ペンギン
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イルミネーションが辺りを照らし始める季節。浮き足立つ人達が多い中、私は頭を悩ませていた。
「誕生日プレゼント何がいいと思う?」
「…さぁ?俺女友達なんていないし。」
「いや、私は?」なんて突っ込めば、クスクス笑いながら「ごめんごめん、お前だけ」と返される。男の名前はペンギン。唯一の男友達であり、親友と呼べる程気の許せる人物でもある。最も彼にとっての親友は別にいるのだが、それでも居心地がいい事に変わりは無い。私が頭を悩ませているのは、クリスマスと誕生日が近い友人へのプレゼントの中身だ。誕生日プレゼントをあげるだけでも、1ヶ月以上も前から悩んでしまう性格なのに、クリスマスパーティーも一緒に行うとなればより一層頭が痛くなる。
「あ…!そういえば、ペンギンの誕生日っていつ?」
そろそろプレゼント探しにも飽きてきた頃、曇っていた頭を晴らすかのように話題を変えれば、ペンギンは少し困った様に眉を下げた。
「逃げたろ?」
「そ、そういう訳じゃないけど…。ちゃんと探してるし…。で!!何時なの!?今更だけどペンギンの誕生日知らない。」
ペンギンとはそこそこ長い付き合いになってきたというのに、私達は互いの誕生日を知らない。ジッと真剣にペンギンの瞳を見つめれば、手を口元へ充てクスッと笑う。
「ま〜た悩みの種増やそうとしてんの?」
「た、確かに…」
「誰かの誕生日が来る度悩んでんのに、俺のまで教えるのはね〜。」
ごもっとも、と言える意見に私は口を噤んだ。大体男友達への誕生日プレゼントって何をあげればいいんだろう?恋人では無いし、かといって女友達とは勝手がちがうだろうし。うーんと頭を捻らせれば、視界にヒラヒラと掌が舞いお〜いと言う声が聴こえる。
「帰って来た?」
「お陰様で。危ない、友達の誕生日プレゼント選んでる最中だった。」
「ん。そうそう。コレとかどう?新しく出来たお店のクッキー。並ばないと買えないらしいよ。」
「あ〜良いかも〜!これにする!ありがとうペンギン。」
差し出されたスマホ画面に映る可愛らしいクッキー缶に悩む間もなく即決する。中々良いお値段だしきっとプレゼントとして問題ない…はず!ここ数日ずっと悩んでいた出来事が1つ減りモヤモヤしていた頭がやっとクリアになる。スマホにメモを取って、再び視線を前に戻せば頬杖をついているペンギンと目が合った。
「ペンギンの誕生日教えて」
「ん〜?ふは、まだ言うのそれ?」
「むしろ何で教えてくれないの!?秘密主義者!?」
「そうかも。」
のらりくらりと会話を避けるペンギンに、自分の誕生日を教えれば、知ってると返される始末。
「なんで知ってんの!?」
「いや自分で言ってたじゃん。プレゼント貰ったって。」
「…言った。あれ?じゃああの時ケーキくれたのって…」
「ふ、今更気付いたの?」
少し前、誕生日から数日後にペンギンからちょっとお高いケーキを貰っていた。ペンギンは誕生日プレゼントなんて言って無かったし、甘い物は好きだから喜んで受け取っていたけどまさかそれが誕生日プレゼントだったなんて気が付く訳が無い。
「じゃあ尚更ペンギンの誕生日知りたいんだけど。」
「え〜。別にいいって〜。」
「やだよ!私の気が済まない。それにペンギンは1番仲のいい友達だと思ってるし…。」
お願い!の姿勢を取れば、ペンギンもん〜と言いながら少し考える姿勢を取る。良く考えればペンギンにはお世話になってばかりだった。今日だって折角の休日に呼び出してるのに、文句一つ言わずに買い物に付き合ってくれて、悩みを相談すれば解決するまで共に考えてくれて、ペンギンには頭が上がらない。勿論お礼はするけど、その上で誕生日もしっかり祝いたいというのは図々しい話だろうか。
「ん、じゃあさ」
やっと口を開いたペンギンにうんと大きく頷いた。頭のいいペンギンが何か悪い事を企んでいたとしても、日頃の感謝を込めて目を瞑ろうと思ったから。
「やっぱ誕生日はナイショ。」
「え!?何で!?この期に及んで!?」
「ただし、誕生日になったらさ、俺が自分で言うから、その時に俺が欲しいものをくれない?」
「…ん??どういう事?」
「だから誕生日プレゼントは当日俺が選ぶから、それをくんない?」
ペンギンの言葉にポカンと口を開けた。だって、誕生日も分からないのに、その日になっていきなり何か買ってくれ、なんて言われても都合良く現金を持ち合わせているとは限らない。クスッと笑うペンギンに私の考えはお見通しのようで、「そんな金のかかる様な物頼まないよ」なんて言われる始末。
「でもそれじゃ誕生日プレゼントって言えない…」
「俺がその時に欲しいものだから良くない?」
「そういうもんなの?」
「そういうもん。ね、良いでしょ?」
コテンと首を傾げるペンギンにうーんと喉を唸らせれば、「約束」と言われ小指が目の前に差し出される。「ほら、早く」と言われてしまえば、しぶしぶ小指を差し出し小学生ぶりの約束の誓いを交わす。
「指切った。ハイ約束ね。楽しみだなぁ〜何頼もっかな〜!」
「ね、ねぇ!あんま高いものは…」
「ふは!やっぱそれ気にしてんじゃん!大丈夫大丈夫。俺って優しいでしょ?だから安心して。」
こくりと頷いたけど、正直納得はしていなかった。結局ダラダラ雑談していたカフェでのお会計も知らない間にペンギンが払っていたし、少しのお礼じゃ物足りない気がする。ペンギンは優しいから、その辺の自販機の飲み物奢ってとか、そんな程度しか要求してこない気がする。そう思えば何となく肩を落とした。
❥ ❥ ❥ ❥
年度が替わり私達は大学2年生になった。あれからまだペンギンの誕生日は来ていない。正直痺れを切らして、ペンギンの親友であるシャチ君に誕生日が何時なのか聞いてしまおうかと何度も考えたけど、ペンギンと約束したし…と考え何とか踏みとどまっていた。そんなある日の夜、ペンギンから電話が掛かってきた。電話が来ること自体は何ら珍しい事では無い。
「明日予定ある?」
「明日はバイトだけど、どうかした?」
「んーそっか。何時に終わりそう?」
「えーっと、22時??」
「ン。了解、待ってていい?俺明日誕生日だからさ。」
「は…!?えっ!?明日なの!?ごめん!!」
突然告げられた誕生日の発言に思わずベッドから飛び上がる。慌てて時計を確認するが、もうプレゼントを買うような店がやっている時間では無い。それに明日はプレゼントを買いに行くような時間もないのだ。「次の日なら何も予定は無いけど…」と苦し紛れに言えば、ペンギンは思わぬ提案をする。
「すぐ済むからさ、バイトの後で良いから明日ちょっと会ってくんね?あ…もしかして、お前に会うのがプレゼントって事になっちゃったりする…?」
「そんな訳ないでしょ!わかった!なるべく早く終わらせるね。」
「んじゃ楽しみにしてるわ。おやすみ〜」
おやすみと返したけど、ペンギンの楽しみにしてるの一言が気になって頭を離れなかった。いやいや、ペンギンはプレゼントは用意しなくていいって言ってたし。なんて頭を振るけど、だけどそれじゃ楽しみにしてるの意味ってどういう事??と頭を捻る。暫し悩んだ後に、そういえばペンギンはバイト先であるカフェによく来てるし、店のケーキがお気に入りだと言っていたことを思い出す。案外答えは近くにあったようで少し安堵した。
❥ ❥ ❥ ❥
お疲れ様です!と言うと同時に、私は直ぐに店を出た。バイトが始まってからすぐ取り置きしておいた人気のケーキを手に持って。待ち合わせ場所は近くの公園で、何度かペンギンと待ち合わせ場所として利用した事もあった場所。だけどこんな夜遅くに来る事は無かったから街灯だけが頼りの暗い公園に少しドキドキした。
「ごめん!待った!?はい!コレ!!」
「んや、全然。…何これ?」
ポカンと口を開くペンギンにグイッと袋を押し付けて息を整える。「取り敢えず座れば?」と言われ、有難くベンチへ腰かけた。
「ペンギンが欲しいものってうちのケーキかなって…。え?違った?」
「ぷっ。はは、全然違う。これ受け取ったら俺の誕生日って終わりになる?」
横を見ればケラケラと笑うペンギンに失敗したと頭を抑える。
「ご、ごめん…間違えた…。終わりじゃない!!これは私からの日頃の感謝って事で…受け取ってくれませんか…」
「ん。さんきゅ。じゃあさ、んー。ここで言っても良いのかなぁ。」
「なにが??」
突然立ち上がったペンギンに何となく身構える。言うって一体何を言われるのだろうか。もしかしたらとんでもない命令が飛んでくるかもしれないし、夜の公園でペンギンと二人きりという場面に柄にもなくドキドキしてしまっている。
「明日予定ないんだよね?」
「ないよ。」
「そっか。うん。そうだよな。」
1人でブツブツと呟き腕を組みながら頷いてるペンギンにキョトンと首を傾げる。そんなに難しいお願いなのだろうか。「ペンギン?」と声を掛ければ、「悪い悪い」とヘラッと口元が弧を描く。
「あ、俺の欲しいものね、カノジョ。」
「…は?」
「んでさ、今目の前に好きな女がいて次の日は予定がないみたいなんだけど、このまま家に来てくれたら最高の誕生日になるなって思ってるんだけど。どう?誕生日プレゼント、まだ貰ってないんだけど。」
2度目の大きな「は?」が口から飛びだす。帽子の下から覗く目元はいつもとは違うギラついた瞳。ペンギンが冗談でこんなことを言う男じゃないと分かっているからこそ、胸の高鳴りは止まらない。
「えっ…?いつから…」
「それはプレゼント貰ってからかな〜。で、渡せそう?」
「ほ、本当にそれでいいの?」
「言っただろ?俺が欲しいものをその場で選ぶって。」
言った…けど。ニコニコと微笑むペンギンは「誕生日プレゼントずっと楽しみにしてたんだよな〜!」と、私の瞳を覗く。それって、その時からずっとそうだったってことじゃん…。
「ず、狡い…」
「何とでも。ほら、誕生日終わっちゃう!!」
「わ、私で良ければ…。」
「まじ?」
「…まじ。」
親友だと思っていた男に、まさか誕生日プレゼントに彼女になってくれと言われるとは思っていなかった。だけど、自分も気付いていなかったけど、どうやら私もペンギンが好きらしい。だって、こんなお願いをされて自分の方がプレゼントを貰った気分になっているんだから。
ザッと靴が砂を踏む音がする。ペンギンが1歩近付き、私の肩に触れる。顔を見上げれば、今までで1番幸せそうな顔をしたペンギンが私を見下ろしている。
「あ、キスは誕生日プレゼントに入りますか?」
「プレゼントじゃなくてご褒美かも…」
「ふは何それ可愛すぎ」
瞳を閉じれば暖かいプレゼントが降ってきた。貰ってばかりのプレゼントが更に増え、誕生日プレゼントは何にしようか?の苦難はまだまだしばらく続きそうだ。
「誕生日プレゼント何がいいと思う?」
「…さぁ?俺女友達なんていないし。」
「いや、私は?」なんて突っ込めば、クスクス笑いながら「ごめんごめん、お前だけ」と返される。男の名前はペンギン。唯一の男友達であり、親友と呼べる程気の許せる人物でもある。最も彼にとっての親友は別にいるのだが、それでも居心地がいい事に変わりは無い。私が頭を悩ませているのは、クリスマスと誕生日が近い友人へのプレゼントの中身だ。誕生日プレゼントをあげるだけでも、1ヶ月以上も前から悩んでしまう性格なのに、クリスマスパーティーも一緒に行うとなればより一層頭が痛くなる。
「あ…!そういえば、ペンギンの誕生日っていつ?」
そろそろプレゼント探しにも飽きてきた頃、曇っていた頭を晴らすかのように話題を変えれば、ペンギンは少し困った様に眉を下げた。
「逃げたろ?」
「そ、そういう訳じゃないけど…。ちゃんと探してるし…。で!!何時なの!?今更だけどペンギンの誕生日知らない。」
ペンギンとはそこそこ長い付き合いになってきたというのに、私達は互いの誕生日を知らない。ジッと真剣にペンギンの瞳を見つめれば、手を口元へ充てクスッと笑う。
「ま〜た悩みの種増やそうとしてんの?」
「た、確かに…」
「誰かの誕生日が来る度悩んでんのに、俺のまで教えるのはね〜。」
ごもっとも、と言える意見に私は口を噤んだ。大体男友達への誕生日プレゼントって何をあげればいいんだろう?恋人では無いし、かといって女友達とは勝手がちがうだろうし。うーんと頭を捻らせれば、視界にヒラヒラと掌が舞いお〜いと言う声が聴こえる。
「帰って来た?」
「お陰様で。危ない、友達の誕生日プレゼント選んでる最中だった。」
「ん。そうそう。コレとかどう?新しく出来たお店のクッキー。並ばないと買えないらしいよ。」
「あ〜良いかも〜!これにする!ありがとうペンギン。」
差し出されたスマホ画面に映る可愛らしいクッキー缶に悩む間もなく即決する。中々良いお値段だしきっとプレゼントとして問題ない…はず!ここ数日ずっと悩んでいた出来事が1つ減りモヤモヤしていた頭がやっとクリアになる。スマホにメモを取って、再び視線を前に戻せば頬杖をついているペンギンと目が合った。
「ペンギンの誕生日教えて」
「ん〜?ふは、まだ言うのそれ?」
「むしろ何で教えてくれないの!?秘密主義者!?」
「そうかも。」
のらりくらりと会話を避けるペンギンに、自分の誕生日を教えれば、知ってると返される始末。
「なんで知ってんの!?」
「いや自分で言ってたじゃん。プレゼント貰ったって。」
「…言った。あれ?じゃああの時ケーキくれたのって…」
「ふ、今更気付いたの?」
少し前、誕生日から数日後にペンギンからちょっとお高いケーキを貰っていた。ペンギンは誕生日プレゼントなんて言って無かったし、甘い物は好きだから喜んで受け取っていたけどまさかそれが誕生日プレゼントだったなんて気が付く訳が無い。
「じゃあ尚更ペンギンの誕生日知りたいんだけど。」
「え〜。別にいいって〜。」
「やだよ!私の気が済まない。それにペンギンは1番仲のいい友達だと思ってるし…。」
お願い!の姿勢を取れば、ペンギンもん〜と言いながら少し考える姿勢を取る。良く考えればペンギンにはお世話になってばかりだった。今日だって折角の休日に呼び出してるのに、文句一つ言わずに買い物に付き合ってくれて、悩みを相談すれば解決するまで共に考えてくれて、ペンギンには頭が上がらない。勿論お礼はするけど、その上で誕生日もしっかり祝いたいというのは図々しい話だろうか。
「ん、じゃあさ」
やっと口を開いたペンギンにうんと大きく頷いた。頭のいいペンギンが何か悪い事を企んでいたとしても、日頃の感謝を込めて目を瞑ろうと思ったから。
「やっぱ誕生日はナイショ。」
「え!?何で!?この期に及んで!?」
「ただし、誕生日になったらさ、俺が自分で言うから、その時に俺が欲しいものをくれない?」
「…ん??どういう事?」
「だから誕生日プレゼントは当日俺が選ぶから、それをくんない?」
ペンギンの言葉にポカンと口を開けた。だって、誕生日も分からないのに、その日になっていきなり何か買ってくれ、なんて言われても都合良く現金を持ち合わせているとは限らない。クスッと笑うペンギンに私の考えはお見通しのようで、「そんな金のかかる様な物頼まないよ」なんて言われる始末。
「でもそれじゃ誕生日プレゼントって言えない…」
「俺がその時に欲しいものだから良くない?」
「そういうもんなの?」
「そういうもん。ね、良いでしょ?」
コテンと首を傾げるペンギンにうーんと喉を唸らせれば、「約束」と言われ小指が目の前に差し出される。「ほら、早く」と言われてしまえば、しぶしぶ小指を差し出し小学生ぶりの約束の誓いを交わす。
「指切った。ハイ約束ね。楽しみだなぁ〜何頼もっかな〜!」
「ね、ねぇ!あんま高いものは…」
「ふは!やっぱそれ気にしてんじゃん!大丈夫大丈夫。俺って優しいでしょ?だから安心して。」
こくりと頷いたけど、正直納得はしていなかった。結局ダラダラ雑談していたカフェでのお会計も知らない間にペンギンが払っていたし、少しのお礼じゃ物足りない気がする。ペンギンは優しいから、その辺の自販機の飲み物奢ってとか、そんな程度しか要求してこない気がする。そう思えば何となく肩を落とした。
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年度が替わり私達は大学2年生になった。あれからまだペンギンの誕生日は来ていない。正直痺れを切らして、ペンギンの親友であるシャチ君に誕生日が何時なのか聞いてしまおうかと何度も考えたけど、ペンギンと約束したし…と考え何とか踏みとどまっていた。そんなある日の夜、ペンギンから電話が掛かってきた。電話が来ること自体は何ら珍しい事では無い。
「明日予定ある?」
「明日はバイトだけど、どうかした?」
「んーそっか。何時に終わりそう?」
「えーっと、22時??」
「ン。了解、待ってていい?俺明日誕生日だからさ。」
「は…!?えっ!?明日なの!?ごめん!!」
突然告げられた誕生日の発言に思わずベッドから飛び上がる。慌てて時計を確認するが、もうプレゼントを買うような店がやっている時間では無い。それに明日はプレゼントを買いに行くような時間もないのだ。「次の日なら何も予定は無いけど…」と苦し紛れに言えば、ペンギンは思わぬ提案をする。
「すぐ済むからさ、バイトの後で良いから明日ちょっと会ってくんね?あ…もしかして、お前に会うのがプレゼントって事になっちゃったりする…?」
「そんな訳ないでしょ!わかった!なるべく早く終わらせるね。」
「んじゃ楽しみにしてるわ。おやすみ〜」
おやすみと返したけど、ペンギンの楽しみにしてるの一言が気になって頭を離れなかった。いやいや、ペンギンはプレゼントは用意しなくていいって言ってたし。なんて頭を振るけど、だけどそれじゃ楽しみにしてるの意味ってどういう事??と頭を捻る。暫し悩んだ後に、そういえばペンギンはバイト先であるカフェによく来てるし、店のケーキがお気に入りだと言っていたことを思い出す。案外答えは近くにあったようで少し安堵した。
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お疲れ様です!と言うと同時に、私は直ぐに店を出た。バイトが始まってからすぐ取り置きしておいた人気のケーキを手に持って。待ち合わせ場所は近くの公園で、何度かペンギンと待ち合わせ場所として利用した事もあった場所。だけどこんな夜遅くに来る事は無かったから街灯だけが頼りの暗い公園に少しドキドキした。
「ごめん!待った!?はい!コレ!!」
「んや、全然。…何これ?」
ポカンと口を開くペンギンにグイッと袋を押し付けて息を整える。「取り敢えず座れば?」と言われ、有難くベンチへ腰かけた。
「ペンギンが欲しいものってうちのケーキかなって…。え?違った?」
「ぷっ。はは、全然違う。これ受け取ったら俺の誕生日って終わりになる?」
横を見ればケラケラと笑うペンギンに失敗したと頭を抑える。
「ご、ごめん…間違えた…。終わりじゃない!!これは私からの日頃の感謝って事で…受け取ってくれませんか…」
「ん。さんきゅ。じゃあさ、んー。ここで言っても良いのかなぁ。」
「なにが??」
突然立ち上がったペンギンに何となく身構える。言うって一体何を言われるのだろうか。もしかしたらとんでもない命令が飛んでくるかもしれないし、夜の公園でペンギンと二人きりという場面に柄にもなくドキドキしてしまっている。
「明日予定ないんだよね?」
「ないよ。」
「そっか。うん。そうだよな。」
1人でブツブツと呟き腕を組みながら頷いてるペンギンにキョトンと首を傾げる。そんなに難しいお願いなのだろうか。「ペンギン?」と声を掛ければ、「悪い悪い」とヘラッと口元が弧を描く。
「あ、俺の欲しいものね、カノジョ。」
「…は?」
「んでさ、今目の前に好きな女がいて次の日は予定がないみたいなんだけど、このまま家に来てくれたら最高の誕生日になるなって思ってるんだけど。どう?誕生日プレゼント、まだ貰ってないんだけど。」
2度目の大きな「は?」が口から飛びだす。帽子の下から覗く目元はいつもとは違うギラついた瞳。ペンギンが冗談でこんなことを言う男じゃないと分かっているからこそ、胸の高鳴りは止まらない。
「えっ…?いつから…」
「それはプレゼント貰ってからかな〜。で、渡せそう?」
「ほ、本当にそれでいいの?」
「言っただろ?俺が欲しいものをその場で選ぶって。」
言った…けど。ニコニコと微笑むペンギンは「誕生日プレゼントずっと楽しみにしてたんだよな〜!」と、私の瞳を覗く。それって、その時からずっとそうだったってことじゃん…。
「ず、狡い…」
「何とでも。ほら、誕生日終わっちゃう!!」
「わ、私で良ければ…。」
「まじ?」
「…まじ。」
親友だと思っていた男に、まさか誕生日プレゼントに彼女になってくれと言われるとは思っていなかった。だけど、自分も気付いていなかったけど、どうやら私もペンギンが好きらしい。だって、こんなお願いをされて自分の方がプレゼントを貰った気分になっているんだから。
ザッと靴が砂を踏む音がする。ペンギンが1歩近付き、私の肩に触れる。顔を見上げれば、今までで1番幸せそうな顔をしたペンギンが私を見下ろしている。
「あ、キスは誕生日プレゼントに入りますか?」
「プレゼントじゃなくてご褒美かも…」
「ふは何それ可愛すぎ」
瞳を閉じれば暖かいプレゼントが降ってきた。貰ってばかりのプレゼントが更に増え、誕生日プレゼントは何にしようか?の苦難はまだまだしばらく続きそうだ。
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