19. You are very special to me: 3rd volume
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「……僕は、君にしてきたことを今後ずっと許せないだろう……。僕は君に償うべきことが山ほどある。それに勿論、君が僕を許さなかったとしても当然のことだ。
だが、もし万が一、フォーラが構わないと言ってくれるのなら……」
ドラコはそこで言葉を切ると、浅い息継ぎのような、緊張を纏った息遣いをした。
「叶うなら、僕は君からの信頼を取り戻したい。急にこんなことを言って、本当に自分勝手なのは勿論分かっている。だからもしフォーラの気が許すなら……どうか、僕を君の傍にいさせてくれないか。これから先も……」
ドラコの表情は、フォーラの返答を聞くのを恐れるように耐え忍ぶような様子だった。フォーラはそんな彼を肯定する以外の選択肢を持ち合わせていなかった。寧ろこの時をどれ程待ち望んだだろうかというくらい、ドラコの言葉はフォーラにとって願ってもないものだった。
「償うだなんてそんな。必要ないわ……。それに私も、勿論貴方と一緒にいたいと思ってる。同じ気持ちだもの……。」
フォーラは確かにドラコと同じ気持ちだった。確かにこれから先もずっと一緒にいたいという思いは抱えていた。
しかし彼女はその通りにはならないと理解していた。
フォーラは自身のマグル生まれという秘密を隠した上で、今後ドラコを騙すつもりでいた。彼の懐に入り、少しでも有利な情報を手に入れ、打倒ヴォルデモートの材料として不死鳥の騎士団に還元する。そのようなことを考えていた。
しかし途中でドラコにそのことがバレてしまえば、彼にはフォーラの愛が全てスパイ活動のための嘘偽りに映るだろう。加えてフォーラが純血ですらなくマグル生まれだという事実を知れば、ドラコはきっと彼女を拒絶せずにはいられない筈だ。
それにもし、ドラコが万が一フォーラの生まれを受け入れたとしても、彼の両親はそうではないだろう。彼らの純血主義を間近に見てきたフォーラには否定のしようがなかった。
他にも、仮にヴォルデモートからドラコやその両親を引き剥がすことに成功し、彼らの安全が確保されたとしよう。それでもドラコたちが闇の帝王を妄信していたならば、彼らにとってはあまりにも余計なお世話だ。いくら命あっての物種だったとしても……。
何れにせよ、フォーラにはどう転んでも自分の立場が良くない結果に行きつく未来しか見えなかった。そしてドラコに相応しい血を持たず、いくら事情があるとはいえ彼を裏切るために嘘をついて近づくような自分は、いつか自ら彼の元を去らなければならないのだということも。
(私はドラコが無事生きていられるのなら、それで構わないわ。私が貴方に相応しくない以上、最後まで隣にいられなくたって……。
だけど、我儘だと分かっているけれどせめて、その時が来るまでは……どうか一緒にいさせて)
フォーラはそのような考えから、再び一筋の涙を流した。ドラコはてっきりフォーラが互いの気持ちを理解し合ったことに喜び、そのような涙を零してくれたのだと思った。そしてドラコは親指でフォーラの頬を伝う雫を拭うと、彼女の方へ顔を近づけた。フォーラもそれに応えるように、軽く顔を上げた。
その時だった。何処か上階の方で、ガチャン、ドカンという何かが外れたような、壊れたような音が響いた。フォーラもドラコもハッとして顔を見合わせると、音がしたであろう方向を見た。音の根源は分からなかったが、何やらドカンドカンと重く固い何かがぶつかる音が近づいて来るのだ。そうして暫くしない内に音は本当に大きくなり―――。
次の瞬間、フォーラとドラコがいる廊下の向こうに、上階から一本の箒がもの凄いスピードで降りてきた。その箒には重い鎖と鉄の杭が付いていて、まるで何処かに縛り付けられていたのを無理矢理取り外したようだった。その箒は速度を緩めることなくフォーラたちの方へ九十度方向転換し、廊下を曲がった。そのせいで箒に付いた鎖と杭が遠心力で回り、廊下の石壁の一部を思い切り破壊した。そしてそのままの勢いで箒はこちらに向かって来るではないか。
「伏せろ!」
「きゃっ!!」
フォーラはドラコに押さえ込まれながら咄嗟にその場にしゃがみ込んだ。二人の頭上を箒や鉄の杭がビュンと風を切るように通過していったものだから、二人とも顔を上げて箒の向かった方を見た。すると今度は外から別の箒が開いた大窓から飛び込んで来て、鎖付きの箒と並走して玄関ホールに続く廊下を曲がって行ったのだった。
「フォーラ、君と話すことが山積みだが、今は玄関ホールに急ごう」
ドラコは名残惜しそうな様子で立ち上がりながらそう言った後、フォーラに手を差し出して彼女を立たせた。そして二人で玄関ホールに向かって走り出した。
「あれって……フレッドとジョージの箒だったわ。」フォーラがドラコの方を見ながら言った。
「ああ、杭を下げていた方は、ジョージ・ウィーズリーがアンブリッジに『クィディッチ生涯禁止』を言い渡された時―――アンブリッジの部屋の壁に固定されていた筈」
「じゃあ、箒を呼び寄せしたのは……」
「あの双子の可能性が高い。さっきまでの学校中の騒動だって―――あいつらが犯人だ。今頃クラッブたちが玄関ホールで奴らを挟み撃ちにしている筈だが―――」
ドラコが何度か息継ぎしながらそのように話した時、聞き覚えのある叫び声が玄関ホールの方から聞こえた。
「二人を止めなさい!」
それは確実にアンブリッジが叫んだ声だった。その直後、フォーラとドラコは玄関ホールに足を踏み入れた。するとそこには騒動を聞きつけた大変多くの生徒や教師までもが集まっていて、人で埋め尽くされていた。
フォーラとドラコが群衆の外側で足を止めると、その場にいる全員が上の方を見上げていたものだから、二人も同様にそちらを見上げた。すると人々の頭上でフレッドとジョージがそれぞれの箒に跨り、宙に浮いているではないか。ジョージの箒には先程のとおり鎖と杭がくっ付いたままで、その鉄の塊が危なっかしく揺れていた。
フォーラのいる場所から人々を何人も挟んだところに、パンジーらを含む尋問官親衛隊がいたのだが、誰もフレッドとジョージの高さまで呪文を届かせるのは不可能だった。親衛隊がアンブリッジの命令に従うことができない状況で、フレッドが高らかに言った。
「ピーブズ、俺たちに代わってあの女をてこずらせてやれよ」
だが、もし万が一、フォーラが構わないと言ってくれるのなら……」
ドラコはそこで言葉を切ると、浅い息継ぎのような、緊張を纏った息遣いをした。
「叶うなら、僕は君からの信頼を取り戻したい。急にこんなことを言って、本当に自分勝手なのは勿論分かっている。だからもしフォーラの気が許すなら……どうか、僕を君の傍にいさせてくれないか。これから先も……」
ドラコの表情は、フォーラの返答を聞くのを恐れるように耐え忍ぶような様子だった。フォーラはそんな彼を肯定する以外の選択肢を持ち合わせていなかった。寧ろこの時をどれ程待ち望んだだろうかというくらい、ドラコの言葉はフォーラにとって願ってもないものだった。
「償うだなんてそんな。必要ないわ……。それに私も、勿論貴方と一緒にいたいと思ってる。同じ気持ちだもの……。」
フォーラは確かにドラコと同じ気持ちだった。確かにこれから先もずっと一緒にいたいという思いは抱えていた。
しかし彼女はその通りにはならないと理解していた。
フォーラは自身のマグル生まれという秘密を隠した上で、今後ドラコを騙すつもりでいた。彼の懐に入り、少しでも有利な情報を手に入れ、打倒ヴォルデモートの材料として不死鳥の騎士団に還元する。そのようなことを考えていた。
しかし途中でドラコにそのことがバレてしまえば、彼にはフォーラの愛が全てスパイ活動のための嘘偽りに映るだろう。加えてフォーラが純血ですらなくマグル生まれだという事実を知れば、ドラコはきっと彼女を拒絶せずにはいられない筈だ。
それにもし、ドラコが万が一フォーラの生まれを受け入れたとしても、彼の両親はそうではないだろう。彼らの純血主義を間近に見てきたフォーラには否定のしようがなかった。
他にも、仮にヴォルデモートからドラコやその両親を引き剥がすことに成功し、彼らの安全が確保されたとしよう。それでもドラコたちが闇の帝王を妄信していたならば、彼らにとってはあまりにも余計なお世話だ。いくら命あっての物種だったとしても……。
何れにせよ、フォーラにはどう転んでも自分の立場が良くない結果に行きつく未来しか見えなかった。そしてドラコに相応しい血を持たず、いくら事情があるとはいえ彼を裏切るために嘘をついて近づくような自分は、いつか自ら彼の元を去らなければならないのだということも。
(私はドラコが無事生きていられるのなら、それで構わないわ。私が貴方に相応しくない以上、最後まで隣にいられなくたって……。
だけど、我儘だと分かっているけれどせめて、その時が来るまでは……どうか一緒にいさせて)
フォーラはそのような考えから、再び一筋の涙を流した。ドラコはてっきりフォーラが互いの気持ちを理解し合ったことに喜び、そのような涙を零してくれたのだと思った。そしてドラコは親指でフォーラの頬を伝う雫を拭うと、彼女の方へ顔を近づけた。フォーラもそれに応えるように、軽く顔を上げた。
その時だった。何処か上階の方で、ガチャン、ドカンという何かが外れたような、壊れたような音が響いた。フォーラもドラコもハッとして顔を見合わせると、音がしたであろう方向を見た。音の根源は分からなかったが、何やらドカンドカンと重く固い何かがぶつかる音が近づいて来るのだ。そうして暫くしない内に音は本当に大きくなり―――。
次の瞬間、フォーラとドラコがいる廊下の向こうに、上階から一本の箒がもの凄いスピードで降りてきた。その箒には重い鎖と鉄の杭が付いていて、まるで何処かに縛り付けられていたのを無理矢理取り外したようだった。その箒は速度を緩めることなくフォーラたちの方へ九十度方向転換し、廊下を曲がった。そのせいで箒に付いた鎖と杭が遠心力で回り、廊下の石壁の一部を思い切り破壊した。そしてそのままの勢いで箒はこちらに向かって来るではないか。
「伏せろ!」
「きゃっ!!」
フォーラはドラコに押さえ込まれながら咄嗟にその場にしゃがみ込んだ。二人の頭上を箒や鉄の杭がビュンと風を切るように通過していったものだから、二人とも顔を上げて箒の向かった方を見た。すると今度は外から別の箒が開いた大窓から飛び込んで来て、鎖付きの箒と並走して玄関ホールに続く廊下を曲がって行ったのだった。
「フォーラ、君と話すことが山積みだが、今は玄関ホールに急ごう」
ドラコは名残惜しそうな様子で立ち上がりながらそう言った後、フォーラに手を差し出して彼女を立たせた。そして二人で玄関ホールに向かって走り出した。
「あれって……フレッドとジョージの箒だったわ。」フォーラがドラコの方を見ながら言った。
「ああ、杭を下げていた方は、ジョージ・ウィーズリーがアンブリッジに『クィディッチ生涯禁止』を言い渡された時―――アンブリッジの部屋の壁に固定されていた筈」
「じゃあ、箒を呼び寄せしたのは……」
「あの双子の可能性が高い。さっきまでの学校中の騒動だって―――あいつらが犯人だ。今頃クラッブたちが玄関ホールで奴らを挟み撃ちにしている筈だが―――」
ドラコが何度か息継ぎしながらそのように話した時、聞き覚えのある叫び声が玄関ホールの方から聞こえた。
「二人を止めなさい!」
それは確実にアンブリッジが叫んだ声だった。その直後、フォーラとドラコは玄関ホールに足を踏み入れた。するとそこには騒動を聞きつけた大変多くの生徒や教師までもが集まっていて、人で埋め尽くされていた。
フォーラとドラコが群衆の外側で足を止めると、その場にいる全員が上の方を見上げていたものだから、二人も同様にそちらを見上げた。すると人々の頭上でフレッドとジョージがそれぞれの箒に跨り、宙に浮いているではないか。ジョージの箒には先程のとおり鎖と杭がくっ付いたままで、その鉄の塊が危なっかしく揺れていた。
フォーラのいる場所から人々を何人も挟んだところに、パンジーらを含む尋問官親衛隊がいたのだが、誰もフレッドとジョージの高さまで呪文を届かせるのは不可能だった。親衛隊がアンブリッジの命令に従うことができない状況で、フレッドが高らかに言った。
「ピーブズ、俺たちに代わってあの女をてこずらせてやれよ」