。
「...これって高いの?」
「ええ。凄く。」
「...これも??」
「うん。ていうか、今あんたが持ってる現金の額がそもそもおかしい。」
「??これって普通じゃないの?」
はぁ?と言うナミの言葉を聞き、人生で初めて自分が大金を持っているという事を教えられた。
「ど、どうしよう...!私のせいで皆の食べる物無くなっちゃったら...」
「いやいや、今までそれで何とかなってるなら大丈夫でしょ...。まぁ使い過ぎだとは思うけど。」
「やっぱ使い過ぎなんだ...。きっとクルーのみんなも不満だったよね...。」
クルーの皆は私を妹のように可愛がってくれる。優しい皆の事だから私の我儘に文句を言えなかったのかもしれない。だってローに買って貰ったアクセサリー1個が、一般人が1年働いても買えない額だなんて知らなかった。
ローはいつでもお金をポンと出すから、お金なんて無限に湧いて出てくる様なものだと思っていた。
「そんな事ないわよ〜。トラ男君も嫌ならちゃんと教えるだろうし。独占欲よ独占欲。さーてそろそろショッピングに行きましょう!」
「ショッピング...。ごめん!ナミ、ロビン!私1回船に戻る!!夜宴の時にまたお話しよ!!」
ナミが立ち上がるのを見て私は慌てて席を立った。
だってお買い物なんて行ったらまた何か買ってしまう。
「えええーーー!?色々買ってもらおうと思ってたのに...はぁ...言わなきゃ良かった...」
「ふふ、残念ねナミ。あの子、夜の宴に参加出来るといいけど...。」
2人が何か話していたけど、お会計を済ませ、持っていたカバンを大切に抱えながら船へ走った。
お金の重さを知ったからか、カバンを持つ手がいつもよりも震えた
黄色い船体の横には可愛らしいライオンの頭が着いた船が停まっている。ポーラタング号の甲板には、サイボーグの人とゴッドが乗っていた。
「ねー!ペンギン!ロー見なかった??」
「見てない。電伝虫で連絡すればいいだろ。」
「あーー!そうだった!!あ、でも後でいいや。あのさ、皆私ってお金使い過ぎだったよね?ごめんね。皆きっと我慢してたよね。」
私がそう発すれば、甲板はシーンと静まり返った
事情を知らないゴッドの、え?どうした?の声がやけに響いた
「...何言ってんだ?」
「え...だって普通こんなにお金使わないって...。今まで物買い過ぎたし...。私もちょっと働こうかなって...。」
一瞬の静寂を破ったのはクルーの叫び声だった
「絶っっったいダメだ!!!」
「おい!!船長に言うなよ!!!」
「はぁ、大体お前どうやって稼ぐつもりだよ!?あと、船長も俺らも好きでやってる事だから気にすんなって!もっと我儘言っていいから!!」
必死に詰め寄る彼らを見て思うのはオカシイの一言。だってもっと我儘言っていいの額では無いし、誰1人怒るどころか、働くのは駄目と口を揃えるのだ。
「オーオー揉め事かァ?」
「ほらほら、そんな熱くなるなって。どしたー?」
サイボーグの人とゴッドが仲介に入るけど、私はもう半泣きだった。だってこのままだと、船のお金が底をついて皆餓死しちゃうかもしれない。そうなれば、お金を1番使っている私は皆に嫌われるかもしれない。
「だっ、だって、皆がお金を、お金を渡すからぁ!!」
「は?お金?良い事じゃねぇか?」
「良くないよ!!だってこんな大金普通持ち歩かないって聞いたもん!!」
ガバッと開いたカバンに入ったお財布とお金の量を見れば、サイボーグの人とゴッドは驚きのあまり大声を上げた
「ええええええ!?あ、お姉様、ちょっと分けてくれませんか〜なんて。」
「だ、だめ!!ローに返すの!!ね!?おかしいよね!?」
「いや、まぁ船でも買うのか?」
「買わないよ!!!もう何も買わないもん!」
慌ててバッグを抱えるけど、クルーの皆のリアクションが怖い。怒るどころがどうしようと頭を抱えている始末だ。どうしようはこっちの台詞だって言うのに。
「あ、キャプテン!!」
「え?」
誰かがそう叫べば、街の方へ振り向く暇もなく私の腕は引っ張られ頭上からは、ROOMと聞こえた
何度も経験した事はあるけど、入れ替わった瞬間の地面への着地は慣れない。ふらっとする体を後ろに倒せばローが支えてくれる。後ろ向きのままローにも垂れて上を向けば、やっぱりローがいてロー、と名前を呼びそのまま体から離れた。
「あの、ロー...」
「働く必要は無い。そもそもお前賞金首だろ。」
「え?聞いてたの!?」
「電伝虫掛けたままだっただろ。」
ローの言葉にポケットに入れていた子電伝虫を見れば、受話器が取れていた。ペンギンと話している時に1度手に掛けたから多分その時だ。
「あ、その、今までお金使い過ぎたなって。ごめんなさい。知らなかったの、使い過ぎだって。」
「今更か。お前がそれを知っていようがお前に金は掛けている。だから気にする必要は無い。」
「いや...だからその...額がおかしいっていうか...。」
会話を全部聞いていた筈なのに、微動だにせず話をするローを見て背中に嫌な汗が流れた
「お前に使うんだから当たり前だろ。心配しなくても民間人から盗ったりはしてねェよ。」
「ちが、そうじゃなくて!」
首をこてんと傾けるローはちょっと可愛いけど、それ所ではない。平然と会話をするのがおかしいのだ。
「船のお金無くなっちゃうじゃん!あと、これも!多過ぎるよ!!私のせいで皆が餓死しちゃったらどうするの!?それに急に船が壊れて部品が買えなくなったり...」
「...待て、お前今日これしか使ってねェのか?」
「へ?いや、今そんな話ししてるんじゃなくて!」
さっきまでピクリとも表情を動かさなかったローが、私のカバンの中身を見て皺を寄せた
「答えろ。」
「えっと、うん。」
正直に答えたけど、どうやらローは怒っている
今日はカフェにしか行っていないから、お金はそれ程使っていない。むしろ褒められるべき行為の筈なのになぜ私の目の前には般若がいるのだろうか。
「何処で何をしていたか答えろ。お前、俺以外の人間から物を貰ってねェだろうな。」
「貰ってないよ!!今日はナミとロビンと街を歩いて、ケーキの美味しいカフェを街の人に教えて貰って、少し並んでからそこでお話して、そこでそのお金の話を聞いて...船に戻りました。」
「...買い物は?」
「後でショッピングに行こうって話してたから、何も買ってないよ...。ホントだよ!可愛いクッキー缶が売ってて、後で買おうかなーって思ってたんだけど...あっ。やっぱ今のなし!」
「ほう。なら買いに行くか。」
般若はいなくなったけど、当然のように私の手を握り、買い物に出掛けようとするローに待ったをかける。
だってこの話の流れで買い物に行こうとする!?
「待ってよ!この島ではもう何も買わない!ローも私にお金使うのやめて!!」
「は?俺の物に金を掛けて何が悪いんだ。言っておくが、これはお前の為じゃなく俺の為にやっている事だ。」
「...何言ってるの?」
「お前こそ馬鹿なのか。俺が自分の物に手を出されて黙っていると思うのか。」
「だからそれとこれとは話しが別で...」
はぁ、とため息をするローに少し怖くなる。だっておかしい。今更気付いたけど、どう考えでもおかしい。
「俺は自分以外の誰かがお前を作るのが気にいらねェ。黙って俺の愛だけ受けてろ。余計な事は気にするな。いいか。」
「...ロー。」
「なんだよ。まだ文句があんのか。」
ローの鋭い瞳に首をブンブンと横に振った。
でも心臓は酷く鳴っている。だってこんなの、こんな事思ってたなんて知らなかった。
「...ローって結構重いんだね。」
「今更気付いたのか。...怖くなったか?」
言葉とは裏腹にローの顔はとても楽しそうだ。首を横に振れば、腕をグイッと引き寄せられてローの顔が耳元に寄せられる
「まァ、逃がす気は無いがな。...新しい首輪でも買いに行くか。」
ローはそう言いながら私の首元に揺れるシルバーを手に取った。
「もう要らないよ...。これ気に入ってるのに...。」
「なら帽子だな。いい加減俺と同じやつを被れ。」
「やだよ!恥ずかしいじゃん!!」
ローの指が髪を掬った。耳にそれを掛ければ耳朶に付いている金色が揺れた。
あぁそう言えばこのピアスもお揃いだ。
そのまま頭に暖かい物が乗れば、ローは満足そうに口角を上げ再び手を取った
「クッキー買いに行くんだろ?」
「...うん。」
お金は使わないと決めたのに、ローのあんな笑顔見たらもう諦めた反則だ。それに物を買う度幸せそうに微笑むローが悪い。可愛いって褒めてくるローが悪い。
ふとローの後ろ姿を見て気付いた。
あぁ私が身に付ける物って全部ローがいるんだ。
ローの色、ローの模様、ローのマーク。私の中にはローがいっぱいだった。
思わず駆け出してローの腕に飛びついて、飛び切りの笑顔を見せた
「へへ、私ローが一番好き!ローが欲しいからお買い物好きなのかも!」
「...あぁ知ってる。」
ローも大概だけど私も大概だった。
クッキーよりも甘い飛び切りの甘やかしを我慢する事なんて出来ないのだから。