19. 特別な君③
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次の瞬間、二人がいる廊下の向こうに、上階から一本の箒がもの凄いスピードで下りてきた。その箒には重い鎖と鉄の杭がぶら下がっていて、まるで何処かに縛り付けられていたのを無理矢理取り外したようだった。その箒は速度を緩めることなくフォーラたちの方へ九十度方向転換した。そのせいで鎖と杭が遠心力で回り、廊下の石壁の一部を思い切り破壊した。そして何とそのままの勢いでこちらに向かって来たのだ。
「伏せろ!」
「きゃっ!」
フォーラはドラコに押さえ込まれながら咄嗟にその場にしゃがみ込んだ。二人の頭上を箒や鉄の杭がビュンと風を切るように通過していったものだから、二人とも顔を上げて箒の向かった方を見た。すると今度は別の箒が開いた大窓から飛び込んできて、鎖付きの箒と並走して玄関ホールに続く廊下を曲がっていった。
「フォーラ、君と話すことが山積みだが、今は玄関ホールに急ごう」
ドラコが名残惜しくも立ち上がり、彼女に手を差し出して立たせた。そうして二人は玄関ホールに向かって走り出した。
「あれって……フレッドとジョージの箒だったわ!」
「ああ、杭を下げていた方は、ジョージ・ウィーズリーがアンブリッジから『クィディッチ生涯禁止』を言い渡された時に、彼女の部屋の壁に固定されていた筈だ」
「じゃあ、箒を呼び寄せしたのって」
「あの双子の可能性が高い。さっきまでの学校中の騒動だって、あいつらが犯人だ。今頃クラッブたちが玄関ホールで奴らを挟み撃ちにしている筈だが―――」
ドラコが何度か息継ぎしながらそこまで言った時、聞き覚えのある叫び声が玄関ホールの方から聞こえた。
「二人を止めなさい!」
それは確実にアンブリッジの声だった。その直後、フォーラとドラコは玄関ホールに足を踏み入れた。するとそこには騒動を聞きつけた大勢の生徒や教師が集まっていて、すっかり人で埋め尽くされていた。
フォーラとドラコが群衆の外側で足を止めると、その場の全員が天井の方を見上げていたものだから、二人もそれに倣った。すると人々の頭上で、フレッドとジョージが先程飛んでいった箒に跨って宙に浮いているではないか。ジョージの箒には鎖と杭がくっ付いたままで、その鉄の塊が危なっかしく揺れていた。
フォーラのいる場所から何人も挟んだ所にはパンジーらを含む尋問官親衛隊がいたのだが、誰も双子のいる高さまで呪文を届かせられなかった。親衛隊がアンブリッジの命令に従うことができない状況で、フレッドが高らかに言った。
「ピーブズ、俺たちに代わってあの女をてこずらせてやれよ」
すると群衆の上に浮いていたピーブズが鈴飾りの付いた帽子をさっと脱ぎ、何と敬礼の姿勢を取ったではないか。このポルターガイストが生徒の言うことを聞く場面など、今まで誰も一度も見たことがなかった。それ故に生徒たちは一斉にやんやと喝采した。
そうしてフレッドとジョージが満足そうに樫の大扉に方向転換しようとした時、ふとジョージとフォーラの視線がかち合った。彼はフレッドに何やら一声掛け、一方のフレッドはやれやれと呆れた笑顔で返答すると、どこからともなくロケット花火を幾つか取り出して火を付けた。あっという間に玄関ホールは混乱の場となり、その間にジョージは生徒たちの頭上を飛び越え、次にピーブズが今にも真下のアンブリッジにクソ爆弾を落とそうとしている横を通り過ぎ、なんと群衆の外側にいるフォーラの目の前に降り立ったのだ。その際、近くにいた生徒たちは鉄の杭から逃れるためにサッと場所を空けて避難した。
フォーラもドラコも驚きのあまり身動きできずにいたのだが、それを余所にジョージがフォーラに笑いかけた。
「やあ、俺の最愛。来ないかと思ったぜ」
ジョージが随分気軽な雰囲気でそのように挨拶し、杖を振った。彼は無言呪文を唱えたようで、杖先から燃えるように赤い色をしたフリージアの花を出現させた。そして彼の赤髪によく似合うその花をフォーラの方へ差し出し、その手に握らせた。
すると、呆気に取られていたドラコがハッと我に返り、ジョージに杖を向けようとした―――しかしその前にジョージがサッと杖を振り、武装解除呪文でドラコの杖を跳ね飛ばした。
「お別れだ」
ジョージは手短にそう言うと、何とフォーラの頬に軽いリップ音を鳴らしながら口付けたではないか。途端に周囲の生徒たちからキャッと湧く声がしたりヒューヒューと囃し立てたりする声が聞こえた。そして当のフォーラが唖然として頬を抑える姿に、ジョージは困ったようにクスリと笑った。
「どうやら君を手に入れたであろうそこの野郎に、少々意地悪したくなったんでね。どうか許してくれよ」
ジョージはそう言い残すとすぐに箒に跨り直し、地面を蹴って上空に飛ぶとフォーラを振り返って手を振った。彼女の周囲にいる何人もの生徒が元気に手を振り返す中、フォーラはまだ呆気に取られているようだった。しかし程なくすると周囲につられて彼女も漠然と小さく手を振り返した。そしてその手を彼女の隣にいたドラコが握って制し、彼女の頬を―――先程ジョージがキスした場所を袖でゴシゴシと拭い始めた。
(フォーラ、良かったな)
ジョージはその光景に、自分でも意外だと感じる程に満足していた。そしてフレッドのところまで飛んで戻ると、今度こそ二人して開け放たれた正面扉を素早く通り抜け、輝かしい夕焼けの空へと吸い込まれていったのだった。
「伏せろ!」
「きゃっ!」
フォーラはドラコに押さえ込まれながら咄嗟にその場にしゃがみ込んだ。二人の頭上を箒や鉄の杭がビュンと風を切るように通過していったものだから、二人とも顔を上げて箒の向かった方を見た。すると今度は別の箒が開いた大窓から飛び込んできて、鎖付きの箒と並走して玄関ホールに続く廊下を曲がっていった。
「フォーラ、君と話すことが山積みだが、今は玄関ホールに急ごう」
ドラコが名残惜しくも立ち上がり、彼女に手を差し出して立たせた。そうして二人は玄関ホールに向かって走り出した。
「あれって……フレッドとジョージの箒だったわ!」
「ああ、杭を下げていた方は、ジョージ・ウィーズリーがアンブリッジから『クィディッチ生涯禁止』を言い渡された時に、彼女の部屋の壁に固定されていた筈だ」
「じゃあ、箒を呼び寄せしたのって」
「あの双子の可能性が高い。さっきまでの学校中の騒動だって、あいつらが犯人だ。今頃クラッブたちが玄関ホールで奴らを挟み撃ちにしている筈だが―――」
ドラコが何度か息継ぎしながらそこまで言った時、聞き覚えのある叫び声が玄関ホールの方から聞こえた。
「二人を止めなさい!」
それは確実にアンブリッジの声だった。その直後、フォーラとドラコは玄関ホールに足を踏み入れた。するとそこには騒動を聞きつけた大勢の生徒や教師が集まっていて、すっかり人で埋め尽くされていた。
フォーラとドラコが群衆の外側で足を止めると、その場の全員が天井の方を見上げていたものだから、二人もそれに倣った。すると人々の頭上で、フレッドとジョージが先程飛んでいった箒に跨って宙に浮いているではないか。ジョージの箒には鎖と杭がくっ付いたままで、その鉄の塊が危なっかしく揺れていた。
フォーラのいる場所から何人も挟んだ所にはパンジーらを含む尋問官親衛隊がいたのだが、誰も双子のいる高さまで呪文を届かせられなかった。親衛隊がアンブリッジの命令に従うことができない状況で、フレッドが高らかに言った。
「ピーブズ、俺たちに代わってあの女をてこずらせてやれよ」
すると群衆の上に浮いていたピーブズが鈴飾りの付いた帽子をさっと脱ぎ、何と敬礼の姿勢を取ったではないか。このポルターガイストが生徒の言うことを聞く場面など、今まで誰も一度も見たことがなかった。それ故に生徒たちは一斉にやんやと喝采した。
そうしてフレッドとジョージが満足そうに樫の大扉に方向転換しようとした時、ふとジョージとフォーラの視線がかち合った。彼はフレッドに何やら一声掛け、一方のフレッドはやれやれと呆れた笑顔で返答すると、どこからともなくロケット花火を幾つか取り出して火を付けた。あっという間に玄関ホールは混乱の場となり、その間にジョージは生徒たちの頭上を飛び越え、次にピーブズが今にも真下のアンブリッジにクソ爆弾を落とそうとしている横を通り過ぎ、なんと群衆の外側にいるフォーラの目の前に降り立ったのだ。その際、近くにいた生徒たちは鉄の杭から逃れるためにサッと場所を空けて避難した。
フォーラもドラコも驚きのあまり身動きできずにいたのだが、それを余所にジョージがフォーラに笑いかけた。
「やあ、俺の最愛。来ないかと思ったぜ」
ジョージが随分気軽な雰囲気でそのように挨拶し、杖を振った。彼は無言呪文を唱えたようで、杖先から燃えるように赤い色をしたフリージアの花を出現させた。そして彼の赤髪によく似合うその花をフォーラの方へ差し出し、その手に握らせた。
すると、呆気に取られていたドラコがハッと我に返り、ジョージに杖を向けようとした―――しかしその前にジョージがサッと杖を振り、武装解除呪文でドラコの杖を跳ね飛ばした。
「お別れだ」
ジョージは手短にそう言うと、何とフォーラの頬に軽いリップ音を鳴らしながら口付けたではないか。途端に周囲の生徒たちからキャッと湧く声がしたりヒューヒューと囃し立てたりする声が聞こえた。そして当のフォーラが唖然として頬を抑える姿に、ジョージは困ったようにクスリと笑った。
「どうやら君を手に入れたであろうそこの野郎に、少々意地悪したくなったんでね。どうか許してくれよ」
ジョージはそう言い残すとすぐに箒に跨り直し、地面を蹴って上空に飛ぶとフォーラを振り返って手を振った。彼女の周囲にいる何人もの生徒が元気に手を振り返す中、フォーラはまだ呆気に取られているようだった。しかし程なくすると周囲につられて彼女も漠然と小さく手を振り返した。そしてその手を彼女の隣にいたドラコが握って制し、彼女の頬を―――先程ジョージがキスした場所を袖でゴシゴシと拭い始めた。
(フォーラ、良かったな)
ジョージはその光景に、自分でも意外だと感じる程に満足していた。そしてフレッドのところまで飛んで戻ると、今度こそ二人して開け放たれた正面扉を素早く通り抜け、輝かしい夕焼けの空へと吸い込まれていったのだった。